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[21516] 習作 リリカルなのは×ACE COMBAT ×色々&オリ主&転生キャラ
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2011/01/09 22:05
題名が思いつきません…アドバイスお願いします。

注意事項
・ACE COMBATとクロスですが登場人物の名前を借りている別人だと思ってください。
・他にも色々とクロスします。
・オリ主で最強系になります。
・転生オリキャラで転生オリ主ではありません。
・厨二設定とご都合主義が満載です。(例・ナデポニコポ)
・原作キャラとの恋愛ありです。
何かありましたら随時、追加します。

8月26日、祝、エースコンバットX2発売!!

9/3追加
5話より人の発言を「」。デバイスは『』。念話を≪≫にしてみました。

2011年、あけましておめでとうございます。
1/2 設定集追加。
何かあったら随時更新。これも付け加えた方が良いと言うのがあったら追加します。
1/9 設定集に項目追加



[21516] 設定&用語集 1/26  ソラノカケラ追加。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/28 00:43
付け加えた方が良いと言うのがあったら、お願いします。
追加項目は、下に増えていきます。


【フレッシュリフォー社】
ミッドチルダ、クラナガンに本社を置く、押しも押されぬ超巨大企業。管理局からデバイス・医療機器等の委託されている。
それ以外にも幅広く扱っており、幾つかの管理世界に支社を持ち、人々の生活に深く入り込んでいる。
管理局の出資者の1つであり、それなりに友好な関係を持つ。現在のトップはトリスタラム・リフォー。

【ベルカ公国】
かつて存在した国家。古代ベルカからの移民でありながら、卓越した魔道技術により1つの国家として成り立っていた。
そして、その技術力、軍事力を持って領土を拡大したが、それが原因で経済危機に陥る事になる。
状況を打開する為に、一部の有力貴族に領地を分配し、自治領として運営させ、自国から切り離した。
しかし財政難は止まらず、その貴族達を取り込み、肥大化していくミッドと管理局との関係は更に悪化。その際に、極右政党が政権を握る。
そして、親ミッド派貴族【ウスティオ家】領地にて、天然魔道資源の発見を機に、ウスティオ家領地、ミッドチルダ領地等に侵攻を開始。
後に言うベルカ戦争が開戦される。当初は【ベルカの騎士】と呼ばれる魔道師達の活躍で、優位に立っていた。
しかし、管理局が組織した外部傭兵部隊の活躍により、徐々に押されていく。
だが、魔核弾頭(後述)等を開発し、ミッドと管理局を苦しませるが、敗北。戦争末期には自国領土内で起爆させるという狂気さえ犯す。
国家は解体され、現在は、自治領として残り、自治政府が運営している。なお、旧国土の一部を管理局評議会が、直轄地として運営している。


【ベルカの騎士】
ベルカ空戦部隊のエース達にのみ許された称号。アームドデバイスを使いこなす、接近戦のプロである。
近づかれたら終わり、戦争中の管理局員達の恐怖の対象であった。


【魔核弾頭・V1】
コアとなる魔力吸収体に、魔力を注ぎ込み、起爆させる兵器。都市を蒸発させるほどの威力を持つ。
ベルカ公国が開発するが、自国内で起爆させる狂気を犯す。なお、更に強力な【V2】が開発されていたとの噂もある。

【魔核弾頭・V2】
あるロストロギアをコアにし、蒐集した魔力を暴走させ、爆発させる兵器。威力はV1の比ではないらしいが、詳細は不明。


【タングラム】 
ベルカのある天才魔道師が、作り上げた時空因果律制御機構。任意の平行世界の事象をこの世界の事象と入れ替えるというシステムである。
すなわち、この世界を自由自在に再構築できる装置である。極端に言ってしまえば、運命を書き換えることが出来る。
ベルカ戦争勃発以前に開発、完成されたが、自我を持ち、戦争に使用されることに反発、虚数空間へと逃亡する。
実は、その前に1人の少女と出会っており、彼女の心に触れ優しさを知り、少女に力を貸すことを決意しているらしいが、詳細は不明。
なお、少女は現在行方不明となっている。


【少女・1】
タングラムにアクセスできる唯一の存在。ベルカ公国が探し続けていたが、結局見つからず。戦争勃発につき捜索は打ち切られる。
詳細は不明だが、かつてのベルカの有力貴族の娘らしい。なお、噂では1人の傭兵に恋をし、自身も傭兵になったとか…。

【シュトリゴン隊】 
時空航行艦【ケストレル】所属の航空部隊。管理局の中でも、トップエースの実力者が揃う精鋭であり、ベルカ戦争を戦い抜いてきた猛者達でもある。
特別な遊撃権限を所持し、要請を受ければ、陸・海・空、関わりなく行動できるのは、精鋭部隊ならではである。
現在の隊長は【ヴィクトル・ヴォイチェク】 副隊長は【ジン・ナガセ】


【戦闘結晶構造体・アジムとゲラン】
管理局が指定している第1種接触禁止目標。次元震等の発生で、時空が割れると何処からともなく出現する謎の敵。高い戦闘能力を持っているため、一般局員の接触は禁止されている。9年前のベルカ戦争の時も出現し、両陣営に多大な被害を与えるが、【円卓の鬼神】により、粉々に撃ち砕かれていた。

【ソラノカケラ】
メビウス・ランスロットが所有するレアスキル。
空から常に魔力が供給され続けるスキルであり、実質、魔力は無限である。
空を愛し、空に愛された彼に相応しいスキルである。



[21516] 1話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/08/28 12:27
さて…これはどういった状況なんだろうな。
俺は確か…何時もの様に日課のジョギングをしてて…あぁ…思い出した。車に轢かれそうになってた猫を助けたんだっけか。
そんで、猫は何とか掴んで投げる事は出来たんだけど…俺は轢かれたんだっけかね。2tトラックだったからなぁ…死んだか。
最後に猫が無事に走ってくるのが見えたから良いんだけどね。
しっかし…まぁ…死んだら普通は天国か地獄で決まりなんだろうが…
とりあえず、言っておくか。往年の名台詞。きっと言いたい人間は世界に数え切れないほど居るだろう。
いや、しゃべれないから取り合えず思うか。

(知らない天井だ。)
「貴方、!元気な男の娘ですよ、」
「おぉ…よくやってくれた…」
(まて、なんか知らんが漢字が違うと思うぞ?それは特定の趣味の奴らが使うのだっての!!??)



こうして俺は何時の間にか赤ん坊になってたというわけだ。簡単に言ってしまえば転生だな。
なんで冷静なのかって?…東京の満員電車に乗る男は痴漢冤罪対策の為に嫌でもこうなんだよ。
現状の確認だ。俺は帝 閃。厨二まっしぐらの名前だ。
なんか某少年誌の間接破壊の達人の親子の名前がくっついた感じがする。
ちなみに父親は帝 天。母親は帝 麗。ダンディーな父親と綺麗な母親と言うまさに理想的な両親だ。
転生者とは言え、俺が始めての子供。そして惜しげもなく愛情を注いでくれるこの二人。
俺は産まれて直ぐにこう決めた。本当の父さん、そして母さんと呼ぼう、と。当たり前のことだけどな。
んで、俺の産まれた所はミッドチルダは首都クラナガン。両親はそこの超大手企業の重役だ。
ちなみに、企業の名前はフレッシュリフォー。なんでも管理局からデバイス関連の開発等を請け負っている企業らしい。
あぁ、父親と母親は生粋の日本人らしい。移住してきたそうだからな。ちなみに俺も黒髪黒目。良き日本人の特徴を受け継いでいる。良かった良かった。
…さて、とりあえず…突っ込んでみるか。
まずは…ミッドチルダ?デバイス?そして管理局?ここはリリカルな世界な訳ですか!?どんな二次創作だよ!!??
自分の名前だけで滅茶苦茶、笑えんのにリリカルかよ!!??
そして次にフレッシュリフォー!!??待てよ!!??なんでVRの企業が出てくんだよ!!??
おかしいだろ!!??明らかに原作崩壊も良いところだよ!!??

「あら。閃が泣いてるわ。どうしたの~?」

いや、どうもしないんだけどね。母さん。
母さんの腕に抱かれながら再び俺は考える。
まずは後で俺の魔力要素を調べてもらうか。まだ先の話だが、もしかすると必要になるかもしれない。
そして次に情報収集だ。俺と言う存在とフレッシュリフォーの存在が一体、何を意味してるのかが気になる。
…まだ赤ん坊だから、ゆっくり色々と考えるか。
そんなことを考えていると時間はあっという間に進むわけで…
気が付けば6歳を目の前にしていた。

「閃君のランクはB-ですね。」
「ふむ…私達の子供にしては良いな、。」
「えぇ。けど、まさか閃が魔道師になりたいんだなんてね。」
「多くの子供が憧れる職業だからな。私も最初は憧れたものだよ。結局もランクが低くてどうにもならなかったがね。」
「けど、閃ならきっとなってくれますわ。」
「うむ。この子ならやってくれるだろう。」
「頑張るよ!!」
「はっはっは!!その調子だぞ閃!!」

とりあえず俺はフレッシュリフォーの施設でランクの測定を受けてみた。両親には魔道師になりたいといってね。
しかし…B-…微妙な所だな。可も無く不可もなく…といったところか。
聞くと父さんも母さんもCランク。結構、下のほうだ。
これから成長していくのか…はたまた、下がっていくのか…これは分からない。
次に俺はある提案を両親にしていた。
それは日本の海鳴市に住みたいという事だ。しかも両親がどっちも海鳴市出身ということがあり、疑われることも無くあっさりと引越しが出来た。
両親も本当の日本を知って欲しいと思ってたようで、渡りに船といったところだったようだ。
そして俺は6歳になり、海鳴市の私立聖祥大学付属小学校に通うことに成った。
ちなみに、俺が海鳴市に住みたいといった理由は簡単だ。
とりあえず、原作キャラ達を見てみたいという、本当に安易な理由だ。
けど、俺は自分から原作介入する気は毛頭ない。実際にB-で介入したら大怪我じゃすまないだろうし、何か歪みが生じる可能性があるからだ。
巻き込まれた際は必要最低限の抵抗はするが、それ以上はなにもしない。ひどい言い方だが俺は観客だ。
原作キャラ達が織り成す舞台劇を客席から見ている観客。原作介入して物語を曲げなければ、いい方向にも修正したりしない。
それに…それは俺の役割じゃないからだ。それを担う奴が居たからだよ。
そいつは誰かって?…俺が私立聖祥大学付属小学校に入学して、クラスを見ると原作キャラとは別のクラスになっていた。
とりあえず…この頃は魔法的要素は何も無いだろうから適当にすごそうと思ったが…
案の定、アリサ・バニングスが月村すずかを苛めてて、それをなのはが止めに入るわけだ。
これが三人の出会いな訳で…取っ組み合いの喧嘩を俺は遠くから眺めてただけなんだが…
そこで現れたんだよ。超ど級のイレギュラーが、二人も。

「なのちゃん!!喧嘩は駄目だよ!!」
「はっはー!!江戸の喧嘩は華だぜぇぇぇ!!」
「ふざけたこといってないで止めてよ!!バニングスさんの方を止めて!!」
「おう!!」

蒼い髪の美少年と灰色の髪の少年。
こんな奴ら原作には居なかったはずだが…そんな事を考えていると、蒼髪が間に入って喧嘩を止めた。ちなみに灰色髪はアリサを羽交い絞めにして抑えてる。
お、灰色髪の足にアリサの踵が突き刺さってる。滅茶苦茶、痛そうにしてんな。
ちなみにすずかは泣きながらオロオロしてる。


「なのちゃん、イキナリ喧嘩したら駄目でしょ?」
「だって、この子がいじめてたから…」
「うん。苛めは確かによくないけど…なのちゃんまで暴力を使ったら駄目でしょう?まずはお話して止めてっていわないと。」
「うぅ…けど…」
「私はなのちゃんの事を心配していってるんだよ?それになのちゃんが怪我したら士郎さんや桃子さんも悲しむでしょ?
もちろん、私だって悲しいよ?」
「…」
「それはバニングスさんも同じ。だから、ね?最初はお話しよう?」
「……うん。」
「うん。なのちゃんはいい子だね。」

そう言いながら蒼髪はなのはの頭を撫でる訳で…ナデポかよ…
いや…違うな。既に堕ちてるな…。
そして一人称が私…明らかに俺以上の厨二である事は間違いないな。
結局、蒼髪と灰色髪の介入で、喧嘩は終わり、三人は最初こそギクシャクしていたが、意気投合し、親友になった。
そして、当然、俺は疑問に思ったよ。あの二人は何者なんだろうなって。しかし介入しないと決めた手前、あまり行動を起こしたくない。
植物のように平穏な生活を送りたい、と、どこぞの手フェチ殺人鬼みたいな事を考えながら1年、2年と過ごしたよ。
そして…二人を知る機会が3年に上がって訪れた。
なのは・アリサ・すずかと同じクラスになって、下手すると巻き込まれるかなぁ、と考えながら、クラス名簿を見ると…流石に、俺も驚いたよ。
何度も何度も何度も見直して…確信したよ。
良く考えると納得できる。ミッドにも【あそこ】と同じ地名がある。
そして分かったよ。やっぱり俺は脇役でよかったってな。俺は主人公じゃない、そして目指さなくて良かったってな。
苗字が不安だが…きっとこの二人なら良い方向に原作を修正することも出来るだろう。いや、絶対に出来るはずだ。
そう思いながら過ごしていると…あの二人と気が付けば友人と呼べる仲になった。
原作介入はしないと言う俺の意志はどこへやら、巻き込まれるみたいだが…俺は決めたんだよ。
脇役になるってな。主人公達を支える脇役、情報提供する村人クラスでも良いからな。
そして…今日も俺は教室に入ってきた蒼髪と灰色髪の友人に挨拶をする。

「おはよう。閃。」
「お~す。閃!!」
「あぁ。おはよう、メビウス、オメガ。」


なんたって…リボンの英雄と究極の11がこの世界には居るんだからな。
こいつらが居る時点で…主人公は決まってるだろう?







帝 閃
転生者その1。
友人ポジション。
生前は普通の大学生。
原作知識あり、野心なし。純正日本人の見た目。







[21516] 2話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/08/28 12:28
♪~♪~♪」

朝のキッチンで朝食を作る一人の女性。外見は若々しい、というより童顔である。
かもし出す雰囲気はのほほんと言うか、ぽややんである。
可愛らしい犬がプリントされているエプロンをつけている。
フライパンの上ではウィンナーがこんがりと焼け、それを目玉焼きの乗った皿に移していく。
彼女の名前はサイファー・ランスロット。外見からは想像できないが、これでも1児の母である。

「これで良いかな~♪。フェイス~。ご飯できたよ~。」

外見と同じくらいの幼い声。ぽややんとした雰囲気がまさにマッチしている。
リビングを見ると、新聞を読んでいた男性が居た。
彼の名前はスカーフェイス・ランスロット。この家の主であり、サイファーの夫である。
名前の如く、左のこめかみから右頬に掛けて顔を縦断する大きな傷跡の在る精悍な顔。だが、厳ついと言うわけでもない。
こちらも若々しい外見をしている。

「ん?そうか。」

読んでいた新聞を畳み、サイファーが作った朝食をリビングのテーブルに運んでいく。
狐色に焼けたトースト、こんがりと焼けたウィンナー等、とても美味しそうだ。

「そろそろ、あの子を起こさないとね~。」
「珍しいな、寝坊か?」
「昨日の夜に、また空を見てたのよ。」

サイファーは笑顔で2階に通じる階段を見る。スカーフェイスも苦笑いを浮かべながらトーストにジャムを塗っていく。
すると、階段から聞こえてくる足音は、子供らしい軽い足音と、4本足で歩く動物の足音だ。

「おはよう~…父さん、母さん。」
「ふふ。早く顔洗ってきなさい。」
「ほら、トーストに塗るのはなにが良い?」
「ブルーベリー…」

階段から降りてきたのは一人の少年。少し長めの髪を蒼いリボンで止めていた。
まだ、眠いのか眼をこすりなら洗面所に向かっていく。
そんな少年の足元に居るのは一匹の大型犬。見た目はドーベルマンなのだが、何故か毛が赤い。
少年は私立聖祥大附属小学校の制服を着ているところを見ると、そこの生徒なのだろう。
首には蒼いクリスタルで出来た剣の形をしたペンダントが輝いている。
洗面所から水の流れる音と、そしてパシャパシャという音が聞こえてきた。
数分ほどで、少年が戻ってきた。顔を洗ってスッキリしたのかも先程までの眠そうな気配は無い。
そのまま両親が待つテーブルに向かい、自分の席に座る。
犬も少年の足元に座り、大人しくしていた。

「ふう、スッキリした。」
「ほら、冷めないうちに食べましょう~。」
「ほぉ…?今日は珍しく失敗してないようだな。」
「そんな…それじゃ、私のお料理は何時も失敗するみたいじゃないのよ~」
「私は…母さんのお料理好きだよ?」
「ああもう。メビウスちゃんは可愛いわねぇ♪」

そう言うとサイファーは少年をぎゅうっと抱きしめる。
少年の名前はメビウス・ランスロット。スカーフェイスとサイファーの息子である。
ちなみに蒼いリボンはサイファーの趣味で、どうやら可愛い物が大好きなようである。
そして男子なのに一人称が「私」と言うのも確実に彼女の教育の賜物だ。
彼女だけでなく、メビウス自身疑問に思っていないあたり、尚更始末が悪い。

「母さん…苦しい…」
「サイファー。離してやれ。時間が迫ってるんだぞ。」
「あら?もうそんな時間?」

スカーフェイスが苦笑しながら、時計を指差す。確かに、メビウスが家を出る時間が迫ってきていた。
サイファーの抱擁から開放されたメビウスも朝食を再開し、トーストを食べていく。
そして食べ終わると直ぐに歯を磨き、鞄を持った。若干、寝癖が付いているが…

「それじゃ、父さん、母さん。行って来きます。」
「あ…メビウスちゃん、待ちなさい。」
「?」

リビングから出て行こうとするメビウスをサイファーが呼び止める。
そしてサイファーがメビウスに近づき、目線の高さまでしゃがむ。

「良いわね。絶対に危ない事したらだめよ?」
「え?…分かったけど…?」
「ふふ…それじゃ、いってらっしゃい♪」

軽くメビウスの頭を撫でて見送るサイファー。
そして、少し疑問に思いながらも元気に家を出て行くメビウスとその後を追う大型犬。
玄関が閉じると同時にサイファーは少し寂しそうな表情をする。何時もニコニコしてる彼女の顔とは大違いだった。
スカーフェイスも難しそうな顔をしてメビウスの背中を見ていた。そして二人してポツリと呟く。

「無理だろうな。」
「えぇ。無理でしょうね。」
「メビウスは…俺達の息子…だからな。まぁ…大丈夫だろう。」
「えぇ…自慢の息子ですものね。」
「あぁ。自慢の息子だからな。」


メビウス

「さあ。ガルム!行くよ。」

家を出た私は何時もの様に後を付いてくるガルムに声をかける。
赤い毛が特徴的な私の家族。声を掛けても鳴くことはしないけど、充分気持ちは伝わる。
静かに私の横に並んで一緒に歩き始める。リード等は付けないんだ。だって、そんな物を付けなくてもガルムは私の言う事を聞いてくれるからね。

「今日も良い天気になると良いねぇ。」

ガルムに話し掛けながら、私は通学路を歩いていく。
途中からバスに乗らなければいけないんだけど、その前に少し寄っていく所がある。
私の両親はアクセサリーショップ【アヴァロン】と言うお店を経営してるんだ。
その近くの【翠屋】と言う喫茶店を経営してる高町さんとは、家も近所と言うことでとても仲良くしてもらっている。
そして、高町家の次女であり、幼馴染の女の子、なのちゃんを迎えに行くのが私の日課。
ちなみに「なのちゃん」と言うのは愛称。本当は「なのは」と言う名前なんだけどね。

「そうそう。今日の夜、出かけるよ。ガルムも一緒にね。」
「?」

そう言うとガルムが不思議そうに私の顔を見る。え?表情の違い?家族なんだから分かって当然でしょ?それにガルムは唯の犬じゃないんだしね。
そんな事は良いとして、確かに、私みたいな子供が夜に出かけるのは感心できないだろうけど、もう父さんや母さんには許可を取ってあるんだ。
まぁ…色々と条件も出されちゃったけど…

「前々から計画してたでしょ?天体観測をするんだ。」

ガルムが納得したように頷く。軽く首を上下に動かしただけなんだけどね。
私は前々から天体観測をしたいと言っていたし、計画も立てていたのを知っているからだね。
既に私の頭の中も今日の夜の天体観測のことで一杯だ。
私は空がとても好きなんだ。広く広く綺麗な空。何時も包み込んでくれる青い空は私は大好き。
…っと、何時までも空を見てる訳にはいかないよね。はやく迎えにいかないと…
鞄をしっかりと持って、少し歩くスピードを速める私。
5分ほど歩くと目的の高町さんの家が見えてくる。何時ものようにドアの呼び鈴を鳴らして出てくるのを待つ。
すると、中からパタパタと足音が聞こえてきて、ドアを開けてくれる。

「あら?メビウス君。おはよう。」
「あはようございます。桃子さん。なのちゃんの事、迎えに着ました。」
「何時もありがとう。少し待っててね、呼んでくるから。なのは、メビウス君が来たわよ。」

出てきたのは桃子さん。とても若く見えるんだけど、なのちゃんのお母さんだ。
桃子さんがなのちゃんを呼びに言ってる間、私は何時ものように玄関の前で待っている。ガルムも大人しく私の隣で座っている。

「あ…少し寝癖が付いてる…」

少し慌ててたからなぁ…手櫛で治るかな…?
そんな事を考えながら、待っていると聞こえてくるなのちゃんの声なんだけど…なんだか慌ててる。

「め…メビウス君!!少し待っててね!」
「うん。待ってるから、慌てないでね。」
「ぜ…絶対だよ!絶対だよ!!」
「ほら、なのは。寝癖寝癖。」
「にゃ!?何処どこ!?」

桃子さんとなのちゃんの声が聞こえてくるんだけど…大丈夫かな?
そんな声を聞いて待つと制服を着たなのちゃんと桃子さんが奥から出てきた。

(なのちゃん…寝癖…治ってないよ。)

私はそう思いながら笑いそうになるのを我慢する。だって私だって寝癖がついてるしね。

「おはようメビウス君!」
「うん。おはようなのちゃん。あ…なのちゃん、少しいいかな?後ろ向いて。」
「にゃ?良いけど…?」

そう言うと私はなのちゃんの頭、正確にはリボンに手を伸ばす。少し曲がってるなぁ…一度解いたほうが良いかな?
なのちゃんのリボンを解いて、髪も手櫛で整えていく。

「め…メビウス君!?」
「あ、動いちゃダメ。ほら、ジッとしてて。」
「あうぅぅ…うん…」

髪を整えて…なのちゃんの髪の毛サラサラだなぁ、綺麗な栗色だし…桃子さん譲りなのかな?
リボンもしっかりと結んで…よし、出来た。うん、我ながら上出来だ。

「はい。もう良いよ。」
「あ…ありがとう…」

振り返ったなのちゃんの顔は真っ赤になってる。恥ずかしかったのかな…悪いことしちゃったかなぁ…?
桃子さんは桃子さんで笑顔だし…なんだろう?
するとガルムが私の足に長い尻尾を当ててくる。何か言いたい時のガルムの癖だ。

「どうしたの?ガルム。」
「…」

ガルムは無言で私の左腕に視線を注ぐ。正確には腕時計かな?
あ…何時の間にか時間がたってたんだ。少し急がないとダメかな?

「…あっ!なのちゃん、そろそろバス来る時間だよ。」
「にゃ!?それじゃ急がないと。それじゃ行ってきます!」
「はい、いってらっしゃい。メビウス君もね。」
「桃子さん、いってきます。ガルム行くよ。」

桃子さんに挨拶をしながら、なのちゃんと一緒に迎えのバスが来る所まで歩き始める。
途中で今日の授業、テレビ番組のこと、宿題の事なんかを話しながら二人で歩いていく。

「メビウス君。さっきはなにしてたの?」
「さっきって?」
「ほら…私の髪、触ってたから…」
「ん~。リボンが少し曲がってたんだよね。」
「え?そうだったの?」
「うん。けど、なのちゃんの髪の毛ってサラサラで綺麗だよねぇ。」
「あ…ありがとう。けどメビウス君の髪も綺麗だよ?」
「そうかな?」
「うん。なんて言うんだろう。宝石みたい?」
「宝石って…」

私は少し自分の髪を触ってみる。母さん譲りのストレートヘアーで少し蒼いんだ。確かに不思議な感じのする髪の毛。
けど、私はこの髪も大好き。理由は勿論、空と同じ色だからかな。
そんな事を話しながら私となのちゃんはバス停まで歩いていく。
既にバス停には私となのちゃんの共通の友達である、アリサちゃんとすずかちゃんが待っていた。
本当はもう1人居るはずなんだけど…何時もの如く寝坊かなぁ。

「おはよう。すずかちゃん、アリサちゃん。」
「おはよう、二人とも。」
「なのはちゃん。メビウス君。おはよう。」
「うん、おはよう。…何時もの如く…あいつは寝坊…?」

私は辺りを見渡しながら、先に来ていた二人に聞く。可能性は天文学的だろうけど…
すると、案の定、アリサちゃんが、呆れたようにしてるし、すずかちゃんも困ったように笑ってる。

「…まぁ…パターンだね。」
「分かってるなら聞かないでよ。…メビウス、あいつの親友なんでしょ?なんとかしなさいよ。」
「ん~。無理じゃないかなぁ…だって…あいつだよ…?」
「…確かに。」
「にゃははは…」

私とアリサちゃんが顔を見合わせて溜め息をつき、なのちゃんも苦笑いを浮かべている。
すずかちゃんはと言うと…

「おはよう。ガルム君。」
「……」

私の隣に座っているガルムを笑顔で撫でている。猫が好きだと言ってたけど…動物全般が好きなのかもね。
ガルムはガルムで気持ち良さそうにしたら良いのに…クールな表情のまま。
まぁ…すずかちゃんが嬉しそうだから良いかな…?
あ…よく見ると尻尾が少し揺れてる。素直じゃないんだから。
そうしていると送迎のバスがやってきた。何時ものように私達4人は一番後ろの座席に座る。ガルムとはここでお別れ。流石に学校までは一緒に行けないからね。
バスの扉が閉まり、走り出すと同時に曲がり角から走って追いかけてくる男子が居た。

「今日も今日で…走ってるわね。」
「にゃはは。懲りないよね。」
「大丈夫かな…?」
「えっと…タオルとドリンクは何処にしまったかな?」

後ろから走ってくる男子を見ている三人。私は鞄の中に入れてあるドリンクとタオルを取り出して準備をしている。
200m位走ってバスが一時停車し、扉を開ける。走ってきた男子は息を切らせながらも私達の居る座席へと歩いてき、そのまま座る。

「ぜーぜー…はーはー…今日も…走ったぜ…!!」
「お疲れ様、オメガ。はい、ドリンクとタオル。」
「サンキュー。メビウス…」

私が手渡したドリンクとタオルを受け取り、一気飲みをする男子。
名前はオメガ・ガウェイン。私の親友。
そして、オメガかバスに乗り遅れそうになるのは日常茶飯事。
だからこうして私が毎日、ドリンクとタオルを持参しているんだ。

「それで?今日はなんで遅れたの?」
「いやな…昨日の夜の【奇跡の大脱出24時】を最後まで見てたら寝坊してよ…」
「あんた…学習能力ないわね…」
「にゃにおう!漢のロマンを見ずして何を見ろってんだ!!」
「録画して後で見なさいよ!」
「勿論、録画して後でもう一回見るぜ!!」
「うわぁ…オメガ君…何回見る気なんだろう。」

毎度おなじみの口げんかをしてみせるアリサちゃんとオメガ。
私やなのちゃん達は何時もの様に苦笑いしながら、その光景を見ている。
オメガは何故か脱出系が大好きであり、そういうもののマニアでもある。
もしかすると父親のチャーリーさんの影響なのかもしれない。
チャーリーさんは警官で、私の父さんやなのちゃんのお父さんの士郎さんと良くお酒などを飲みに行っている。
詳しくは知らないけど、父さんとチャーリーさんは昔、一緒に働いてたそうで、その後で士郎さんとも仕事を一緒にしたみたい。
なんのお仕事かは私も知らないんだけどね。

「そう言えば、今日、転校生が来るんだよね?」
「あ~…そうだっけか?全然覚えてねぇや。」
「昨日のホームルームで先生が言ってたよ。」
「ちっちっち。なのは。発音が違うぜ?Homeroomだ。」
「わぁ。オメガ君って英語上手だよね。」
「はっはー!!照れるぜ!!なのはぁ!!」
「…さっきまでぜーぜー言ってたのに、元気だよねオメガ君。」
「まぁ…元気だけが取り柄のオメガだからね。」

そう言いながら私は鞄にタオルを仕舞う。
けど…転校生かぁ…閃もなにかしってるのかな?
そんな事を考えながら私達を乗せたバスは学校へと向かっていった。









メビウス・ランスロット
本作主人公。
一人称、私&美少年と言う王道厨二キャラ。
ナデポニコポ搭載。


オメガ・ガウェイン
親友ポジション。そしてネタキャラ。
一直線馬鹿。勉強が出来ない馬鹿ではない。
クラスに一人は居た&居て欲しい馬鹿。


あとがき。
男の子が女の子の髪を梳く場面って…萌えませんか?
そして一人称の難しさを感じた今日この頃…




[21516] 3話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/08/30 00:24
くくくく……ははは…
はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!
僕は…僕は選ばれた…選ばれたんだ…!!!
僕の名前はシルヴァリオス・ゴッデンシュタイナー。ミッドにある超名門一族の跡取りだ。
そして…選ばれた存在!!
くくく…この世界は僕を望んだ!!だから僕は生まれ変わったんだ!!
鏡を見ると金髪碧眼の少年。そう…僕だ!!!まるで物語の主人公みたいじゃないか!!
いや!!僕こそが主人公なんだ!!そう!!このリリカルなのはの世界の!!
うるさい親も僕をゴミを見るような眼で見てたクラスの馬鹿共はこの世界には居ない!!
屋敷に居るのは僕の言いなりになる人間だけだ…!!そして僕を生んだ両親と言う、男と女は屋敷に殆ど居ない…。全て僕のものだ!!
そしてこの世界には僕が愛している高町なのはが居る!!最高じゃないか!!はははははははは!!!!!!!!きっとなのはは僕を待っているんだ。きっと僕を見た瞬間に僕の物になるんだ…!!
フェイトなんて人造の化け物や、はやてなんて犯罪者からも僕が護るんだ…!!
それが僕には出来る…僕は原作を知っている!!そして何より僕の魔力はAランクだ!!全ては僕に高町なのはを手に入れろと言う事に違いない!!
この年でAなら間違いなくS以上には成長するだろう!!フェイトとか言う化け物は人造だからAAAだそうだが…僕の前にひれ伏すさ。


「これから、第97管理外世界の日本に行くぞ。」
「は?なにをなさりに?」
「海鳴市の私立聖祥大学付属小学校に転入する。準備しろ。」
「し…しかし、坊ちゃま。こちらの学校は…」
「やめる。つべこべ言わず準備しろ!!クビにされたいのか?」
「は…はい!!ただいま!!」

ちっ…使えない使用人だ。僕のなのはが事件に巻き込まれるだろうが…
私立聖祥大学付属小学校に転入して…直ぐになのはは僕に惚れるだろうな。さぁ…待っててね。直ぐに僕の物にしてあげる…
…さぁ!!始めようか!!僕となのはの為の物語を!!!くくくくく…はははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!






「おはよう。閃。」
「お~す。閃。」
「あぁ、おはよう。メビウス、オメガ。」

先に自家用車で着ていた閃は自分の席で本を読んでいた。
閃とは3年生になって初めて話したんだけど、直ぐに仲良くなった。
ちなみに席替えでなのちゃん達とオメガ、閃と近くの席にしたんだ。
もちろん、空の見える窓際だけどね。
閃は私にとってオメガと同じくらい大切な友人。いや、親友だ。
なのちゃん達も自分の席でお話をしている。

「なぁなぁ。閃、お前も奇跡の大脱出24時は見たよな?」
「見てねぇっての。お前…本当に好きだな。」
「なんだよ~。閃も見てないのかよ~。」
「お前と違って脱出マニアじゃないんだよ。メビウスは?」
「私?私は…夜空を見てたかなぁ。」
「お前は空マニアかよ。」

そう言いながら閃は飽きれたように読んでいた本を閉じる。
空マニアって…ひどいなぁ。空は一瞬たりとも同じ表情見せないのに…

「脱出マニアに空マニアか。」
「んで、閃は本マニアか?」
「なんでそうなんだよ?」
「いや、授業中だって本見てるしよ。」
「当たり前だろ!!教科書見るだろ!?それで本マニアにされたらたまんねぇよ!!
全校生徒が本マニアになんだろ!!」
「ちっちっち!!俺は教科書なんて見ないぜ!!The textbook is not seenだぜ!!」
「見ろよ!!勉強しろよ!!」
「オメガ…自慢する事じゃないよ。」
「お前はなんの為に学校に来てんだよ…」
「もちろん!!purpose is to play soccerだ!!」
「とりあえず…お前は根本的な所から俺達とは違うようだな。」
「まぁ…オメガが勉強してたら…変だよね。」

自信満々に答えるオメガに呆れる閃と私。
まあ、オメガはサッカーが大好きで、士郎さんがオーナーをしているサッカーチーム翠屋JFCに所属しているしね。
ちなみに番号は11番。なんでもオメガか一番好きな番号で、チャーリーさんも現役当時は11番だったそうだ。
なんの現役から教えてくれなかったけど…ちなみに私も頻繁に誘われるけど…私はどっちかと言うとバスケット派だからなぁ。

「そういえば、閃。今日、転校生来るらしいんだけどよ。なんか知らないか?」
「あ~…海外から来るそうだな。…なんで俺に聞くんだ?」
「鳴海の情報は全て閃が操作してるって言う噂が。」
「んな根も葉もない噂流したの誰だよ!?小学3年にできることかよ!?」
「根も葉もない噂を流したのは俺だ。」
「オメガぁあぁぁぁぁ!!!!!!」

何時もの様にオメガが馬鹿な事を言って閃を怒らせる。ちなみにオメガには自覚がないから余計に質が悪い。
私は取っ組み合いを始めるオメガと閃を見ながら自分の席に荷物を置く。
止めないのかって?二人の顔を見れば止めなくても大丈夫。だって笑っているからね。
日課になっててお互いに楽しんでいるんだよ。
さて、教科書を仕舞わないとね。
鞄から教科書を取り出しているとなのちゃんが私に声をかけてきた。

「あ…ねぇねぇ、メビウス君。」
「ん?どうしたのなのちゃん?」
「えっとさ。まだ朝だけど…お昼一緒に食べようね。」
「うん。良いよ。けど…もうおなか減ったの?」
「ち、違うもん!!」
「ふふ。冗談だよ。一緒にご飯食べようね。」
「うん!絶対だよ!!」

そう言いながらなのちゃんは自分の席に戻っていった。けどお昼かぁ。気が早いと思うんだと…
あ、なんだか私も楽しみになってきた。おっと…チャイムが鳴ってるし…とりあえず、まだ取っ組み合いしてる二人を席に着かせないと。



・閃・

「と言う訳で、ご両親のお仕事の都合で新しくクラスの一員になるシルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー君です。みんな、仲良くね。」
「シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナーです。よろしくお願いします。」

そう言いながら頭を下げる転校生、シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー。…舌噛みそう…
しかし…ゴッデンシュタイナー…ねぇ。俺の知る限りじゃ…原作に一瞬たりとも出てきてないな…
となると…こいつもオリジナルって事か?いや…けど、メビウス達みたいにACE COMBAT系統のキャラでもないだろ…?
VR世界の人間か…?
いや…待てよ。ゴッデンシュタイナー…ゴッデンシュタイナー…。思い出したぞ。名門ゴッデンシュタイナー一族か…。
ミッドの情報ももちろん、俺の耳にも入ってくる。それに両親もこちらに一緒に暮らしているからミッドの新聞も取り寄せている。
そしてゴッデンシュタイナーと言えばミッドの名門にして管理局と密接な繋がりを持つ一族のはずだ。

(つまり、あいつはそこの御曹司と言うわけか…なのになんで鳴海に?)

