科学【主張】こうのとり 成功は技術と信頼の証し2011.1.31 02:51

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【主張】
こうのとり 成功は技術と信頼の証し

2011.1.31 02:51

 日本の無人補給機「こうのとり」2号機は、静かに国際宇宙ステーション(ISS)の所定の位置に止まった。

 高度350キロで行われた結合作業は完璧だった。一昨年秋の初号機に続く成功だ。日本の宇宙技術の高さを世界に示したことを評価したい。

 物資補給はISS参加国としての義務で、2015年まであと5回の打ち上げが決まっている。日本は一昨年完成した実験棟「きぼう」の提供と、こうのとりによる物資補給で、資金面だけでなく技術面でもISSに貢献できる位置に立った。

 秒速8キロで飛行するISSにぴたりと寄り添わせる技術は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が独自に開発した。機内環境も飛行士が普段着で活動できる有人宇宙船並みの気密性が確保されている。繊細な制御技術と高い安全性を実現するため、日本の宇宙技術の全てが注がれた。

 米航空宇宙局(NASA)やISS飛行士との緊密な連携も必要だった。結合の成功は日本への信頼の証しでもある。

 米スペースシャトルが6月の打ち上げで引退すると、ISSに大型設備を運べるのはこうのとりだけになる。その分、日本の責任と存在感が増す。

 ISS計画は20年以上にわたって、日本の宇宙開発の柱だった。スペースシャトルでの日本人の宇宙飛行や「きぼう」の建設、長期滞在など、有人宇宙活動のほとんどは、ここで学んできた。

 現在のこうのとりは、片道の物資輸送機で、任務を終えるとISSのゴミを載せて大気圏で燃え尽きる。JAXAは必要な物資の持ち帰りが可能な回収機能を持たせようとしている。そこで培った大気圏再突入の技術を、有人宇宙船開発につなげる構想もある。

 精度の高い運用を続けながら、未来の宇宙開発に向け、こうのとりを大きく育ててほしい。

 問題は、育てた後の羽ばたき先について、国の方針が定まっていないことだ。政府の宇宙開発戦略本部は、宇宙開発に関する施策を総合的、計画的に推進するために設置されたはずなのに、肝心の有人宇宙開発についての論議は棚上げにしたままだ。

 国民がこうのとりに大きな夢を託せるよう、早急に宇宙開発の基本構想を打ち出す責任が、政府にはある。

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