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月刊たこのすけ通信:三重大生リヤカーの旅 沖縄の病院で当直体験 /三重

 リヤカーを引いてたこ焼きを振る舞いながら北海道から沖縄まで日本列島を縦断している「たこのすけ」こと三重大3年の森田松之助さん(22)=休学中=は1月、旅の最終目的地、沖縄に入った。沖縄では大学の先輩に再会し、勤務先の病院で当直勤務を体験、日々、生死と向き合い懸命に働く医師の姿を目の当たりにし、命の重さに気付かされた。旅は沖縄本島を一周し、大団円を迎える。【構成・福泉亮】

 ◇「命の有り難さ」実感

 沖縄には鹿児島からフェリーで12日に入った。那覇市に入ると携帯電話が鳴り、「オレの所にぜひ寄ってくれ」。電話の主は先輩の江角さん。僕がたこ焼き屋を店内に置かせてもらった三重大近くにある飲食店「バズーカ」の創設者だ。三重大医学部を卒業後、沖縄市で内科医をしている。僕にとって偉大な先輩だ。

 一緒にお酒を飲み、素潜りして過ごすと、「じゃあ、あした、当直やってみようか」。江角さんは上司の了解を得て、僕は江角さんの勤務先、沖縄市の中部徳洲会病院の内科で、午前7時から翌7時までの当直勤務を体験させてもらうことになった。「本当にいいのかな」と思いながら白衣を身にまとうと、何か重い責任感を背負ってしまったような気がした。

 病院の1日はめまぐるしく忙しかった。ひっきりなしに来る外来患者の診察、入院患者の巡回、手術……。江角さんは笑顔で一人一人丁寧に診察していた。耳が遠いおばあちゃんには、顔をめいっぱい近付けて話し掛けていた。普段は子供のようにはしゃいでいるのとは別人のようで、江角さんのプロの顔を見た。かっこよかった。

 心筋梗塞(こうそく)の患者が運ばれ、緊急手術が行われた。僕は手術にも立ち会い、自分がドラマのワンシーンにいるかのようだった。緊迫する手術室で、医師たちは命を救おうと必死だった。僕が当直を体験したその日には、江角さんが担当する患者が亡くなった。「人の死に慣れちゃうんだよな……」。江角さんの背中からは、患者を救えなかった無念さがにじみ出ていた。

 何気なく毎日を過ごす僕にとって「死」は遠い存在だが、当直体験は死を一気に身近なものにした。命の重さ。ありきたりだけど、命の有り難さをかみしめ、大切にしなければと思った。また一つ、大事なことを学んだ。

 「何かをつかみに行く」ために始めた旅もそろそろ終わり。この旅で僕が何をつかんだかと言えば、まだ分からない。というか、自分では気付かないのかもしれない。三重に戻ってきた時に、成長したと言ってもらえるとうれしいかな。

 とにかく、ゴールまであと少しだ。(スタートの宗谷岬から8カ月の合計移動距離=3715キロ)

   ◇ ◆ ◇

 リヤカーを引きながら列島縦断の旅を続ける「たこのすけ」こと三重大3年の森田松之助さんに激励の言葉や感想などを募集しています。津支局までファクス(059・225・7081)か、電子メール(mie@mainichi.co.jp)でお願いします。

〔三重版〕

毎日新聞 2011年1月31日 地方版

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