そう思いながら俺はシルヴァリアスの顔を見る。整った顔で金髪碧眼。まぁ…モテる要素満載だな。普通の学校ならな。
残念なことにこの学校にはメビウス・ランスロットと言う厨二満載の美少年がいるからなぁ…あいつでも無理だろうな。

(…っ…おいおい、なんか…寒気が…)

シルヴァリアスと一瞬だけ眼があったが背中に寒気が走った。転生者の勘は知らないが…あいつはやばい。
確実に…悪い方向に持っていく。なぜだか知らないが、そんな予感が俺の中に生まれた。それに…ほんの一瞬…ほんの一瞬だ…
なのはを見た奴の顔が…哂いやがった…。

「それじゃ…シルヴァリアスはあそこに座ってね。」
「はい。」

そう言って先生が指差したのはなのはと正反対の席。つまり俺とも離れている所だ。
…原作には無いゴッデンシュタイナー一族、そこの御曹司にして不可解なな転校…そしてなのはを見た嫌らしい哂い…
俺の中で仮説が立てられていった。

(奴も…転生者…?)

そう思いながら俺はシルヴァリアスを見るのだった。


・メビウス・

「メビウス君!一緒にごはん食べよ!!」
「はは、慌てないで。けど、私は当番だから黒板の掃除してるから、先に行ってて。」


午前の授業も終わり、お昼時間になって直ぐになのちゃんが私の席に走ってくる。
近くなんだから走らなくても良いのになぁ。
そう思いながら私も鞄からお弁当箱を取り出して、机の上に置く。

「だいじょうぶ、待ってるよ。」
「そう?ごめんね」
「うぅん…その…一緒に行きたいもん…」
「え?なにか言った?」
「な…なんでもないよ?本当だよ?」
「?」

私は当番だから黒板に書いてある文章を消すから後で向かうんだけど…なのちゃんは待っててくれてるみたい
オメガ達やアリサちゃん達は何時もご飯を食べている屋上に向かっていった。
ふっとなのちゃんの席に視線を向けるとシルヴァリアス君が近づいていく。


「ねぇ。高町さん。」
「は…はい?なに?シル…ヴァリアス君?あれ?なんで私の名前…」
「はは、名札を見たんだよ。あと名前は言いにくいなら、シルバーって呼んで。
僕もそう呼ばれたいから。それで一緒にお昼はどうかな?」
「え?お昼ご飯?」
「うん。一緒に食べようよ。」
「あ…えっと…」

なのちゃんが私が困ったように私の方を見る。
優しいからなぁ…断れないのかな。なのちゃんは優しくてとても明るい。だからか、時々無理をする事がある。
私が止めないと大変なときもあるからなぁ。
よし黒板も掃除したし…私は、なのちゃん達の方に歩いていく。

「なのちゃん。」
「あ…メビウス君。」
「…君は?」
「私の名前はメビウス・ランスロット。よろしく。」
「ふ~ん。で?高町さんになにか用事?」
「前から、なのちゃんとご飯を食べる約束をしてたから、呼びに来たんだ。」
「…高町さんそうなの?」

一瞬、シルヴァリアス君の眼が鋭きなった気がするけど……
問いかけられたなのちゃんは何故か私の後ろに回ってコクコクと頷いている。
ちょっと可愛いかも…って、なんでこんな怯えてるんだろう?

「シルヴァリアス君も一緒にどう?」
「…もういいよ。。それじゃ。」

短くそう言うとシルヴァリアス君は自分の席に戻っていった。折角、仲良くなれるチャンスだと思ったのになぁ。
けど、直ぐに他のクラスメイト達がお昼に誘って一緒に食べるみたいだけど…何故か私を睨んでるような感じがする。
なにか怒らせるようなことしたかな…。

「メビウス君…」
「っと?どうしたのなのちゃん?」

シルヴァリアス君が居なくなって、すぐになのちゃんが私の背中にギュッとしがみ付く。
小さい頃から一緒に居て、恐いことがあったり、甘えたりする時にこうするんだけど…どうしたんだろう?
戸惑いながらも私はなのちゃんが落ち着くまで、そのままでいた。

「うぅん…なんでもないよ。」
「そう?それじゃ、屋上に行こう。」
「あ…うん!!」

そうして私はなのちゃんと手を繋いで、一緒に屋上に向かった。

(メビウス君の手、柔らかくてあったかいなぁ…うれしい…)
(……メビウス…ランスロット…僕の邪魔をするのか…!!!!!)




屋上に着くと先に来ていたオメガ達がお弁当を広げて待っていた。
何時もの場所に何時ものメンバー。周りを見ると他の学年の生徒達もちらほらと見える。
私となのちゃんも並んで座り、お弁当の蓋を開ける。

「あ~…腹減った!!遅いぜ、メビウス~。」
「ごめんごめん。さあ、食べよう。」
「オメガ君、毎回毎回、朝に走ってればお腹も減るよ。」
「これでも丼3杯は食べてんだけどなぁ。」
「あんた…そんなに食べて、よくあんなに走れるわね…」
「いや、5杯はいけんだけどな。すずかもどうだ?」
「そ…そんなに食べたら太っちゃうよ…」
「その栄養を頭に回せ。」

すずかちゃんが驚いたようにして眼を丸くしてる。閃は閃で呆れたようにしてる。
まぁ…確かにオメガは沢山食べるからなぁ…。けど、オメガってこんなのだけど頭は悪くないんだよね。
そんな事を考えながら私はなのちゃんに視線を移す。
さっき、何かの怯えてたみたいだけど…今は大丈夫みたいで安心する。

「そう言えば…今日の授業でさ、将来の夢ってあったよね。」
「あぁ。あったなぁ…アリサ達は親の跡を継ぐのか?」
「そうなるわね。だからきちんと勉強しないと。」
「うん。私もかな。けど、やりたい事があったらそれをやっても良いっては言われてるよ。閃君は?」
「俺?…あ~…俺もアリサ達と似たようなものかなぁ。メビウス達はどうなんだよ?」
「もちろん!!俺は警官だぜ!!」
「チャーリーさんと同じか。まぁ…体力馬鹿のお前には向いてるな。」
「なのははどうするの?翠屋を継ぐの?」
「え?私?う…う~ん。そうなるのかな?けど、お菓子作りとか好きだし…。あっ、メビウス君は?メビウス君はどんなお仕事するの?」
「私は…空関係の仕事が良いな。」
「空?」
「うん。」

そう言いながら私は青空を見上げる。
何故か分からないけど…空が私を呼んでいる気がするから。だから私は空が好きなのかもしれない。

「まぁ…メビウスは空マニアだからな。」
「けど…メビウス君には似合ってる気がするよ?」
「ありがとう。けど、なのちゃんが翠屋を継ぐのかぁ。」
「え…変…かな?」
「いやいや、前のなのちゃんの作ったクッキーがおいしかったからね。」
「ほ…本当!?」
「うん。また食べたねぇ。きっとなのちゃんは素敵なパティシエになれるよ。」
「そ…それならまた作るね!!また…食べてね?」
「おいおい…メビウス、独り占めはよくないぜ?」
「なのはちゃんのクッキー。私も食べてみたいかも…」
「うん!!オメガ君やすずかちゃんも…皆の分、がんばって作る!!」

なのちゃんが張り切ったようにして言うのを私は笑いながら見つめる。
うん、やっぱりなのちゃんは笑顔が一番。誰よりも一生懸命な彼女にはとても似合う。



放課後

「よっしゃぁぁ!!今日の授業も終わった!!I will play soccer in all members!!!」
「オメガ!!今日こそは負けねぇぞ!!」
「掃除当番は掃除してから来いよ!!校庭にLet's go!!」

そう言うとオメガを筆頭に男子生徒達は校庭へと走っていく。
掃除当番はしっかりと残っている辺り、オメガの指導力の賜物なのかもね。
いい意味で底抜けの馬鹿のオメガはクラスでも人気があるからなぁ。
なのちゃん達は今日は塾があるみたいで先に帰ったみたいだし…私も今日は早く帰ろうかな。
夜になる前に天体観測の準備をして、海鳴臨海公園に向かうから急がないと。

「ん?メビウス、もう帰るのか?」
「今日は用事があるから…閃は?」
「俺は向かえ待ちだな。あと5分くらいで来るから、乗っけていこうか?」
「良いの?それじゃ、お願いするよ。」
「あいよ。っと…噂をすれば来た様だな。行こう。」

閃の家の車に乗せてもらうのは久々のような気がする。
何時もはなのちゃんやオメガと歩いて帰るんだけど、今日は一人だからなぁ。
車と言ってもアリサちゃんのようなリムジンではなくて、普通の乗用車。
閃は中心街のマンションに住んでいる。特別、通り道と言うわけでもないけど、遠回りでもないからこうして乗せてもらう事ができるんだろうね。
車内では今日の授業の内容や、シルヴァリアス君の事を話したけど、なんでか閃はいい顔をしない。
まぁ…私も少しだけとシルヴァリアス君に良い印象は持っていない。なんだか…いやな感じがするんだけど…勝手に決め付けるのはよくないかな。
そんな感じの事を話したり考えていると私の家の前に着く。

「それじゃ、また明日な。」
「うん。ありがとう。また明日。」

閃と挨拶を交わして、家の中に入る。この時間帯は両親はお店の方に行っていて家には居ない。
玄関の鍵を開けて中に入ると何時ものようにガルムが出迎えてくれた。

「ただいま。ガルム。」
「おかえりなさいませ。メビウス様」

ガルムから男の人の声が聞こえてくる。けど、私は驚きはしない。
だってガルムは私と契約を交わした使い魔なんだからね。
私は制服のボタンを外しながら自分の部屋に向かう。ガルムも後を追いかけてくる。

「さて。準備していかないと…」
「既に我が準備をしておきました。何時でも出発できます。」
「ありがとう、ガルム。助かったよ。それじゃ…軽く何かたべて行こうかな。」
「キッチンにコーンフレークを準備してあります。そちらを召し上がってください。」
「…本当に気が効くね。」
「メビウス様の為ですので。」

そう言うとガルムは誇らしげそうに顔を上げる。
本当にガルムは私に良くしてくれる。こうして色々と準備がしてくれるんだけど…なんだか申し訳ない気持ちになるなぁ。
そう思いながら着替えてキッチンに向かうとガラスの器に入ったコーンフレークを見つける。
食べている間はガルムは寝そべって待っているたけど、食べ終わる頃にはキッチンから出て行って何かをしていた。

「ガルム~?そろそろ行くよ。」
「はい。重い荷物は我が持ちますので…メビウス様はそちらの携帯ラジオ等を。」

玄関に行けばガルムが変身していた。黒いジャケットに黒いジーパン。そして紅い髪の細身の成人男性。
これがガルムの人間形態なんだよね。これなら小学生である私が夜に出歩いても、ガルムが一緒なら保護者として多少は大目に見られるからね。
ガルムが望遠鏡や毛布を、私はラジオや小さいシートを詰めたリュックを背負う。まだ春とは言え、夜は冷えるからね、毛布は絶対に必要なんだ。

「車で向かいますか?」
「ううん。時間もあるし歩いていこう。10時前には終わりにするからね。」
「仰せのままに…」

こうして、私とガルムは歩いて海鳴臨海公園に向かう。
結構、ガルムは重い荷物を持っているんだけど、息切れをしない。流石に体力あるなぁ。
私もばてないようにしないと…


海鳴臨海公園

「さて…付いたね。」
「はい。多少は時間がかかりましたが…現在6時30分頃ですね。」
「うん。空も暗くなり始めてきたし…セットしようか。」
「はい。場所は何処にいたしますか?」
「やっぱり展望台辺りだね。」
「了解しました。我が準備しておきますのでメビウス様はお身体をおやすめください。」
「別にそこまでしなくてもいいからさ。私も準備するよ。」

私は小さく苦笑しながら展望台に向かう。流石にガルムにそこまでさせたらまずいからね。
ガルムは少し慌てながら私の後を着いてくる。展望台は…あっちだね。
展望台に行こうとして顔を上げると…大きな爪があった。…なんで?

「…え゛?」
「メビウス様!!??」

爪が地面に振り下ろされて…衝撃で私は吹き飛んだ。
けど、地面に激突するかと言うところでガルムが受け止めてくれて怪我はなかったんだけど…

「な…なんだ…こいつは…」
「…犬…?」
「グルルルル…」

そこには体長5mはある黒い犬が居た。けど…明らかに普通じゃない。
大きな爪に長い二本の尻尾、そして…眼が狂気そのものの色をしている…!!
眼をぎらつかせながら、口から涎を垂らしている。しかも、その涎が垂れた瞬間に地面を溶かす…!?
それに…額の部分に変な…宝石が見える。

「…魔道生命体…?」
「額の宝石から魔力要素を感じます。恐らくアレが原因かと。」
「ガァァァァァ!!!!」

大きく咆哮を上げる黒犬。くぅ…結構…頭に響くなぁ…けど、不味いな。この声を聞いて誰か来たら…
しょうがない…悪く思わないでね…私も食べられたくないからね!!

「ガルム!!攻撃を仕掛けるよ!!狙いは額の宝石!!尻尾には気をつけて!!多分だけど鞭みたいに使ってくるよ!!」
「御意!!」
「さて…久々に…やろうか…!!」

そう呟きながら私はペンダントを握り、自分の力を呼び起こす。

【我が纏うは蒼。纏うは誇り。汝は約束されし勝利の剣なり。我の手に来たれ!!エクスキャリバー!!】

蒼い光が私を包み…私の服が変化していく。
蒼いマントとコート、そして胸には銀色の胸当て。そして特徴は左右の肩から後ろに伸びる蒼いリボン。
そして私の眼の部分を完全に覆う蒼いバイザー。
そこに示されるのは私の名前と私のデバイスの名前。
Master。 Mebius Lancelot
Device。 Multi Pul Beam launcher。Suraipuna Excalibur

エクスキャリバー。聖剣の名を冠したデバイス。これが私の…剣だ!!






シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー。
転生者その2
生前は自己中オタク。現在は金髪碧眼の少年。なのは以外眼中無し。
コンセプト、読者様&作者からこいつうぜぇぇぇぇ!!!等のバッシングを受けるキャラ。


あとがき
英語に関しては翻訳サイトを使用しておりますので…変なのがあったらすいません。
オメガは某ゲームの独眼竜様的テンションです。すません。
そしてコメントありがとうございます。
ちなみに苗字が円卓騎士なのは…B7R繋がりということです。
メビウス君はバリアジャケットのイメージは…白騎士物語に出てくるマスターロリカ系の装備を想像していただければ幸いです。
調べれば画像は出てくると思います…。

そして…題名募集中(爆!!

以下、返信
薺様

閃君は巻き込まれたくないけど手遅れな感じです。
搭乗機は…マルチロールタイプのホーネット系統ですね。器用貧げふんげふん。柔軟に対応できる人間を目指しております。

ご都合主義者様

え?私も5の最後は5機に見えるんですが?(笑
サイファーはあらあらうふふが似合うお母様ですが…忘れてはいけません。彼女は…鬼神ですよ(にやり。
他のキャラも出す予定ですので…期待に添えれるように頑張ります。

ダンケ様

スライプナーはメビウス君のデバイスになりました。ご期待に背き申し訳ないです。
ちなみに閃君のデバイスは次回に判明します。個人的にはVR系はデバイスにしてみようかと計画中。

34様

ネモやグリフィスは微妙ですが…ブレイズは絶対に出したいキャラですからねぇ。
そこはご都合主義でお願いします。



[21516] 4話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/10/06 20:38
『バリアジャケット展開終了。戦闘モード移行完了しました。マスター。』
「エクス。ブリッツセイバー展開。接近戦でいくよ!!」
『了解しました。ブリッツセイバーを展開します。ランチャーからセイバーに移行。』

デバイスから聞こえてくる女の人の声。
Suraipuna Excalibur。これが私のデバイス。フレッシュリフォーで開発されたインテンリジェントデバイスで中距離と近距離の両方で使えるんだ。
ちなみに愛称はエクス。AI設定では女性として登録してある。私のサポートもこなしてくれる頼りになるパートナーさ。

『目標のデータ解析が完了しました。どうやら額の宝石、恐らくはロストロギアにより変異した物と考えられます。
額のロストロギアを除去すれば元の生物に戻ると思います。』
「やっぱり…ガルム!!」
「はっ…!」

エクスの銃身部に細くなり蒼い刃が構成される。近距離戦のブリッツセイバーだ。
そしてバイザーに示された黒犬の情報に目を通す。エクスの解析したとおり、額から強い魔力反応を確認できる。
まずは体勢を崩さないと…

『目標の尻尾は危険と判断します。自動防御を使っては如何でしょうか?』
「当たる気はしないけど…用心に越したことはないね。タリズマン!!」

バイザーに示された魔法を使うと、私の周りに二つの蒼い魔法球が出現し、旋回し始める。。
自動防御魔法、タリズマン。攻撃を感知すると自動でガードしてくれる。広域殲滅系統の魔法には大して意味は無いし、連続して攻撃を受ければ消えてしまうけどね。
それにこれを貫通するほどの魔法にも耐えれない。まぁ…そんなのをポンポンと撃ってくるのはそうそう居ないだろうけど…
それでもこの黒犬から防御するには充分だろう。

「攻撃して体勢を崩すよ!!」
「御意!!」

ガルムが走り出すと同時に私は地面から数cmだけ浮き上がり、滑るようにして移動する。
黒犬が振り下ろした左足をガルムが掌底で打上げて、喉元に跳び蹴りを叩き込む。そして空中で黒犬の額に回り蹴りを決めようとするけど、宝石が障壁を展開してそれを防ぐ。
そのままガルムは弾かれる様にして離脱をする。喉元に蹴りを叩き込まれたのか動きが止まる。
私はそれを見逃さず、左手に新たに展開していた蒼い光球を投げつける。ボムと名付けた一種の砲撃魔法だ。
もっともこれは撃ち出すのではなく、投げつける独特のタイプなんだけどね。
これは相手の動きを阻害できるし、攻撃も無効化する能力がある便利な魔法。それに発光するフラッシュタイプなんてのもある。
ボムが命中し、相手の動きか一瞬止まる。そしてすれ違いざまにセイバーで横に一閃。そして黒犬の背後で急制動【キャンセル】をかけて尻尾を二本とも切り落とす。
スピードを完全に抑えて、方向転換や姿勢制御を可能にする【キャンセル】のお陰で直ぐに振り返ることが出来る。
ちなみに両肩のリボンが一種のスタビライザーの役割を果たしてくれているんだ。
そしてそのまま直ぐにエクスを横に一閃にすると一文字の斬撃が撃ち出される。
私の持つ魔法の中で最も攻撃速度に優れたソードウェーブだ。エクスから放出される余剰魔力を使っているために詠唱は必要がない。
ちなみにこれはある程度、制御できる。ソードウェーブを黒犬の足に飛ばし、それを爆発させて体勢を崩す。
衝撃で尻尾の傷口から吹き出るようにして黒い液体が来るけどタリズマンが防御してくれる。
その液体が近くのベンチに付着し、溶かしていく。涎以外も溶解液って事か…!!

「ガルム!!」
「はぁぁぁ!!!!」

私がセイバーで攻撃している間にガルムは離れて助走をつけて高く跳躍し、黒犬の背中に踵落しをお見舞いする。
地面に這い蹲るようにして倒れる黒犬に更にボムを投げつけて動きを止めて前に回りこむ。

「ソードウェーブ…」
『フリーケンシー。』

さっき使ったソードウェーブの強化版ソードウェーブ・フリーケンシー。十字の斬撃が黒犬の額の宝石にと命中する。
ソードウェーブの様に一瞬で出せる魔法ではないけど、威力は倍以上違うし速度もソードウェーブ並だからとても使いやすい。
命中すると断末魔を上げるようにして黒犬はのた打ち回る。可哀想だけど…我慢して欲しい・・・
数秒間すると少しずつ動きが弱くなっていく。良く見ると宝石の発する光も弱くなり、最後には犬の額から外れる。
すると犬の身体が徐々に小さくなり、普通のサイズにと戻っていく。
怪我は…何処もしていない。宝石の力で仮初の身体を与えられていたと言うこと…?

「ガルムはその犬を介抱しておいて。エクス、データ解析を」
『「了解しました」』

宝石を拾い上げ、エクスで解析と封印を始める。
さて…この宝石はロストロギアとすると…これを探している人が居るのかな…
そこまで考えるとバイザーに新しい情報が書き込まれていく。
近くに魔法反応…魔道師が居る…?
直ぐに反応があった方向の空に視線を向けると…一人の女の子が浮かんでいた。
綺麗な金髪に…神秘的な真紅の瞳。黒いバリアジャケットを纏っている私と同い年くらいの女の子。
小柄な身体に不釣合いな巨大な斧のようなデバイスを持っていてる。
私が見ていることに気が付いたのか、デバイスをこちらに向ける。って…攻撃する気!!??

「ま…待って!!こっちはなにもしないから!!」
(メビウス様。彼女も殲滅しますか?)
(とりあえず待機してて!!下手に行動おこなさいでよ!!)

ガルムから物騒な念話が届いてるけどきっちりと押さえつける
流石にわけも分からず攻撃されたら洒落にならない…!
私は必死に大きな声を出して敵対する気は無いとアピールする。
それが届いたのか女の子は警戒しながらゆっくりとこちらに降りてくる。近くで見れば見るほど綺麗な顔立ちをしている。

「えっと…こんばんわ?」
「……」
「あ…あはは…私になにか…?」
「それを渡して。」
「…これを?」

女の子が指差したのはさっきまで黒犬の額に付いていたロストロギアだ。
もしかして…これを回収しに来たの…かな?
…どうしようか…別に渡しても…。そう考えながらばれない様にエクスに念話を飛ばす。

(データ解析は終わった?)
(充分とは言えませんが…必要最低限のデータは取りました。データベース照会する程度は可能です。)

なら…渡しても良いかな。ここでまた戦う気にもなれないし。
そう思いながら私は手に持っていた宝石状のロストロギアを差し出す。

「良いよ。はい。気をつけてね。」
「…!?そんな…簡単に…良いの?」

こんなにあっさりと渡されるとは思っていなかったのか、女の子は驚いている。
もしかして…私と戦う気だったのかな?それだと流石に洒落にならないしね。連戦はこなせるけど…この女の子自体かなり強いと感じる
それに…なんとなくだけど…困っている感じがするしね。

「うん。君はこれを探してたんでしょう?だったら良いよ。それに…ね。」
「?」
「なんだか…困ってるみたいだしね。」
「え…?」
「ん〜…瞳の奥で何かが揺れてる感じがするからねぇ。きっと必要なんでしょ?だから、持っていって。」
「…あ…。ありが…とう。」
「いえいえ。どういたしまして。」

なんだから分からないけど御礼を言われる私。
女の子も少しだけと可笑しかったのか笑顔になる。今度は綺麗と言うより可愛いなぁ。
って…そう言えば…名前を聞いてなかったなぁ。会ったばかりだけど…

「私はメビウス。メビウス・ランスロット。君は?」
「…フェイト…テスタロッサ。」
「そっかぁ。フェイトちゃんかぁ。素敵な名前だね。」
「あ…う…」

褒められたのが恥かしいのか顔を紅くして戸惑うフェイトちゃん。
最初は無表情だったけど…うん。やっぱり普通の女の子だね。
そうほのぼのと考えていると…海鳴市のマップが表示され、イザーに新しく魔力反応を二つキャッチしたと表示される。
一体何処から……あれ…反応の一つに該当データあり…?

「該当データは…っ…なの…ちゃん!?」

そんな…どうして…なのちゃんが魔法に目覚めるなんて…普通に暮らしてればありえない…ありえない…!!!

「どうしたの…?」
「ごめん!!フェイトちゃん!!友達が巻き込まれてるかも!!またね!!」
(ガルムは待機!!絶対に動かないで!!)

フェイトちゃんに謝ってから、直ぐに飛行魔法を使って空に飛び上がる。
そして反応があった方向に視線を向ける。バイザーに表示されるのは高魔力反応とさっきと同じ反応。
やっぱり…さっきと同じロストロギアが…
簡易マップじゃ大まかな場所しか分からない…!!

「サテライト起動!!探し出して!」
『サテライト起動します。』

広域探索魔法、サテライト。蒼い魔力で作られたサーチャーが空高く飛び上がる。
エクスにマップを登録しておけば上空から自動的に目標を索敵してくれる探索魔法。その詳細マップと情報がバイザーに表示される。
拡大すると白いバリアジャケットを着たなのちゃんが黒い靄みたいなのと戦っている。
場所は…臨海公園の近く…約2キロ!!細かい座標が示される。
さっき戦った黒犬ほどじゃないけど…それでも初心者のなのちゃんはてこずっているみたい。
直ぐに私はエクスに新しい魔法を準備させる。

「セイバーからザッパーに変更!!」
『ザッパーモードに移行します。』
「ラディカル・ザッパーを使う!!装填!!」
『魔力充填開始します。』

横になった銃身部が2つに分かれ、巨大に変形し砲門形態なる。そして中央のエクス本体に魔力が収束する。
私の持つ直射魔法で最高の威力を誇るラジカル・ザッパー。少し発射に時間が掛かるけど、命中率もエクスの補助のお陰で高い必殺の魔法。
サテライトと併用すると遠距離狙撃も可能な魔法なんだ。

『充填完了。マスター行けます。』
「貫け!!ラジカル・ザッパー!!」

砲門から放たれる蒼い魔力の弾丸が遠くのロストロギア目掛けて飛んでいく。
それを見ながら直ぐにエクスを変形させる。
本体後部から二つのブースターノズルが展開し、サーフィンボード状に変形する。本来は別な使い方なんだけど今は必要ない。
高速移動を可能にする巡航モード。普通の飛行魔法より速度が速いかわりに消費する魔力の量が多いけど、今はそんなことに構っている暇はない。
2k位なら直ぐに行ける距離だ。

『ラジカル・ザッパー、着弾を確認しました。敵ロストロギアの反応が弱体化。まわりの思念体らしき物も消失。
恐らくは散ったと思われます。』
「直ぐに向かうよ!!ブースター起動!!」
『了解しました。ブースター起動します』



・閃・

「…派手にやってんなぁ。」

俺はそう呟きながら空中に映し出されている画像を見る。
ちなみに俺は自宅マンションのベランダに居る。
今日はなのはが魔法に目覚める日で、とりあえず見てみるかと軽い気持ちで索敵をしていたら、何故かメビウスまで見つける始末。
そういえば、あいつ天体観測に行くっていってたなぁ。運悪くジュエルシードでも見つけたか?
メビウスがジャケットを展開して、黒犬と戦闘を開始する。

「お…やっぱり主人公らしくスライプナーか。まぁ…妥当なところだな。」
『フレッシュリフォーで開発された最初期のデバイスですね。不安定な出力ですが、使いこなせれば心強いですね。
それに、形状的にカスタマイズが施されていますかと。』
「へぇ…あれって超高級限定モデルだろ?しかも高ランク魔道師用に開発されたんだろ?」
『はい。他にも同系統のデバイスが開発されましたが、全て個人に渡っています。』

なるほどね。しかし、魔法と言うか…技がゲームと似たような感じか。っと…ダッシュして、急制動しかけたか。…あれか?テムジンのジャンプキャンセルか?
見る限り汎用性が高いか。近距離ではブリッツセイバーがあるし、中距離ならボムにニュートラルランチャー。
それに使ってるのがメビウスだしなぁ…速度は神で耐久は紙ってか。配信機体と同じかもな。
俺は腕に取り付けられているデバイス。【ナイトレーベン】を操作する。杖とかそういうタイプじゃなくてガントレットタイプだ。
そこ、挟まっちまったぜとか言うんじゃねぇよ。AIは女性タイプだよ。ちなみに…かなり性格が変だ。
着ているのは黒のバリアジャケットだ。…いいだろ。好きなんだよ。被るけど…
ナイトレーベンはどちらかと言うと支援タイプに変更している。
流石にB-の俺が主戦力になるわけもないので、索敵妨害と魔法妨害のジャミングとか、超広範囲索敵の魔法をメインにしている。
一応は攻撃魔法も登録してあるが…何故か俺の魔力じゃ一発が限界の特大魔法だ。なんでだよ…

「なぁ…レーベン…やっぱり普通の魔法にしないか?」
『閃の魔力じゃ手数が足りなくなります。接近戦の魔力刃を展開するのだって結構苦労するんですよ?
魔力要素が低いのに燃費も悪いなんて…はぁ…』
「ため息つくなっての…!!」
『なので一撃必殺を行ってください。体力も速度も持久力もない短距離ランナーなんですから。』
「それ…最悪だろ…。」

そう…俺はランクも低いのに何故だか知らんが燃費も悪い。皆が1の魔力を使うのに対して俺は5の魔力を使う。
だから消費量の少ないはずの索敵魔法だけでも結構、負担になるんだよな。これってレアスキルか…?
転生者って…チートが普通だと思っていると痛い目見るぜ。本当に…。
ちなみに一度、訓練で特大魔法を使ったんだが…1日動けなかった。

「っと…なのはの方も始めたか。…ん?臨海公園の近くかよ。なんでだ?」
『臨海公園にも新たなる反応がありますね。…ウホッ!!いい女の子。』
「…レーベン…お前…」

若干、レーベンに引きながら新しくウィンドウを展開してなのはとメビウスを見る。
っと…メビウスの方にはフェイトが居たのか…って…あ~あ…ジュエルシード渡しちまったよ。
まぁ…なんの為に集めてるのか知らないだろうし…あいつが困ってる人を見捨てれる訳ないしなぁ。
なんて喋ってるのかは聞こえない。ただ画像が展開してるだけなんだけど…お。出たよニコポ。流石は我が友人にして厨二搭載。

『恥らう乙女…萌え…!!』

……なんかレーベンが悶えてるが俺は何も知らない…何も知らない…何も知らないからな…!!!
お…なのはが戦闘してるのに気が付いたのかメビウスが空に飛び上がる。
…おぉ…デバイスの形状が変化して…ってやば…!!索敵魔法使ってやがる!

「マナ・ステルス!!魔力消せ!!」
『消すほどの魔力もありませんよ?』
「んな事は百も承知だよ!!保険だ保険!!」
『仕方がない…起動。』

マナ・ステルス。そのまま魔力を隠すと言う魔法だ。魔力反応を探す索敵ならこれを使えば場所がばれる事はない。
俺程度の魔力じゃ他の魔法が使えなくなるが、なのはとかならこれを使ってる間も攻撃魔法が使えるだろう。
まぁ…あいつがそこまで器用かどうかは知らんが…
索敵撹乱のジャミングの方が燃費がいいが今回は使わない。当然だろう?一箇所だけ空白の部分があったら気になるじゃないか?
ステルスは魔力反応自体を隠すから、ばれはしない…筈。
そうこうしていると蒼い奔流が移る。

「おおぅ…あれってラジカルザッパーか?」
『閃の数倍はある魔力ですね。うらやましい限りです。私もあんな主に…』
「おいこら。ネタデバイス。」
『なんですか?へっぽこ?』
『「………」』
「いい度胸だ、バラバラに分解しちゃるあぁぁぁぁ!!」
『マッハでボコボコにしてやんよ!!』

こうして俺はレーベンのバトルが開始したのである。


・なのは・

「はぁはぁ…ゆ…ユーノ君。私どうすれば良いの!?」
「とりあえず、距離をとって!!その後に魔法を…」

今日、私は塾が終わって直ぐに走ってお家に帰った。
だって…お昼にメビウス君が私の作ったクッキーがおいしいって言ってくれて、凄く嬉しかった。
それで、お仕事が終わったお母さんと一緒にクッキーを作って皆より先にメビウス君にあげようとしたんだ。
出来上がってメビウス君のお家に届けようとしたら、なんだか臨海公園に天体観測に行ったってサイファーさんに言われたの。

「あら?なのはちゃんこんばんわ~。」
「こんばんわサイファーさん!メビウス君居ますか?」
「メビウスちゃん?ごめんねぇ。今日、天体観測に臨海公園に行ってて居ないのよ。」
「あう…そうなんですか?」
「えぇ。あら?クッキーかしら?」
「あ…はい。メビウス君に食べてらおうと思って…」
「あらあら良いわねぇ♪預かっておきましょうか?」
「えっと…臨海公園ですよね?届けに行きます!!その…お夜食になれば良いですし…」
「そぅ?なら桃子さんに電話したほうがいいわねぇ。」

むぅ…私も誘って欲しかったなぁ…。そのままお電話をかりてお家に連絡。私も急いで臨海公園に向かうことにしたの。
そしたら…なんでか分からないけど動物病院に居たはずのフェレット、ユーノ君と出会ったり、変なお化けみたいなのと戦うことになっちゃって…
今の私は路地みたいなところで戦っている。人が来ないのはユーノ君が結界魔法って言うのを使ってくれてるかららしい。

「最初に防御して!!」
「え!?ぇぇ!?防御ってどうするの!?」
「ええっと…レ…レイジングハート!!」
『アクティブプロテクション。』

私の杖、レイジングハートが突進してきたお化けを見えない壁みたいなので防いでくれる。
ほへぇ…これが魔法なんだ…
け…けど、これって防いでるだけだよね?後はどうすれば…

「次に攻撃魔法を…って…なんか飛んで…」

ユーノ君が私の肩の上で空を見上げる。なんか…蒼い光線が…こっちに飛んでくるよぉ!?
蒼い光がお化けに突き刺さって…消えていく…?

