皇位継承における各紙の見出し
保守系blogでもあまり扱わない話題だけど…
小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」が26日の会合で、皇位継承に関する論点整理をまとめた。しつこく書くけど「論点整理をまとめた」だけ。
さて、各紙の見出しをみてみる。
読売:「男系男子の維持、女性天皇の容認…皇位継承両論併記に」
産経:「皇室典範会議 二者択一で判断待つ 論点整理、男系男子か女帝容認か」
朝日:「女性・女系天皇容認など提示 皇室典範有識者会議」
毎日:「皇室典範会議:論点整理を決定 女性天皇案など提示」
日経:「皇位継承資格拡大で「女性天皇」など検討・有識者会議」
今までの会合で出た論点整理して、「『女性天皇や女系天皇を認めてもいいではないか。その際に継承順位はこうすべきだ』という意見もあるが、こういう理由で反対論もある」「『男系男子による継承を続けるために、こうしようではないか』という意見もあるが、こういう理由で反対論もある」という具合にまとめただけなんだよね。そのまとめたものを発表したから、各紙が報道したわけで、実際に有識者達がこのまとめを元に論議していくのはこれからだし、何らかの道筋がこの会議で出されたとしても、法的に有効になることはないんだけどね。ちょっと前に福田前官房長官の私的諮問機関「追悼懇」が「無宗教の国立追悼施設をつくるべし」なんて結論を出したけど、あれと同じようになるかもしれないわけでね。
だからポイントは「有識者会議(法的に拘束力を持たない)が」「女性天皇・女系天皇を認めることと、男系男子による継承の堅持との両論を」「論点整理してまとめた」という3点なんだよね。それに照らし合わせると…
読売:主語がない。まるで皇室典範がすぐにでも書き換えられるような印象を与える。
産経:「皇室典範会議」では法的に拘束力を持ちそうな印象を与える。
朝日:「女性・女系天皇容認など」という記述は卑怯。「有識者は女性・女系天皇を容認している」という印象を与える。
毎日:「女性天皇案など提示」という記述は卑怯。しかも「「皇室典範会議」という法的拘束力を持っていそうな集団が女性天皇を容認している」という印象を与えている。朝日より性質が悪い。
日経:「「女性天皇」など検討」とご丁寧に括弧書きまでして、その後ろの「など」を目立たなくしている。朝日より性質が悪い。卑怯。姑息。
産経の見出しが「皇室典範会議」を「皇室典範有識者会議」になっていたら、見出しとして完璧だと思うのだが、あからさまな印象操作を仕掛けている朝日・毎日・日経よりはるかにましだし、読売は印象操作なのか見出しをつける人が無知なのかよくわからない状態なので、産経の一人勝ちだと思う。
で、見出しだけで優劣をつけるのもアレなんで、本文も読み比べてみた。どれもよくまとまっているのだが、意外にも朝日が一番読者に親切なのではないかと感じた。特に「母方だけに天皇家の血筋をひく女系天皇」という具合に、「女系天皇とは何か?」を説明している。ちなみに読売は「女性天皇とその子孫(女系天皇)」というように、女系天皇の範囲を狭めて説明している。私が書くまでもなく、内親王が皇族以外の男性と結婚され、そのお子様が天皇に即位されることがあったとしても、それは「女系天皇」に他ならない。朝日の説明の方が正確だ。そして、産経・毎日・日経にいたっては、読者が「女系天皇とは何か」を把握しているがごとく、記事を書いている。
<追記>
よく考えると朝日の説明も片手落ちだな。これだと「内親王と皇族外の男性が結婚され、男子が生まれた。この男子の子が天皇になった」という場合、「男系」になってしまう。「男系」とは「父親を辿っていくと天皇に当たる」ということなので、上記の例はもちろん「女系」になるんだよね。
毎日は本文冒頭で「「女性天皇」の是非などを検討している小泉純一郎首相の私的諮問機関…」と、本会議のメインの話題が「女性天皇の是非」だとミスリードしているし、「女系天皇」については「論点整理の骨子」で触れているだけ。記者自身が女性天皇と女系天皇の違いを理解しているのか、ちょっと疑問。
日経は本文も姑息な手段を使っている。「検討対象に「女性・女系天皇の容認」と「旧皇族とその子孫による宮家新設」を挙げた」とあるが、官邸が提供している本会議の「論点の整理」には「宮家の新設」なんて言葉は出てこない。該当部分を抜粋すると「(前略)昭和22年に皇族の身分を離れた旧皇族やその子孫のうちの男系男子を対象として、現在の皇族との養子縁組や婚姻、又は単純な復帰・編入といった方法により、皇族とする方策が主張されている」となっている。朝日の「47年に皇室を離れた旧皇族を復帰させたり、現皇族と養子縁組したりして皇族に戻す」という表現は、この「論点の整理」をまとめたんだなと思えるが、「宮家の新設」となると、バイアスがかかっているとしか思えない。読者に「俺達の血税がまた余計に使われるのか!」と思わせたいんだろうね。養子縁組すれば、当然宮家は増えないんだけど、これについては本文最後にチラッと触れているだけ。主要5紙では断然最下位どころか、捏造の一歩手前という感じだ。
どうしてこんな変な記事になったのかと、日経本紙を読んでわかった。日経は宮内庁幹部の話として「女性天皇容認となれば、内親王が結婚する際に宮家を創設して皇族にとどまるのは論理的必然」と書いている。どうもこの幹部の「新宮家創設」発言に引きずられて、本会議のまとめも「旧皇族による宮家新設」と書いてしまったのでは? しかも本紙では、見出しにまで「宮家新設」とでかでかと書いている。ここまで恣意的だと、有害だ。
こんな新聞を、日本企業の相当数が購読しているというのは、かなり問題のような気がする。ビジネスマンが日経を記事の方まで読む場合、そのほとんどは経済記事だろう。政治記事なんて、せいぜい見出しを眺めるくらいだ。そこに一面に堂々と「宮家新設」だの「女性天皇容認」だのと見出しを書いているんだからね。日経には、経済に絡まない記事を書いてもらいたくないよ。いや、マジで。
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