エジプト当局はインターネットを遮断し、携帯電話も通じなくした。それでも、おびただしい数の人が反政府デモに加わった。チュニジアの政変に触発された中間層の呼びかけに、低所得層やイスラム勢力も応えてデモが膨れあがった。
夜間外出禁止令が出ても、ムバラク大統領の退陣を求める群衆は銃を構える警察や治安部隊を恐れず、街頭から去ろうとしなかった。国民の積年の不満が怒りに変わって噴き出し、弾圧への恐怖をしのいだ。
「警察国家」とも呼ばれる独裁体制は、もはや維持できなくなりつつある。大統領は大きな変化が起きていることを冷静に認識すべきだ。
1981年に当時のサダト大統領の暗殺を受け、副大統領から昇格したムバラク大統領は、30年間も非常事態宣言を続けてきた。警察による強引な野党勢力弾圧や、言論統制をテコにした選挙の操作などが、エジプトでは当たり前になっていた。
だが、今年秋の大統領選挙で与党幹部を務める大統領の次男が権力を引き継ぐシナリオも、82歳の大統領が再び出馬することも、もう国民は受け入れないだろう。
大統領はテレビ演説で引き続き政権を担う考えを示し、治安維持にあらゆる手段を取ると強調した。そして、内閣の顔ぶれを全面的に入れ替えて、当面の混乱を乗り切ろうとしている。しかし、大統領自身の進退が焦点になる局面を迎えているのだから、事態の収拾は難しい。
アラブの政治の中心になり、イスラエルとも平和条約を結んでいる地域大国エジプトの混乱は、世界に大きな影響を及ぼす。
市場ではエジプトの通貨や株価のほか、イスラエル通貨も急落し、原油相場が上昇している。中東和平をめぐる政治環境が一段と悪化する恐れ、湾岸や北アフリカのアラブ産油国に及ぼす影響への懸念などが、相場に反映していると考えられる。
これ以上、流血が広がるのは、誰も望まない。混乱に乗じてイスラム過激派が活動を強めるような事態も避けなければならない。
米オバマ政権は情勢次第でエジプトに対する経済・軍事援助を見直す考えを示し、ムバラク大統領の熟慮と決断を促した。ムバラク大統領がその職を続ける考えなら、国民の納得を得られるような政治改革の道筋を明確に示す必要がある。
同時に、ムバラク政権を中東外交のパートナーとしてきた米欧や日本などは、「ムバラク後」もにらんでエジプトの政治体制の円滑な移行の支援を考えなければならない。
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