「これって…砲撃魔法…?けど…何処から…僕の結界を…」
「ね…ねぇユーノ君、誰か飛んでくるよ?」

蒼い光線が飛んできた方を私は指差す。蒼い服を着た男の子がこっちに飛んでくる…
あれ?なんだか…見たことある…?
男の子が私達の近くまで来るとゆっくりと降りてくる。

「大丈夫!?なのちゃん!?」
「そ…その声って…メビウス…君?」

バイザーであんまり顔が分からないけど…聞こえてきたのは私の知っている声。とってもとっても安心する優しい声だった。
戸惑っている私を見て気が付いたのかメビウス君はバイザーを消して、小さく安心したように笑う。

「はぁぁぁ…よかった…怪我はしてないみたいだね…」
「……」
「ん?…なのちゃんどうし…っと…」
「メビウス君…メビウス君…!!」

メビウス君だと分かると私は抱きついていた。眼から涙があふれてくる。
ユーノ君が慌てて地面に降りたけど、そんな事関係ない…。

「こ…怖かった…よぅ…な…なにも分からなくて…ぐす…」
「…そっか…よしよし、もう大丈夫だよ。なにも怖くないからね。大丈夫だから…私が護ってあげるから…」
「う…うん…うぇえぇぇん!!!」

気が付けば私はメビウス君の胸の中でおっきな声で泣いていて、メビウス君はそんな私を優しく撫でてくれた…

・メビウス・

「つまり…あれはジュエルシードと言って君が輸送してたロストロギア…という事かな?」
「うん。そうなる…ね。」
「それで集めようとしたら暴走して…行き倒れた…と。」
「…そ…そのとおり…」
「…馬鹿でしょ。」
「阿呆ですね。」
『素直に救援を頼めばよろしいかと。…使えないフェレット…』
「…ぼ…僕だって…僕だってぇぇぇぇ!!!」

場所を臨海公園に移して、フェレット、ユーノから話を聞く私達。バリアジャケットは解除している。
ちなみになのちゃんは私の背中に顔を真っ赤にしてくっついている。
多分、泣き顔が恥かしいのかな。…くっつしてる時点で恥ずかしがる事もないのに…
けど…そうなるとフェイトちゃんは……今度会ったら話をしてみよう…
ガルムが言うには私が飛んでいった後を眺めて、そのまま去っていたってそうだ。
ちなみにその後で望遠鏡などを完全にセットしておいてくれたらしい。

「それでなのちゃんが魔法素質があるのに気が付いて…利用したと。」
「ち…違う!!」
「今更否定しても遅いよ…なのちゃん。」
「な…なぁに?」
「なのちゃんは…どうするの?このまま手伝うの?」
「…ユーノ君は困ってるし…それに…私に出来ることがあるならやりたい…!!
…メビウス君も魔道師なんだよね…?」
「うん。そう…だね。」
「そっか…そっかぁ…えへへ…一緒だね…!!」
「……」

嬉しそうに微笑むなのちゃんを見て私はなにも言えなくなった。
きっとなのちゃんは自分に出来ることをやりたいんだ…。一生懸命で…全力全開なのちゃん…なら…私も。

「なのちゃん、ユーノ。私も手伝うよ。」
「え…良いのメビウス君!?」
「本当に…?」
「うん。流石に辺り構わず暴走されたら洒落にならないし…なのちゃんに魔法をしっかりと教えないとね。
それに…言ったからね。護るって。」
「あ…ありがとう…」
「…メビウス…本当にありがとう…本当に…」
「ガルムもエクスもそれで良い?」
「御心のままに…」
『マスターの命に従いましょう。』
「決まりだね。」

その言いながらユーノは頭を下げる。まぁ…なのちゃんの為でもあるし…きっとフェイトちゃんともまた会うことが出来るから…
っと…そろそろ天体観測しようかな。そう思って私は望遠鏡に視線を移す。

「あ…天体観測するの?」
「うん。そろそろいい時間帯だしね。なのちゃんもみる?」
「うん!!」

そう言いながら私となのちゃんは望遠鏡のところまで歩いていって、シートを敷いてある地面に座って望遠鏡を覗き込む。
ちなみにユーノはガルムが膝の上に乗せて少し離れたベンチに座っている。
ん…少し風が出てきたかな…そう思っているとなのちゃんが小さくくしゃみをする。

「なのちゃん。寒い?」
「うぅん…大丈夫。」

そうは言っても両手で腕をさすっている。やっぱり春でも寒いからなぁ。毛布もって着てよかった。
けど…一人分だしなぁ…そうだ!!

「なのちゃん。私の前に座って。」
「え?」
「ほらほら。」

疑問に思いながら私の前に座るなのちゃん。
私はリュックから毛布を取り出して、背中に羽織る。そして後ろからなのちゃんを抱き抱えるようにして毛布に包まる。

「えぇ…えぇ!?めめめめめ…メビウス君!?」
「ほら、暴れないの。こうしたほうがあったかいでしょう?」
「…うん……」

顔を真っ赤にして俯くなのちゃんを見て、小さく笑いながら私は望遠鏡を覗き込む。
すると、慣れたのかなのちゃんが笑いながらすりすりとしてくる。くすぐったいけど…いう気になれない。

「えへへ…あったかぁい…」
「うん…暖かいね。」
「そうだ!メビウス君…はいこれ!」
「え?」

なのちゃんがポーチから1つの袋を取り出す。中には…クッキーが入っていた。
まさか…作ってきてくれたのかな…

「作ったから…食べてね?」
「あは…ありがとうなのちゃん。」

お互いに顔を見合わせながら笑い、そして二人で空を見上げる。
今日も…星空は綺麗に澄んでいた。
ラジオからは陽気なDJが音楽を流している…

ガルムとエクスの水面下の話
(エクス…画像は?)
(高画質で録画しております。)
(…後で分けてくれ。)
(良いでしょう。)
(…鼻血が…!!)



あとがき

…戦闘描写が下手すぎて鬱になります…
休みを1日使ってこの程度とは…笑わせる…
ちなみに技にエクスの技はス○ロボのチーフからも取っています。
さて…なのはとの甘ったるい展開が出来ればと満足してしまう…甘いか?

以下返信

34様

ラプたんはぁはぁ…
私もメビウス君には神機動をして欲しいと思っています。私の実力が伴えば…!!
テムジンと同じで汎用性の高い魔道師を目指しています。

ダンケ様

最後の陽気なDJは…奴です(笑
メビウス君は先ほども書いたとおり目指せ汎用性です!!
サイファーお母さんはニコニコ笑顔で向かってくる敵は粉砕する鬼神…(ぼそっ



[21516] 5話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/09/07 21:00
・閃・

「…砂糖吐きそうだなおい・・・」
『ラブラブしてますねぇ…食べちゃいたい…』
「…デバイスのAI設定ってどう変えんだっけかな…」

メビウス達が毛布に包まってるのを俺は眺めていた。ちなみにバトルはレーベンが俺の魔力を使って俺をバインドで縛り上げて終了した。畜生…燃費悪いんだぞ…
そしてレーベンがまた変なことを言っている…本気でなんでこいつが俺のデバイスなんだと1時間ほど問い詰めたい…
主に開発したフレッシュリフォーの研究員と提案した過去の俺に。

「へぇ…面白い事をしてるじゃないか。こんな所に魔道師が居るなんて。」
「っ!?…お前は…」

しくじった…広域索敵に集中してたせいで、近くに居るこいつに気が付かなかった…
目の前に浮遊して居たのはバリアジャケットを着て、妙な一つ目の仮面をつけている男子。
腰には双剣型のデバイスがぶら下がっている。

「シルヴァリアス…ゴッデンシュタイナー…」
「僕の名前を知ってるんだ。…まぁ、僕は有名人だから当然だろうね。」
「…同じクラスだから知ってんだよ。帝 閃だよ」
「同じクラス?君みたいなのが居たのか?…あぁ、思い出したよ。確か帝家の人間だったかな。
何処かの企業の幹部の息子が居るって言われた気もするが…君か。」

こいつ…気にいらねぇな…。明らかに人を馬鹿にしてやがる…
しかし、こいつのランクは、推定でもAはある。俺がどう頑張っても勝てる相手じゃない。

「それで…俺に何の様だよ。」
「君もミッドの魔道師なんだろう?なら、話は簡単だ。僕の配下になれ。」
「あ゛?」
「君もミッドの人間ならゴッデンシュタイナー家は知ってるだろ?そこの御曹司である僕の配下になれるんだ。
君みたいな低ランク魔道師にはまたと無いチャンスだと思うんだけど?」

…前言撤回…気に入らないじゃない…反吐が出る。
人を人として見てないな。自分が最も最上位の人間だと考えてやがる。

「何のメリットがあるんだよ?」
「富と名声…そして女を与えてあげるよ。」
「はぁ?」
「君には理解できないかもしれないけど、僕は未来を知っている。
そこでどんな事件がおきるのかも、どんな人物が出てくるのかも知っている。」

そう自慢げに言い放つシルヴァリアスを見て、俺の推測は確信へと変わっていった。
こいつも転生者だ。しかも超ド級で最悪の転生者だ。二次創作なんかに居る転生者なんかとは訳が違う。
自分のことしか考えていない…物語を壊す最悪の存在だ。

「君も見てただろ?手始めにあの金髪の女を君にあげるよ。」
「……」
「まぁ、言う事を聞かないなら、薬でも何でも使っても良い。
僕はなのは以外眼中に無いから、壊しても何も言わない。
あぁ…僕のなのは…可哀想に…怯えた心の隙をあんな妙な奴に付け込まれるなんて…僕が近くにいないのがそんなに寂しかったんだね…」

そう言いながら視線を臨海公園のほうに移す。
妙な奴って…メビウスかよ。正直に言えばこいつの方が数千倍やばい。
金髪の…と言うことは多分、フェイトの事だろう。薬でもなんでもって…こいつ、何処まで自惚れてんだ…?
しかもなのはがメビウスの事を好きなのは一目瞭然だ。話を聞くと幼馴染で何時も一緒にいたそうだしな。
それに…こいつは中身が最悪すぎる…。

「…こんな事、小学3年に言うことか?まぁ…悪い話じゃない。」
「魔道師をしている以上、老成してると思うがね。なんにせよ…決まりだね。君は僕の配下に…」
「…だが断る!!」
「…なんだって…?」
「てめぇみたいな自己中心的な奴の配下に誰がなるかよ!!第一…これがてめぇの物語だ?
ふざけんなよ!!これはあいつらの物語だ!!しかも…大切な友達のあいつらを裏切れってか?それこそ冗談だなおい!!
てめぇみたいな下衆になのはが惚れる訳無いだろうが!!外見は良くても中身がそんなんじゃな!!
人を人としてみてない奴が…何をほざいてんだよ!!」

俺は何時しかメビウスやオメガ、なのは達を本当に友人と思うようになっていた。
転生者として…例えかけ離れた物語になろうと原作の物語を知っている俺は異端者。未来を知っているのは時には苦痛にもなった。
それでも…俺とあいつらと一緒に笑って一緒に学んで…沢山の話をした。
そう…これはもう…俺にとっては現実なんだ。テレビや漫画で見てた世界が…今の俺には掛け替えの無い現実なっている。
それを壊そうとする奴は…俺が許さない…!!

「くくく…はははははははは!!!!!君みたいな小物になにが出来る?所詮は低ランクの魔道師…そして唯の支援型のデバイス…
僕と戦って勝てると思ってる?しかも…未来を知っている選ばれし者の僕に!!ははは!!面白い事を言うね!!
まぁ…負け犬の遠吠えだな。くくく…精々、足掻くと言い。僕の慈悲深い心に感謝するんだね。君をここで殺さないんだからね。
いや、後悔かな?僕の折角の誘いを断って敵になるかもしれないのだからね。はははははははははははははは!!!!!!」

高笑いしながらシルヴァリアスは飛び去っていった…
虫唾が入るな…確かに…俺じゃてめぇを倒せないだろうな…
…情けねぇなぁ…結局…他力本願になっちまうのかよ…
あ~…なんか泣けてきたよ…

「…強く…なりてぇなぁ…畜生…」
『…閃。』
「…なんだよレーベン。」
『1つ言っても良いですか?』
「あん?」
『くせぇえぇぇ!!あいつはくせぇえぇぇ!!!ゲロ以下の匂いがぷんぷんするぜぇえぇぇ!!!』
「…お前って奴は…」

人が本気で悩んでんのに…こいつ…どんだけ空気読めないんだよ…
だが…次に聞こえてきたのはまじめな声。

『…落ち込んでる暇は無いですよ、閃。』
「……」
『奴に後悔させてやるんです。小物の足掻きを見せてやりましょう。自分が侮っといて人間がどれだけ脅威になるのか…
思い知らせてやるんですよ。』
「レーベン…あぁ…そうだな。しかし、まさか…お前に励まされるなんてな…」
『私も頭にきましたからね。あの自己中には。それに…私の大切で大事な主である帝 閃を馬鹿にしたんです。
ただではおきませんよ!!』
「確かに…そうだな。俺の相棒であり、家族でもあるナイトレーベンを侮辱したんだ。唯で済むわけねぇよなあ!」
『「覚悟しろよ!!シルヴァリアス・ゴッデンシュタイナー!!」』

そけにな…お前だけが未来を知ってるわけじゃねぇんだよ…!!
見せてやるよ…お前が見下した魔道師の本気をなぁ!!



・メビウス・

天体観測を終えた次の日。今日も学校が終わって何時ものように帰るんだけど…
オメガは何時ものようにサッカーしてるし…閃は閃で「悪い。やることあるから先に帰るわ」って帰っちゃったし…
まぁ…私も色々とやることがあるんだよね。

「なのちゃん。帰ろう。」
「あ…うん!」

席に座って荷物を片付けているなのちゃんに声をかける。
昨日の夜に、なのちゃんに魔法の指導をするのを約束していたからだね。
流石になんの指導も無く、魔法を使うのは危ないし、身体にも大きな負担になってしまう。

「ねぇ。なのちゃん。今日は私の家に来ない?」
「メビウス君のお家に?良いの?」
「うん。ほら…訓練しないとね。」
「あ…そっかぁ。うん!よろしくお願いします!」
「あはは。そんなに改まらなくってもいいよ。最初になのちゃんの家に行ってからにしよう。ユーノも一緒にね。」

前に私が計測したなのちゃんの魔力は少なく見てもAAはある。しっかりと指導をすればもっと上のランクに行ける筈。
それに…訓練しないと自分の魔力で押し潰されてしまうことがある。特になのちゃんは無理をする事が多いから…

「ねぇねぇ。メビウス君?」
「なに?」
「メビウス君の…デバイスって、エクスキャリバーさんなんだよね?」
『なのは様。エクスで結構ですよ。』
「それじゃエクスさんって女の人なの?」
『はい。女性として登録されておりますね。』
「ほへぇ…それじゃ、デバイスって他にもなにかあるの?」
「デバイスは魔道師が自作するのもあれば、特定のメーカーが作っているのもあるんだよ。
私のエクスやなのちゃんのレイジングハートみたいに意志があるのがインテリジェントデバイスって言うんだ。」
『主に私達は魔法の発動の手助けや状況判断などのサポートをこなします。
状況判断が出来れば、防御魔法をこちらが行う事も出来るのですよ。』
「信頼すればするほどデバイスは答えてくれる。逆に信頼しなければデバイスは答えてくれない。私達にとっては大切なパートナーなんだよ。
なのちゃんもレイジングハートを信頼して…大切にしてあげてね。」
「うん…よろしくね。レイジングハート。」

そう言いながら待機状態のレイジングハートを撫でるなのちゃん。
うん…デバイスは私達の剣であり盾であり…大切なパートナー。
それを分かってくれたなのちゃんはきっと優しくて強くて…あったかい魔道師になれるね。
それから魔法の事を簡単に説明しながらなのちゃんの家に向かう。


「それじゃ、かばん置いてくるから待っててね!」
「うん。」
「ん?やぁ、メビウス君か。こんにちわ。」
「あ、恭也さん。こんにちわ。」


なのちゃんが家の中に入ると同時に男の人が出てくる。
この人は高町恭也さん。なのちゃんのお兄さんで大学生なんだ。凄くカッコいいんだよね。
それにとても真面目で良い人。

「昨日はなのはが迷惑をかけたね。」
「あ、良いんですよ。こっちもクッキーご馳走になりましたし…それに夜も遅くなっちゃって…」
「まぁ…それはあまり関心は出来なかったな。そう言えば…一緒に帰ってきたあの男の人は誰かな?見たこと無い人だったけど。」
「え…あぁ…あの人はアヴァロンの工房の人なんです。父さんが一緒に行きなさいって言ってくれて。」
「工房の人か。…見た感じでは結構、強そうな感じがしたが…スカーフェイスさんの弟子なら納得できる。」
「あははは…」

恭也さんはきっとガルムの事を言ってるんだよね…
昨日、一緒に帰ってきたところを見てたからかぁ。少し焦ったなぁ。
父さんは時々、恭也さんや士郎さんと組み手をしてるみたい。
…私も何回か見せてもらったけど…人が戦ってるようには見えなかったなぁ…特に父さんと士郎さんの組み手…

「またスカーフェイスさんに暇な時に組み手をお願いしますと伝えてくれないか?今まで全敗だからな。」
「はい。分かりました。」
「…なぁ、メビウス君も御神流を習ってみないか?良い筋をしてると思うんだが…」
「えぇ!?わ…私は…良いですよ。流石に…」
「そうか…気が変わったら言ってくれ。それじゃ、俺も少し出かけるから、また。」
「はい。また今度です。」
「メビウス君お待たせ!あれ?お兄ちゃんと話してたの?」
「そうだよ。それじゃ私の家に行こうか。ユーノも良いね?」
≪うん。けど…メビウスの家で訓練するの?≫

なのちゃんがユーノを肩に乗せて出てくると、ユーノから念話が届く。
まぁ…疑問に思うよね。けど、大丈夫なんだ。
しっかりと準備してあるしね。

「それは行ってからのお楽しみ。さぁ、行こう。」

ランスロット家。地下1階

「わぁ…ねぇねぇ!これってなに?」
「凄い…最新鋭の設備じゃないか…」
「ここではデバイスのメンテや開発。それにシミュレーターなんてのも出来るんだ。」

ここは私の家の地下にある訓練施設。全部、ミッドの最新鋭の設備がそろっている。
ここでエクスをメンテナンスしたり出来るから便利なんだよね。

「まずは…なのちゃん。これに座ってね。」
「にゃ?…これなぁに?」
「これはNEMOって言う超高性能シミュレーターなんだよ。仮想空間の中で訓練できるんだけど、風景とか色々と本物と変わらないんだ。」
「ほへぇ…なんだかわからないけど…凄いんだね。」
「NEMOなんて…聞いたこと無いよ…」
「まぁワンオフだからね。疑似体験だけど体力とかは消費するから気をつけるように。それじゃ…始めるよ」

なのちゃんを席に座らせて、ユーノには小型の装置をつける。
そしてリラックスしてるのを確認すると私はNEMOを操作し始める。

「場所は…草原で良いかな。設定は…レベル1で…妨害なし。ガルム、私も入るから、後はよろしくね。」
「了解いたしました。広域索敵も行っておきます。」
「お願い。」

ガルムがメインモニターの前に座るのを確認すると私もNEMOに座り、仮想空間へと入っていく。


仮想空間


「わぁ…わぁ!!すごいすごい!!メビウス君!!本物みたいだよ!!」
「はは。そんなにはしゃがないで。」
「まさかここまで精巧なんて。君の家は一体…」
「私も詳しくは知らないんだよね…」

はしゃぎまわるなのちゃんを見ていると傍らのユーノが私を見る。
まぁ…確かに普通の魔道師が持つには大規模すぎる施設なのかもしれないね。
けど…私も詳しくは分からないんだよね。唯一分かるのは…父さんと母さんが昔の仕事で手に入れたって事くらいなんだけど…

「さて…なのちゃん、まずはレイジングハートで変身してみようか?」
「あ…うん!それじゃ…風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の心はこの胸に! レイジングハート、セットアップ!!」

少し離れた所で、なのちゃんが待機状態のレイジングハートを握り締め起動呪文を唱えると、光が包み込む。
光が収まると白い綺麗なバリアジャケットを纏ったなのちゃんが佇んでいた。
なんだか…学校の制服にも見えるし…天使見たいかも。
変身し終えたなのちゃんがこちらに駆け寄ってくる。

「メビウス君!どう…かな?似合うかな?」
「ん?…うん、とっても可愛いよ。」
「ほ…本当!?」
「うん。似合ってるよ。天使みたいだね。」
「えへへ…そっかあ…ありがとう!!」

なのちゃんかがその場でクルリと回転して私に感想を聞いてくるけど…本当に良く似合っている。
白くて…本当に綺麗だなぁ。

「それじゃ…今度はメビウス君の見せて!」
「私の?」
「うん!えっと…昨日は…その…良く見れなかったし…」

最後のほうを少し顔を紅くしながら呟くなのちゃん。昨日は泣いてたもんなぁ。
私は苦笑しながら胸元のエクスを握り締めて、起動呪文を唱える。


「我が纏うは蒼。纏うは誇り。汝は約束されし勝利の剣なり。我の手に来たれ!!エクスキャリバー!!」

私の周りに蒼い光が集まり、バリアジャケットを構成する。
右手には私の剣であるエクスが握られている。
変身し終えてなのちゃんの方を見ると…なんだか惚けている。

「えっと…どうしたの?」
「え?あ…その…カッコいいなぁって…お話の騎士みたいだねって。」
「そう?ありがとう。」

騎士かぁ…確かに私のバリアジャケットは騎士をイメージしたものかもしれないね。
エクスだって本来はエクスカリバーをモデルにしてるみたいなものだしね。
さて…お互いバリアジャケットを展開したところで…まずは軽く魔法の説明をしようかな。

「それじゃ、なのちゃん。さっき話した攻撃魔法の種類は覚えてる?」
「えっと…砲撃魔法と…広域攻撃魔法に…射撃魔法!!」
「うん。そのとおり。良く出来ました。」
「えへへ。」

私が褒めながら頭を撫でてあげると嬉しそうにするなのちゃん。尻尾があったらブンブン振ってそうだね。
まずは基本的な魔法の講座から始めようかな。

「それじゃ1つずつ説明するね。砲撃魔法は魔力を発射する一番簡単な魔法なんだ。
当たれば一撃必殺だけど…その分、隙も大きいから気をつけてね。
次に広域攻撃は砲撃魔法が単体を攻撃するのに対して、効果範囲全ての敵を攻撃する魔法のことだよ。
まぁ…こっちも時間がかかるのもあるけどね。
最後が射撃魔法。最初の二つが必殺技だとすると、こっちは牽制や削り技見たいのだね。
一発一発の威力は低いけど、少ない魔力を圧縮して弾丸みたいにするんだ。これは複数射撃や誘導も出来るから便利なんだよ。」
「うぅ…色々と難しいんだね。…メビウス君は全部できるの?」
「私?…ん~、ある程度は出来るかな。焦らずに練習すればなのちゃんも出来るよ。」
「そっかぁ…うん!頑張るね!!」
「そうそう、その意気、それじゃ最初に……」

こうして私となのちゃんの魔法特訓が始まった。



・オメガ・

よし、今日も自主練するぜ!!
俺は何時もの様に近所の神社にサッカーボールと油揚げを持って走っていく。
学校でやりたかったんだけどメンバーが集まらなかったんだよなぁ。今日はついてないぜ。
そんな訳で俺は神社で練習をすんだけど…なんでかしらないがちっこい狐が時々、居るんだよなぁ。
結構前から居て、俺の練習をじっと見てるわけだ。
それで気にならないほうがおかしいだろ?とりあえず家から油揚げを持っていったら喜んで食べてくれたんだよ。
気が付けば、練習しない時の夕方にも油揚げを持っていくのが日課になったんだよな。
階段を1段飛ばしで駆け上がっていく俺。今日もちび狐はいるかなぁ。

「お。ちび狐~…って…わぉ。」

境内に入るとちび狐と…妙な目玉が居たよ。なんだこれ?
なんか触手がうねうね動いて…ちび狐を捕まえようとしてるぜ…
俺は徐にサッカーボールを地面に置いて左足を振り上げる。

「唸れ!!俺との銀色の足スペシャァァァァル!!!」
「!?」

思いっきり蹴り飛ばしたサッカーボールが触手目玉に直撃して吹き飛ばす。
よっしゃぁぁ!!今日も俺の銀色の脚は絶好調!!
こちらに気が付いたのか、ちび狐が走って逃げてくる。

「よぅ。ちび狐ぇ、あれってお前の友達か?」
「!!???」フルフル

思いっきり首を振ってるところを見ると違うらしい。
なんかあんな感じの妖怪居たような気が済んだけどなぁ…まぁ、いいや。

「とりあえず…俺のダチに喧嘩売るとは良い度胸だぜ!!
勝負だ!!」

俺は右手で指を鳴らす。さぁ…ComeComeComeCome!!!

【轟くぞHeart!!響くぜBeat!!行くぜぇぇぇぇぇ!!!!Let'sBurning Justice!!!】

光が俺を包み込む。さぁさぁ!!来い!!俺のデバイス!!

「オメガ・ガウェイン!!」
『アファームド・イジェクト!!』
『「劇的に!!参上!!」』

左手には腕と一体化したようなトンファー。右手には鉄の杭。そう!!浪漫のパイルバンカー!!
これが俺のデバイス!!イジェクトだ!!

「さぁさぁ…とっつくぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」






アファームド・イジェクト。トンファー&パイルバンカー装備デバイス。
ベルカ式?いいえオメガ式です。
詳しい説明は次回にでも…


あとがき

あれ?閃君、主人公みたいじゃね?と思った今回…
1時間でも書く時間を作ってみたらこのざまです。
オメガ君とナイトレーベンは…生粋のネタキャラです。色々な台詞を言わせて見ようかと…
あぁ…今回はメビウス君となのちゃんの甘甘展開が出来なかった…そしてユーノ空気…!!
メビウス君の魔法講座を受けるなのちゃん。…男の子が女の子に勉強教えるのって萌えません?(

とっつきとは、アーマードコアに出てくる射突ブレードをとっつきと読んだ事からです。
見た目は某ア○トア○ゼンのパイルバンカーを想像して下さい

以下返信
ご都合主義者様

タリズマン…まぁ…直訳すればお守りですからね(爆
閃君は今回の名家(笑)との会話で色々と決意したようです。


クワガタ仮面様

今回はこんな感じの傲慢さを出してみました。
書いてて若干、面白いかもと感じた作者は…奴より!!??
これからも奴の活躍(笑)をご期待ください

ダンケ様

砂糖を吐ける展開が大好物な作者です(爆
メビウス君はニコポ搭載ですので…フラグは結構立てるかも…
閃君には…後で相手を用意したいとは考えています。
リリン様は…まだ先になる予定ですね。閃君との関係も思案中です。

名無しの獅子心騎士様

今回はオメガ君登場!!で終わらせてしまいました。
次回辺りで活躍させてみようかと思っています。今回は短いですが…
メビウス君は男の娘ですから…おや?蒼い魔(通信途絶
ナイトレーベンは…やる時はやるデバイス!!のはずです。



[21516] 6話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d222508a
Date: 2010/09/10 21:00
・オメガ・

「はっはぁ!!イジェクト!!久しぶりだなぁ!!」
『ブラザー!今回も派手にいくかい!!』
「もちろんたぜ!!ちび狐はそこで油揚げでも食べながら観戦してると良いぜ!!
オラオラオラぁぁ!!!覚悟しろぉぉぉ!!」

目玉触手が何故だか知らんが逃げようとするが…そうは問屋が卸さないぜ!!
足に力を込めて…加速!!浮遊魔法なんてまどろっこしいのは苦手なんだよ!!
目玉の真ん中に左手のトンファーを叩き込む!そしてそのまま宙返りをして今度は跳び蹴りだぁ!!
そのまま地面に目玉触手をめり込ませて…更に踵落としを二発!!大抵の奴はこれで終わる!!

「どうよ!!」
『おう…Brother。まだ奴は平気のようだぜ?』
「いい度胸してるぜ…なら…必殺でいくぜ…!!」

目玉触手が起き上がると同時に懐に入り込む。
触手で絡めとろうししてくるが…そんなトロイ攻撃にに捕まる俺じゃないぜ!!
そしてぇぇ…左手のトンファーで一発、軽く打ち上げて…

『「絶!!」』

落ちた来たところを身体を回転させながら、右手のパイルバンカーで貫き打ち上げる!!
これが…俺の…俺達の必殺技!!

『「昇竜撃!!」』


本体を真ん中から貫き、高く空中に舞う触手目玉。
そのまま地面に大きな音を立てて落ちて、消えていく。
実はこの技、ずっと前に見た格闘ゲームの参考にしたんだけど…うまく決まったぜ!!

『Your win!!』
「It is possible to go still。ん?なんか妙な宝石みたいなのがあるぜ?なんだこれ?」

さっき倒した目玉のいた辺りに妙に光る宝石を見つける。
…これもぶち壊した方が良いのか?
とりあえず、パイルバンカーで砕くか!!唸れ!!俺の右手!!

「オメガ!!壊したら駄目だって!!」
「お…オメガ君待って待ってぇ!!」
「壊さないで!!壊さないで!!」
「What?」

大声のしたほうを見れば…おおぅ…メビウスとなのはが飛んでくるぜ。なのはの肩に居んのは…イタチ?まぁ、どうでも良いか。
あれ?なのはって…魔道師だったっけか?…まぁ、メビウスと一緒だから問題はないだろ。
しかし…おいおい…今は夕方だぜ?まだ一般人もいるのに飛んでくるなんてよ…。
やれやれ、ここは1つ紳士的にアドバイスをしてやるか。

「お前ら…人の目を気にしろよ!!目立つぜ!!」
「結界も張らないで戦闘してるオメガには言われたくないよ!!」

…細かいことは気にすんない!!
そうそう、ちび狐は油揚げをはぐはぐしてたぜ。



・ユーノ・

「それじゃ、次は…」

仮想空間の草原でなのはに魔法を教えるメビウスを遠くから眺める僕。
頭の中ではさっきからずっと同じ事がグルグルと回っている。

(メビウス・ランスロット…何者なんだろう?)

ミッドの最新鋭機器を保持する家庭、そして見たことも無い特殊なデバイスを使う魔道師。
魔法の知識も深く、なにより…本人自体かなりの高ランク魔道師だって言うのは分かる。
現になのはが戦ったジュエルシードは彼の砲撃魔法が倒した。
しかも遠距離からだというのに魔力が減衰することも無くも届いた。つまり…膨大な魔力量を彼は誇っていると言うことになる。
なのはと言い、メビウスと言い…どうして魔法の存在しない世界に居るんだろう?いや…メビウスは既に魔道師だったけど…

「ユーノ、どうかしたの?」
「ん。ちょっと考え事を…あれ?なのはは?」
「なのちゃんは浮遊魔法に挑戦してるよ。筋はいいんだけど…バランス感覚かなぁ。」

気が付くとメビウスが僕の方に歩いてきて隣に座る。
苦笑いしながら指差した方向を見ると…確かに。なのははが空中で頑張ってバランスを取っている。
浮遊魔法自体は簡単な部類に入るんだけど、高度を上げていくとバランスとかを保つのが難しい。

「ここは時間が遅く感じるから、ゆっくりとやっていくよ。外ではまだ30分くらいかな?」
「1時間位はここに居たと思ったけど…本当に不思議だよ。」
「あはは、けど便利なのには変わりないよ。なのちゃんも気に入ってくれたみたいだしね。」

そう言いながら、なのはを見るメビウスの顔はにこやかだった。
大切な物を見るみたいに…優しく暖かい眼差しをしている。
それを見て…僕は後悔をしていく。きっとメビウスはなのはを巻き込みたくなったのかもしれない…と。
魔法は良い意味でも悪い意味でも日常を変えてしまう。メビウスはなのはに普通の…普通の地球の生活を送って欲しかったんだ…
そう思うと僕の心に重く後悔がのしかかってくる。

「ユーノ。」
「…なに?」
「なのちゃんはね。…困ってる人を絶対に見捨てることなんて出来ないんだよ。誰よりも優しくて…一生懸命だからね。
だから、私は…なのちゃんに幸せになって欲しい。いや…なのちゃん見たいな人が幸せにならないと…だめなんだよ。」
「メビウス…君は…」
「ユーノ、後悔するならそれでも良いと思う。けど…そこで立ち止まらないで。君にはなのちゃんに魔法と言う新しい夢を与えた責任がある。
もちろん、私にもね。だから…二人でなのちゃんを助けていこう。きっと、それが出来るはずだから。」
「…うん。」

そういって笑う彼の瞳は…とても澄んでいて綺麗だ…。
駄目だな…僕は。自分がなのはを巻き込んだんじゃないか。僕がしっかりしないでどうするんだ。
遠くでなのはの呼ぶ声が聞こえる。顔を上げて見ると、靴から光の羽のようなのを伸ばして飛行している。
独自に飛行魔法を変えたのか…やっぱりなのはには魔法の才能があるんだ。

「メビウス君!メビウス君!!見てみて、どうかな!!」
「凄いねなのちゃん。まさか飛行魔法をアレンジするなんて。」
「レイジングハートのお陰だよ。ね?レイジングハート。」
『はい。』
「メビウス君の言ったとおりに信じてみたんだ!だからかな?」
「あは。信頼して大切にするならきっと答えてくれるからね。…その靴の羽は姿勢とかを制御するのかな?」
「うん!フライアーフィンって言うんだよ。」
「そっか。うん、良く出来ました。」
「あ…えへへ。」

なのはを撫でながら褒めるメビウス。傍から見ると兄妹みたいにみえる。
それに、なのはも嬉しそうな…幸せそうな表情をしている。
二人を遠くから眺めて、さっきメビウスが言った言葉を思い出す。なのはが幸せにならないといけない。
ねぇ…メビウス?もしかして…なのははもう…幸せなのかもしれないよ?…君が傍に居ることが…なのはの幸せなんじゃ…ないのかな?



