■第2幕 次の犠牲者
マクベスが悲惨な結末を迎えるのと同様、菅首相の前途にも、すでに暗雲が漂い始めている。「新4人組」で政権を押さえたはいいが、その4者の間に、早くも分裂の兆しが見えている。
この4人の中で、完全に浮いた存在になりつつあるのが、岡田幹事長だ。民主党ベテラン代議士の一人がこう語る。
「仙谷氏が代表代行になるにあたり、岡田氏は党本部の幹事長室を仙谷氏に明け渡すことになり、幹事長代理の部屋に引っ越しました。本人は『こっち(旧幹事長代理室)のほうが広いし、職員からも近い』と強がっていますが、"降格"と受け取れないこともない。実際、引っ越し作業をする岡田氏は無言のまま、憮然とした表情で荷物を箱に投げ込んでいて、誰も声をかけることができませんでした」(民主党本部スタッフ)
前出の仙谷氏の放言を思い出して欲しい。仙谷氏は、「大政局を起こさねばならない」と語り、「菅首相がダメなら政権のたらい回しをする」と宣言した。
仙谷氏の狙いは、明らかに「小沢を排除した上での政界再編」だ。小沢氏を消し、自分たちが主導の上で自民党や公明党に働きかけ、連立の組み替え、再編を行う。その際、菅首相が邪魔なら、これも排除して、総選挙を経ずに新たな民主党代表を選出し、引き続き実権を握る。そして、その際に仙谷氏が担ぎ出すのは、決して岡田氏ではない。
「仙谷氏の狙いは、次期首相に秘蔵っ子である前原誠司外相を据えることです。そのために、江田法相が就任するとも言われた官房長官に、同じ凌雲会(仙谷氏が実質的な領袖の前原・枝野グループ)の枝野氏を押し込んだ。自分は代表代行として党務を総覧し、官邸は枝野氏を使ってコントロールする。まさに"仙谷支配"です」(民主党閣僚経験者)
自分の子飼いである前原氏や枝野氏に実権を握らせようと図る仙谷氏にとって、代表経験者でもある岡田氏は、小沢"亡き"後、はっきり言って邪魔な存在だ。それを岡田氏も察知しており、今度の組閣でも、そこはかとない抵抗を試みたという。しかし、原理主義者で柔軟性がないと言われる岡田氏は、融通無碍の仙谷氏の敵ではなかった。
「党内を自由に動き回られると困るので、岡田氏は仙谷氏を国対委員長にして動きを封じようとしましたが、仙谷氏が受けなかった。さらに岡田氏と玄葉光一郎政調会長は、党で消費税論議を仕切る『税と社会保障の抜本改革調査会』の会長に仙谷氏が就任するのを牽制するため、記者団に情報をリークしたりしましたが、結局は仙谷氏本人の意向に押し切られ、税と社会保障も仙谷氏が統轄することになってしまった」(全国紙政治部記者)
このまま行けば、民主党は4月の統一地方選で、壊滅的な惨敗を喫すると予想されている。落選する地方議員たちのごうごうたる非難の矛先は、菅首相と、幹事長の岡田氏に向かうことになる。「小沢殺し」に続く、「岡田殺し」---。すでに仙谷氏の中では、そこまでシナリオが出来上がっているのだ。
党内の抗争が第一。
■第3幕 そして誰もいなくなる
仙谷氏が構想する"大政局"にそぐわない者は、次々と消されていく。前段で仙谷氏を『マクベス』の魔女に喩えたが、同氏の政敵から見れば、その冷徹な策略家ぶりは、魔女より遥かに上位の冥界の王・プルートウのようだ。
小沢氏を消し、岡田氏を除いた後、仙谷氏とその一派にとって、最後に邪魔になるのは、当然、菅首相その人ということになる。
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