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読む政治:首相訪米に影(その1) 米「首都以外」を打診 「日本軽視」政府困惑

 11年度予算関連法案の成立の見通しがつかず菅政権が行き詰まる「3月危機」が現実味を帯びている。菅直人首相が今年前半の最大の外交の見せ場と位置付ける春の訪米にも、政権の危機が影を落とし始めている。

 「1月中旬に中国の胡錦濤国家主席が国賓としてワシントンを訪問する。国家元首ではない菅首相が、時期は違っても同じワシントンに来れば、明らかに見劣りする待遇になる。一つのアイデアだが、サンフランシスコはどうか」

 昨年12月中旬、ホワイトハウス高官は、訪米した日本政府関係者に、日米首脳会談のサンフランシスコ開催を打診した。この高官は「知日派」として知られ、微妙な日中関係に配慮を見せたとみられる。サンフランシスコ講和条約と旧日米安保条約が1951年9月に同地で調印されて60年になることを意識した演出も米政府は考えているかもしれない。それでも、日本政府関係者はショックを隠し切れなかった。「当然、首都ワシントンに招くべきで、あり得ない話だ。日本が軽視されているのではないか」

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件、北朝鮮の砲撃事件など不安定な東アジア情勢を背景に、菅政権は「日米基軸」外交を鮮明にし、鳩山前政権下で失ったオバマ政権の信頼を回復することにこぎ着けた。しかし、台頭する中国やインドなどに比べ、経済が停滞し政権も安定しない日本のワシントンでの存在感が相対的に低下していることは否めない。

 「オバマ政権はブッシュ政権ほど日本に温かくない。より実務的に判断する」「日米関係は良くなったわけではない。やっと振り出しに戻っただけだ」。日本政府筋や外務省幹部の認識も厳しい。首相の訪問先がどこになるかは決まっていない。

毎日新聞 2011年1月30日 東京朝刊

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