・メビウス・



「飛行魔法が終わったら…」
「メビウス様。」
「ガルム、どうしたの?」

飛行魔法を成功させたなのちゃんを褒めながら、次はなにをしようと、考えているとガルムの声が放送で聞こえてくる。
空中にも外の映像が流れてきて、ガルムの顔が映し出される。

「先ほど広域索敵にジュエルシードらしく魔力反応を感知しました。」
「ひっかかったか…場所は?」
「海鳴神社で反応がありましたが…」
「どうしたの?」

そこまで言うとガルムが不安げに視線を伏せる。
ここのシステムを使っての広域索敵なら誤差は少ないはずがたら迷うことは無いと思うんだけど…
けど…次の瞬間、ガルムから出てきた言葉に私は絶句する。

「その…付近に…別の魔力反応がありまして…しかも、該当データありです…」
「該当データあり?…誰の?」
「……オメガ様のです。」
「え゛…?」

ガルムと私の間に重い沈黙が流れる。待って…なんでオメガ?…どうしてオメガ?…何故オメガ?
だって、学校でサッカーしてるはずじゃ…
はっ…!!確か…メンバーが集まらないときは神社で自主練してるって前に言ってた気がする。
その事を思い出し、背中にいやな汗が流れる。いや…オメガを心配してじゃない…
一応は心配する。けど…もっと心配なのが…ジュエルシードのことだ。
絶対に確実に間違いなくオメガなら…叩き割る。それならまだ良い。粉々に粉砕する可能性すらある。
それはやばい…間違いなくやばい…

「メビウス?どうしたんだい?」
「ユーノ…ジュエルシードが…粉々になっても良い?」
「…はい?」

訳が分からず呆けるユーノに説明すると顔を青くしてガクガクと震えだす。
うん…当たり前だよね…とりあえず…

「ガルム!!急いNEMOを解除!!直ぐに出るよ!」
「御意。」
「なのちゃん!ジュエルシードが見つかったから今回はここまで!」
「う…うん!」

さて…ジュエルシード…無事で居てくれると良いんだけど…


NEMOを解除して。現実に戻ってくる私達。そのまま庭で人気が無いのを確認すると飛行魔法を使って飛び立つ。
ちなみにエクスが認識障害魔法を使ってくれているから、魔道師以外は私達の存在を認識できない。
それに、なのちゃんの現実世界での飛行魔法の扱いになれる良い機会でもあるからね。
けど…流石になのちゃんの魔力量には驚かされる。結構、訓練したから疲れてるかと思ったけど…タフだね。
ちなみにガルムは家でメインシステムで広域索敵するために待機してくれている。一応は念には念を入れておきたい。

『マスター、前方にオメガ様を確認しました。』
「こっちも目視できたよ。…あ~…相変わらずデタラメだ…」
「わ…なんか、格闘ゲームみたいな動きしてるよ、オメガ君。」
「ま…魔道…師?…いや、けど体力とか速度補助の魔法以外使ってないような…」

遠くからオメガの戦闘を見て呆気にとられる二人。私は…何度か見たことあるから良いんだけど…それでも慣れない。
それに、認識障害とか結界を使ってないから、一般の人からも丸見えだよ…。人気が無いのが救いだけど…
基本的に体力とか防御、速度を上げる補助的魔法以外は使わないからなぁ、オメガは。使えないってのもあるんだけどね。
飛行魔法だって初歩的なのに苦手だって言ってる。…その代わり地上を走る速度が速いんだけどね…

『ジュエルシードの反応弱体化。どうやら撃破したようです。』
「相手が悪かったね…って…オメガ…?」
「ね…ねぇ。メビウス君?なんかオメガ君…右手の大っきな杭…振り上げてるよ?」
「…なのちゃん、ユーノ…急ぐよ!!」

慌てて速度を上げる私達。間に合え間に合え!まさかオメガが本当に粉々に壊すなんて!!??
それは不味いってば!!

「オメガ!!壊したら駄目だって!!」
「お…オメガ君待って待ってぇ!!」
「壊さないで!!壊さないで!!」
「What?」

パイルバンカーがジュエルシードに突き刺さる寸前のところで、私達の大声に気が付くオメガ。
あ…危なかったぁ…あと少し遅かったら…ゾッとする…
なんでか、飛んできた私達を見ながらオメガはやれやれと言った感じで首を振る。

「お前ら…人の目を気にしろよ!!目立つぜ!!」
「結界も張らないで戦闘してるオメガには言われたくないよ!!」

何を言うかと思ったら…本当に…オメガには言われたくない…!!!
神社に降り立ち、周囲に素早く結界を張りながら、索敵を始める。
付近に誰もいないけど…一匹だけ狐が居る。確か…オメガが良く話していた狐かな?
とりあえず、油揚げを食べてるみたいだから問題は無いだろう。
なのちゃんとユーノはジュエルシードに封印を施している。

「あれってロストロギアって言うのか?知らなかったぜ!てっきりちび狐の友達かと思ってたけどよ!!」
「…狐が思いっきり首を振って否定してるよオメガ…」
『My sisterァァァァ!!元気にしてかぁ!!』
『叫ばないでください。あと私をそう呼ばないでください。貴方と姉弟と思われると私の品性まで疑われてしまいます!!』
『なら、My Brotherぁぁぁ!!』
『私の設定は女性です!!男性ではありません!!』

まぁ…ある意味で間違ってないんだけどね。
エクスとイジェクトは同じフレッシュリフォーで開発されたデバイスで、開発期間も比較的近い。
性格は…かなり違うんだけどね。

『マスターも笑わないでください!!』
「ごめんごめんエクス。…それで、オメガ。今の鳴海市にロストロギア、ジュエルシードが散乱しているんだ。
それを集めてるんだけど…手伝ってくれないかな?」
「はっはぁ!愚問だぜ、メビウゥゥゥゥゥス!!!俺も手伝うぜ!!それに面白そうだしな!!」
「ありがとう。けど…次からは結界とか張ってよね…」
「おう!!俺に任せとけ!!」

こうして…新しくオメガが協力してくれることになったんだけど…なんか心配だなぁ…
今日も夕焼けは綺麗に染まっていた。




アファームド・イジェクト。愛称・イジェクト
攻撃魔法の登録なし。単体補助魔法のみ。
左手にトンファー・右手にパイルバンカー装備。
ハイテンション兄ちゃん。

スライプナー・エクスキャリバー。愛称・エクス
近距離・中距離対応の汎用デバイス。
見た目は完璧にテムジンのあれ。
優しくてちょっとクールなお姉さん。

あとがき


起床→休日だ!!→書くか!!(脳内BGМ・初陣)→お昼からAC04をプレイ→感動。な一日でした。
…前半の戦闘描写が下手すぎて泣きそう…なんだこれ。
とりあえず…オメガ仲間になる!!の巻でした。
オメガ君の技とかは…他のゲーム等から持ってくるのもありますので…
空を制するメビウス1。そして(イジェクト後に)陸を制するオメガ11。これが理想…!!

以下返信

ダンケ様
別のACで射突ブレード(パイルバンカー)があるのですが…ある人が射突を「とっつき」と呼んだためにそう言われるようになりました。
なのでオメガ君にもそう言ってもらいました。(汗
バルシリーズ…奴らは…量産です…そして…セガ時代の鉄球装備のバルに何度撃破されたことか…!!
…あれ?なんか何処かのハンマー装備の騎士が鉄球打ち出して気が…?

34様

誤字報告ありがとうございます。早速修正します。
思いっきりナイトレーベンですよね。あれは。
使い回しもいい所です。べ…別に出てきた時に喜んでなんていないんだからね!!
翼と翼の間を通り抜けようとして衝突なんてしてないんだからね!!


トーマ様

サンダーヘッドも何れは出したいキャラではありますね。電子戦記…果てしなくいい響きです…!!
しかし…メビウス1をサポートするのは…やはりプレゼントをねだって来るが…美声の彼でなくては…!!

nokan様
汁なんとかさんww。読者様にそういわれるあいつにザマァと思った作者は…(爆
奴は死亡フラグなにそれ?と思っていますよ。だってあいつは…真の(笑)主人公(爆笑)なんですからね!!(笑




[21516] 7話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:8f1d2142
Date: 2011/01/21 21:14
・フェイト・

「素敵な名前だね。」

そんな事を言われたのは初めてだった…
夜の公園であった彼は、顔はバイザーで分からなかったけど…とても優しい眼をしてると思う。
見ず知らずの私にジュエルシードを渡してくれた彼は…メビウス・ランスロットって名乗った、不思議な魔道師。
あれから数日たって、ジュエルシードの捜索を開始したけど…成果はよくない。
何かかに邪魔をされている気がするけど…その何かが分からないでいるのが現状。
小さく私の口からため息が漏れる…。こんな事じゃいけない。
私がしっかりしないと…

「フェイト?どうしたんだい?」
「…なんでもないよ、アルフ。」
「そうかい?けど、あまり根をつめすぎないでおくれよ。フェイトに何かあったら大変なんだからね。」
「うん、わかってる。」

ここは、私が海鳴市で本拠地にしているマンションの一室。
私の使い魔であるアルフと二人で暮らしている。
時計を見れば、そろそろ夕方。いけない、今日は一日なにもしないで過ごしてしまった。
夕ご飯を買いにいかないと…

「アルフ。ご飯買いに行こう。」
「良いけど…フェイト。また栄養食品かい?なにか弁当とか食べた方が…」
「良いの。あんまり食欲無いから。」

最近は栄養食品ばかり食べてる気がするけど…私はそれでも構わない。
それにあまり食欲もないし、お料理だって作れないから…
犬形態になったアルフと一緒にマンションを出て行く。
他に住んでいる人達とすれ違ったりするけど…軽く会釈するだけ。
深く関わる気も無いし、関わって欲しくない。私の正直な気持ち。

「またね!!」

けど…フッと頭に浮かぶのは…メビウスの事。会えるなら…私も…また会いたいな…
またね。と初対面の私に言ってくれた事を思い出して、直ぐに頭を振る。


(けど…もう、会うこともないよね…。)

近くのスーパーで何時ものように栄養食品の棚に足を運ぶ。
アルフは外で待っているはずだから…急いで買わないと。

「あれ?フェイトちゃん!!」
「え…?」

突然、名前を呼ばれて変な声が出ちゃった。それに…この街で私を知っているのは一人しか居ない。
顔を向ければ…蒼い髪をして優しく微笑んでいる…彼が居た。

「メビウス…?」
「あは。覚えててくれたんだ、よかったぁ。」

そう言って胸をなでおろすメビウス。
また…会えた…




・メビウス・


「ごめんなさい~。メビウスちゃん。今日の夜、私達居ないのよ~。」
「ミッドの知り合いに呼ばれてな。少し時間がかかりそうで、今日はかえって来れないかしれない。」
「あ、そうなの?」

朝食の時に父さんや母さんが忙しそうにしてけど…ミッドでなにかあったのかな?
そうなると今夜は私とガルム、そしてエクスだけになるね。
簡単に食事は作っていくと言った母さんだけど、流石に急いでるみたいだし、それは断った。
それに私も一応は料理は作れるし、料理自体好きだから問題は無いからね。

「それじゃ、俺達はもう行くが、遅刻しないようにな。」
「行って来るわねぇ。メビウスちゃん、良い子にしてるのよ~?」
「うん。気をつけていってらっしゃい。」
「戸締りはキチンとするように。アヴァロンの方は心配しなくても良いからな。いってくる。」


なんて事が今朝あったんだけど…今晩のご飯はどうしようかなぁ…
時刻は既に夕方だし、とりあえず…スーパーに行かないと。今晩のご飯のおかずも無いからね。

「ガルム。スーパーに行くよ。なにか材料買わないと。」
「我が行ってきますが…?」
「駄目。私も行くよ。」

久々に料理作るんだから、自分で材料を選びたいからね。
制服からラフなジーンズとシャツに着替えて、スーパーに向かう。
ちなみにガルムは犬の状態で居てもらう事にした。大して多く買う予定では無いからね。
まぁ…店内に入れないから外で待っててもらうんだけど…

スーパーに着くと…なんだか大きな…犬?が入り口近くに寝そべっている…
誰かの飼い犬かな?けど…大きいなぁ。それに…額にアクセサリーつけてる。
大きいと言ったら、ガルムもなんだけどね。

「それじゃ、ガルムはここで待っててね。買い物してくるから。」
「…」≪いってらっしゃいませ。≫

さて…今晩のメニューはどうしようかな。あ…今日は合い挽肉が安いんだ。それに玉葱もお買い得か。
うん、ハンバーグにしようかな。…あれ?確かガルムって…玉葱が駄目だったかな。
買い物籠に材料を入れていくと、私の視界の端に映る見覚えのある綺麗な金色。


「あれ?フェイトちゃん!!」
「え…?メビウス…?」

後を追いかけていくと、やっぱり、フェイトちゃんだった。
凄い偶然だ。向こうも私と会うとは思わなかったのか少し驚いている。当然だよね。私だってまさかここで会えるとは思わなかった。

「こんにちわ、また会えたね。」
「う…うん。また…会えた。」
「あは。もしかしてフェイトちゃんも夕ご飯のお買い物?」
「そう…だね。」
「そっかぁ。なに食べるの……え゛?」
「?」

そう言いながら籠の中を見る私だけど…中身を見て変な声を出して固まってしまう。
いや…だって…中身が殆ど…栄養食品だよ?カ○リ○メイトとかばかりなんだけど…
顔が引きつるのを感じつつ、フェイトちゃんに問いかける。

「あの…もしかして…これが…夕ご飯…?」
「うん。そうだけど?」
「…ご両親は?」
「…居ないよ。二人で暮らしてる。」
「あ…ごめんね。」

悪いこと聞いたなぁ…
視線を伏せながら言うフェイトちゃんに罪悪感を覚えるけど…それでも夕ご飯がこれじゃ流石に…
二人暮しって事は…兄弟とかかな…?
けど、こう言うのを食べるって事はご飯を作らないって事で…う~ん…そうだ!!

「ねぇ、フェイトちゃん。もし良ければ…私がご飯作ろうか?」
「え…?メビウスが…?」
「うん!!ほら…私たちは育ち盛りなんだし、そんなのよりおいしいご飯の方が良いよ!
それに私も今日は親が居ないからね。どうかな?」
「え…その…」

戸惑うフェイトちゃんだったけど、少し考えて小さくコクンと頷いてくれる。
よかったぁ。うん、皆で食べたほうがきっと美味しいし、ご飯も進むからね。
そうと決まれば、沢山材料買わないと。
そのまま私とフェイトちゃんの二人で今日のご飯の材料を買い集める。



「合い挽肉にしようかな。」
「合い挽肉?普通の挽肉と違うの?」
「そうだよ。牛と豚が混ざってるんだ。少し白っぽい部分は脂が強いところだからね。」
「へぇ…知らなかった。」
「あはは。私も教えてもらったからね。次は…」

「ん~、卵は…ミックス卵で良いかなぁ。」
「ミックス?普通の卵とは違うの?」
「あぁ。ミックスって言うのはMサイズとSサイズが混ざって入ってるんだよ。時々、特売になるから要チェックだね。」

「フェイトちゃんのお家にお米ってある?」
「えっと…無いと思う。」
「そっかぁ…うん、それじゃインスタントのお米を買っていこうか。流石に生米は持っていけないからね。」
「インスタント?」
「そうそう。電子レンジで暖めれば食べれるって言う便利なのだよ。」


「後は…コショウかなぁ。」
「これ?」
「あ、違う違う。それは塩コショウだよ。塩が混ざってるからステーキとかに使うんだけど…今日は普通のコショウにしようね。」
「そうなんだ…。物知りだね。」
「料理は楽しいからねぇ。」



こんな会話をしながら籠に商品を入れていく。
うん、玉葱と合い挽肉とパン粉で今日はハンバーグに決定!!
荷物を二人で分け合って持つけど、大丈夫かな?フェイトちゃんって細いし…
心配して私は声をかける。

「重くない?」
「大丈夫。メビウスに全部持たせるの、悪いから…」
「そっか。けど気をつけてね?ガルム~、そろそろ行くよ。…どうしたの?」
「アルフお待たせ。…なにしてるの?」

スーパーを出て、待っていたガルムに呼びかけるんだけど…なんだかさっきの大きな犬と、睨み合いみたいなのをしてる。どうしたんだろう?
それにどうやらフェイトちゃんの飼い犬みたいだし…いや、もしかすると…使い魔…かな?

「ねぇ、もしかして…その子って、フェイトちゃんの使い魔?」
「う…うん、アルフって言うの。そっちの犬はメビウスの?」
「そうだよ。ガルムって名前なんだ。けど、そっかぁ。フェイトちゃんの使い魔かぁ。」

やっぱり、そうだったみたい。うん、正解だね。二人で暮らしてるって事は…アルフは人間形態になれるって事だよね。
アルフに軽く会釈すると不思議そうに、私とフェイトちゃんを交互に見る。ガルムは静かに私の隣に移動してくるけど…警戒してる。
あぁ…そう言えば、私達とアルフは初対面だったね。ガルムは用心深いから警戒してるんのかな?少し大げさな気がするんだけどね。
そう思いながら小さく苦笑しながら、アルフに声をかける。

「始めまして、フェイトちゃんの友達のメビウス・ランスロットです。よろしくね。」
「…友達…?」
「うん。そうだよ。…フェイトちゃんは私と友達はいやかな?」
「ち…ちがうよ!その…初めてだから…。」
「あはは。私なんかで良ければ友達でいようね?」
「…うん。」

友達と言ったのにアルフより先に驚いたフェイトちゃんだったけど…良かった。
てっきり、私と友達は嫌なのかとおもったけど…小さく笑ってくれた。
あれ?笑ったフェイトちゃんを見てアルフが驚いたようにしてるけど…どうしたんだろう?
ガルムはガルムで…何故か勝ち誇ったようにしてるし…

「それじゃ、フェイトちゃんの家に行こうか。腕によりをかけて作るよ!」
「あ…ありがとう。」

ちなみにフェイトちゃんの家に向かう途中で夕食を作ると言う事を説明して、軽く自己紹介もする琴にした。
さて…今から楽しみだなぁ。


フェイト宅。キッチン。


「さて…ではメビウスのお料理タイム!!」
「パチパチパチ」
「?」

フェイトちゃんの家のキッチンで気合を入れたんだけど…うん、少し戸惑ってるね。
そしてガルム。拍手は少し恥かしいかも…
とりあえず…髪を邪魔にならないようにアップで纏めて…よし、これでOK。

「エクス、展開。」
『エプロンモード起動します。』
「え…エプロンモード?」

エクスに声をかけるとバリアジャケット構成と同じ感じで、蒼いエプロンが出来上がる。
料理するときはエプロンしないとねぇ。…後ろでフェイトちゃんが驚いているのは気のせい。

「さて…まずは玉ねぎを切らないとね。」
「我はどうしましょうか?」
「それじゃ、ドレッシング作っておいてね。」
「御意。」
「わ…私も手伝う。」
「そう?それじゃサラダの方お願いね。」
「うん…えっと…」

ガルムにはフレンチドレッシングの作成をお願いする。私と一緒に料理を作るからなのか、結構上手なんだよね。
ちなみにアルフは部屋の掃除をしてるみたい。
そして、フェイトちゃんがぎこちない感じで包丁を持つけど、大丈夫かな…?
野菜を切ってもらうんだけど…って危ない危ない!!

「待ってフェイトちゃん!左手は猫の手にしないと…」
「猫の手?」
「そうそう。こう…手をグーにして…軽く抑える感じで…」
「こう…?」
「そうそう。それだと手を切らないからね。」
「包丁で切った傷は痛みますのでご注意を。」
「う…うん。」

さてと…サラダはフェイトちゃんに任せて…時々、様子は見るけどね。
では、美味しいハンバーグを作りますか。

まずは…玉ねぎを細かくミジン切りにして色付くまでよく炒めて、ボールへ移して熱を取る。
眼に染みるけど、我慢して細かくしないとね。これは肉との間に隙間を作らないためなんだ。隙間が出来るとボソボソになっちゃうんだよなぁ。
それに玉ねぎを炒めるのって、ハンバーグは蒸し焼きにするから玉葱の水分を飛ばす為なんだよね。
それに焼きやすくなるし、甘味も引き出すことが出来るんだよね。

「掃除は終わったよ。あたしも手伝うかい?」
「アルフは…それじゃ、そこの挽肉を練っておいてくれる?目安は2、3分かな?」
「これかい?…なんだかベトベトするね。」
「生肉は脂があるからな。手を洗浄してからにしろ。」
「分かってるよ!…あんたはなに作ってるんだ?」
「我はドレッシングだ。サラダにかけるのだからな。…残すなよ?」
「あたしは肉が良いんだけどね。」

挽肉に対して…大体、1%の塩を入れると良いんだよね。今回は400gだから4g位かな?
後はパン粉を水に加えて、軟らかくしてっと。
ちなみに牛乳でもいいんだけど、今回は水にしようかな。
水はしっかりと絞っておかないとね。そうすると肉汁を吸ってくれるからね。

「アルフ。良く練ってね。」
「はいよ。」
「練らないと駄目なの?」
「うん。肉汁が逃げて、食感がボソボソになっちゃうんだよ。」
「つまり、お前の責任は重大という事だ。抜かるなよ。」
「あんたは一々…そっちこそドレッシング、ミスるんじゃないよ?」
「愚問だな。次はケチャップを…」
「あ~!!ガルムだめ!!今回は普通のドレッシングで良いから!」
「ぬぉ…!?」
「ほ~ら。言った側から。」
「アルフ、時間過ぎちゃうよ?」
「へ!?」

まったく…二人とも、大丈夫かな?フェイトちゃんの方は…ぎこちないけど、うまく出来てるみたい。
次はアルフが練っている挽肉に材料を加えてっと…
ここで香辛料とか加えるとまた、変わるんだけど…今回は普通にしようかな。

「卵を割るときは、軽くコンコンしてからね。」
「卵か…ドラマとかで額で割るってのがあったよ?」
「あれは…結構、痛いんだよ?それに…下手すると中身が顔面に…うぅ…トラウマが…」
「メビウス…やったことあるの?」
「正確にはサイファー様ですね。…あの時のメビウス様は…可哀想としか…」

…黒歴史と言うかトラウマが出てきたからここまでにしよう。
フェイトちゃん…可哀想にこっちをみないで…
練った材料を4等分にして…手でキャッチボールみたいにして空気を抜いて形を整える。

「こんな事するのに意味あるのかい?」
「こうすると中の空気が抜けて型崩れとかしにくくなるんだよ。形や厚さを均等にするのあるんだ。」
「へぇ~。ならしっかりとやらないとね。」
「おい、アルフ。お前の分だけ大きくないか?」
「あ…本当。少し大きいよ?」
「き…気のせいだよフェイト!!」
「…ちなみに大きすぎたり厚すぎても肉汁が逃げて、美味しくなくなるからね?」
「え゛!?」

焼くときは真ん中を少しへこませると、焼きやすくなるんだよね。
蓋をして蒸し焼きにしてっと…火加減は中火かな?

「っ…!」
「フェイト!?大丈夫!?」
「少しだけだから…」
「あ…もしかして切っちゃった?」
「うん…。」

フェイトちゃんの人差し指を見ると、確かに小さく紅い雫が出てきている。
痛いからなぁ…とりあえず…

「フェイトちゃん、ちょっと動かないでね。」
「え?」
「…んっ。」
「!!?????!?!めめめめめめめめメビウス!!????」
「…………」
「アルフ、呆けてないで絆創膏もってこい。」

口の中に広がる鉄の味。まぁ、慣れるものじゃないね。
フェイトちゃんの指を口の中にいれて怪我した部分をなめとる。

「ん…ちゃぱ…ちゅる…れるれる…」
「あ…ん…!メビウス…くすぐった…ん!」
「……」
「おい、口を金魚みたいにパクパクさせてないで、絆創膏持って来いと言ってるんだが…えぇい、場所は何処だ?」

ガルムは隣で思考停止してるアルフを引っ張って、絆創膏を探しに行ってくれた。

「ちゅぽ…この位かな?」
「あ…その…ええっと…」
「後は軽く濯いで絆創膏を張ってね。」
「う…うん。」

ガルムが絆創膏を持って戻ってくるんだけど…アルフはリビングに置いて来たみたい。
どうしたんだろう?
濯いだ指に絆創膏を張って…うん、血はあまり出てこないから大丈夫かな?

「とりあえず、後は私とガルムで出来るから、待っててね。」
「フェイト様はそちらでお待ちください。アルフも置いてきましたので。」
「わ…分かった。…メビウス。」
「ん~?」
「……ありがとう。」
「どういたしまして。…なにが?」
「うぅん。良いの。言いたかっただけだから。」

そう言ってフェイトちゃんは顔を紅くしてリビングに向かっていった。


・フェイト・

どうしよう…
それが今の私の頭の中。きっと顔は恥かしいぐらいに真っ赤になっている。
チラッと視線をキッチンで料理しているメビウスに移し、張られた絆創膏を見る。
そして…メビウスが舐めた…指。
思い出すと物凄い…恥かしさがまたやってくる。まさか…舐められるとは思わなかったから。
…アルフがさっきから呆然としてテレビ見てるけど…どうしたのかな?

「…あっ。」

キッチンの方から凄く美味しそうな匂いがして来た…
アルフも隠していた耳や尻尾をピンと立ててそわそわし始めている。
すると、私のお腹が小さく「きゅるる」と鳴る。…うぅ…聞かれてなくても恥ずかしい…

「はい。お待たせ~。メビウス特製フワフワハンバーグの完成!!」
「食事はこちらのテーブルで良いのですか?」
「あ、うん。こっちで良いよ。」
「いい匂いがするねぇ。」
「アルフは食器並べててくれるかな?」
「はいよ。」

テーブルの上に並べられていく美味しそうな夕ご飯。
本当に…いいにおいがする。

「本当はデミグラスソースも作りたかったんだけどね。」
「メビウス様、それは致し方ないかと。今はこれで我慢しましょう。」
「そうだね。また今度にしようかな。」
「また…今度?」
「うん、迷惑じゃなければね。また作りにくるよ?」
「良いのかい?」
「もちろん。」

また今度。という言葉に戸惑う私の代わりにアルフが問いかける。
それにメビウスは戸惑う様子も無く、直ぐに答えてくれた。
なんだか心が…温かくなるのを感じる…

「今度はお米もキチンと用意しないとね。」
「次回は我が人間形態で行きましょう。そうすれば問題は無いかと。」
「そうだねぇ。あ、後でレシピ書いていくからね。もし挑戦する気になったら作ってみてね。」
「うん。」

短く答えるのが精一杯。
心が一杯になっていく…色々なもので満たされていく感じがする…

「それじゃ、いただきます。」
「いただきます。」

メビウスが椅子に座って、皆でご飯を食べ始める。
本当に…本当においしい!
そんな私を…メビウスは優しく笑いながら見ていた。





あとがき

地理的位置関係は…ご都合主義でお願いします。
ガルムとアルフは使い魔と言うことで玉葱は大丈夫ということにしてみました。
王道イベント、料理作りに行くよ!!そして指を切る。
…料理作る男の子って萌えません?皆で料理作るのって楽しいですよね?
今回はこんな感じにしてみました。
そして…祝!!エースコンバットX2クリア!!(遅!
最後のスレイマニの機動なんだあれ?機関銃で倒したほうが速いじゃないですか…
しかし…クリアした時の感動が薄いと感じてしまった作者は一体…
ちなみにガルムさんはメビウス君の友達とかには基本敬語です。


以下返信

34様

はい。そのとおりです!!
いや…なんか…メビウスとメルツェルって…同じ感じじゃないですか?
あの位信頼関係が築かれて居とる思ってもらえれば良いのですが…



薺様

アンタレスも出したいとは思っているのですが…
序盤はメインキャスト?を一通り揃えてからですので…少し後になるかもしれません。



ダンケ様

パイパーシリーズはカッコいいですよね。クール?なイメージがありますねぇ。作者には扱える機体ではないですがね…
Fox2は誰かに言わせたいですねぇ…。候補としては今のところメビウス君だけですので…今後のキャラに…(笑
サイファーお母さんって実は…(超遠距離狙撃により通信途絶。




[21516] 8話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:d5622272
Date: 2010/09/14 22:35
・閃・

ミッドチルダ、首都クラナガン、中央区、フレッシュリフォー本社ビル。
デバイス開発研究部

「どうも。閃ですが…」
「おお。閃君、良く来たね。まぁ座って座って」

折角の日曜日、なんでか知らないが俺は今、デバイスの開発部署に来ている。
あれか?ナイトレーベン分解案が通ったか?それともAI書き換え許可が出たか?
白衣を着た研究員が笑いながらお茶を出してくる。
とりあえず…礼を言って受け取る。…変な薬入ってないだろうな?

「そんなに警戒しなくてもいいよ。今回のは、何も入ってないはずだから。」
「待てこら。今回のは、とか、入ってないはず、とか怪しすぎんだよ!!」
「はっはっは。疑い深いなぁ。………ちっ…」

今舌打ちしたよな?小さく舌打したよな?
こんな危ないお茶なんて飲めるかよ…!!
しかし…研究員って…全員、こんなのかよ…。頭が痛くなるな…

「それで?俺を呼んでどうしたですか?」
「あぁ。君を呼んだのは主任で、僕は君の接待。」
「主任が?」

主任という言葉に俺は反応してしまう。
以前にナイトレーベンの開発案を提案したら、真っ先に食らいついてきたのが、主任、と呼ばれている研究員だ。

「主任は奥に居るからね。ちなみに…奥はカオス!!」
「なんだそりゃ…」

物凄く不吉な事を言って歩いていく研究員の背中に言葉を投げつける。
畜生…俺の周りにはメビウス級にまともな奴は居ないのか…。あいつはあいつで色々な意味で桁外れだけどな
痛む頭を抑えながら、奥へと続く扉を開ける。

「うへぇ…相変わらず汚ねぇな…」

小さな個室になっているその部屋は主任専用と呼ばれる部屋なんだが…
床や机の上に散乱している設計図や資料。足の踏み場もないぞこれは…
そして机で資料に埋もれるようにして、突っ伏して眠っている男…こいつが主任だ。
ちなみに名前は知らん。と言うか教えてくれない。

「お~い、主任。起きろ。」
「あ~…?…………男か………ぐ~」
「…この設計図燃やすぞ。」

適当においてあったライターに火をつける。こんだけ紙があれば直ぐに燃えるだろう。
設計図に火をつけようとした瞬間、主任が飛び起きて奪い取る。
最初から起きろよ。

「きききき…君はなんて事を!!僕の大事なデバイスちゃんを燃やすなんて!!それに、未来の魔法少女達が困るじゃないか!!ギンガとかスバルとか!!」
「だったら起きろっての。後、メタな発言は止めろ阿呆。」

資料を抱きしめる主任。そしてこいつの口から出たナカジマ姉妹の名前。
そう…実はこいつも転生者なんだよな。
ナイトレーベン開発案を出したときも「ナイトレーベン…挟まっちまったぜ!!ってやりたいのかい?」
知らない人は知らないだろうが、俺は物の見事に反応してしまった。
それで適当にネタを振ったら、大当たり。
結局はお互いの素性を話して、協力体制を作り上げたと言うことだ。名前を教えてくれないのは、リリカルに合わない平凡な名前だからだそうだ。なんだそりゃ。
実年齢も不詳。見た目的には結構若いと思う。…良くこんな奴を雇ったなフレッシュリフォー。…あ、人材採用したの家の両親じゃん。
ちなみにこいつの場合、デバイスに物凄く興味があったらしく、魔道師よりこっちを選んだみたいだと。実際、魔法要素も低くて研究者タイプらしい。
そして何より…主任はある意味で物凄い目標を掲げている。
その目標は…「ジェイル・スカリエッティと頭脳で並ぶ」だとよ。
まぁ、確かに…怪しさ満点の人物だが…掛け値なしの超天才であることには間違いない。
デバイスの開発やら医療関係とかでの功績は計り知れないと、父さんが言っていた。
実際、ナイトレーベンも主任が一人で完成させたようなものだ。俺も少しは手伝ったが、殆ど足手まといだったかもしれない。
しかし…天才となると人格破綻者ばかりなのか?…デバイス愛の変人だぞ…
とりあえず、俺は適当に資料を退けてソファに座る。
主任は机の上の資料を纏めて、外していたメガネをかけている。
…メガネを人差し指でクイクイってしてんじゃねぇよ。

「それで、俺をよんだ理由は?」
「中途半端に原作介入して、中途半端に悩んでいる君を呼んだ理由は…ごめんなさい焼かないで。」
「真面目にしてくれ…話が進まないだろうが。」
「…君から送られてきた資料を見せてもらったよ。…まさか、リボンの英雄にスライプナーが渡ってるなんてね。」
「主人公らしくて妥当じゃないのか?」
「確かにそうなんだけど…見事に使いこなしてるようだね。彼にスライプナーが渡っていると…他のVRシリーズも物語の主要メンバーに渡っているのかもしれない。」
「そうだと良いんだけどな。」
「しかし驚いたよ。まさかこの世界にリボン付きの英雄が居るとは。いやはや、転生はしてみるものだね。」
「だからメタな発言は慎めよ…」
「良いじゃないか。転生した人間の特権だし。っと…頼まれていた物をまとめて置いたよ。」

ちなみに、こいつとも情報交換を行っている。流石に俺一人だと限度がある。
そう言って主任は机の引き出しから数枚の資料を取り出して、俺に投げてよこす。
そこには、今まで開発されてVRデバイスシリーズが書かれていた。
だが…殆どに共通して書かれている文字、それは…

「行方不明…か。」
「そのとおり。誰が何時、どうやって持ち出したのか。それすら不明なんだ。…あれは開発期間、資金、人材を出鱈目に投入して作り上げたデバイス。
しかも、デバイス自体にも魔法出力がある。簡単に手放すような物じゃない。」
「…№1のスライプナーは見つかったって事は喜んでおくか。」
「しかも、それが主人公に渡ったんだ。いい傾向だと思う。」
「シリーズが開発された時期って分からないのか?そこからルートを調べるのは?」
「残念ながら記録が抹消されていてね。けど…懸念すべきはそこじゃない。」
「…ゴッデンシュタイナー、か。」
「そう…自己中心転生者。なにを勘違いしてるか知らないけど…やばいね。痛すぎる」
「こっちではどんな感じなんだ?」
「管理局と密接な関係を持っている一族。そしてベルカとも関係がある一族、って所かな。
これと言って、大して情報はないなぁ。近くに居る君はどうなんだい?」
「今のところは表立った行動はとってないな。逆に静か過ぎて恐いぐらいだ。虎視眈々と何かを狙ってる気がすんな。」


主任は額を押さえながらため息をつく。
奴との会話ログを先に送っておいたから、多分聞いていたんだろう。
まぁ…その気持ちは分かる。しかし…実際、ゴッデンシュタイナーは静かにしている。
あの夜以来、索敵をしてもまったく引っかからない。戦闘もしてなければ、魔法すら使っていない。
それが俺にとっては不気味でしょうがない。

「デバイスは、形状的にあれはVRシリーズじゃないね。」
「そうなのか?」
「あれはアスカロンだと思う。一つ目の仮面も特徴的だからね。」
「アスカロン?…竜殺しの剣だっけか?」
「そのとおり。僕達の世界にあった、あるゲームに同じような機体が出ていてね。双剣で一つ目の顔を持ってたかな?
…まぁ、悪役だったけどね。」
「…奴は竜殺しの英雄にでもなるってか?はっ、笑い話にしかなんねぇな。」
「それに設計図描いたの僕だし。」
「お前かよ!!」

にこやかに話す主任に突っ込みを返す。
なんこう事をサラっといってくれんだよ…
しかし…奴がどうあがこうと無駄。
すでに主人公であり英雄は存在している。
世界が既にそう決めてんだからな。それを無視すれば…消されるはずだ。

「当面は気をつけた方が良い。そろそろ管理局も動き出してくるはずだからね。」
「管理局か。そっちで何か良い事はないのか?」
「研究所入り浸りの僕に言ってもねぇ。何か情報が入ったら逐次、教えるよ。」
「そうか。こっちでも原作外の出来事が起きたら連絡する。」
「そうしてくれ。それじゃ、態々、足を運んできてくれたお礼にナイトレーベンのチェックでもしようかな。」
「ついでにAI設定変えてくれ。」
「無理。」
「即答かよ…」


・メビウス・

今日は日曜日。
オメガの所属しているサッカーチーム翠屋JFCの試合がある。
折角の休日でもあるし、ジュエルシードの回収もそれなりに順調という事もあって、観戦に行く事になった。
場所は河原のグラウンドで、私の他になのちゃんやアリサちゃんにすずかちゃんも、観戦している。
閃も誘ったんだけど、急用があってこれなかったみたい。
士郎さんがオーナーを勤めているからか、強いんだよね。
ちなみに、ガルムとユーノも動物形態で一緒に居る。なのちゃんにはユーノが人間の男の子と言うことは、以前に説明しておいたしね。

「けど…本当に良い天気だね。」
「そうね。晴れてよかったわ。」

そう言いながら、アリサちゃんが眩しそうに空を見上げとる。雲一つない快晴の青空が広がっている。
春の陽気でなんだか眠くなってくるなぁ。丸くなって眠っているガルムの間にユーノが入り込んで、眠っていた。
ん~…気持ち良さそうに眠っているし…起こさないで上げよう。

「あ、オメガ君にボールが渡ったよ。」
「マークが厳しそうだけど…抜けれるかな?」
「オメガ君!!頑張って~!!」
「行け!!オメガ!!」

すずかちゃんの言葉を聞いてグラウンドを見ると、オメガにボールが渡った。
サッカー好きのオメガは、ここでもエースとして活躍している。
私達が見ても、マークが厳しいと思うのに軽々と抜いて、シュートを決めた。
シュートを決めたオメガは、私やなのちゃんの声援が聞こえたのか、こっちに向いてガッツポーズを取る。
そしてチームメイトとハイタッチを交わしていく。
ん~、やっぱりオメガは凄いなぁ。実力もあるし、人望みたいなのもある。

「相変わらず、体力はあるわね。」
「オメガだしねぇ。サッカー命みたいなものだよ。」
「本当にあいつは…サッカー馬鹿よね。メビウスやらないの?」
「私は…どっちかと言うとバスケットボールが好きかなぁ。」
「ふ~ん。あら?けが人かしら?」

アリサちゃんの言う通り、試合が中断している。
確かに…翠屋JFCの選手の一人が怪我をした見たい。大丈夫かな…?
…あれ?オメガが士郎さんと話して…こっちに向かってくる?

