テレビ番組をインターネットで海外転送するサービスを巡る訴訟で、著作権侵害にならないとした2件の二審判決を最高裁が破棄し、審理を知的財産高裁に差し戻した。サービス業者を訴えた放送局が逆転勝訴した形だが、法制度や放送の枠組みにも課題を提起したといえる。
番組のネット転送は、海外の利用者が日本のサービス業者に送信機を預け、国内で受信した番組を転送してもらって見る仕組みだ。送信機を自宅などに置いて自ら転送するのは著作権法に触れないが、サービス業者は放送局に無断で実質的な転送代行サービスを有料でしていた。
番組の転送は、放送局などに認められた公衆送信権や無断コピーを禁じた複製権を侵害すると原告側は訴えた。二審は利用者自身が送信機を遠隔操作しており私的な行為だ、と判断した。だが最高裁は利用者が不特定多数ならば権利侵害の可能性があるとして、二審の判断を覆した。
二審と最高裁の判断は番組の転送技術をどう評価するかで異なる。番組転送は、本を複製する人にコピー機を提供するのに似ている。知的財産の専門裁判官の判断を最高裁が覆したのは、新しい技術を想定した規定が現行法にないためだ。その意味では著作権法自体を現実に見合った形に改正していく必要があろう。
放送事業が技術革新に追いついていない面もある。日本は地域ごとに放送局があり、広告の入った番組がどこでも見られるようになれば営業にも支障を来す。原告がサービス業者を訴えたのも、今の仕組みを崩しかねないと考えたからともいえる。
だが、外国でも日本の番組を見たいという需要は着実に増えている。海外駐在員が番組転送のためサービス業者と契約したのはその表れで、放送局もそんな声に応えるべきだ。
貸しレコード店が登場した際も著作権が問題となったが、音楽会社と店が貸し出しルールを定め、新市場が広がった。ネット配信も放送局とサービス業者でルールを作り、事業として広げることはできないか。
欧米では放送局が自らテレビ番組をネットで配信している。日本の放送局も視聴者向けに新しい映像配信サービスを提供できるよう、新たな法制度やルール作りを急ぎたい。
インターネット、ネット配信、放送局、ネット転送、知的財産、最高裁、著作権侵害
日経平均(円) | 10,237.92 | -122.42 | 31日 大引 |
---|---|---|---|
NYダウ(ドル) | 11,823.70 | -166.13 | 28日 17:41 |
英FTSE100 | 5,874.27 | -7.10 | 31日 14:28 |
ドル/円 | 82.06 - .08 | -0.58円高 | 31日 23:22 |
ユーロ/円 | 112.47 - .50 | -0.76円高 | 31日 23:22 |
長期金利(%) | 1.215 | ±0.000 | 31日 16:35 |
NY原油(ドル) | 89.34 | +3.70 | 28日 終値 |
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載
詳細ページへ
日経ニュースメール(無料)など、電子版ではさまざまなメールサービスを用意しています。
(詳細はこちら)