菅直人首相が議長を務める行政刷新会議の規制・制度改革分科会が改革の方針を示した。民主党は規制改革が国民の格差を広げたなどと主張し、企業の創意工夫を生かして消費者の利便を高める政策に背を向けてきた。その民主党が、改革の大切さに目ざめたのは半歩、前進である。
しかし分厚い報告書に項目を並べるだけでは意味がない。年金や消費税の改革と同じように、問われるのは首相の本気度と実行力である。
自民党政権のときは内閣府の規制改革会議が毎年末に答申を出し、各府省庁との交渉を経て翌3月に新年度からの3年計画を閣議決定した。
今回の方針は自民党政権当時の年末答申にあたる。内容をどこまで政権の公約に高められるかは、内閣府の副大臣、政務官の力量にかかる。
規制に携わる府省庁の背後には、既得権益を手放すのを嫌う業界団体がある。自民党政権時代には、業界と持ちつ持たれつの与党族議員が改革を陰で阻む場面があった。
菅政権が公約した幼稚園と保育所の機能統合が早くも腰砕けになっているのは、民主党に新しい族議員が誕生しつつある傍証ともみえる。だからこそ、改革の実現には首相の強い支えが欠かせない。
今回の方針は、首相が6月に結論を出す環太平洋経済連携協定(TPP)への参加交渉などを意識した項目が目立つ。食品添加物の承認手続きを簡素にする、自動車の修理工場の建築基準を緩める――などだ。
消費者の安全の確保など、規制をつくった頃の根拠は時代にそぐわなくなりつつある。対外交渉のあるなしにかかわらず、早く改めるべきだ。
医療分野の目玉は、消費者がインターネットなどを使って市販薬を買えるようにする規制緩和だ。自民党政権のとき、厚生労働省はさしたる根拠もなく販売規制を取り入れた。薬局まで遠いところに住む人たちをはじめ、ネットや電話で常備薬などを注文できる仕組みを待ち望む消費者は多い。ぜひ実現させてほしい。
健康保険が利く保険診療と自由診療を患者があわせて受ける混合診療の原則解禁については記述がない。昨年に閣議決定したので載せなかったというが、政権の意志を示すために改めて掲載すべきだった。高度な専門医療を提供する大学病院などの技術水準を高め、患者も大きな利益を得る改革の足踏みは許されない。
農業分野は農協の組織改革が中途半端だ。農業を強くするためにも、農協の農業事業と金融・保険事業とを切り離して、本体の経営を自立させる改革が欠かせない。
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