「メビウス。」
「どうしたのオメガ?」
「脱げ、そして蹴れ。」

次の瞬間、私のキックが綺麗にオメガのわき腹に突き刺さった。
そのまま、奇声を上げながら土手を転がっていくオメガを冷たい眼で見る。
流石に…親友でも許せないことはあるんだよ?

「……公衆の面前で…」
「違ぁぁぁぁぁう!!!そういう意味じゃない!!」

転がっていく途中で体勢を立て直したオメガが再びこっちに走ってくる。

「さっき、怪我人が出たろ?それで、メンバーが足りなくなってよ。」
「補欠は居るんでしょ?」
「居る事は居るんだけどよ。みんな自信が無くてな。士郎さんと相談してメビウスにしたんだよ!!」
「…私に?」
「おう!!頼むぜメビウス!!」

いや…頼むよって言われても…
迷っているとクイクイとなのちゃんが私の手を引っ張る。

「メビウス君。」
「なのちゃん、なに?」
「頑張ってね!!一生懸命応援するからね!!」

なのちゃん、物凄く眼をキラキラさせてるんだけど…
結局、なのちゃんにお願いされたと言うことで、試合に参加することになった。

「メビウス!オメガ!!頑張りなさいよ!!」
「二人とも、頑張って!!」
「メビウス君!!カッコいい所見せてね!!」

背中に三人の声援を感じる…。
翠屋JFCのユニフォームを着て、グラウンドに立つ。うん、高揚感って言うのかな?悪くないと思っている自分が居る。
少し長い髪はリボンでしっかりと止めてあるし…準備OK。
私は1番、オメガは11番を背負っている。
あれ?向こうのチームに見たことのある顔がある。

「大変だ純!!相手はリボン付きだ!!」
「落ち着け勇次!!」

確か…隣のクラスの純と勇次…だったかな?
なんか二人して私を見て、驚いてるけど…

「ハッハー!!二人で一つのコンビネーションで行くぜ!!」
「あんまり期待しないでよ?」
「メビウスに期待するなって言うのが無理な話だぜぇぇぇ!!」
「その根拠はどこからなんだろうね。」

小さく苦笑しつつ、足元のボールを軽くリフティングする。
オメガと付き合っていれば、必然的にサッカーをすることにはなる。
少しだけど、リフティングとかは出来るんだよね。
軽く5回程度して、…よし、覚悟完了。

「さぁ…交戦開始だぇぇぇ!!」
「皆!!よろしくね!!」

後ろに居るメンバーに声をかけると、大きく「メビウスが居れば勝てる!!」とか色々と聞こえてくる。
まったく…オメガと似てみんな能天気なんだから…
けど…悪くないね。さて…なのちゃん達が見てるんだ。かっこ悪い所は…見せれない!!
審判がホイッスルを吹く。さぁ…開戦だ!!

「メビウス!!パス!!」
「っと…右から行くよ!!」
「二人に続けぇぇぇ!!」

「止めろぉぉぉ!!!」
「無理ですって!!11番だけでも手ごわいのに!!」
「あぁ!!純が抜かれた!!」
「慌てるな勇次!!お前が止めろ!!」



結局、試合は5-0で圧勝。
ちなみに私は2点でオメガが3点を決めた。
途中参加だけど、結構、楽しかったなぁ。
試合終了と共に、チームメイトにもみくちゃにされたけど…それもそれで凄く楽しい。
うん、やっぱり参加してみるといいものだね。
ベンチに行くと、何時の間にか、なのちゃんがタオルとドリンクを持ってきてくれていた。

「お疲れ様メビウス君!!とってもとってもカッコ良かったよ!!」
「あはは。ありがとう。なのちゃんのお陰かな?」
「わ…私の?」
「うん。なのちゃんの応援、良く聞こえたからね。ありがとう。」
「そっか…えへへ。良かったぁ。」

タオルを受け取りながら、なのちゃんにお礼を言う。
一番、なのちゃんの声援が聞こえたし、それが後押しをしてくれていた気がする。
けど…疲れたなぁ。

「この後、家でお祝いするんだって。メビウス君も来るよね?」
「あ、そうなの?それじゃ…折角だし行こうかな。」
「やった!!手作りのお菓子、用意するね!!」
「なのちゃんのかぁ…楽しみだね。」

隣ではしゃぐなのちゃんを見て、私も笑う。
なのちゃんのお菓子はおいしいからなぁ。
今から楽しみになってきた。
さぁ…翠屋でお祝いだ!!






主任。本名不詳年齢不詳。
転生キャラ3。基本変態&メタ発言キャラクター。
あと開発担当キャラ。


あとがき

ん~…相も変わらず文章が微妙…今回は日常?をモチーフにしてみました。まぁ…サッカーの試合ですけど。
しかし、それでも強行すると言うね。
閃君視点が物凄く書きやすい…あれか?メビウス君を主人公らしくかっこよく書こうとしてるからか?微妙に書きづらいのは?
純と勇次は一発キャラです。
いや…思いっきり、分かる人は分かると思うんですけどね。

以下返信


ADFX-01G-2様

メビウスが8人…そこまで考えていませんでした…
ゴッなんちゃらさんの活躍(笑)はもう少し後になると思います。
今のところは行動を起こしてません、なのはの観察のみです。
カリバーンですか…機体の出し方が今一分からずタイフーンでクリアでした…
機体の値段が高いです…


B=s様
誤字報告ありがとうございます。
普通に鳴海と打ってましたね。本当にありがとうございます。


ダンケ様

ばれたら確実に焼きもち焼かれますね。メビウス君。これが厨二クオリティ!!
作者の愛機はライデンでしたね。開戦同時主砲でごり押しでした。テムジンも使ったりはしてましたね。
サイファーお母さんは鬼神ですので、もう少しお待ちを…



[21516] 9話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:621d3fa3
Date: 2010/09/23 22:55
・なのは・

「レッツパァァリィィィィィ!!!!」
「ああもう!!オメガ!!少し落ち着きなさいよ!!」

そう叫びながら、オメガ君がジュースを一気飲みしてるのを、アリサちゃんが煩そうに止めている。
すずかちゃんは他のクラスの子達とお話をしている。
サッカーで勝ったという事で、翠屋でお祝い会をしてるんだけど…にゃはは、すごい元気。
さっきまで走り回ってたとは思えないや。
私もお母さんのお手伝いでジュースやケーキを運ぶのを手伝っているの。

(あれ?メビウス君は…何処だろ?)

お店の中を見渡すと、隅っこの方でジュースを飲んでいるメビウス君を見つける。
もぅ、メビウス君だって活躍したのになぁ。
途中参加なのにオメガ君と一緒にみんなの注目を集めていたメビウス君。
同じクラスの女の子達も見に来てて…すごく応援してた。それがなんだかいやで、私も大きな声で応援をしてたの。
優しくて、色々な事が出来るメビウス君は誰にでも好かれる。その…ラブレターみたいなのを貰って…困ったように笑ってた時もあった…。
小さい頃から何でも出来たメビウス君だけど…私はその秘密を知っている。
だって…ずっとずっと一緒にいたんだもん。メビウス君はいっつも努力していたの。
お勉強だって沢山してたし、運動だってしてた。オメガ君に誘われたサッカーだって、最初はすごく下手だった。
けど、練習して、沢山沢山練習してたのを私は知っている。だって…小さい頃からずっと見てきたんだもん。
お料理も、最初は手が絆創膏だらけだった。けど、今はすごく上手になってるの。
絆創膏を張った手を見て、私が泣いちゃったのは…恥かしかったなぁ。すごく痛そうで…悲しくなっちゃったんだよね。

「ふふ。なのは、こっちは大丈夫だから。メビウス君の所に行きなさい。」
「にゃ!?…うん!!」

お母さんが笑いながら、そう言ってくれる。うぅ…ずっとメビウス君の方を見てたからかな…?
直ぐに私は、さっき作ったばかりのクッキーとケーキをお盆に載せて、メビウス君に駆け寄っていく。
最初に食べて欲しいもん。

「メビウス君、隅っこで良いの?」
「あ、なのちゃん。私はここで良いよ。流石にちょっと疲れたからね。」
「そっかぁ。ねぇねぇ、隣良いかな?」
「はい、どうぞ。手伝いはもう良いの?」
「うん、一通りすんだから。はい、これ。約束のお菓子!」
「あはは、ありがとう。すごく美味しそう。」

笑いながらケーキを食べてくれるメビウス君。えへへ、嬉しいなぁ。
小さい頃に、私が最初に作ったクッキー。失敗作だったのに、メビウス君は食べてくれた。
美味しく作ると言って張り切っていたのに、失敗した私を優しく慰めながら、おいしい、とも言ってくれた。
それからかな。もっとおいしいお菓子をメビウス君にご馳走したくて、沢山お菓子作りの勉強もしたし、お母さんにも習ったもん。
…お料理の方はメビウス君の方が得意だけど…お菓子なら負けない自身はあるの!

「メビウス!!オメガの馬鹿をとめなさいよ!!」
「まだまだ食えるぜメビウゥゥゥゥゥス!!!」
「はぁ…単純馬鹿なんだから。」

オメガ君がジュースを持ってこっちに突っ込んでくる。
むぅ~…折角二人だけでお話してたのに…
けど…メビウス君の親友だもんね。ここは我慢しよう。でも…後でもっと、二人だけお話できると良いなぁ。
…そう言えば…さっき、ジュエルシードみたいなのを感じたような気がするんだけど…メビウス君が何も感じてないし…勘違いかな?



・メビウス・

こっちに突撃してきたオメガを軽くいなして、椅子に座らせる。
まったく…本当に体力が有り余ってるなぁ。

「どうしたメビウス!!なんか疲れてんな!!」
「あのね…流石に…疲れるよ。むしろフル出場してたオメガが元気なのが不思議なんだけど…」

これでも運動は出来る方なんだけど…流石に体力では敵わないな。
…まさか、毎朝、走ってるからとか…言わないよね?

「あれ?ユーノ君は?」
「ユーノなら、あそこよ。」

なのちゃんがユーノが見当たらないのに気が付いたのか、周りを見渡す。
すると、アリサちゃんが女の子達の固まっている場所を指差したんだけど…
あ~…愛玩されてる…。可愛いものに好きなんだものね。
けど…大丈夫かな?なんかグッタリしてるような…
ん~…しょうがない。

「ガルム。行って。」
「……」

足元で丸くなっていたガルムに指示を出す。
言いたい事が分かってくれたのか、静かに女の子達が居るところまで歩いていく。
そして、ユーノの首の部分を咥えて、戻ってくる。
女の子達には悪いけど…流石に、あれ以上はユーノが可哀想だからね。

≪た…助かった…。ありがとう。メビウス、ガルム。≫
≪とりあえず、ガルムの傍に居た方が良いよ。≫
≪我の影に居たほうがよろしいかと。≫

ユーノが念話でお礼を言いながら、ガルムの足元に隠れる。
そのまま、ガルムはまた丸くなって、長い尻尾でユーノを包むようにして隠してくれた。
これなら、大丈夫かな?

「本当にガルムって頭が良いわよね。オメガより良いんじゃないの?」
「にゃはは…。アリサちゃん、流石にそれは………」
「なのちゃん…否定してあげようよ…」

そう言いながら感心するアリサちゃんなんだけど…まぁ、ガルムは人間にもなれるからね。
実際、ガルムは冷静でとても頼りになる。用心深すぎの時もあるけど…それに助けられた事は何回もあるからね。

「メビウス、ガルムを家にお婿に出さない?」
「お婿?」
「ほら、私の家にも犬が沢山居るから、どう?」

確かに、アリサちゃんのお家には沢山の犬が居る。
それこそ、大型犬から小型犬まで色々と飼っているんだよね。
すずかちゃんは猫好きで、アリサちゃんは犬好きなんだ。
けど…ガルムにお嫁さんかぁ。
…あ~…ガルムが思いっきり、興味ありませんよ。見たいな視線を私に送ってくる。

「興味無いってさ。」
「そう、残念ね。…って言うかあんた…鳴きもしないのに、良く分かるわね。」
「家族だからね。」

足元に居るガルムを軽く撫でながら、答える。
私にとってガルムは家族も同然だから、表情が変わらなくても直ぐに分かる。
そんな話をしてる内に翠屋でも、結構な時間が過ぎて、チームのメンバーや、アリサちゃん達が帰っていく。
ちなみに、オメガもはしゃぎすぎて疲れたのか、家に帰ったみたい。
私はなのちゃんや桃子さんと一緒に店内の片づけをしている。
ガルムとユーノは先に帰ってもらった。いや…ユーノが凄くぐったりしていたからね。

「ごめんね。メビウス君、態々、手伝って貰って。」
「いえ、良いんですよ。ご馳走になりましたし。」
「そう?でも、もう大丈夫だから、帰りなさい。なのはもね。」
「良いのお母さん?」
「えぇ。二人とも、ありがとう。」

桃子さんがそう言うなら…良いのかな?
そのまま、私となのちゃんは、掃除道具を片付けて、翠屋を後にする。
少し家まで距離があるけど…なのちゃんとお話しながら帰ろうかな。
…ん?…これは……?

「エクス、魔力索敵かけて。」
『了解しました。少々、お待ちを。』
「ほぇ?どうしたの?」
「ん…少し、気になることがね。」

まさかと思うけど…。
連日のジュエルシードの回収で、私も魔力の波長を覚えている。
索敵魔法程じゃないけれど、多少の魔力は感知できると思う。
一瞬だけど…似たような波長を感じ取ったんだよね。
そして…エクスが報告すると同時に…更に大きな波長を感じ取る。

『マスター!!市街地にしてジュエルシードの反応を感知!!』
「やっぱりか…!!」
「市街地って…大変だよ!!」

なのちゃんの言うとおりだ…。
今までは人が少ない公園や、空き地といった場所だったけど…市街地となると不味い。
あれだけの高魔力体が、そんな場所で暴走を起こしたら…大惨事になりかねない!!
くっ…。私とした事が…疲れと、試合での高揚感の所為で見落としていたなんて…!!

「なのちゃん、走るよ!!」
「う…うん!!」
≪ガルム!!市街地でジュエルシードが暴走してる!!≫
≪了解しました。我等も直ぐに向かいます。ご無理は為さらぬ様に。≫

ガルムに念話を送りながら、市街地に向かって走り出す。
少しなのちゃんの体力が心配だけど…今は急がないと…!!


ガルム達と合流して、市街地に着いた私達の眼に映ったのは、そこら中から生えている…木の根っこだった。
道路やビル等の到る所から、木が生えている。
直ぐにバリアジャケットを展開して、空に飛び上がる。
やっぱり…市街地の被害が出てるか…。
中心部を見ると、巨大な大木がそびえていた。そして、魔力の反応が増大していくのが分かる。
速く本体の場所を見つけないと…大変な事になる…!!

「こ…こんな…」
「サテライト起動!!探せ!!ユーノは結界を!!被害を抑えて!!」
「分かった!!」

なのちゃんが隣で呆然している。無理はないけど…今はそんな暇はない!!
索敵魔法のサテライトを起動させ、蒼いサーチャーが天高く飛び上がる。
その間にユーノが結界を張り、空間を隔離してくれる。
よし…これ以上の被害は防げるはずだ。

「なのちゃんも、探して!」
「あ、う…うん!!エリアサーチ!!探して、災厄の根源を!!」
「メビウス様、気をつけてください。狙われています!!」

なのちゃんが集中するようにして、眼を閉じる。
私の方も索敵を再開しないと…
そう思った瞬間にバイザーに危険と表示される。
視線を向ければ、木の根や枝が、意思を持ったように襲い掛かってくる。
索敵はなのちゃんに任せるしかないか…!!
サテライトを中断して、ブリッツセイバーを展開。なのちゃんの前に出て、襲ってくる木の根を切り払う。
ガルムも足技や、バインドを鞭のように使って、枝を払っていく。
木の根とは言え…数が多いと…梃子摺るな…!!
今の私は、数を相手にする誘導魔法は持っていない。ソードウェーブは単体にしか効果がないし、ボムも連射はそんなに出来ない。
これは、後で何か考えないといけないね…!!

「メビウス君!!見つけたよ!!」
「よし、私が護るから、なのちゃんは砲撃魔法を!!封印効果も付加してね!」
「うん!!」

なのちゃんの周りに桃色の魔方陣が展開されていく。何時見ても…綺麗だね。
っと…見とれている場合じゃないね。今の私の仕事は…なのちゃんを護る事だ。
襲ってくる根をセイバーや、ソードウェーブで切り払う。
時々、纏まってくる時は、ボムやフリーケンシーで一掃する。動きが単調で、これならタリズマンを使わなくても済むかもしれない。

「いっけぇぇぇ!!」

なのちゃんの掛け声と同時に、桁外れの魔力の塊がジュエルシード目掛けて飛んでいく。
これが、なのちゃんの砲撃魔法のディバインバスターだ。本当にシンプルで、標的に魔力をぶつけるとのだけど…その威力は計り知れない。
これの直撃を食らった…多分、殆どの魔道師は堕ちるんじゃないかな?それだけの威力を誇っている。
訓練の時にタリズマンで防ごうとしたら、物の見事に消し飛ばされたことがある。ギリギリで回避できたけど…冷や汗が止まらなかった。

『ディバインバスターの直撃を確認。…目標…健在です!!』
「嘘でしょ!?」
「そ…そんなぁ…」
『…根の部分を細かくし、盾にしたものと思われます。完全には防げなかったのでしょう。反応は弱体化しております。』

声を出して驚くユーノとなのちゃん。流石の私も驚くよ…。まさか、あの砲撃で倒せないなんてね…
末端を盾にして、切り捨てて本体を護ったって言う事か。
けど、エクスの言う通り、確かに本体の幹にも亀裂が入っている。
そして、内部に居る男の子と女の子の姿を確認することが出来た。

「あの子達…どうして…?」
「願いを叶える宝石…か。願いが強いほど…歪んで強大になる、で良いんだよね?
「うん。そうなんだけど…。」
「ちっ…二人分だと更に強くなる、と言うことか…厄介ですね。メビウス様。どうしますか?」

ユーノに教えてもらったジュエルシードの情報を思い出す。
今までの暴走体を考えると、納得がいくかもしれない。最初に戦った犬も強くなりたい、とか、大きくなりたい、と願ったんだ。
それが歪んで…あんな姿になったんだろうね。

「なのちゃんは下がって。今度は私がやるよ。」
「で…でも!!」
『なのは様。マスターは貴女の事を心配しているのです。連日の回収や封印で限界でしょう?』
「なのちゃん、私を信じて…ね?」
「…うん。」

なのちゃんが心配そうに…だけど、頷いてくれた。
さて…反応が弱体化してる今がチャンスだね。確実に…決めさせてもらうよ。

「エクス、モード変更。一撃必殺。」
『了解しました。一撃必殺に移行します。』
「い…一撃必殺!?」

物凄く物騒な名前のモードだけど…私にとって、最強の単体攻撃魔法。
これを防がれると、不味いけど…防がれる気はしない。
キャンセルを併用して、一気にトップスピードまで速度を上げる。
急制動や急旋回以外にも、スピードが上がる時間を【キャンセル】することが出来る。
最も…使い慣れないと、自壊する恐れがあるんだけどね。
そのまま、エクスを巡航モードに変形させて、上にサーフィンするみたいに乗り、本体に魔力刃を展開する。
最後の足掻きなのか、枝や根が襲い掛かってくるけど…遅い!!

「ランスロット家戦闘家訓!!第一章!!」
『一撃必殺!!』
「ブルー・スライダー!!」

これが私の最強の単体魔法、ブルー・スライダー。
魔力を推進力として、機動と突撃を行う強引な技だけど…威力は最も高い。
しかも、私の周りにも不可視の魔力で防御してくれているから、実質、突撃中は無敵と言っても良い。
欠点は…魔力の消費が多いことなんだけどね。

「砕け散れぇぇぇぇぇ!!!!」

そのまま本体に突撃して…本体の幹を両断する。これなら…再生は出来ない!!
けど…これで終わりじゃない!!
ブルー・スライダーを一瞬で解除して、キャンセルで急旋回し、そのままランチャーで魔力弾を撃ち込む!!

「これで…終わりだ!!」

私の宣言の通り…本体の大木は、真ん中から折れて…崩れていった。


・なのは・
ジュエルシードを封印したけど…町に…沢山、被害が出ちゃった。
あの時…私が…早くに気が付いてれば…こんな事にならなかったのに…
メビウス君だって…疲れてたのに…私が、無理させちゃった…
少し、離れた所で私は町の様子を見ていた。ユーノ君は限界なのか、ガルムさんの腕の中で丸くなっていた。
結界をしても、町の被害は大きく、夕方の今でも混乱は続いている。
けが人や、混乱した人達の声が沢山聞こえてくる。建物も、殆どが壊れていて…滅茶苦茶になっちゃっているの。


「なのちゃん、大丈夫?」
「わ…私は大丈夫だけど…メビウス君は…?」
「流石に…疲れたね…。」

ジュエルシードを封印して、笑うメビウス君の顔は、本当に疲れているみたい…。
そのまま、エクスさんを地面に突き刺して、寄りかかっている。

「今回は…私のミス…だっかな。」
「え…?」
「ここまで注意力が散漫だったなんて…。今度からは厳戒態勢にしないとね。」

メビウス君が悪い訳じゃないのに…
言いながら、メビウス君は悔しそうに空を見上げる。

「メビウス君の責任じゃないよ!わ…私だって…」
「え?」
「どうして…メビウス君が責任感じちゃうの?疲れてたんでしょう?休みたかったんでしょう?
それなのに…私の事を気遣って…最後は自分で終わらせちゃった…。小さい時から…何時も何時も、私の事を考えてくれていた。
何時も何時も…私が迷惑をかけても、笑って、慰めて…助けてくれた。
けど…それでメビウス君が…メビウス君が怪我するのなんて私はいや!!私だってメビウス君の役に立ちたいよ!!」
「なのちゃん…」

気が付けば、私は泣きながら大声を出していた。
けど…メビウス君は困ったように笑って…優しく抱きしめてくれた。

「なのちゃん、ありがとう。…けどね?私もなんだよ?
私も…なのちゃんが怪我をするのなんて嫌なんだ。大丈夫。私は強いんだから。」

優しく笑いながら、メビウス君は私を見る。
…やっぱり、メビウス君はずるいなぁ…。その笑顔は…一番弱いのに…

「メビウス君…私…決めたよ。」
「ん?」
「私、もっともっと魔法の勉強する。遊び半分じゃなくて…しっかりとジュエルシードも集めるの。
それで…メビウス君の足手まといにならないようにするの!!」

メビウス君は、そっか、と言って私の頭を優しく撫でてくれた。
優しくて…暖かくて…とても…安心するの。



・メビウス・

そっか…心配させちゃったんだね…。
私の戦闘スタイルは、殆どが単独で戦える事をコンセプトにしている。
詠唱が長い魔法はラジカル・ザッパー位だし、速度を重視した戦いを私は好んでいるから。
けど…確かに、なのちゃん達と一緒に戦うなら…集団戦闘も学ばないといけないね。
一人で突っ走るなら、それこそオメガと変わらない。
けど…オメガはそうするのは、自分が突撃役に適しているからと言う考えがあっての行動。
近距離戦闘に特化しているからね。
けど…私は近距離から中距離まで対応できる。私が援護するって言う選択肢もあるんだ。
やれやれ…私もしっかりと勉強しないとね。

『マスター、接近する魔力反応を確認しました。』
「なに…?」
『該当データありです。…フェイト様のようですね。』

バイザーに表示された方向を向けば…こっちに来る金色の魔力光が見える。
私達に気が付いたのか、上空まで来ると降りてくる。

「メビウス…!?」
「あぁ…やっぱり、フェイトちゃんだったんだ。」

流石に驚くよね。町も大きな被害だし…私達もバリアジャケットを展開してるからね。

「メビウス君…その子誰?」
「メビウス…そっちの子は…?」

私の後ろに隠れていたなのちゃんが、フェイトちゃんを見つけて、フェイトちゃんも私となのちゃんを交互に見るんだけど…
あれ?なんか一瞬、空気が重くなった気が…?

「こっちは高町なのは。私の幼馴染。」
「幼馴染…」
「向こうがフェイト・テスタロッサ。私の友達だよ。」
「友達…」

交互に紹介するんだけど……二人とも、なんか…重いよ?
ガルムなんて様子見みたいにしてるんだけど…

「…フェイトちゃんは…どうしてここに?」
「…ジュエルシードを渡してほしい。」
「え…?」

そう言いながらフェイトちゃんは私達にデバイスを突きつける。
その瞳は…冷たく…無機質だ。あの時みたいに…優しい光はなにも見えない…。
流石に恐いのか、なのちゃんが私の背中に隠れるけど…
っ!?…一気に殺気みたいなのが膨れ上がった…

「…フェイトちゃん、落ち着いて…ね?お話しよう?」
「話す事なんて何もない。大人しく渡して。」
「…どうしたのフェイトちゃん?」

ほんの一瞬だけど…またフェイトちゃんの瞳に悲しそうな光が宿った。
それに…デバイスを持つ手が少し…震えていて、とても辛そうに私は見える。
エクスをなのちゃんの近くに突き立てて、攻撃する意思は無いとアピールする。

「フェイトちゃん、私もなのちゃんも攻撃しないから…デバイスを下ろして…ね?」
「……いで…」
「え?」
「来ないで!!」

叫ぶと同時に槍のような魔力弾が打ち出されてくる!?
エクスは無いし…やばい…!!
私に着弾はしなかったものの、地面に命中し、爆発を起こす。
その衝撃でバイザーが割れたのか、左目の上に痛みが入る。
多分…欠片で切ったな…!!

「メビウス君!!」

なのちゃんが悲鳴に近い声を上げながら、こっちに駆け寄ってくる。
まぁ…正直…かなり、効いた。体力の消費が激しい身体には…きつい。
あ…抑えても血が出てくるか…深くやったみたいだね。

「あ…あぁ…」

私の傷を見て、フェイトちゃんが…何かに怯えるようにして、後退りしていく。

「どうして…メビウス君はなにもしないって言ったのに!!なんで攻撃するの!!」
「……」
「メビウス様!?貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!」

なのちゃんが泣きながら、私を助け起こしてくれる。はは…血で視界が赤く染まってるよ…
眼は無事でよかった。流石にこの歳で隻眼とかはなりたくない。
異常に気が付いたのか、ガルムがこっちに走ってくる。そのままフェイトちゃんに攻撃しようとしたけど、私はそれを手で制止する。

「フェイトちゃん…一体どうしたの…?」
「……ごめんなさい…!!」

それだけを言うとフェイトちゃんは空に飛び去っていってしまった。
私も後を追おうとしたけど…背中に強くなのちゃんが抱きついて飛び上がれなかった。

「メビウス君…行かないで!!行っちゃ駄目だよ!!怪我もしてるんだよ!?」
「なの…ちゃん…」
「どこにも…行かないで…。一人にしないでよう…」

泣き顔でなのちゃんが私を止める。
私はただ…慰める事も…追うことも出来ずに…その場に立ち竦んでしまった…
…ごめんね…なのちゃん。フェイトちゃん…
私は…何も出来ない…




あとがき


はい、本日は休日に付き、午前中で仕上げてみました。
本日のノルマは達成!!駄文でも達成!
今回はなのちゃん決意する。フェイトちゃん迷うをコンセプトにしてみました。
うん、微妙もいいところですね。
女の子に抱きつかれる男の子って…萌えません?
抱きつく女の子に、じゃなくて、抱きつかれる男の子に。ですよ?
…作者だけですか?
ランスロット家の家訓は…ちゃんとしたのもありますが、今回は戦闘家訓を出してみました。
いや…だって両親が…ねぇ?
次回はフェイトちゃんと仲直り、でも書いてみようかと思っています。ではでは~

以下返信

34様

日本人らしくジャンを純にしてみました。勇次は分かりやすくて良いですね。
黄色の13番が居たら、逆に負けていると思います。(笑
04で初見のミッションは…トラウマです…。迫りくる恐怖が…!!

ザムB様
原作でも、確かにそうでしたよねぇ。
そしてキンピカ…確かに…苗字がそう見えるかも(笑
羽々斬は結構、カッコいいと思うんですよね。現在、思案しております。


ダンケ様
ベンチに居るだけで効果がある。なんと言うスーパーエース(笑
メビウス君は何でもこなせますが、努力もしていますね。サッカーはオメガ君が上、お菓子作りはなのちゃんが上です(笑
VRデバイスの入手経路は…少しずつ明かそうかと思っていますので…



[21516] 10話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/09/24 14:33
・メビウス・

「………」

ザーザーと雨音が聞こえる。天窓を見れば、滝のように雨水が流れている。…さっき降り始めたんのか…
今日、私は学校を休んだ。理由は…眼の怪我。
大事にはならなかったけど…左目は完全に包帯で覆われている。
眼の部分には傷は無かったけどね。でも結構、傷が深いんだけど…そんな事はどうでもいい。
私は一人で、自室のベットで仰向けになりながら考える。ガルムはアヴァロンの工房に手伝いに行ってもらっている。
…そうしないと一人でフェイトちゃんのマンションに、殴り込みを仕掛けそうだったからね…。

「…なんでだろう…?」

思い出されるのは怯えた表情をしたフェイトちゃん。どうして…悲しい眼をしたんだろう?
…絶対に私に怪我をさせるつもりはなかった。これだけは断言できる。
それだったら、最初から私に魔法を直撃されるはずだからね。あの状態で食らったら、戦闘不能になっているのは間違いない。
ザーザーと雨が降る。考えがまったく纏まらないまま、時間は夕方。

(悩むのは後でだぜ!!今は突っ走ろうぜ!!)

…浮かぶのは何時でも騒がしい親友の笑顔。まったく…今日は一回も会ってないのに、良くもまぁ…鮮明に思い出せるよ。
けど、確かに…何時までも悩んでいてもしょうがない…か。行動を起こさないといけないね。
…さっきと同じ、時間は夕方。雨が降ってても関係ない。さぁ、仲直りしに行こうかな!!
手ぶらで行くのもなんだし…今日は何を作ろうかな〜。
傘を差して、走り出す。目指すはスーパー!!


スーパー店内

「お前たち!!商品を死守せよ!!」
「無理です!!フォード店長!!特売中なんだ!!」
「貴様…後で譴責してや…!!」
「店長が人波に飲まれた!!」


…特売場は物凄い事になってるね…今回は用事が無いから、近づかなくて良かったかな。
…前はここで、フェイトちゃんと再会したんだけど…今回はそうは行かないよね…
さて…今回は適当に…鳥の唐揚げにでもしようかな。最近は、少量の油で作れる唐揚げ粉があるから便利で良いんだよね。
…店内でも相変わらず、外の雨の音が聞こえてくる。大雨だなぁ…

「1520円になります。」
「2000円でお願いしますね。」

会計を済ませて、買った物をマイバッグの中に居る。
さて…そろそろフェイトちゃんの家に行こうかな。
スーパーを出て、マンションを目指して歩き始める。
夕方で、しかも雨のせいで辺りは薄暗くなってきている。
…あれ?…どうしたんだろう?
視界に移る車椅子の女の子。傘を持っていないのか、店仕舞いをしてある商店の下で雨宿りをしていた。
…そう簡単には止まないし…マンションの近くでもあるし…別に良いかな。
そのまま、私は女の子の方に小走りで近づいていく。

「こんにちわ。」
「へ?え?…こんにちわ?」
「いきなりごめんね。雨宿りかな?」
「そ…そやねぇ。まさか、いきなり降るとは思わんかったから。」
「天気予報では曇りだったんだけどね。家は近いの?」
「あ〜…まだ少しあるなぁ。」

女の子が小さく笑いながら、濡れた髪を触る。
夕方から、いきなり降って来たみたいだからね。

「それじゃ、はい。この傘使って良いよ。」
「へ?ええの?」
「うん。困ってるんでしょ?」
「そうやけど…これ借りたら、キミが濡れてまうよ?」
「目的地はそこだから、大丈夫だよ。走ればすぐだからね。」
「ありがとうなぁ。」
「それじゃ!!暗くなってるから気をつけてね!!」

女の子に傘を渡して、私は雨の中を走り出す。
滑るから気をつけないとね…。さぁ、目的地のマンションまであと少し…



「あ…名前、聞けへんかった…。…男の子みたいやったけど…私って、言ってたしなぁ…」



・フェイト・

どうして…あんな事をしてしまったんだろう…
あの光景が頭から離れない。
フォトンランサーの爆発で…顔を怪我したメビウス。流れる血が…彼の顔を紅く染めていた。
そして…駆け寄った…白い魔道師、高町なのはの眼。あれは…私に対する怒りと…憎悪が込められていた。
どうして…?どうして…?私は攻撃してしまったの?
何で…二人が一緒に居るのを見て…心が痛くなったの?

