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最終更新:2011年1月25日(火) 18時39分

海自隊員の自殺、判決を待つ母の思い

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 2004年10月、海上自衛隊に勤務する一人の若い隊員が自殺しました。配属された部隊でのいじめが原因として遺族が国などを相手取り起こしていた裁判は、26日に判決を迎えます。母の思いを取材した。

 息子の自殺から6年余り。女性は今でも月に一度は足を運びます。

 「ずっと後悔のしっぱなしですよね、(自衛隊に)なんで入れてしまったのかなって」(Tさんの母)

 2004年10月。東京都内の駅で、1人の青年が電車に飛び込みました。海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」に所属していたTさん。高校卒業後にカナダへ留学した経験から、国際貢献を夢見ていたといいます。自殺は入隊から、わずか10か月後のことでした。

 「顔を見た瞬間に『あぁ現実なんだ』って、その瞬間ですね。あぁ、夢じゃないんだって」(Tさんの母)

 ホームに残された1冊のノートには、元上官のいじめを告発する悲痛な叫びが記されていました。名指しされた元上官は、暴行容疑で逮捕され有罪が確定。刑事裁判で明らかになったのは、恒常的ないじめの実態でした。無抵抗の若い隊員達をガスガンで撃つ。“指導”という名の元に借金を押し付けられる。船の中では、こうしたことが当たり前のように行われていました。

 両親は、2006年に国と元上官を相手取り民事訴訟を起こしました。その元上官は23日、私たちの取材に応じました。

 「自分のやったことは悪いことだと思う」「自分も以前、先輩から80万円の借金を押し付けられた」「自衛隊の体質だったと思う」(元上官)

 一方、国側は「いじめと自殺の因果関係はない」とし、当初は、防衛機密を盾に証拠書類の提出も拒みました。息子の無念を訴え続けた父は、判決を待たずに病気でこの世を去りました。

 「長かったですよね。(国が)誠意を持って裁判していれば(夫と)一緒に判決を聞くことができた」(Tさんの母)

 墓には、父と息子の名前は刻まれていません。
 「本当はここに名前を刻むんですけど気持ちが整理できていなくて、一つの区切りがついたら彫らなければいけないが、つらくて」(Tさんの母)

 判決は26日に言い渡されます。(25日17:06)

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