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事件発生後すぐメール ドライバーに捜査協力依頼 県警

2011年1月23日

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送られてくるメールのイメージ(県警が示した文案を元に作成)

 タクシーや宅配のドライバーに事件発生をメールで知らせ、情報提供を求める取り組みを県警が来月から始める。県警によると、全国初の試み。裁判員裁判の導入や相次ぐ冤罪(えんざい)事件を受け、目撃証言など客観的な証拠を集める必要性が高まっており、街中を走るドライバーの目を捜査に生かし、事件解決につなげる狙いがあるという。

■2月から全国初の試み

 取り組みの名称は「ドライバーズ・メールシステム」。事件が起きると、発生日時、場所、事件の内容、犯人の特徴などの情報を県警が事業所にメールで送信。連絡を受けた各事業所は、従業員のドライバーに無線やメールで連絡する仕組みだ。殺人や強盗などの重大な事件が対象で、昨年起きた配信対象となる事件は36件あった。

 県警では元々、1993年からファクスで事件の発生を伝えてきた。コンビニなど約2800事業所が参加していたが、倒産や移転などで電話番号が使われなくなったり、誤送信したりする問題が発生。2007年から運用を停止しており、連絡手段をファクスから切り替える意味もあるという。

 メールシステム導入のため、県警では県内のタクシー会社や宅配業者のほか、バス会社や警備会社、県内全域の消防本部と協力を取り付けた結果、5業種の計54社・団体を配信先として確保した。これら協力事業所が保有する車両は約3千台に上るという。

■「いち早く伝え、確実に情報収集」

 刑事企画課はメールのメリットについて転送が容易で事件の概要が伝わりやすい点をあげる。業者の車が現場付近で犯人や逃走車両を目撃したとしても、そこで事件が起きたことを知らなければ、警察に情報は伝わらない。その場を通り過ぎた車を再び見つけ出すのは容易ではなく、時間の経過とともに目撃者の記憶も薄れると公判の証拠にならない恐れも出てくる。担当者は「メールでいち早く伝えることで、より確実に情報を集められる」と強調する。

 例えば米原市の汚水槽で09年6月、女性の遺体が見つかった殺人事件の裁判員裁判では、殺害時間帯に現場近くを通ったトラックの運転手が「被告のものと似た車を見た」と証言。犯行そのものの目撃者もなく、被告が「事件に関係ない」と否認するなか、有罪認定される上で重要な証言の一つとなった。

 さらに、再審で無罪が確定した「足利事件」を受け、警察庁は再発防止策を検討していたが、客観的証拠に基づいた捜査をより重視する必要があると判断。昨年4月、全国の警察へ初動捜査を強化し、現場の証拠物や目撃者の証言を徹底して集めるよう指示し、県警も対応を検討していた。

 刑事企画課の吉田良文総括管理官は「ドライバーが犯人を直接見てなくても、その場にどんな人がいたか分かれば目撃者にたどり着くこともある。メールシステムの導入で事件解決の手がかりとなる様々な情報を得られる」と話し、今後も協力の輪を広げたいとしている。(堀川勝元)

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