「……私は……」

私の内面を表すように…雨が降っている。私はリビングで、膝を抱えて小さくなっている。
後悔、悲しさ、せつなさ、色々な感情が混ざって…気持ちが悪い。
怪我させたのに、私を心配そうにしていたメビウスの瞳と…なのはの憎悪の瞳。
心の底では、追ってきてくれると思っていたの私。それが…凄く嫌に感じる。
どうして…どうして…どうして…

「…フェイト、夕飯はどうする?」
「…いらない…。」
「要らないって…今朝からなにも食べてないじゃないか!食べないと、身体壊しちまうよ?」
「……ごめん、アルフ。…一人にして…」
「…分かったよ。けど、食事だけは後でとっておくれよ?」
「……」

アルフには悪いけど…食欲もないし…一人にして欲しい。
小さくうなずくと、アルフが部屋を出て行くのを感じる。
ごめんね…けど、今は…そっとしておいて欲しい。
メビウス…会いたい…会いたい…。けど…私には会う資格が無い…
彼を傷つけた…彼を悲しませた…彼…を…

「ぅ…あぁ…!!」

小さく嗚咽が漏れる。後悔と悲しさが私を押しつぶそうとしてくる。
誰か…助けて…!!

「…泣いてるの?」
「……あ…」

優しく誰かが私を抱きしめる。
顔を上げると…蒼い髪が視界の端に映る。私を知っていて…私が知っているのは…彼だけ…

「メビ…ウス…?」
「そうだよ…。フェイトちゃん。こんにちわ。」

優しく微笑む…メビウスが居た。会いたいと…会いたいと願って…
謝りたいって…謝りたいって…何度も何度も思って…
もう…何も考えれなくて…私は…彼に抱きついていて…謝っていた。

「メビウス…ごめんなさい…ごめんなさい…わ…私…私!!」
「…大丈夫だよフェイトちゃん。…怒ってないから…ね?」
「ごめんなさい…ごめんなさい…!!嫌いに…ならないで…!!」
「…嫌いになんてならないよ。大丈夫だから…辛いときは泣いたほうが良いよ。泣いた分だけ…心が綺麗になるから…
泣きたい時は、声を出して泣いて。私でよければ…受け止めるから。」

それでも涙が止まらない。彼の温もりを求めるのが止まらない。
私は…私は…!!



・メビウス・

「〜♪」
「えっと…手を猫にして…よいしょ。」

鼻歌交じりでキッチンに立つ私。
フェイトちゃんもさっきまで泣いていたけど…今は大丈夫みたい。時々、こっちを見て、顔を紅くしてるんだけど、まぁ…あんなに泣いたら恥かしいよね。
今は前みたいに一緒にキッチンに立って、料理を手伝ってくれている。
一人で作るより楽しいし、きっとおいしくなるね。


「今日は何を作るんだい?」
「鶏肉が安かったから、唐揚げだよ。」
「へぇ。しっかし、あんたって何でも作れんだね。」
「基本的なのは大体は、大丈夫かな?」

アルフが感心したように私の手元を覗き込む。
料理は楽しいしからね。…母さんが失敗しそうになると、私がサポートとかするからね。
何気に父さんも料理が上手で、もしかすると母さんより上手かもしれない。
母さんも最近は、父さんに対抗してか料理本も見てるんだけど…まだ少し下手かなぁ。


「野菜は、このくらいで良い?」
「それくらいで…良いかな?アルフ、前に作ったドレッシング、出しておいてね。」
「はいよ。確か・・・あったあった。」


・1時間後・

「ふぃ〜…おなか一杯だよ。」
「ご馳走様。」
「いえいえ、お粗末さまでして。」

唐揚げ…沢山作った気がするんだけど、全部食べちゃったなぁ。
バランスよく野菜も食べてくれたから、良いんだけどね。
さて、食べ終えた食器を、キッチンに持っていって洗わないとね。食器は貯めて置くと、洗うのが大変なんだよねぇ。

「メビウス、私も手伝うよ。」
「そう?それじゃ、洗ったのを拭いててくれる?」
「うん。」

カチャカチャと音を立てて、食器を洗っていく。
フェイトちゃんも手伝ってくれているからか、速めに洗い終わりそうだね。

「ねぇ、メビウス。」
「なに?」
「そう言えば…どうやってマンションに入ってきたの?」
「あぁ。入り口でアルフに会ってね。入れてもらったよ。」

あそこでアルフに会わなかったら、入れなかったからなぁ。
しかも、エクスがハッキングして開けようとしてたから、危なかった…。
ちなみに、今は新型の魔法を構築する作業をして貰っているから、静かなんだよね。

「…何も…聞かないの?」
「…うん、聞かないよ。」

フェイトちゃんが手を止めて、私を見つめてくる。
きっと、ジュエルシードの事だろうね。確かに気にはなるけど…

「きっと、理由があるんでしょ?それに…聞いたら答えてくれる?」
「…それは…」
「でしょ?だから、聞かないよ。まぁ…私達もあれを集めているけど…
今度はキチンと話をしようね?流石に、いきなり攻撃されるのは驚いたから。」
「あぅ…ごめんなさい。」
「ふふ。冗談だよ。」

フェイトちゃんは優しいから…なにか訳がある筈。けど、無理に聞こうとはしない。
何時か話してくれる時が来るまではね。
っと…洗物が終わったから…そろそろ、帰ろうかな。

「さてと…そろそろ、帰ろうかな?」
「え…。帰っちゃうの…?」
「うん。ごめんね。時間も時間だしさ。」

時計を見ると、8時近くになろうとしていた。
流石に、ガルムが居ない状態で、夜道を私一人で歩くのは不味いから。
今回の料理のレシピも、冷蔵庫に張ったし…洗物もしたし…良いかな?
すると、フェイトちゃんが、私の服の裾を握ってくる。

「……」
「フェイトちゃん?」
「あ…ごめんなさい…」

ハッとしたようにして、裾を離すけど…少しうつむき加減だ。
もしかして……

「…寂しいの?」
「……」(コク)

フェイトちゃんは、顔を紅くしたまま、小さく頷く。
ん〜…どうしようか。…怪我で、明日も学校は休む事になってるんだけど…

「…電話、借りるね?」
「え…?」



・フェイト・

顔が熱い、顔が熱い、きっと今は私の顔は真っ赤になっていると思う。
メビウスが帰ると言った時に、引き止めちゃった…
そうしたら…家に電話をかけて…

「連絡したんだけど…泊めてくれるかな?」

その…寂しかったのもあるけど…今は凄く恥かしい。
なんであんな事、出来たんだろう…?
今は、お風呂から上がって、リビングにいるんだけど…

「フェイトちゃんの髪って、綺麗だよねぇ。」
「そう…かな?」

座っている私の髪を、メビウスが丁寧に梳いでいく。
手つきが凄く優しくて…なんだか気持ちが良い。

「後は…リボンは…こっちで良いかな?」
「あ…そのリボン…」

メビウスが取り出したのは、彼と同じ蒼いリボンだった。
それを丁寧に、髪に結んでくれる。お揃い…になっちゃった…
恥かしいけど…嬉しい。

「どう…?」
「うん、似合ってるよ。」

髪に結ばれた蒼いリボンに触る。
なんだか…凄く…安心できる。何時も…メビウスが傍に居るような気がする。
…ありがとう、メビウス。ずっと…ずっと、大切にするね…





あとがき

うぉぉ…クシャミが止まらない、頭が痛い、妄想がまとまらない。
とりあえず、王道イベント、お泊り、をやってみました。
…お風呂とか一緒に寝るとかは…また今度です。妄想がまとまりません。
なのはより、フェイトにリボンを先にプレゼントしたメビウス君。さて…どうなることやら。
最後に…関西弁がぁぁぁ…いまいち分からない。
誰かお勧めの関西弁変換サイトを教えてください…


以下返信


ダンケ様

ブルー・スライダー。ゲームで決めたことは一度もありません(泣
チート主人公、それがメビウス君!!
今回はやきもち?フェイトでしたが…ヤンデレフェイト…ゴク…


筋肉大旋風様

ノリ的にはヴァオーみたいなのですねぇ。
まっすぐ馬鹿?と言いますか。(笑
A-10…使った事があまり無いという作者。対地任務にもファイターですがなにか?フランカーとか大好きです(笑
X2の彼は…な



[21516] 11話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/09/28 17:11
フレッシュリフォー本社ビル
応接室

・閃・

「…はぁ!?」
「だから…姫の子守げふんげふん。お相手をして欲しいんだよ。閃君。」

何時もの如く、呼び出しを受けて、来て見れば…どういうことだよおい。
姫って…何時から、ここはそう言う設定になった?
俺の目の前には、社の重役のおっちゃんが手を合わせて懇願している。
何度か会った事があるんだけど、いや…小学生相手になんつう事してんだよ…。

「…えっと…説明を求めてもいいすか?姫って…誰?」
「おぉ、すまないね。それを説明していなかった。」

そう言うと重役のおっちゃんが一枚の写真を取り出しして、俺に渡してくる。
一人の女の子が写っていた。…かなり小さいな…5~6歳くらい?
話の流れ的に…姫ってこの子か?

「名前はリリン・プラジナー。社長のご息女だ。」
「ぶっ!!??」
「…お茶が…」

噴出した俺は絶対に悪くない。飲んでいた緑茶をおっちゃんにぶちかましても、俺は無罪だ。
出たよ…超天才が。まさかとは思ったが…。
リリン・プラジナー。、プラジナー博士に娘して、トリストラム・リフォーの養女。天才と言っても良いだろうな
…ちなみに社長であるトリストラムは存命だ。かなりの多忙で、俺の両親も、年に1回会えるか会えないかとか言ってたな。
もし、同じなら…あと数年でトリストラムは暗殺されるんだろう…な。
だが…ここには管理局がある。流石に…奴らが居る訳はないと思いたい。
…奴らが居たら…最悪としか言いようが無いからな。


『あれですね?健気な少女を自分好みに教育すると…なんて光源氏!!閃!!恐ろしい子!!』
「黙ってろ。」
「閃君…君はそんな事を…」
「あんたも真に受けてんじゃねぇよ!!またお茶ぶっ掛けるぞ!!??」

人が真面目に思考の海に潜ってる時に、このボケデバイスがぁ…!!
重役のおっちゃんも変な反応してんだろ。
第一…俺にそんなフラグが立つわけ無いだろう。俺はあれだぞ?モブキャラだぞ?
なのはやらメビウスやらの主人公クラスでもないし、フェイトとかオメガの副主人公でもない。
そこら辺に居る一般ピーポーだ。

「まぁ…暇だからいいんですけど。」
「ありがとう!!実は先ほどから、奥で待っているんだよ。」
「はぁ…さいですか。」
「それじゃ、あとはよろしく!」

…とりあえず…行ってみるか。
軽くノックしてドアを開ける。

「失礼します。」
「こんにちわ、お兄様♪」
「……」
『ふ…不覚…。本気で萌える…萌えてしまう…これは面倒な事に…なった…』

あ…いかん、…花畑見えた。
目の前には可愛らしい服を着たピンクのお嬢様が、満面の笑顔で俺を迎え入れてくれた…
素でレーベンが萌えてるぞ…
いやいやいや…これはやばい…。何がやばいって…

「どうしました?お兄様?」

何でお兄様?狙ってる?狙ってるだろ?しかも、首を傾げるんじゃないよ!!45度とか完璧すぎるだろ!!??
天才の名に偽りは無いってのか!!??純真無垢すぎるだろ…!!護ってあげたいオーラが尋常じゃないんだがね!!??
…某白騎士が信奉者になる気持ちが分かるぞ。

「…確認しても良いか?」
「はい?」
「お兄様って…俺か?」
「はい、閃お兄様で間違いありませんわ♪」
『………今回ばばばばかりは閃…やりやりやりやりますね。』
「…処理落ちしてんぞ。一旦切れ。」
「了解してラジャー。」

拝啓、父さん、母さん。どうやら…俺にフラグが立ったかもしれません。…良いじゃん!!一回くらい言っても良いじゃん!!
10秒くらいフリーズしたが、深呼吸を10回以上繰り返して冷静になる。過呼吸にはならなかった。…それだけ冷静じゃなかったって事かよ。

「…えっと、初対面…ですよね?」
「はい。そうですわね。あ、敬語じゃなくて良いですよ。私が年下ですから。」
「…そうか…。なんで俺のこと知ってるわけ?」
「主任や重役の方達から、色々と聞いておりましたわ。」
「なんて…?」
「主任曰く、才気あふれる若き天才だと。発案するデバイスも、全て従来の思考にとらわれていない、奇抜なものだと伺っております。」

あのボケ主任がぁぁぁぁ!!!人の事を過大評価しすぎだろう!!
人生良すぎると碌な事が無いって、某アメフト選手のクォーターバックが言ってんだろうが!!
俺の脳裏に歯を光らせて、親指を立てる主任が過ぎる。後で奴に、世界で一番臭い缶詰を送ってやることを誓う。

「まぁ…んな事はどうでもいい。と言うかどうでも良いという事にしてくれ。。」
「?はぁ…」
「ところで、なんでお兄様?」
「私、こう見えてもそれなりに、お勉強ができるのです。」

知ってます。だって天才じゃん。

「以前、デバイスの開発部に行った時に、見慣れないデバイスの設計案がありましたの。
聞けば、まだ9歳の子供が発案したとか。それで興味持たない方がおかしくありませんか?」
「9歳の子供って…君…まだ5歳くらいでしょ?」
「私の場合は、自分でも異常と感じてますので問題ありませんわ。」
「開き直っちゃってるのね…」
「どんな人なのか、色々とリサーチしたところ。なんと、帝さんの息子さんだと言うではありませんか!!
それで、良い機会だと思い、お呼びしたわけですわ。」
「はぁ…」
「それに私、どうしてか近い年齢の方達とは、話が合わないと言いますか…。
いえ、別に自分が特別と思ってるわけじゃなくて…」
「…つまり、友達が欲しいって事か?」
「……はい。」
「素直にそういえよ…」

回りくどすぎるぜおい。
まぁ…流石に…友達になろう!!て言われたら…背中が痒くなって、のた打ち回る自信がある。
と言うか…転生前の小学生時代を思い出すと…黒歴史満載かもしれんな。友達になろう発言や、スカートめくなんでもないなんでもない。
若干、呆れたように見ると…リリンはモジモジしながら、小さくうなずいていた。
…ド真ん中直球ストレートだよちくしょう…

「ま…まぁ、別に良いけど…」
「本当ですか!!」
「あぁ、…けどよ、友達でお兄様って言うのは…変じゃないか?」
「そうなのですか?主任がこう呼べば喜ぶと、仰っていましたが…」

…臭い缶詰と世界で一番辛い唐辛子を、送ってやることに決めた俺だった。





管理局 本局
執務官室

ここでは二人の少年が作業をしていた。
一人が書類をまとめ、もう一人が眼を通していく。

「……次は?」
「これだ。…そろそろ昼食にしないか?食堂、混むぞ?」

書類を纏めていた少年が、壁にかかっている時計を指差す。
確かに、時間は12時を過ぎていた。

「そうしようか。午前はここまでだ。」
「約3時間でこの程度か。…まだかかりそうだな。」

それぞれの机の上にある資料を片付ける二人の少年。
一人はクロノ・ハラオウン。若干14歳で管理局執務官を勤める少年。
もう一人はブレイズ・トリスタン。執務官補佐として、クロノをサポートしている少年だ。
ちなみに、彼も14歳である。


食堂


・ブレイズ・

「久々に戻ってきたら書類の山とはな。」
「仕方が無い。管理局は、慢性的な人員不足なんだ。」

クロノが肩をしかめながら、ドリンクに口をつける。
食堂では、局員達が昼食をとり始めている。流石に、殆どが俺達より年上だ。
そんな事を気にしていたら、何も出来ないんだがな。

「エイミィにも、書類処理を頼めれば良いんだけどな。」
「無理だろう。さっき、リンディ艦長が呼び出しをしていた。」
「…帰ってきて早々に、また出港か。」
「諦めるしかないな。」

もう一人の補佐官であるエイミィに分配できれば、多少は楽になるんだが…うまく運ばないか。
やれやれといった調子で、食事を再開するクロノと俺。
確かに、管理局は人員不足だ。憧れを持つ職業だろうが…危険も隣りあわせだ。
俺達だって、過去に数回は死にそうな経験をしたこともある。
それがいい経験になったと言えば…言えるのだがな。

「次の任地はどこになるんだろうな。」
「僕に聞くな。それこそ艦長に聞いてくれ。」
「確かに。…速めに書類を片付けておくか。そうしないと溜まっていく。」
「よう、ブービー共、なにシケタ面してんだよ。」
「失礼するよ。久しぶりだね、クロノ君、ブレイズ君。」
「バートレット教官に…ランパート教官。」

ジャック・バートレット教官とマーカス・ランパート教官。
俺の恩師であり、指導してくれた教官達だ。
二人とも、トップエースの実力を持つ魔道師。教育隊でありながら、航空隊にも所属している。
俺はバートレット教官に、クロノはランパート教官に模擬戦や、訓練でお世話になっていた。
もっとも、俺達が勝てる訳もなく、惨敗続きだがな。
二人に言わせれば、魔法の素質より、経験値の差だというらしい。
確かに、二人の踏んだ場数は、俺達なんかとは比べ物に成らないほど多いはずだ。
二人はトレーを持って俺達の前に座る。

「お二人とも、昼食ですか?」
「さっきまで、新入りの訓練をしていたところなんだ。今年は何人残れるな。」
「まったく、最近のひよっ子共はだらしねぇな。あんなんじゃ直ぐに堕ちちまうぞ。」
「バートレット教官の扱きに耐えれたら、凄いと思いますが…」
「まだまだ序の口だぞ、ブービー。」

実際、バートレット教官の指導は厳しい。しかし、それは新人達を一流に育て上げたいという心だと思っている。
俺も彼に指導を受けなければ、14歳で執務官補佐や、死線を乗り越えられなかったと思う。
それはクロノも同じだ。ランパート教官は、バートレット教官と違い物腰は柔らかいが、そのハートはとても熱い。
まさに二人はエースとしての心と技術を持っていると、俺は思う。
彼らの指導を乗り越え、鍛えられた局員は優秀な魔道師として活躍もしている。…一応は俺達も含まれている。

「ランパート教官の方はどうなんですか?」
「それなりに良い生徒達だと思う。まぁ、クロノ君ほどの優秀な生徒は居ないけどね。」
「光栄です。」

そう言って笑うランパート教官にクロノ。
本当に師弟関係の絆が強い。

「まったく、ガキの時分から、光栄です、とか使ってんじゃねぇよ。」
「クロノですから。バートレット教官の方はどうなんですか?」
「あん?なんだブービー、お前も褒められたいのか?」
「違いますって。貴方の扱きに、耐えられる魔道師が居るかどうかが気になるだけですよ。」
「よく言うぜ。物になりそうなのは居るが…これからどうなるかだな。」

バートレット教官が難しい顔をしながら、ドリンクを口に含む。
人手不足と言うこともあり、上層部は訓練途中の魔道師達を、部隊に配属しようとすることがあった。
バートレット教官はそれに異議を申立てるために、昇進の道から遠ざかっている。
まぁ…彼を信頼する教官や部隊長は多いし、まともな幹部達にも信頼されている。
最も、教官は昇進などに興味は無いようだがな。
四人で賑やかに昼食を取っていると、クロノの小型端末から呼び出し音が響く。

「…ブレイズ、第8会議室に集合だそうだ。」
「了解。片付けていくか。失礼します、教官。」
「次の任務か?」
「大変だろうが、がんばってきなさい。」
「しくじるなよ。」
「はい。それでは、失礼します。」

両教官に軽く敬礼を返して、トレーを片付ける。
さて…次の任務はどうなることやら…


「ったく、ガキが大人ぶって働くこともねぇだろうに。」
「僕達、大人の責任だ。子供達が笑う未来を作れなかった…ね。」
「…まぁ、あいつ等ならうまく出来るだろう。」
「あぁ、君と僕の秘蔵っ子達のだからね。」
「頑張れよ。次期エース達よぉ。」



ブレイズ・トリスタン。
管理局、執務官補佐役。
アースラ所属、空魔道師。

ジャック・バートレット&マーカス・ランパート
管理局、教育隊及び航空隊所属。
バートレットの教え子、ブレイズ。
マーカスの教え子、クロノ。



あとがき

…今回は登場人物が一気に増えた!!の回でした。
さて…メインキャストのブレイズ君登場っと…
性格的には冷静沈着を目指して生きたいかと…出来るかなぁ…
そして…ある意味で素晴らしい教官達がある管理局。
いや…この人達に指導されたらすさまじい事に…
年齢は原作より10歳程度若いと思ってください。なのでマーカスは25歳。バートレットは32歳…かな?
リリン様は…イメージ的に某ピンクの歌姫様で行こうかと…まだ覚醒はしておりません。
さて…まだまだ出したいキャラは居ますので…考えなければ…

あとがき

ダンケ様

メビウス君無双は…失礼しました。厨二主人公として大目に…!!
とりあえず、フラグを立てれる限り立てておこうかと思いまして…
正直、一期ではオメガ君のフラグは微妙に立てづらいので…。一応は閃君が今回、フラグを立てたような感じになりました。
…どうやって地球にリリン様を介入させますか…いっそ転入させれば…


ADFX-01G-2様

A-10使ってみました。なにあの爆弾の威力。反則でしょう…!!
リムファクシがゴミのように…
流石は…現実に居た超チート人間の閣下が、作れといった対地攻撃機。安くて頑丈で操作性に癖のない機体…でしたっけか?
アイガイオンはロケットランチャーで片付けてましたが…今度A-10で挑んでみます!!



[21516] 12話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/10/01 23:47
・メビウス・

今日は連休の初日。
毎年連休を使って、温泉旅行をしている。
メンバーは高町家と月村家と私達。すずかちゃんのお姉さんの忍さんと、恭也さんは恋人同士なんだよ。
だから、結構な人数になる。ちなみに、他には私とオメガ、閃にアリサちゃん。父さんと母さんは急用で出掛けてしまって来れない。
そのかわり、ガルムが人間形態で参加している。名前は…ガルムのままなんだけど…。
小型のペットならOKと言うこともあって、ユーノもフェレットの状態で参加。
後ろで女の人達に、遊ばれてるんだど隙を突いて、少し離れた席で、恭也さんと話をしているガルムの元に逃げこんだ。
苦笑しつつ、膝の上に載せて撫でている辺り、ガルムもユーノに気を許しているんだろうね。
結構な人数のためか、忍さんがマイクロバスを頼んでくれたお陰でゆったりと向かうことが出来る。
私も今回の旅行は楽しみにしていた。連日のジュエルシード探索で、体力の消費が激しいからね。
息抜きするのには絶好の機会だ。

「あ~あ、ガルムさんの所に逃げちゃった。」
「仲が良いよね。…ねぇ、メビウス君?」
「はい?なんです美由希さん?」

なのちゃんのお姉さんの美由希さんが、声をかけてくる。

「ガルムさんは、アヴァロンの工房の人なんだよね?」
「はい、そうですね。」

流石に…使い魔なんて言えないから、工房で父さんの弟子をしているという事になっている。

「ふ~ん。大人っぽい人だよねぇ。…犬のガルム君も人間にしたらあんな感じになりそうだよね。」
「あ…あははは…」

美由希さんが、興味津々にガルムを観察している。…思いっきり犬のガルムなんだけどね…
まぁ…大人っぽいと言うか…冷静な態度をしてるからだと思う。

「温泉かぁ。楽しみだぜ!!」
「だなぁ。…しかしオメガ、なんだその荷物?」

閃がオメガのバッグを指差す。
うん…確かに着替えとか、洗面用具とか以上に…色々と詰め込まれている感じがする。
私や閃は着替えと暇つぶしの本以外、大して持ってきてないんだけど…

「決まってんだろ!!トランプに将棋に囲碁にオセロとゲーム機だろ?後はウノとジェンガに…」
「…なんでそんなに沢山持ってきたの?」
「皆で遊ぶためたぜ!!3人で24時間耐久ぷよぷよしようぜ!!」
「本気でそれを言ってるなら、俺はお前の友達止めるぞ。」
「なんだよぉ。ならメビウスやろうぜ!!」
「出来るわけ無いでしょ…。」

24時間なんて…出来ないし、やりたくない。折角の温泉なんだから、ゆったりしたいからね。
けど、諦めないオメガ。後ろで話している三人に声をかける。

「ちぇ~。いいや、アリサぁ!すずかぁ!!お前らはやるだろ!?」
「やらないわよ!!」
「オメガ君、温泉に入れないよ?」
「なのは…は、ヘナチョコだしなぁ。」
「へ…ヘナチョコ!?そんな事ないもん!!」
「だって、お前、2連鎖が限界だろ?」
「う…うぅ~!!」
「普通にやろうよ…」

けど…みんなで遊ぶのは良いかもしれないね。
折角の旅行なんだし…楽しみたい。



「温泉だぜぇぇぇ!!」
「オメガ!恥かしいから騒がないでよ!!」

旅館について第一声。飛ばすなぁ。アリサちゃんが止めるのも当たり前か。

≪部屋割りって…僕はどこになるんだろ?≫
≪先ほど、話を付けておきました。我らと同じ部屋になります。≫
≪ありがとう、ガルム。≫

荷物を降ろしながら、ガルムが肩に乗っかっているユーノに念話を送っている。
部屋割りは私、ガルムオメガと閃が一緒の部屋になった。
ユーノも、とりあえずは、一緒にしてもらった。流石に男の子だからね。
早速、荷物を置いてっと…


「さてと、温泉に行こうか。」
「良いな。とりあえず、汗を流そう。」
「おいおい。24時間ぷよぷよはどうすんだよ?」
「やらねぇよ!!アホ言ってないで行くぞ!!」


・温泉・

「はぁぁ…いい湯だねぇ。疲れが消えていくよ。」
「メビウス、じじ臭いぞ。けど、確かにいい湯だな。」
「でしょ?」

私と閃は、身体をお湯で流して湯船につかる。
本当に気持ちがいい。疲れが抜けていく感じがする。
少し離れた場所で、大き目の桶にお湯を入れて、ユーノも浸かってる。ガルムが近くで見ているから、大丈夫だろう。

「あれ?オメガは?」
「あぁ、サウナに入ってったぞ。」

サウナか…。いきなりだね。
さて、軽く温まったし、身体と髪を洗おうかな。閃は後で洗うといって、湯船でゆったりしている。
まずは髪を洗ってと…。私の髪は長いからか、結構時間がかかるんだよね。まぁ…母さんが手入れをしっかりとしなさいって言ってくるから、手は抜かないけど。

「おい、あの男の子凄いな。」
「あぁ。10分近く入ってるぞ…。しかも、微動だにしない。」

なんだろ?隣で身体を洗っている人達が騒いでいる。その人達が見る先にはサウナがあった。
髪と身体を洗い終わって、湯船に戻るけど…少し気になる。

「閃、オメガは?」
「あん?……まだサウナか…?」

二人して時計を見るんだけど…10分は過ぎている。
気になってサウナの小窓を見ると…オメガはまだ入っていた。
しかも、座禅を組んで…瞑想みたいなのをしてる。

「…あいつは何時から修行僧になった?」
「…さぁ?」

凄い汗をかいてるんだけど…大丈夫なのかな?
心配しつつも、オメガだし大丈夫か。という事にして湯船に戻る。

「やっぱり温泉は良いね。くつろげるよ。」
「流石に家の風呂はこんなにでかくないからな。まぁ、アリサ達の家の風呂はでかそうだからな。」
「お家も大きいからね。私の家の何倍だろ?」
「さてな。それを言ったら俺はマンションだぞ?」
「けど、高級マンションでしょ。充分広いと思うよ。」
「違いない。」

その後、5分後位に出てきたオメガは、汗だくだった。
そんなによく入ってられたね、と声をかければ…返ってきたのは、

「心頭滅却すれば業火もまた涼しだぜ!!」

…本当に何時から修行僧になったんだろ?
しかも、業火じゃなくて、ただの火なんだけど…


・ガルム・

今夜、寝泊りをする部屋に、服を置いて、我は散策に出ている。
…今は浴衣を着ているのだが…若干、涼しいな。
メビウス様達は、部屋で涼んでいる。オメガ様が持ってきた玩具で遊んでいるはずだ。
適当な自販機で、スポーツ飲料を買い、旅館内を歩く。
目的はこれといってない。強いて言えば、有事の為に、館内の構図を頭に入れている、と言ったところだろう。
用心深いかもしれんが、全てはメビウス様の安全の為だ。
そうしていると、前から、見たことのある女が歩いてくる。

「ん?あんたは…」
「…何故ここに居る?」

女---アルフが何故ここに居る?
我がここに居るのが不思議なのか、眼を丸くしている。我だって驚いてはいるがな。

「それはこっちの台詞だよ。…あんたがここに居るって事は、メビウスも着てるのかい?」
「質問を質問で返すな。我は常にメビウス様の近くに居る。それが答えだ。」
「回りくどいねぇ。ふ~ん。着てんだね。」

納得したように頷くアルフ、我がメビウス様の傍を離れるのは、メビウス様の命令以外にありえないことだ。
だが…ここに、こいつが居るということは、必然的に主である彼女も居るということだ。

「…フェイト様も着ているのか?」
「正解。ここら辺にジュエルシードがあるらしくてね。それを捜索してるよ。」
「お前は探さないのか?」
「目処はついたらしいからね。温泉にでも入ってこいってさ。まぁ、上がったところだけどね。」

そう言いながら我にタオルを見せる。
しかし…ジュエルシードか…どうしたものか。

「けど、メビウスが居るってなら…フェイトもこっちに、無理やり連れてくるべきだったね。」
「メビウス様に危害を加えるつもりか?」
「違う違う。…メビウスには感謝してるよ。最初にジュエルシードを渡してくれたそうだしね。それにね、メビウスのお陰で、フェイトはよく笑うようになった。
それこそ、始めてあったときの事や、スーパーでの事、料理を作ってた時の事を思い出して、楽しそうにしてたよ。
書いていったレシピで料理も作ろうとしてたしね。」

そう言いながらアルフは笑う。…メビウス様に話を聞けば、攻撃された時は混乱していただけ、と言われた。
本来ならば敵として排除すべきなのだろうが…メビウス様に攻撃するなと命じられている。

「…メビウス様が聞けば喜ぶだろうな。…我はもう行くぞ。」
「どうするんだ?あたしに会ったことはいうのかい?」
「…お前には借りがあったな。」
「借り?」
「メビウス様をマンションに居れてくれた事だ。…こちらに危害を加えなければ、我は何も言わん。これで貸し借りなしだ。」

そのまま、手に持っていたスポーツ飲料をアルフに投げ渡す。

「っと…これは?」
「湯上りなのだろう。水分補給はしておけ。…ではな。」

踵を返すと、我は部屋に歩き出した。



・閃・

現在、俺達は夕食までの間、部屋でトランプをしている。
ちなみにプレイヤーは、俺・メビウス・オメガ・なのはの4人だ。
アリサとすずかはオメガの持ってきたオセロで遊んでいる。ユーノ?座布団の上で寝てるよ。流石に起こすのは可哀想だからな。
三人とも湯上りで浴衣を着ている。眼福…か?…待て待て、俺は転生者だ…。中身は大学生… 
…リリンに萌えた時点で終わってる気がするがな…
なんにせよ、今はトランプでダウトしている。…しかし、オメガとなのは…顔に出すぎだろ。

「むぅ~…」
「ぬぉぉぉ…」
「二人とも…もう少し表情を隠そうよ。はい、8。」

メビウスが苦笑しながら、トランプをきる。

「…き…きゅー。」
「…ダ…。なのちゃん…そんな顔で見ないで…」

ダウトと言おうとしたメビウスだが…隣でなのはが物凄い涙眼で言わないで、と視線を送っている。
お前は…だったらダウトをやるんじぇねぇよ…。しかも、今、9じゃなくて…きゅーって言ったよな…
結局、メビウスが根負けで言わなかったけど…お前もお前で甘いなおい。
っと…次は俺か。

「んじゃ、10っと。」
「…11!!」
「ダウト。」

オメガの番だが容赦なくダウトする俺。オメガと11は切っても切れない運命だろ。

「Nooooooooooooo!!!!」
「はい、カードオープン。…8でオメガの負けね。」
「閃君、強いね。」
「むしろお前ら二人が弱すぎんだと思うけど…」
「うぅ…しょんなことないもん。」
「ま…まぁ。なのちゃんは隠し事苦手だから…」
「…覚悟しとけよ!!俺の手元には11が4枚あるぜ!!後で確実にダウトにしてやるぜ!!」

オメガが宣言してるが…どうなるかね…
そして、順番がまわり…メビウスが11のカードを出すターン。
迷わずに…出したな。

「11。」
「ダウトぉぉぉぉぉ!!!!」
「め…メビウス君、大丈夫?」
「ハッハー!!俺の戦略勝ちだぜぇぇ!!」
「知ってる?トランプで強いカードは三つある。キングと…エース。そして…」

騒ぐオメガを尻目に、メビウスは冷静に…そして、口元に笑みを浮かべながら、自分の出したカードを表にするが…
あぁ…オメガ、お前は勝てないよ…

「Joker…があるんだよ?」
「………」
「お…オメガ君が真っ白になったよ!!?」
「この位、予想しとけよ…」

結局、オメガがビリとなって、夕食の時間になった。



夕食はバイキング形式だ。まぁ…どこにでもあるのだな。
大人は大人達で別のテーブルに座って、ビールを飲んで楽しんでる。
…ガルムも酒飲んでるけど…良いのか?あいつ使い魔だろ?
何気に美由希が物凄く興味示してるぞ?…ばれなきゃ良いのか。

「がつがつがつがつ!!!」
「オメガ、少しは落ち着きなさいよ。」
「腹が減っては戦ができぬだぜ!!」
「だからって…ああもう、こぼしてるわよ!ちゃんと拭きなさい!」

…アリサとオメガって何気に似合いじゃないか?直線馬鹿とツンデレお嬢様って、鉄板の気がするのは俺だけか?

