国際【主張】エジプト政権危機 独裁正して信を取り戻せ2011.1.30 04:11

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【主張】
エジプト政権危機 独裁正して信を取り戻せ

2011.1.30 04:11

 エジプトの反政府デモが一気に全土に拡大した。民衆と治安部隊との衝突で千人以上の死傷者が出る不穏な情勢だ。

 中東・北アフリカ地域の大国であるエジプトの騒乱は域内の安定を脅かす。日本を含む国際社会は事態沈静化のために最大限の外交努力を重ねる必要がある。

 デモの中心は、貧富の差の拡大や物価上昇、深刻な失業問題などで不満の矛先を政府に向ける若い世代である。ムバラク大統領はテレビ演説でデモに一定の理解を示し、閣僚全員の更迭を発表した。一方で、「治安と安全のためにあらゆる措置をとる」と暴力デモには強硬姿勢を見せた。

 全土に発令された夜間外出禁止令を無視して展開された28日の反政府デモでは一部が暴徒化し、与党本部の焼き打ちや略奪も起きた。一部地域では軍による戦車の投入も伝えられた。これ以上の流血回避のために、民衆と治安部隊双方に自制を強く求めたい。

 エジプトの大規模デモは同地域のチュニジアで今月上旬に起きた学生らによるデモがベンアリ大統領を国外逃亡に追い込んだことに触発されたものだ。チュニジアの政変はイエメン、アルジェリア、ヨルダンなどにも飛び火し、各国で反政府デモが続いている。

 これらのアラブ諸国に共通しているのは富の分配の不平等のほか、言論の自由の抑圧などの強権支配が長年続いていることだ。ムバラク大統領も約30年にわたって独裁的な体制を敷いてきた。今秋の大統領選に次男を立候補させる意向ともいわれる。

 しかし、ムバラク大統領の中東安定への貢献は過小評価できない。良好な対米関係を背景にイスラエルと外交を維持し、アラブ諸国との仲介役を果たしてきた。

 政権打倒を叫ぶ側にも、新たな受け皿を構築する動きはない。オバマ米大統領はムバラク大統領との電話会談で進退には言及せず、「事態打開には暴力ではなく、改革に向けた具体的前進が必要だ」と述べたのも、このためだろう。前原誠司外相も大統領に「国民の幅広い支持を得る改革」の実施を求めた。

 デモに参加したノーベル平和賞受賞者、エルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長にも積極的役割が求められよう。最も警戒すべきは、混乱に乗じたイスラム過激派の伸長である。

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