「枝野氏は官房長官就任後、官邸のスタッフに対し、『自分と菅首相の意見が分かれた際、どうするかよく配慮して』と、職員からすれば"踏み絵"とも取れるような発言をしたそうです。枝野氏が官邸を仕切り、仙谷氏が代表代行として党を牛耳れば、莫大な官房機密費と政党交付金も、凌雲会の思うがまま。『ポスト菅』に向けた態勢作りは、着々と進んでいます」(官邸関係者)
菅政権の「終幕」について、政治アナリストの伊藤惇夫氏は、「キーワードは『3』『4』『6』です」として、こう語る。
「菅首相は消費税問題とTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題の結論を、6月までに出すと期限を区切ってしまいました。これは両方とも、本来なら内閣が吹き飛びかねない大問題で、2つとも方向性を出すなど至難の業です。
そのため、まずは予算が成立するかどうかの山場となる3月、そして統一地方選が行われる4月が菅政権の大きな関門であり、それを乗り越えたとしても、6月には前述の両問題で、政権は大きな危機を迎えるでしょう」
小沢氏を切ると同時に、自分も死に体に陥った菅首相に唯一、残される手段は、破れかぶれの衆院解散だ。
仙谷氏は、「解散なんてするわけない」と、一笑に付した。だが、政権崩壊に瀕している菅首相にしてみれば、「伝家の宝刀」を抜いて一か八かの勝負をし、奇跡の勝利を収めて求心力を取り戻す以外に、道がないというのも確かなのだ。
ここまで幾度か触れてきた『マクベス』も、「女の生み落とした者に倒されることはない」という魔女の託宣にすがり、復讐にやってきた先王の息子たちの軍を相手に破れかぶれの決戦に踏み切る。
しかし、マクベスと対峙した武将マクダフは、帝王切開によって生まれた、「女の生み落とした者」ではない存在だった。マクベスは、ここでようやく魔女に誑かされていたことに気付いて逃げようとするが、そのまま無残に、討ち取られてしまうのである---。
菅首相に救いがあるとしたら、実在したスコットランドのマクベス王は、実は名君だったと言われること。シェイクスピアは、時のイングランド王がマクベスによって殺された貴族の子孫だったため、それを慮って、あえてマクベスを悪辣な王として描いたという。
「社会保障と財政の問題を解決して歴史に名を残す」と力んでいる菅首相にしてみれば、史実のマクベス王を知れば、大いに勇気付けられるかもしれない。
しかし、日本国民が望んでいるのは、首相の独りよがりな名誉を後世に伝えることではない。まずは"現在"の国民の暮らしを立て直し、不安を取り除いた上で、なお国家百年の計を立てる。その難題を克服する覚悟と能力がないのに総理大臣の座に居座られては、結局「悲劇」に見舞われるのは国民になる。
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