「このてんぷらおいしいね。どんな作り方してるんだろ?」
「うん、衣がサクサクしてる!」
「メビウスくんもお料理するんだ。」
「するねぇ。すずかちゃんは?」
「私も少しなら出来るかな?今度、何か作ってみるね。」
「あ!私もまたお菓子作る!!」
「それじゃ、三人で作って交換してみようか。」

なのはは…まぁ、言わなくても分かるから別にいいか。
…すずかも若干、メビウスよりか?…なのは見たいに正面から行くんじゃなくて、回り込むタイプなのかもしれんなぁ。
っと…俺も飯を食うか…。とりあえずは飲み物で喉を…

「ぶふぉ!!??」
「きゃぁ!?」
「せ…閃!?どうしたの!?」

コップの中に入ってたジュースを口に入れた瞬間に噴出す。少量なのが幸いしてか被害は少ないが…なんだこりゃ…!!
メビウスが心配して背中をさすってくれる。…ありがたい…

「げふ…ごほ…。なんだこれ…すんげぇ不味い…」

甘いと言うか…苦いと言うか…言葉に出来ないぞこれ…
なんでこんなジュースに…?
そこまで考えて…ハっと気が付く。これ…オメガが持ってきたんだけったか…

「おいそこの脱出マニア。」
「んぉ?」
「これなんだ…?」

若干、切れ気味にジュースの指差す俺。…視界の隅でなのはとすずかが怯えて、メビウスの後ろに隠れてるが、んな関係ない。

「決まってるぜ!!バイキングでドリンクがセルフなら、全部混ぜるのが当然だぜ!!Specially-made mix juiceだぜ!!」
「…そうか……こんなん飲めるかぼけぇぇぇぇ!!!」
「食いモンを粗末にするなぁぁぁ!!」
「作ったお前が飲めよ!!」
「ハッハー!!いやに決まってるぜ!!」
「なんでだよ!!??」
「だって、まずそうじゃん!!」
「…オメガ…天に還る時がきたようだな!!」
「ここで決着をつけるぜ!!!」
「あんたたち…いい加減にしなさぁぁぁぁい!!!」

アリサの声を合図に開始するバトル開始。
しかし、この1分後、士郎さんにより鎮圧されました。ひ…人の動きじゃねぇ…



・オメガ・

さて…夜はまだまだこれからだぜ!!
今、俺達は旅館内のゲームセンターで遊んでいる。
閃やメビウスはガンシューティングをしてる。なのはとすずかもそれを後ろで応援してるぜ。
俺はああ言うのは苦手だからしないんだぜ。
…そういや、アリサの姿がみえねぇな。どこにいんだ?
適当に探し回ると…お、見つけた見つけた。
クレーンゲームの前に居たぜ。

「アリサ。どうしたよ?」
「あ、オメガ。あの犬のキーホルダーが可愛いって思ってたの。」
「犬?…おぉ、あれか?」

確かに、中にはペアの犬のキーホルダーが置いてあった。俺が見ても結構可愛いと思うぜ。

「やんねぇのか?」
「何回かやってみたんだけど…難しいわね。なかなかうまくいかないわ。」

そう言いながら、コインを入れてクレーンを動かすアリサ。
おお、あと少しで取れるぜ!!…けど、あと少し届かないかぁ。結構、難しいところにおいてあるな。

「はぁ…仕方が無い、諦めるわ。」
「おいおい、諦めるのは速いだろ?」
「そう?けど、難しいわよ。」
「よし、俺がやってやるぜ!!アリサ、横でどの角度が良いか見ててくれ!!」
「え?…分かったわ。」

実は俺ってこう言うのが得意なんだよな!!
コインを入れて…。まずは横にクレーンを動かしてっと…。
そのまま奥の方に…

「ん~…そのくらいよ。」
「おう!!」

アリサの指示と同時にボタンを離す。クレーンが下がっていって…キーホルダーをキャッチ!!
そのまま、取り出し口の上まで来て…ゲット!!

「よっしゃ!!ゲットだぜ!!」
「へぇ、オメガってこう言うの得意なのね。意外だったわ。」
「すげぇだろ!!はいよ、これ。」
「え?良いの?」

取ったキーホルダーをアリサに渡す。俺は別に要らないからなぁ。

「おう!!」
「けど、オメガが取ったのよ?」
「気にすんな!!アリサの為だ!!この程度はお安い御用だぜ!!」
「なっ…!!?」

ん?なんか驚いて口をパクパクさせてるけど…なにしてんだ?金魚の真似か?

「どうしたよ?顔が紅いぜ?」
「~~…!!あんたって奴は…」
「いって!!叩くなっての!!」

なんでか知らないが…背中をばしばし叩かれる俺。アリサの為に取っただけなのになんで怒られんだ?

「…はい、これ。」
「あん?」
「ぺ…ペアで二つ付いてるんだから…一つはあんたが持ちなさいよ!!」
「俺が?別に全部、アリサにやるぜ?」
「良いから!!付けて大事にしなさいよ!!絶対よ!!」
「お…おう。」
「…ありがとう。」

最後に礼を言いながら、笑うアリサだった。
…怒ったり笑ったり…忙しいぜ!!




あとがき


オメガ君、どんだけ鈍いんだよおい。
やってきました温泉です。作者も温泉に入りながら考えたネタです。
旅館のバイキングは良いですよね。みんなでワイワイ食べれますし。…全部混ぜジュースも造れますし…くくく。
そして夜は夜で遊んで…。懐かしいなぁと思う今日この頃。
そして何気なく気が付いた…。今年って環太平洋戦争(ベルカ事変)の年じゃないですか?
…もっと早くに気が付けばよかった…!!

以下返信

オストー様

ブレイズ君の相手は…一応は考え付いております。
ライバル達は…検討中ですね。敵として出すには惜しすぎますし…出すにしても…どんな敵で出すべきか…
けど、まだ先になると思いますので…お待ちを。


ダンケ様

リリン様登場しました!本当の天才ですよ!
やはり親戚の子が無難ですよね。転入しても1年生ですが…確実になのはより勉強が出来そうで困ります(笑
お勉強会フラグ…良いですねぇ。是非ともなのはvsリリン様の勉強バトルを…勝敗が決まってる気がしますがね…!!


ADFX-01G-2様

A-10万歳A-10万歳!!(洗脳完了
まだまだ出したいキャラが居ます。
バートレットとマーカスが教官ですからねぇ。後はどうしますか…
…作者的に…バートレットの指導はなのは様レベルな気がします…


名無しの獅子心騎士様

狐とフラグを立てるオメガ君!!彼にはまだまだ動物と心温まる物語を…!!
閃にもフラグがたってきましたよ!
レーベンは…手遅れです(笑
電波に覚醒するリリン様…確実にレーベンと主任が原因だ!!


筋肉大旋風様

おっしゃるとおりです。頑丈ですよね。対地戦闘最強ですね。
潜水艦とか戦艦も簡単に沈めますし…すばらしい…!!



一陣の風様

作者も書き始めはどうなんだろ?と思っていましたよ(笑
気に入ってもらえてなによりです。面白いと言って貰えるだけで書いてよかったと思えますし、頑張れます!!
贔屓がシンシアとyellow4と謎の女・1号…物の見事に大人の女性ですな!!
けど…全員、後ろの二人はお相手が居ますよ?あの人達から奪える自信は…ありますか?(笑



[21516] 13話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/10/18 22:02
・なのは・

目の前でメビウス君と閃君がゲームをしてる。
新作のガンシューティングゲームで襲い掛かってくるゾンビ達を倒して進んでいるの。

「メビウス!上任す!」
「分かった!正面のゾンビは任せるよ!!」

画面の上と正面から襲ってくるゾンビを持っているガンコントローラーで打っていく二人。
私とすずかちゃんは後ろでそれを見ながら、応援。
最初に銃のタイプを決めれるみたいで、閃君はマシンガンを、メビウス君はハンドガンを選んだ。
それに閃君のコントローラーの持ち方は独特で、銃を横にしてプレイ中なの。
メビウス君は普通に銃を構える体勢でプレイしてる。
手数で押す閃君と、一発一発で倒して行くメビウス君はコンビネーションがばっちり。

「だぁぁぁ!!オメガはどうしたよ!!3人プレイも可能だろ!?」
「無理だって。あいつ、シューティングは苦手って言ってたよ!!」
「なら、なのはやれ!!シューティング得意だろ!!」
「えぇ!?むむむ無理だよぅ。」
「下!!下からも来たよ!!って…弾切れ!?」
「リロード急げ!!」

うぅ…私も出来れば手伝ってあげたいけど…こういうの苦手。
シューティングは苦手じゃないんだけど…ゾンビとか…恐いのは私は出来ない。きっと…夢にでちゃうもん。
けど、見てるのはあんまり恐くないの。…きっとメビウス君が倒してるのを見てるからかな?だって…夢の中でも助けてくれるから…。

「待たせたな!!俺…参上!!」
「決めポーズなんていらねぇよ!!さっさと100円入れろ!!」
「俺に任せとけ!!だがしかし!!シューティングは苦手だぜ!!」

オメガ君がアリサちゃんと一緒に歩いてきたけど…アリサちゃん、なんだか嬉しそうにしてる?
そう言えば…さっきまでどこに行ってたんだろ?

「アリサちゃん、そのキーホルダーどうしたの?」
「えっ!?な…なんでもないわ。き…気にしないで。」
「?」

あ、本当だ。すずかちゃんの言うとおり、犬のキーホルダー持ってる。可愛いなぁ、何処で買ったんだろ?

「アパーム!!弾持って来いアパーム!!」
「無駄撃ちしすぎだよ!!しかも大して当たってないし!!」
「お前戦力外もいいところだな!!しかも、バージョンアップアイテム取るんじゃねぇよ!!途中参戦の癖に武器性能が最大ってどういうことだよ!!」
「俺、ナイフクリアの方が得意なんだぜ!!」
「それは…やりこみすぎ。」

にゃはは…こんな風に言ってるけど、三人はとっても仲良しだよね。
だって、三人で最後のステージまで進んで…クリアしちゃうんだもんね。




次元航行艦アースラ
ミーティングルーム

・ブレイズ・

「ロストロギア及び行方不明者の捜索が今回の目的になります。」

艦内の一室、ミーティングルームに俺達は居る。
今回は説明役の俺とクロノ、そして、艦長でありクロノの母親であるリンディ提督の三人だ。
二人の前のディスプレイには、今回の航海の目的であるロストロギアと行方不明者、ユーノ・スクライアの情報が表示されているはずだ。

「スクライア…あの発掘一族か?」
「あぁ。輸送中に連絡が途絶え、期日になっても管理局にロストロギアが届かない。襲撃、あるいは事故により、第97管理外世界に漂着したと考えられる。
スクライアからも正式な捜索願が提出されている。」
「ブレイズ君、ロストロギアの情報はないのかしら?」
「残念ながら何も…。現在、スクライアの一族に情報提供を求めています。その後、管理局のデータベースと照会をする予定です。
過去のデータですが、何かしらの情報はあると思いますので。」
「そう。なら任せれるかしら?」
「お任せを。」

管理局のデータベースの情報量は膨大だ。
それこそ、過去の犯罪からロストロギアの情報にいたるまで保存されている。

「あと、3つほど報告があります。」
「どんな内容だ?」
「良い報告が1つに、普通の報告が1つ、そして悪い報告が1つで計3つだ。」
「それじゃ、悪い報告から聞きましょうか。」
「…今回、調査を行う第97管理外世界に…ゴッデンシュタイナーの御曹司が居ます。」
「…聞きたくなかった…」
「厄介な…事ね。」

クロノがため息をつきながら、額を押さえ、リンディ艦長も嫌な顔をしている。
実際、俺も眉間に皺がよっているだろう。この報告を聞いた時は…天を仰いだ。
ゴッデンシュタイナーは管理局の有力な支援者でもあるが…それと同時にきな臭い噂が絶えない一族だ。
それに時々、こうして圧力をかけてくる。まったく厄介な一族だ。
まぁ…これがアースラを出す理由だ。…御曹司の安全を考えていると言うパフォーマンスの為なんだが…やりきれないな。

「…それで、向こうはなんて言ってきてるの?」
「くれぐれも御曹司の行動の邪魔をしないように…と。後は御曹司の安全を第一に、それ以外は配慮するな、だそうだ。」
「…管理局であり、調査をする僕達が邪魔者扱いとは。」
「それ以外は、ね。一般人はどうでも良いと言うことかしらね。なんで御曹司はそんなところに?」
「現在、情報を秘密裏に集めていますが…厄介な事に変わりはありません。」
「…気分を変えるために、良い報告を聞こうかしら。」
「フレッシュリフォー社の帝重役が、第97管理外世界に在住しているようです。コンタクトを取ったところ、今回の調査には全面的に協力してくれるそうです。」
「帝重役が?それは助かるな。」

ゴッデンシュタイナー家と違い、フレッシュリフォー社の重役達は管理局に協力的な姿勢を見せている。
最も、無理は事は無理とはっきりと言うのが、気に入らない管理局上層幹部も居るようだが。
特に帝重役は人格者であり管理局と親交が深く、捜査などに協力を申し出てくれるありがたい存在でもある。
そして、息子の帝 閃は有能なデバイス開発者としても知られている。
実際、彼と開発チームの主任が作り出したVRデバイスの2世代目は、多くの局員が愛用している。
多くが消息不明のオリジナルの1世代と違い、制御しやすく、安価と言うこともあってか正式採用を検討する部署も出ているほどだ。

「流石はブレイズ君だわ。お陰で今回の捜査が捗るわね。本当に有能な補佐官で助かるわよ。」
「ありがとうございます。ですが、褒めた所で、今日の砂糖の量は増やしませんからね。」
「えぇ~!!そんなぁ!!」
「1日角砂糖で15個までと決めてあるはずです。先ほどのコーヒーに10個入れたので、今日は後5個だけですよ。」

まったく…リンディ艦長の甘党には困ったものだ。過剰摂取で身体を壊してしまわないか心配でしょうがない。
今のところは俺が管理できるところは、厳しく管理しているから問題ないと思いたいが…。
クロノから相談を何度も持ちかけられても居るし…手は抜けないな。

「うぅ…これが無ければ、ブレイズ君を家の養子にしたいのに…。別にあっても養子にしたいけど…」
「…嬉しいですが…如何せん艦長の為ですので…我慢してください。」

…俺の両親はクロノの父親であり、リンディ艦長の夫でもあるクライドさんと一緒に戦死している。
11年前にあったあの争乱でだ。バートレット教官やランパート教官も体験している…ミッド最大の争乱、【ベルカ戦争】。
…これは今語るべきことではないな。
リンディ艦長はそれ以来、俺に養子にならないかと良く持ち掛けてきてくれるが…俺は世話になっている方が居る。
その方に恩を返しきる、それが俺の決意だ。

「それじゃ…普通の報告を聞こうか。」
「管理局航空隊より3名、魔道師の借りる事が出来た。」
「3人も?こちらとしては大助かりだが、名前は?」
「今、呼び出す。…ブレイズだ。ミーティングルームに来てくれ。」

小型端末で魔道師達が待機している部屋に通信を入れる。
アースラの常駐戦力は少ない。故にこうして人員を借りる事がある。
本来ならばこの位の任務、クロノと俺、そして常駐している部隊だけでも良いのだが…前述したようにゴッデンシュタイナーに対するパフォーマンスだ。
まぁ…戦力が多いに越したことは無い。

「「「失礼します。」」」
「来たか。」
「…また…凄い魔道師達を借りてきたな。」
「光栄ですわ。アースラの切り札、クロノ執務官。」
「ふ~ん、どんな奴かと思ったら…ちっこいんだな。」
「あらぁ?私達より年上のはずですよ~?」

入ってきたのは3人の魔道師達。
彼女達は航空隊の所属であり、3人で運用すると最も効率がいい部隊でもある。
リンディ艦長が席を立ち、敬礼をすると、3人も敬礼をする。

「ようこそ、アースラへ。歓迎します。薔薇の3姉妹さん。」







・なのは・

私は今、部屋から抜け出して、外に居る。
肩にはユーノ君が乗っているし、レイジングハートも起動してるの。
時間帯は深夜だけど…ジュエルシードの反応を見つけたから。
…今回は1人。…メビウス君達は来てない。理由は閃君が同じ部屋だからね。ユーノ君はうまく抜け出してきたみたい。
本当は私が言わなかっただけなんだけど…。だって、メビウス君にも休んで欲しいもん。

「ユーノ君、ジュエルシードの場所、わかるかな?」
「待って。今調べてるから…」

こうしてユーノ君と2人だけで捜索するのは、初めて。
何時もはメビウス君が探してくれていたし、ガルムさんも一緒に待機しててくれたけど…今回は2人だけ。頑張らないと。

「ユーノ君、メビウス君は…どうだった?」
「どうだったって…?」
「その…眠ってた?」
「ん~…オメガ達とゲームをしてたけど、疲れて眠っちゃったみたいだよ。多分、起きてこないんじゃないかな?」
「そっか。」

ホッとすると同時に少し不安になる。だって、今では一緒に回収してきたから…
けど、前に決めたんだもん。メビウス君の足手まといにならないようにするって。だから、私が1人でも大丈夫って教えないと…

「…これは…なのは、魔道師が居る。」
「え?私達以外にも居るの?」
「…彼女だ…!!メビウスが友達って言ってた魔道師だよ!!」
「…どこ!!」

直ぐにユーノ君が示した方角を見ると、金色の魔力光が奔って、ジュエルシードの反応が消えた。
私はあわてて、反応が消えた地点に向かうけど…遅かったみたい。
中心にはあの女の子…フェイトちゃんが立っていた。

「あ…」
「……また会ったね。」

驚きながらこちらをみるフェイトちゃん。…忘れないよ私は。メビウス君を…傷つけたこと…!!
けど…ここは冷静にならないと。

「……メビウスは居ないの?」
「居ないよ。私じゃ不満かな?」

むぅぅぅ…、やっぱりこの子…メビウス君の事を狙ってる…
一緒に来なくて良かったかもしれない。来たら絶対に絶対にメビウス君と……うぅ、考えるのは止める!!

「それで…私になにか用?」
「決まってるでしょ。ジュエルシードを返して。それはユーノ君が集めてたものだよ。」
「それは出来ない。私にはこれが必要だから。」
「君は分かっているのか!?それは危険なロストロギアなんだよ!!」
「これはとても危険な物だって事は分かってる。」
「危険って分かってるなら、もうこんな事は止めようよ!!」
「それでも必要。だから集めているんだよ。これを返して欲しかったら…ジュエルシードを賭けて、私と勝負して。」
「勝負…するしかないの…?」

やっぱり素直には返してくれないのかな…。メビウス君を傷つけた事は許せないけど…。お話をしようって…言ってたもん。
だから、私も喧嘩はしたくない。それでも、フェイトちゃんが私にデバイスを突きつけている。
けど、改めてみると…フェイトちゃんって…可愛い。綺麗な金色の髪の毛だし、肌だって真っ白。
髪の毛を結んでるリボンも蒼くて…蒼くて………蒼?

「な…なに?」
「………………」
「なのは、どうしたの…?」

ジーとフェイトちゃんを凝視する。…前に会ったときは…黒いリボンをしてた筈だよね?それがなんで蒼いリボンになってるの?

「ねぇ、フェイトちゃん…?そのリボンはどうしたのかな?かな?」
「え…?」

一瞬、戸惑ったけど…直ぐに軽くリボンに触って…顔を紅くしてる。
あれれ?_おかしいなぁ。私の間違いじゃなければ、それ…メビウス君のリボンダヨネ?
そう言えば…怪我してた時に1日何処かに泊まりに行って筈。それで…帰ってきたとき、メビウス君以外の匂いもした。
おかしいなぁ?どうしてフェイトちゃんと同じ匂いがしたんだろうね?あれれ?おかしいなぁ?リボンからもメビウス君の匂いがスルヨ?



「な…なのは…笑ってどうし……」
「なぁに?ユーノ君?」
「ひぃぃぃ!!」

気が付くと私は満面の笑みを浮かべていた。それなのに、悲鳴を上げるなんてひどいなぁユーノ君は。
それに、どうしてフェイトちゃんは後ずさりするのかなぁ?どうしてだろうね?くすくすクス

「ねぇ?フェイトちゃん、それってメビウス君のリボンダヨネ?どうしてフェイトちゃんがつけているのかな?かな?」
「あ…これは…ちがう」
「嘘だっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「!?」
「どうして嘘つくのかなぁ?」

私が間違えるわけ無いよ?メビウス君の事はなんでも知ってるんだよ?
嘘はいけないよね。嘘は駄目だよね。


「良いよ。勝負しよう。」
「それじゃ、お互いに1個ずつかける。それで良い?」
「ううん、私はジュエルシードなんて要らないよ?フェイトちゃんが賭けるのは…リボンで良いよ。」
「リボン…を?」
「なのは!?なにを言ってるん…」
「ユーノ君は黙っててね。今、凄く凄く凄く大事な事なんだから。」
「はははいいぃいぃ…!」

もぅ、駄目だよユーノ君?今は大事なお話してるんだかね。ジュエルシードなんかよりメビウス君のリボンの方が大切なんだからね。


「…良いよ。けど…これは渡さない…!!これは私のもの…私だけのもの…!!」
「それじゃ…はじめようか。」




・メビウス・

「はぁぁぁ。夜の露天風呂は最高だねぇ。」
「そのとおりですね。」
『はい。気持ちが良いです。』

深夜の時間帯だけど、私達は露天風呂に入っている。
オメガと閃は部屋で熟睡してるはず。私はガルム、そしてエクスと一緒に露天風呂を楽しんでいるんだ。24時間入浴可能だから良いよね。
エクスはお湯を入れた桶の中に浸かっている。ユーノがしてたのを参考にしてみたんだけど…良かったみたい。
満点の星空での露天風呂は、本当に最高だ。

「皆で遊んだし…騒いで本当に楽しかったなぁ。」
「夕食の時は、驚きましたよ。メビウス様に被害が無くてよかったです。」
「あはは、避難してたからね。」
『けど、楽しんでましたよね?』
「うん。騒ぐときは騒がないと。」
『私も話せればよかったのですが…魔道師では無い人達も居ましたからね。少し寂しかったかもしれません。』
「そっか、ごめんね。」
「エクス、あまりメビウス様を困らせるな。」
『私だってマスター達と騒ぎたい時もあるんですよ?』

エクスが拗ねたようにする。ん~…けど、士郎さん達は私達が魔道師って知らないから…下手に話せないからなぁ。
…魔道師と言えば…閃は…どうなんだろう?何気に閃にも魔力反応がある。私やなのちゃんに比べると小さいけど…それでも在ることには変わりは無い。
でも、一緒にいるけど、魔法の話とか全然しないから…違うのかなぁ…?まぁ…違っても言いようにばれない様にはしてるけどね。

「けど…綺麗な夜空。」
「えぇ。満点の星空に…」
『露天風呂ですし…』
「そして、夜空に煌く桃色と金色の魔力光……はい?」

いやいや…最後のは違うよね?…なんか上空で物凄く…見たことの在る女の子達が…戦ってるんですけど?
物凄く…魔力光を放っているんですが…?
一瞬、思考が停止する。それが不味かった。

「エクス!!感知できなかったのか!?メビウス様!!直ぐに退避を!!」
『すいません!気を抜いていました!!タリズマンを展開…マスター!?』
「え?」

思考が追いついたんだけど…こっちに向かって…黒いバリアジャケットの女の子、フェイトちゃんが…堕ちて来る!?

「ちょ…まっ!?うあぁあぁぁ!!??」





あとがき


若干、なのはヤンデレ化?むしろ魔王化してるかも
…さて…着々と準備の整うアースラ。そしてしっかり者のブレイズ君。リンディさんの管理はキチンとしてます。
3姉妹は今回は通り名だけの登場。うまく書けるか心配です。特に3女のジェニファーさん。…下手するとリリン様と口調が被りそう…
ちなみに閃君が魔道師と言う事はメビウス君達は知りません。ミッドでも開発者としての方が有名ですが、知る人は知ると言う感じです。
そして、作者的に物語の基幹をなす単語を出してみました。【ベルカ戦争】
まぁ…サイファーが出てきた時点で予想済みですよね。うまくミッドと混ぜれると良いのですが…
しかし…どうしますか。サッサと物語を進めるべきか…。それとも書きたい事を書きながら進むべきか…
下手な癖にアイテムを奪いまくるのは友人。ガンコンを横に構えるのはその彼女(激うまい)。まるでマシンガンのように連射&掃射してます。
ハンドガンでチマチマ削るのが作者です。


以下返信


春河様

良いですねぇ。F-14は戦闘機ファンなら誰でも知っている有名機ですよね。某映画での雄姿…痺れる憧れる…!!5での主役機でもありますしね。
何故引退した…金がかかる?愛で補え。トムぬこが居ない海軍なんぞ認めない!!
あぁ…ミックスジュース…同志よ…!!
兄機はバランスブレイカーです(笑 ライバル達の登場はもう少し後になると思います。


ADFX-01G-2様

確かに…デッドエンド臭…。しかし、忘れてはいけませんよ?
彼はオメガです。敵地上空だろうが、海だろうが、関係なくイジェクトして生還する存在ですよ?
2度出撃して2度撃墜され、それでも生き延びている超エース!!



ダンケ様
24時間麻雀…凄いですね。作者は直ぐに沈みそうだ。
閃君は魔道師って事はばれないようにしてます。用心深い性格ですので、隠すのは上手のようです(笑
汁なんたらさんは…あと少しで出てくる予定です。次回かその次辺りで…何かしらやらかして貰おうかと…
今回は実家の方が出てきましたが…よくあるモンスターペアレント?みたいなものです



[21516] 14話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/10/18 22:04
・メビウス・

頭が…痛い…
朦朧とする意識の中、私は気がつく。
額にひんやりとした感覚と、頭の下に柔らかな感触を感じる。それに…誰かが私の頭を撫でている…?

「あ…れ…?」
「あ、気が付いた…?」
「なのちゃん…?」

眼を開けると…なのちゃんが笑いながら、私の頭を撫でていた。
ここは、休憩室かな?私は長椅子に横たわってるようだ。
顔が近い…これは…膝枕状態…?

「なんで…私は…露天風呂に入っていたような…」
「あぁああのね、そのね…」

焦ったようにしているなのちゃんを見て、思い出した。
確か、なのちゃんとフェイトちゃんが露天風呂の上空で空中戦をしてたんだよね。…それで、撃墜されたフェイトちゃんがこっちに落ちてきて…

「そ…そうだ。フェイトちゃんは…くぅぅ…!!」
「まだ動いたら駄目だよ!!!おおきなたんこぶ出来てるんだよ?」
「そ…そう、だからこんなに頭痛いんだ。いてて…」

私は起き上がろうとして…頭に痛みが走る。
確かになのちゃんの言うとおり、たんこぶが出来ていた。結局起き上がれずに、なのちゃんの膝枕に逆戻りする。うう…情けない。

「なのは、冷やしたタオルもって来たよ。メビウスは?」
「あ、フェイトちゃん、ありがと。今、気が付いたところ。」
「やっほ。フェイトちゃん。」
「メビウス…良かったぁ。」

タオルを持って駆け寄ってくるフェイトちゃん。怪我はしてないようで、安心する。
徐々にさっきの事を思い出してくる。咄嗟に受け止めたんだけど…滑って頭を強打したんだっけか。
額を冷やしていたタオルを、なのちゃんが交換してくれる。冷たくて気持ちがいい。頭が冴えて来るね。

「ごめんなさい…。まさか、あそこにメビウスが居るなんて知らなくて…」
「まぁ、夜中だしね。…そこまで気にしないで、色々と言いたい事はあるけど…」
「あ…う…うん。」

しょんぼりして、床にペタンと座っていたフェイトちゃんの頭を軽く撫でる。指の間を滑る髪の感触がする。
少し嬉しそうにしてるから…元気になってくれたのかな?

「がるるる…」
「な、なのちゃん?」
「がう、がうがう。うぅ~…!!」

上から聞こえた…変な声。何故か、なのちゃんがフェイトちゃんの事を威嚇してる…?
何時からなのちゃん…犬っぽいのになったんだろう?…少し可愛いと思うけど…言わない方が良いか。

「その…メビウス、私は大丈夫だから…」
「そう?…よっと。フェイトちゃん、こっちにどうぞ。」
「あ…もう起きても良いの?」


身体を起こしてなのちゃんの隣に座って、スペースを空けてフェイトちゃんを座らせる。
流石に床に座らせるのは悪いからね。
少し頭が痛むけど…タオルのお陰で楽になるなぁ。すると、なのちゃんが私の腕をツンツンとしてくる。

「…ねぇねぇ、メビウス君、私も、膝枕とかしてたんだよ?」
「ん、そうだね、ありがとう。」
「どういたしまして。だからね…私も…撫で撫でしてほしいなぁ。」

確かに、膝枕のお陰で、長椅子に頭をつけなくて良かったんだけど…
小さく手をモジモジして何を言うかと思えば…。私は小さく笑いながら、なのちゃんの頭を撫でてあげる。
嬉しいのか、笑いながらすりすりしてくるのが…凄く可愛いと思う。…隣でフェイトちゃんが羨ましそうにしてるけど。
あれ…そう言えば、ガルムの姿が見当たらないし、エクスも身に付けていないな。

「ガルムは?」
「ガルムさんなら、メビウス君の着替えを手伝った後に、壊れた柵を修理するって言ってたの。ユーノ君とエクスさんもお手伝い中。」
「私が堕ちた時に壊しちゃったみたいで…さっき、アルフも向かわせたよ。」
「あらら…けど、それならそれで良かったのかも。ガルムに、お説教されずにすんだろうからね。」

露天風呂

「なんであたしまで、手伝わなくちゃならないんだい。」
「危害を加えなければ、構わんと言ったが…思いっきり加えてただろうが。文句を言わずに手を動かせ!!」
「あたしゃその場に居なかったんだよ!!夕食を買いに行っててね!!」
「そんな事は知らん!!」
「ガルム、その前に会ってたのなら教えなよ。止めなかった僕も僕だけど…エクス、こっちに誰も来てない?」
『問題ありませんね。…お二人とも、朝方までには終わらせないと大変ですよ?』
「えぇい!!エクスも手伝え!!簡単な資材なら運べるだろうが!!」
「ちょっ!?落ち着きなって、人が来たらどうするんだい!?」


場所は戻り、休憩室

「さて…色々と聞きたいんだけど、良いかい?」
「う…ど~ぞ…」
「私に黙って…何をしてたのかな?察しはつくけど。」
「うぅ…メビウス君が攻めだよう。」

攻めって…人聞きの悪い…
それから2人の話を聞いていく。ジュエルシードの反応を探知したこと、フェイトちゃんも来ていた事、賭けて勝負をした事。
まったく…この2人は…どうして自分1人でなんでもかんでも片付けようとするのかな。

「はぁ…まったく、2人が怪我しなくて良かったけど…。危ない事はしたら駄目だよ?」
「けど…」
「けどじゃないの。確かにジュエルシードの回収も大事だけど、私はそれ以上に2人が大切なんだからね?2人が戦って怪我したら、凄く悲しいんだよ?」
「あう…その言い方は…卑怯だよぅ。」
「うん、ずるいよ…。」

なのちゃんとフェイトちゃんは、私の大切な友達だから、怪我とかは絶対にして欲しくない。
だけど、お互い引くわけにも行かないよね。なのちゃんはユーノの為に、フェイトちゃんも必要としてるから、どうしようもないか。
私がどちらかに付けば、どちらかと戦うことになってしまう。…それは一番に嫌なことなんだよね。
私にとってなのちゃんは大切で、フェイトちゃんも同じくらい大切。どちらか選べといわれても…私は選べないと思う。これは…欲張りなのかもしれない。


「…2人とも、聞いて。確かに、決闘をするしか方法が無いんだろうけど…。その方法をとる場合は、私は中立の立場になるよ。」
「中立…?」
「うん。どちらの味方もしないけど、どちらにも協力しない。…そうだな、審判役をする、事でどうかな?」

例え、甘い考えだと言われても、私はこの方法をとる。
2人とも少し考える素振りを見せながらも、納得はしてくれたみたいだ。
けど…出来れば、それ以外では友達になってほしいな。そう言えば…なんでか私のリボンを賭ける琴になってたんだから…

「なのちゃん、少し良いかな?」
「なぁに?」

徐になのちゃんの髪に手を伸ばして、リボンを解く。驚いて動こうとしてるなのちゃんを制止して、髪を梳く。
後は今度は私の髪に結んであるリボンと、予備で持っていたリボンをなのちゃんの髪に結んでっと…

「わ、わぁ…わぁ!良いの?」
「うん。3人でお揃いのリボン。だから…なのちゃんもフェイトちゃんと友達になってくれるかな?」
「メビウス…?」
「確かに、ジュエルシードの事に付いては、お互い譲れないことがあるんだろうけど、それ以外では仲良くしてほしいな。
さっきも言ったけど、私にとってなのちゃんは凄く大切だけで、フェイトちゃんも同じくらい凄く大切なんだ。その2人が仲悪いのはいやだからね。」
「…そんな事言われたら、仲良くするしかなくなるよぅ…」
「なのは、メビウスのこれって…天然?」

自分でも凄く恥ずかしい事を言った気がする。現に顔は紅くなってるだろうね。それ以上に2人の顔も紅くなってる。

「フェイトちゃん、さっきはごめんなさい。これから…よろしくね。」
「うん、こちらこそ。次は…負けないよ。」
「私だって!!」

そう言って笑いあう2人。とりあえずは…仲良くなってくれた…かな?




