青森のニュース

学生数優先、甘い審査 青森大「偽装留学生」大量除籍

中国人留学生の大量除籍処分が発覚した青森大。「偽装留学」を許した大学の責任が問われている

 青森大(青森市)で2008〜10年度に、通学実績のない中国人留学生140人を除籍処分にしていたことが発覚した。処分された学生のほとんどは入学後、青森県外に出て働いており、実態は「偽装留学」。少子化に伴う学生数の確保という経営上の事情によって始まった同大の留学生受け入れだが、こうした事態は予想できたはずだ。「偽装留学は見抜けない」「県内のアルバイトを紹介すれば問題は防げた」とする青森大の主張には、疑問の声が上がっている。(青森総局・佐藤理史)

<約3割を処分>
 「少子化の波にのまれ、学生数を確保できなくなった。大学の生き残り作戦として中国人留学生に活路を見いだした」。今月14日の記者会見で、末永洋一学長は留学生の受け入れを本格化させた当時の事情を説明した。
 青森大の学生・留学生数の推移は表の通り。少なくとも10年前には定員割れに転じ、学生数はこの間、43%も減少した。一方、01年度に6人だった留学生は09年度には354人に増え、学生数に対する留学生の割合は25%に跳ね上がった。
 青森大が通学していない留学生がいることを初めて把握したのは08年度。同大は4人を除籍処分としたものの、受け入れ態勢は見直さなかった。結果として、09、10の両年度は留学生を大量に受け入れ、うち約3割を退学か除籍の処分とした。
 同大の内部調査では、除籍者のうち、提出書類を偽造したケースが約3割見つかり、親が無職なのに職業欄に「教員」などと虚偽の申告をしていた。

<広がる自衛策>
 こうした就労目的とみられる「偽装留学」は防げないのか。
 末永学長は「『向学心がない』と留学生の顔に書いてあるわけではない。われわれの能力では見抜けなかった」と言い切る。しかし、中国で学位や成績に関する偽造証書が出回っていることは以前から指摘されており、日本の大学側の対応も徐々に進んでいる。
 NPO法人JAFSA(国際教育交流協議会)は09年12月、中国政府系財団と協力し、「中国学位・学歴認証システム」の運用を始めた。財団が留学希望者の試験成績や学歴に関する認証書を発行し、事前登録した大学に送る仕組み。名古屋大や明治大など、国立・私立の12大学が利用している。
 利用校の一つ、大阪国際大は「文書偽造を自前の審査で見抜くのは難しいし、手間が掛かるのは確かだが、受け入れるからには相応の自衛策を講じるのは当然だ」と強調する。
 「留学生に青森県内のアルバイトを紹介すれば、ある程度問題を防げた」と会見で述べた末永学長の見解についても、専門家は疑問を呈する。
 「留学生を日本の宝物として扱おう」などの著書がある〓志強・国士舘大教授は「地方に来る中国人留学生は生活資金が潤沢ではなく、ほとんどはアルバイトをしながら学ぶことを想定している。一方、地方のアルバイト求人数は足りないので、青森大の対応に意味はない」と指摘する。

<文科省も調査>
 問題を結果的に後押ししているのは、留学生を20年度をめどに現在の12万人から30万人まで増やす国の計画だ。青森大は留学生から入学金10万円と初年度の授業料55万円を受けるほか、計画に伴う補助金を07〜09年度に少なくとも計6300万円も得ている。青森大は補助金の不正受給を否定しているが、文部科学省は手続きなどに問題がなかったかどうかを調査している。
 〓教授は02年の酒田短大生不法就労事件と構図が似ていることを挙げ、「もうけ主義的な経営をする大学がある限り、同じ問題が繰り返される」と警告している。

(注)〓は刑のつくりにおおざとへん


2011年01月31日月曜日


Ads by Google

関連記事

powered by weblio



△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS
  • 47CULB