・閃・
温泉旅行も終わって…数日がたったある日。俺は色々と考えていた。
旅行の日の夜は、多分色々とあったんだろうな。なのはがご機嫌で、何時も以上にメビウスにくっ付いてたし、お揃いのリボンだった。さり気なく朝食の時に「あーん」までしてたぞ。
反面、ガルムとユーノが疲れたようにしてたな。…なにをやらかしたんだかな。
現在、俺は毎度の如く、フレッシュリフォーに脚を運んでいる。まぁ…予想通り、リリンの呼び出しだ。
いや…知り合った日から毎日毎日連絡が来てたんだが…旅行中はしなかったからなぁ…怒ってんだろうか…
今回は煩いレーベンを主任に押し付けてきたから大丈夫だろう。…また変なこと教え込まないだろうな…

若干、冷や汗をかきながら、俺は軽くノックして応接室の扉を開ける。

「失礼し「閃お兄様ぁぁぁぁ!!!」げふぁ!!??」

扉を開けた瞬間に襲ってくる衝撃と泣き声。なんだ!!??なにが起こった!!??敵襲か!?
視線を下に向ければ…俺の胸に顔をうずめる…ピンクのお姫様

「お兄様…お兄様…!!」
「あ~…と。リリンさん?如何為さいましたでしょうか?」

なんか衝撃と混乱で変な言葉遣いになる俺。いや…だって、流石に泣かれるとは思ってなかったからなぁ。
…こんなテンプレ展開ある訳無いだろと思っていると…リリンが顔を上げる。…あらら、物の見事に泣き顔だ。

「りリンは…リリンは凄く凄く…寂しかったのです…。閃お兄様の声が聞けなくて…凄く凄く…不安でしたのに…!!」

はい、今俺の脳天に衝撃走りました。ズキューンて走りました。走りましたとも。
なんだこの可愛い生き物。言葉に出来ねぇよおい。しかも自分の事とを名前で呼んじまうとか…あれか?甘えモードか?
この後、5分ほど慰める事になる。別に…ロリコンでも良いかもしれん…なんて片隅で思ってしまう俺だった。
結局、落ち着きを取り戻したリリンはソファに座った俺の膝の上で、楽しそうにおしゃべり中。ちなみに、要望で後ろから抱きしめる形になっている。
…心底レーベンが居なくて良かったと思う。…これ…天然だよな。

「まぁ、それではお兄様は、温泉と言うところに行ってきたのですか?」
「あぁ、友達とその家族でな。それで連絡しなかったんだが…ごめんな。」
「いいえ、良いのですよ。こうして…ギュッと、してくれているのですから♪」

リリンが嬉しそうに胸に顔をすりすりしてくる。…可愛すぎるぞこら…。保護欲とか無限に湧き上がってくるんだけど。
内容的には地球の事、海鳴市での生活のこととかだな。リリンも興味心身に話を聞いてくれている。

「けど、不思議ですわね。自然のお湯が、肩こり等を治療できるなんて…流石は神秘の国日本ですわ。」
「神秘の国って…日本のこと知ってるのか?」
「はい!主任に色々と教えていただきました!」
「へ…へぇ、主任に…。どんな事を聞いたんだ?」

一番、この娘に近づけたくない奴の名前が出てきたよ…。どんな事を聞いたんだ?
そう思い、聞いてみれば…帰ってくるのは衝撃の数々。

「えっと…まずは首都はチバシガサガという名前だそうですわ。それで…ろけっとぱんちを使うす~ぱ~ロボットが、光の巨人のうるとらまんと激戦を繰り広げてるとか。
後はしょっかーと言う組織が、カラフルな全身タイツを身に付けた正義の味方さんや、チートなかめんらいだ~さん達と戦っていますの。
そんな人達が沢山居ても、頂点に圧倒的力を持つ、ごじらさんが居るから日本は平和なんですよね?」
「……ごめん、リリン。ちょっと待っててくれ。少し用事が…」
「まぁ。けど、速く戻ってきてくださいね?」
「あぁ……10分程度で戻ってくる。」

リリンを膝からおろした俺は、直ぐに開発部に走り出した。途中で資材部から鉄パイプを奪って。

「やぁ、閃、どうし…」
「何も言わずに昇天しろこらぁぁあぁぁあぁあ!!!!!!!」
「びでぶ!?」

10分後

「ただいま。」
「おかえりなさい。…あら?お洋服を変えてきたのですか?」
「あぁ、少し…汚れたからな。」

主任は成仏させてきたから大丈夫だろう。問題は…この娘の誤解をどう解くかだな
千葉滋賀佐賀って…思いっきりネタじゃねぇかよ。しかも、スーパーロボットとウルトラマンは戦わねぇよ。
全身タイツってなんだよ…。そう見える奴も居るけどよ…。

「とりあえず…リリン、色々と間違ってるぞ。」
「そ…そうなのですか!?」
「しょうがない。俺が説明するか…。良いか?日本は…」

こうして俺とリリンの日本講座が始まった。
1時間程度かけて、日本の事を説明し、分からない事があったらリリンが質問する、と言った形式だ。

「つまり…主任の説明は、でたらめだっと言うことですか?」
「まぁ…そうなるな。…と言うかな、そんな国だったら俺、暮らせないって…。ゴジラが頂点とか危険極まりないっての。」
「はぁ、なるほど。けど…お兄様の暮らす日本…私も…行ってみたいですわ。」

…えっと…リリンさん?なんですか、その上目遣い。俺を殺す気ですか?萌え死にさす気ですか?
そして…その若干、期待が込められた視線はなんですか?連れて行けと?私を連れてってという事ですか!?

「駄目…ですか?どうしても、閃お兄様の暮らす所を…見たいのです。」
「はぁ…しょうがない。俺が後で聞いてみるよ。それでよかったら、一緒に行こうな?」
「本当ですか!?約束ですよ!!」

軽はずみな約束しちまったかな。なんたって超巨大企業の令嬢を、管理外世界に連れて行くんだから。そう簡単に許可が出るかどうか…
だけど…首に手を回してほお擦りをしてくるリリンを見ていると…満更でもないんだよな。
籠の中の小鳥じゃ、可哀想だよな。広くて大きな世界を見せてやるとしますか。さぁ…頑張れよ。俺!!







??????

「くくく…準備は整った…。来るが良い。愚かな人造の化け物が…」

市外の外れに位置する廃ビルに蠢く人影。
その前には幾重にも封印を施されているジュエルシードがある。だが、何故か人影が手をかざすと、徐々に封印が解けていっている。

「もう少しで始めれる…僕のなのはの物語が。邪魔な奴は…ここで消せば良い。」

邪な笑いを浮かべ、周囲に眼を配る。何も無いはずの空間なのだが…何処かが可笑しい。
すると、何処からか迷い込んだ鳥が、内部を飛びまわっていた。

「ふん…。馬鹿な鳥だ。まぁ、どうでもいいけどな。…さて、後は時が来るのは待つだけだ。
くくく…はははははははははははははははははははははは!!!!」

人影が笑いながら揺らめき、そして消えていく。まるで最初からそこには居なかったように…
後に残されたのは、多数の槍で貫かれている…鳥らしきものの残骸だけだった。






あとがき

久々の更新になりました。遅い&駄文で申し訳ないです。
フラグをたてまくるメビウス君と、ラブラブ?しちゃっている閃君。うらやましいぞこんちくしょう。
リリン様は何も知らない無垢なお姫様です。ちなみに、リリン様の私は「わたくし」という事で…
次回からは一気に駆け抜けようかと思っています。多分、20話近くで無印を終わらせれる…筈です。
さて…頑張りますか。では、また今度。


ダンケ様
帝家両親は、管理局に憧れていた人たちですからね。出来れば協力したいと言う人達です。
閃君の素性については、無い頭絞って考えていました。本人もバレたらその時、と覚悟はしてますから。
アンベルさんは…少し迷っています。あの人…作者は設定だけでしか知らないので…


名無しの獅子心騎士様

ベルカ戦争については、後で色々と出して行こうとは思っています。
それに原作と、この作品でのベルカの違い等も後で書こうとは思っています。闇の書事件も関わっているようにはしてますが…心配です。
なのはさんは…やばいのが降りてましたね。メビウス君には被害皆無ですが…周りに被害が出るという厄介なヤンです。(笑




[21516] 15話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/11/06 22:05
・フェイト・

「材料は…このくらいかな?」

メビウスの書いたレシピに眼を通す。それには丁寧な字で、材料や調理の仕方が書いてある。
最初に作ってくれたハンバーグのレシピ。
今日は母さんの所に行く事になっている。何時も研究ばかりで、ご飯も食べてないかもしれないから…私が作ってあげたい。
料理なんて、メビウスと会うまでやったこともなかったけど…きっと大丈夫だと思う。
…髪に結んであるリボンに触る。蒼くて綺麗なリボンは、メビウスから貰った大切な宝物。
何時も近くに居てくれる。そんな気してもすごく安心できる。

「大切で大事なんだからね?」

温泉で言ってくれた言葉を思い出すと、顔が熱くなる。それに凄く心も温かくなる。
…それに、堕ちた時に庇ってくれた。それが凄く嬉しい。だから、彼の、メビウスの言葉を簡単に信じる事が出来たんだ。

「私は…独りじゃないんだよね…メビウス。」
母さんの所に行く前に、彼の好きな空を見上げながら…私は笑う。次も…笑顔で会いたいから。




時の庭園

薄暗い部屋で研究に没頭する女性、プレシア・テスタロッサ。フェイトの母親と呼ぶべき存在だ。
若干、優れない顔色をしながらも笑顔で時計を見る。

「…そろそろフェイトが来る時間ね。」


呼ぶべき存在とはどう言う事か?理由は隣の部屋にある。そこには1つのカプセルがあり、その中にはフェイトと瓜二つの少女が入っていた。
少女、アリシア・テスタロッサ。フェイトのオリジナルである。そう、フェイトはアリシアのクローンなのだ。
プレシアが求めたアリシアとは違う存在のフェイト。彼女自身、最初は偽者を造ったと嘆き苦しんだ。
しかしプレシアはフェイトを、己の娘として受け入れたのだ。たとえ、自分が生んだ娘から、造られた娘とはいえ、自分の娘なのだと、自分には【創った責任】があるのだと。
それを受け入れてしまえば、大切で大事で愛しい娘には変わりなかったのだ。フェイト自身も出生を受け入れ、そして、母と姉の為にジュエルシードを集めると言う事をやると言ってくれた。
フェイトにとっても同じだ。たとえ違くても、プレシアは母であり、アリシアは姉なのだ。家族の為に自分が出来ることをする。簡単な事で難しい事を彼女は成そうとしていた。
プレシアは扉を見つめながら、今か今かとフェイトの帰りを待っていた。軽いノックの音が響いて扉が開き、愛しい娘が姿を現した。

「ただいま、母さん。」
「あぁ…おかえりなさい、フェイト。怪我はしてない?風邪とかひいてない?」

怪我をしてないか、病気になっていないか、それを心配する姿は母親その物だ。
優しく…とても優しくフェイトを抱きしめるプレシアと、嬉しそうに抱きしめ返すフェイト。とても微笑ましく、優しくなれる光景だ。
フェイトがジュエルシードを集めに行ってる間は会えなかったので、その分を埋めるようにして抱きしめあう。
その光景を見ながらアルフも笑う。自分の主が幸せそうにしているのが、嫌なわけが無いのだ。

「うん、大丈夫だよ。…母さんは?研究ばかりで疲れてない?」
「ふふ、心配してくれるのね。ありがとう、私も大丈夫よ。フェイトの顔を見たら、疲れなんて吹き飛ぶわ。」

笑顔でフェイトに語りかけるプレシア。本当にフェイトに会えて嬉しそうにしている。
視線を下に向けると、フェイトの足元に何故かスーパーの袋が置いてあった。

「あら?これはなに?」
「あ…。えっと…母さんはご飯食べた?」
「ご飯?まだよ。」
「そ、それなら!!私が作る!それで、一緒に食べよ!」
「フェイトが…?」

突然の提案に驚くプレシア。確かに一緒に食事が出来るのは、彼女にとって最高の休息になるだろう。
しかし、誰が作るといった?目の前の娘がそう言った。
料理の仕方を教えたことが無いのに…疑問に思いながら、フェイトの提案を受け入れる。

「良いけど…料理なんて作れるの?」
「うん、その…レシピもあるから…」
「レシピ?」

抱擁から解放されたフェイトが、ポーチの中から数枚のメモを取り出してプレシアに見せる。
そこには、丁寧な字で食材、調理の仕方、ワンポイントアドバイスが書かれていた。

「これは…誰が書いたのかしら?」
「えっと…大切な…友達。」
「友達…!?」

フェイトの口から出てきた驚くべき単語、友達。一瞬、呆気に取られたプレシアだが、直ぐに笑顔になりフェイトの頭を撫でる。
この人見知りの激しく内気な娘に友達が出来た。それが、とてつもなく嬉しいのだ。
良く見れば、頭のリボンも変わっている。もしかすると、その友達からプレゼントされたのかもしれない。

「そう、よかったわね。そのリボンも友達から?」
「うん。…私の宝物。」
「あら、妬けちゃうわね。」

恥かしそうに、しかし、嬉しそうにリボンを触れるフェイトを見て笑う。

「どんな子なの?女の子?男の子?」
「…男の子。」
「ふ~ん。…もしかしてフェイト…その子の事好きなの?」
「……分からない。けど…一緒に居ると…凄く安心できて…暖かくなるの。」
「そう。…名前はなんていうのかしら?」

まだ良く分かっていない娘の恋心。1つの成長が微笑ましくて、娘が好きになった男の子は一体どんな人物なのか、母親ならば気になるだろう。

「…メビウス・ランスロット。凄く優しいんだよ。」
「メビウス…ランスロット…!?」
「…母さん、どうしたの?」
「あ…なんでもないのよ。…それじゃ、ご飯お願いできる?私も片付けて向かうから。」
「うん、頑張って作るね。アルフも手伝って。」
「あいよ。」

何故かメビウスの名前を聞いて驚くプレシア。
フェイトが疑問に思ったようだが、直ぐに誤魔化して、調理場に向かわせる。
扉が閉じると同時に、パソコンの中に登録されているデータに眼を通すプレシア。
そして、1つのデータを見つけ、深く大きなため息をつく。

「…神と言うのが存在するなら…なんて残酷なのかしら…」

表示されたデータと娘の口から出たランスロットという単語。プレシアの頭の中の記憶とも一致していた。

「…円卓の…鬼神…。そして…伝説…か。」

画面に出ているのは…若い2人の男女。顔に傷の在る男性と、メビウスと同じ蒼い髪をした女性だった。



・閃・

「あ~っと…ここがこうなって…」

現在、俺はフレッシュリフォーの開発部に居た。
なんだか最近、ここに来てばかりの気がするな。
俺の目の前のデスクには、デバイスの設計図が広げられていた。この部屋の主である主任は、学会に出席していて居ない。
あれでも天才科学者なんだが…変態にしか見えないんだよなぁ。

「っと…回路はこっちの方が良いか…?ん~…ん?」
「むぅぅぅ…」

悩みながら設計図を見ていると、隣から聞こえる不機嫌な声。
視線を移せば、リリンが俺の右腕に抱きついていた。
…顔に物凄く不機嫌です。と書いてあるぞ。

「どしたリリン?。」
「…さっきから設計図ばかり見てますのね。」
「まぁ…そうだな。…邪魔はしないって…言ってなかったか?」
「はい。言いましたよ。」

それじゃ今の状況はなんだよ?思いっきり右腕に抱きついてるぞ?
これが邪魔でなければなんだ?

「…なんで右腕に抱きついてんの?」
「だってお兄様、先ほどから設計図と睨めっこばかりしてます!!それに、私が話しかけても上の空はひどいです!!」
「う…それは…」

…否定が出来ないぞ。確かに、さっきからリリンが話しかけてきても、「あぁ。」とか「うん。」しかいってなかった気がする。
いや…集中してたのもあるんだが、少し失礼だったかもしれないな。
折角、わざわざこんな汚い部屋まで来てくれたのに、話もしなければ怒るのも無理は無いってか…

「あ~…ごめんな。少し夢中になってたかもしれない。」
「いいえ、分かってくれたのなら良いですわ。そう言えば…新作のデバイスですか?」
「ん~…試作で3世代目のVRデバイスも出しただろ?それで、製品版に改良しようかとな。」
「まぁ。もう3世代まで開発しましたの?」
「試作品だけどなぁ。問題点も多いから、実用化はまだまだ先の話だよ。今は管理局で、実地テストしてもらってる所だな。」
「テストとなると…お兄様も参加するのですか?」
「そうなる…なぁ・」

試作品でロールアウトしたデバイスは、管理局などに依頼して、実地訓練を行う予定になっている。
そう言えば…どっかの部隊が管理外世界に調査に行くとかで、試作品を渡した魔道師も参加するとか言ってたな。
あ~…不具合があると不味いから、一緒に随伴してくれって言われてたな。父さんからも、言われてるし。
もう出港してるだろうが…座標を教えてくれれば、後で飛べるからな。管理局に確認とっておくか。

「それなら、私も参加してみたいですわ!」
「リリンも?…まぁ、許可が下りればな。」
「はい!約束ですわ!!」


簡単に下りるとは思わないけどな。ってと、とりあえず、この設計図だけでも仕上げておくか。…転生前の工学科の実業がこんな所で役に立つとはな。
…とりあえずは、隣のお姫様の機嫌を損なわないように、適度に気を抜いてやりますかねぇ。



・フェイト・



「反応は…この辺りのはず…」
「あのビルからじゃない?」

市街地の外れの廃ビル。そこにジュエルシードの反応を見つけた私達。
今回はメビウス達は居ない。どうやら私達のほうが速かったみたいだ。
市街の外れで、廃ビルだからか、人の気配はまったくしない。これなら…簡単に封印できるかな?
飛行魔法で、反応がある部屋まで飛んでいき、進入する。廃墟になって時間がたっているからか、埃や汚れが沢山付いている。
あまり…長く居たくない空間…。

「あ、あったよフェイト。…けど…これ。」
「封印…されてる?」

部屋の一角に放置されていたジュエルシードを見つけだけど…封印が施されていた。それも…見たことの無い術式…
四角い箱の様にジュエルシードを封印したのが、宙に浮いている。その封印の一箇所が破れてて、魔力が流れている。

「なんだいこりゃ?見たことも無いね。」
「うん…ミッド式とも違う。けど、誰が封印を…?」
「メビウスじゃないのかい?」
「うぅん、違うと思う。固定封印…かな?一回解除しないと…」

メビウスの術式とも違うはず。それに…魔力の雰囲気や、色が…なんだか違う。
彼のは澄んだ優しい雰囲気をしてるのに、これは凄く…濁ってて嫌な雰囲気を持っている。
まずは、解除して、新しく封印をかけないと…。
バルディッシュを構えて、詠唱を始めると、私の足元に魔方陣が展開される。


「…封印解除、術式展開…」

バルディッシュの切っ先を封印術式に向けると…弾け飛んだ…?
っ!?違う…これは…バインド!?

「フェイト!?…うぐ…なんだいこれは!?」
「トラップ式のバインド!?くぅぅ…外せない…」

両手、両足をバインドで固定された…!?そのまま、空中で張り付けの状態になる…。アルフも拘束された…!!
それに…締め付ける力が強い…。バルディッシュで切り払おうにも…封印が弾け飛んだときに落とした…!!

「くく…まさか、この程度のトラップに引っかかってるとは…哂えるなぁ。」
「誰…!?」

何処からか…声が聞こえる。周りを見渡しても誰も居ない…?
いや…部屋の入り口の空間が…歪む?

「お前なんかに名乗る名前は持たないよ。フェイト・テスタロッサ。」
「お前…何者だ!!」

アルフと私の視線の先に居るのは…銀色の仮面をつけた…魔道師?
そんな…さっきまで居なかったはず…。それに魔力の反応も無かったのに…

「…っ!?どうして…私の名前を…!」
「ふん、化け物と話す言葉は持たないんでね。」
「ぐ…これを解け!!」
「ちっ、使い魔如きが、粋がるな。そこで転がってろ。」
「あ…あぁぁぁ!!」
「アルフ!!??」

仮面の魔道師が指を振ると、バインドがアルフを締め上げる…!?
苦痛の声を上げながら、睨み付けるアルフを尻目に、こちらに歩いてくる。

「どうして…貴方は誰なの…!?」
「教えてやる義理も無いんでね。…ふ~ん。案外、良い作りをしてるじゃないか。」

そう言いながら…私を舐めるように見る魔道師。
仮面で分からないけど…凄く…嫌な視線だ…!!バインドの拘束を解こうともがくけどどうにもならない…!!

「始末しようかと思ったけど…気が変わったよ。フェイト・テスタロッサ、僕のペットになれ。」
「!?なにを…言ってるの!!」
「言葉のままの意味だけど?ペットになれば…それなりの待遇をしてやるよ。まぁ…色々と…ね。はははは!!」

私が…ペット…!?冗談じゃ…ない!!
顔を背ける私の顎を掴んで、自分のほうに向けて哂う魔道師。
こいつ…狂ってる…!!それに、凄く嫌だ…!!こいつの声も視線も…全部、嫌だ…!!

「誰が…お前なんかのペットになるか…!!」
「ふ~ん。ますます良いね。そう言う強情なのを従順にするのも…面白いなぁ。…魔力吸収。」
「つぅぅ…魔力…が。」

手をかざされると同時に…魔力が抜けていく…!?
唯のバインドじゃない…!?…抜けた魔力が…あいつに吸収されていくなんて…!?

「…ペットにこんなのは要らないよな?」

力なく項垂れる私の顎から手を離した魔道師は、今度は髪のリボンに手を伸ばす。
それは…メビウスから貰った大切なリボン…。やめろ…ゆめろ…!!穢すな…!!メビウスとの絆に…!!メビウスとの想い出に…!!


「やめろ…さわ…る…なぁぁぁ…!!」
「後で綺麗な首輪を買ってあげよう。こんな汚いリボンなんて捨ててしまえ。」

仮面の魔道師が手を伸ばして…リボンに触れそうな距離になった瞬間…壁を貫いてくる蒼い砲撃。

「なにぃ!?…ぬぁぁぁ!!!???」

直ぐに魔力防壁を張り、防御する魔道師だけど…威力が抗えなかったのか、吹き飛ばされていく。
それと同時にバインドが解除されて…私は前のめりで床に倒れていく。
けど…倒れた先の感触は…冷たい床じゃなくて…暖かな…腕の中。
顔を上げれば…バイザーを外した彼の…顔。

「メビ…ウス…?」
「……」

無言で、私をギュッと抱きしめてくれるメビウス。…凄く恥かしいけど…凄く嬉しい…。
そのままの状態で、私に魔力を分けてくれているのか、少し身体が楽になっていく。

「フェイト!!」

アルフの拘束も解けたて、こっちに走ってくる。心配かけちゃった…ね。
メビウスはそっと私を離して、アルフに預けてくれた
なんだか…離れていく温もりが寂しい…
メビウスは、私達に背を向けて、バイザーを装備していた。
そして、無言で魔道師の吹き飛んでいった方向にエクスを突きつけて…

「…貴様ぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

初めて聞いて…初めて見るメビウスの…怒りの咆哮が…ビル内に響き渡っていた。








あとがき

前回の更新から時間が立ち申し訳ないです。
色々とゲームに嵌ってしまいました。
時間が色々と飛びまくってますが…ご容赦を…
さて…前半の母と娘の会話。作者がこの小説を書き始めた理由の一つです。
多分ですが…受け入れてしまえば、こんな感じになるんじゃないかなぁ、と。
親は子供を愛する義務と権利がありますし、子供には愛される権利があります。逆もまた然り。児童虐待する奴なんぞ親とは認めませんよ、作者は。
そして…定番の「女の子の危機に颯爽と駆けつける主人公」をやってみました。
よくよく見ると…メビウス君も一回しか喋ってない。しかも最後の咆哮だけとか。笑
しかし…ゴっなんちゃらさん…生前はオタクだったので…エロゲをやりすぎたようです。ペット発言とか。(笑

以下返信

34様

まさにその通りです!!
ゴっなんちゃらさんは確実にそんな役です!!と言うか自分でやってて気が付かないと言う手遅れ的な奴です!!
ラーメンズネタは、作者が始めてパソコンで見たフラッシュでした。懐かしいですねぇ。(笑
リリン様は純情ですので…色々と騙されるようです。
AC5…大統領が敵として出たら勝ち目皆無なんですが…。



ダンケ様

メビウス君…厨2主人公の恥じないフラグを立てていきます。
まぁ、ブレイズ君やオメガ君の相手には一切、フラグは立ちませんけどね。笑
閃君はリリン様は完璧にバカップル丸出しかもしれません。転入フラグ…どうたてますか…
小五とロリを組み合わせると…悟りとなる!!…言ってみたかっただけです。
ゴっなんちゃらさんは…確かに危険人物になってきましたね。それも3流悪役クラスの。


天船様

箱とPS3で出ますねぇ。ピクシーごっこ…すごく…やりたいです。
現実世界…トンネル潜りはあるといいんですけどね。笑



春河様

おおう、それだけの火力を持ってきてくれるとは…作者の狙い通り、ウザキャラとして受け入れられましたね(笑。
特攻兵器の無限コンボでお願いします。笑
あの3姉妹の相手は…まったくもって決まっていませんからねぇ。ラーズグリーズのメンバーも何れは出す予定ですので…楽しみに(笑


ノラポン様

そのまま、ヴォオーで良いですよ。笑
新作のエースコンバット…楽しみ半分、不安半分といったところですね。作者は。苦笑



リカルド様

作者も陸と空のACは大好物ですね。VOBで突貫とは…ありがとうございます。
確かに、同じ任地に居たらそんな感じになりそうですね。笑
3人は親友ですからねぇ。きっとそんな会話も楽しんでやってると思います。笑


ユーロ様

楽しみにして頂きありがとうございます。
作者の好きなエースですか…やはり彼…ですかねぇ。気高く誇り高く空をこよなく愛した金色の鷲【黄の13】。
ライバルとしては彼が最強の存在として作者の中には居ますねぇ。
ACE5の8492隊等には本気で殺意を覚えましたしねぇ。彼の愛した空を汚す存在は許せませんから。(苦笑

























蛇足&おまけ&…介入前?


???

「何もかも…消えてしまえば良い…!!」
「…深い絶望に身を委ねるか。…まったく、手間をかけさせる。しかし、これは…予想以上だな。」
「…全部…全部、壊れてしまえ!!」
「…彼女の心、どうしちゃったんだろう。」
「心と魔力…どちらも取り込まれる一歩手前、と言った所か。今なら助け出せる状況だ。」
「もう、私に構わないで…私は、ここで消えるのだから…」
「本体から魔力反応を確認。…消すと同時に、己も消えるつもりか?」
「…消えられては困る。助けに来たのにな。」
「…え?」
「貴女はまだ、消えるべき存在じゃないんですよ。だから、あきらめないでください。」
「無理…よ。力だけに…頼っているようでは私を解き放つ事は…」
「力を持ち過ぎた存在は、すべてを壊す。それは、私が一番良く知っていることだ。それに、君を取り込もうとしている存在は、倒さねば危険だ。
…だが、君はまだ…戻れる。だから、絶望するな。まだ生きれるんだ。」
「誰…貴方達は…一体誰なの…?」
「僕は、人が安心して暮らせる世界を望む者。さて、精霊よ。我が手に…」
「俺は、虚空の使者にして、世界の番人。ゲマトリア誤差修正。撃ち貫く…!!」
「私、人の可能性を…最も信じる者だ。…安心しろ。責任を持って…助け出す。
…ターゲット確認…排除…開始!!」


それは…時の闇に消えるはずだった女性。それは…現れるはずの無かった、時と界の使徒達。
そして…時の彼方の彼らと、少年達との運命は…何処かで交差する…



[21516] 16話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/11/12 07:54
「…貴様ぁああぁあぁあ!!!」

この日、メビウスとなのはとオメガ、そしてユーノの4人でジュエルシードの捜索を行っていた。ガルムは留守番。
その中でジュエルシードの反応と、フェイトの魔力の反応を感知したのは、やはりメビウスであり、新たに現れた魔力反応と、徐々に弱体化していくフェイトの反応も察知していたのだ。
サテライトと併用し、廃ビル内部の状況を確認し、ラジカルザッパーによる遠距離狙撃を行い、フェイトに危害を加えていた魔道師を狙撃した。
速度で一番優れるメビウスは2人を置いて、先に突撃していた。
フェイトの無事を確めても、彼の中にある怒りの感情は鎮まらなかった。彼にとってフェイトは大切で大事な友人。それに危害を加える存在は敵。
エクスを突きつけて、何時でも攻撃できるようにしていた。
だが、魔道師は、数部屋ほど向こうに吹き飛ばされ、舞い上がる土煙と埃で確認できない。
直ぐにメビウスは、バイザーを装着し、反応を見つけようとしたが、吹き飛ばした方向から数発の魔力弾が飛来するのを確認した。
しかし、それは彼の周囲に展開していたタリズマンが防ぐが、防御魔法であるタリズマンを減衰させるほどの威力を持っていた。

「タリズマンを減衰させた…!?エクス、単体の密度を上げて。それに、位置索敵も!!」
『了解しました。タリズマン密度上昇、索敵開始します。』
「…アルフ、フェイトちゃんを連れてここから離れて。」
「そうしたほうが…良さそうだね。フェイトが消耗しきっちまってるよ…」

後ろにいるフェイトとアルフを庇うようにして、エクスを構えるメビウス。先ほどの魔力弾以外は攻撃がないが、それでも負傷者である彼女達がここに居るのは危険と判断した。
抱き締めた時に多少の魔力供給を行ったが、吸収された魔力の方が多いのか、フェイトはアルフの腕の中でぐったりとしている。

「頼むからあたしとフェイトの分まで、あの野郎をぶっ飛ばしておいておくれよ!!」
「そのつもりだよ。…さぁ、行って!!」

アルフがフェイトの連れて逃げるのを確認すると、エクスをセイバーモードに切り替える。

「…何時まで隠れている気?それとも怖気付いた?」
「は…ははは!!言うじゃないか!!低俗な魔道師の分際で!!」

突如として、突風が巻き起こり土煙を吹き飛ばす。その奥には、魔方陣を展開し、哂う仮面の魔道師、シルヴァリアスが立っていた。
だが、2人とも、相手が誰であるかとは気が付かない。顔はバイザーと仮面で隠れているし、どちらもそんなに会話をしたことが無い、と言うか、転校して来た時以外、まったく言葉を交わしていなかった。だから、声でも気が付かないのだ。…仮に気が付いても、両者とも怒りで止まらないだろう。

「何者か知らないけど…僕の邪魔をするなんて、良い度胸してるじゃないか、えぇ!?死ぬかい?死んでみるか?むしろ、死ねえぇえぇ!!!!」
「っ…タリズマンを切り裂いただと…!?」

シルヴァリアスが、デバイス・アスカロンの一振りに魔力刃を展開し、斬りかかり、それを防ごうとしたタリズマンを両断した。
まさか密度を上げたのを切り裂かれるとは思わなかったのか、メビウスは驚くながらも、エクスで斬撃を受け止める。
両者の魔力刃がぶつかり合い、魔力光が火花のように散っていく。
主任が書いた設計図を入手したゴッデンシュタイナー家が、御曹司である彼の為に、金に糸目をつけずに最高級品のパーツを使って製造したアスカロン。
その性能は、従来のデバイスより上のランクなのだ。そして、シルヴァリアス自身も魔道師としての素質が高い。…性格に問題ありまくるのだが。
鍔競り合う2人だが、シルヴァリアスが口元に小さく笑みを浮かべる。

「くく…しゃぁぁぁ!!」
「もう…1本あったのか…!?」

左手で腰に下げていたもう片方のアスカロンを、逆手に握り振り上げ、顔を狙う。突然の攻撃に驚きながらも、顔を逸らし回避するメビウスだが、バイザーに皹が入り、前髪の数本が斬り飛ばされる。しかし、顔を逸らしたことで、上半身の防御が一瞬緩み、そこに蹴りが叩き込まれ吹き飛ばされた。

「がふ…!!」
「そらそらそらぁぁぁぁ!!!フラガラッパ!!」
「冗談じゃ…ない!!」

咄嗟に蹴りを受ける寸前で、バックステップをして衝撃を逃がしたメビウスだが、そこに追い討ちをかけるように、シルヴァリアスが4発の剣型の魔力弾を構成し、放ってきた。
狭い室内であり、この状況では回避行動が取れないと判断したメビウスは、ランチャーモードに切り替えて、迎撃していく。
2発迎撃したところで、肉薄されるがセイバーで1発も切り払い、最後の1発を後ろにそらし、旋回して、ソードウェーブで破壊する。
距離をとり、再び、正面を向き合い対峙する2人。

「まさかフラガラッパを防ぐとはね。モブの癖に中々やるじゃないか。」
「モブだか、モップだか知らないけど…何故、フェイトちゃんをあんな目に合わせた!?」
「ふん。ロストロギアを強奪している犯罪者には、当然の報いだと思うけどね。お前こそ…こんな事して唯で済むと思ってるのか?犯罪者に加担してるんだ。お前も共犯者だぞ?」
「どの口がほざく…。殺傷設定でためらいも無く攻撃してくる貴様が…!!」
「へぇ、気が付いてたんだ。」

メビウスが吐き捨てるように言うのを、哂いながら聞くシルヴァリアス。
魔法には殺傷設定と非殺傷設定があり、メビウスは非殺傷設定にしていた。これならば魔法が直撃しても、気絶する程度だ。
だが、シルヴァリアスは何の躊躇も無く、殺傷設定でメビウスと戦闘を繰り広げていたのだ。殺傷設定で直撃を受ければ大怪我、もしくは死ぬ事だってありえる。
冷や汗をたらして睨むメビウスの視線を受けながら、順手と逆手でアスカロンを構えるシルヴァリアス。相変わらず、口元には嫌らしい笑いが浮かんでいた。

「言っただろう?僕の邪魔をするなら…死ねってさぁぁぁぁ!!!」
「狂気が…!!」

転生者であるシルヴァリアスにとって、この世界は所詮は物語の中なのだ。そして、自分となのは以外は唯のモブキャラでしかないと思っている。
彼に選ばれた存在、だから転生できた、と考えているのだ。即ち、自分は主人公なのだと。
自分は主人公なんだから、殺しても大丈夫。自分の邪魔をするのは全て敵だから、殺しても誰も気にしない。
…ただの我侭な子供の考えだ。いや、もしかすると子供以下かもしれない。
エクスを構え迎撃しようとしたメビウスだが、シルヴァリアスの足元に見知った魔力反応を見つけて…こちらも、小さく口元に笑みを浮かべた。

「1つ、忠告しておくよ。調子に乗りすぎていると、足元を…」
「ぶち抜かれるぜぇええぇえ!!!!どおぉおおおぉぉりゃぁあぁぁあ!!!」
「なん…だとぉおぉぉおぉ!!???き…貴様誰だああぁぁあぁぁ!!!!!!」

突如として、立っていた床が爆発し、天井を打ち抜いて飛ばされるシルヴァリアス。爆発で舞い上がった埃が収まると、そこにはオメガが立っていた。
見ると、右手に装着されているパイルパンカーが熱を持ち、唸っていた。そう、オメガが下の階層から、アッパーで一気にここまで床を打ち抜いてきたのだ。
飛行魔法が苦手だが、単純なジャンプでここまで来たようだ。苦手であって飛べないわけではないだろうが…。

「はっはー!!悪人に名乗る名前なんて無いぜ!!だが、あえて言おう!!オメガ・ガウェインであると!!」
「どっちなの…?それに多分、聞こえてないと思うよ。」

自信満々にシルヴァリアスを吹き飛ばした方向を、指差し答えるオメガと、それを見ながら、苦笑しつつ頼りになる親友の登場に安心するメビウス。

「とにかく助かったよオメガ。下手すると負けてたかもしれないからね。」
「おう!!無事でよかったぜ!!」

親指を立てて笑うオメガ。メビウスも笑おうとしたが…バイザーに表示された情報を見て凍りつく。

「これ…は…!?」
「どうしたよメビウス…!!??おいおい、なんか…拙くないか?」

背中合わせにそれぞれのデバイスを構える2人。周囲には…2人を囲むようにして、幾多もの魔力刃が展開されていた。

「邪魔な存在は…消してしまわないとなあぁぁぁ!!」
「っ…!!しぶといな。」
「ゴキブリもびっくりだぜ!!」

聞こえてきた声は、恐らくシルヴァリアスのものだろう。しかし、2人には確める余裕は無かった。
これだけの数の魔力刃を撃ち込まれたら、怪我どころではすまない。ましてや、室内という限られた空間で、満足に避ける事も出来ないだろう。
これは、シルヴァリアスがフェイトを捕まえた時と同じで、トラップとして仕掛けていた魔法の1つだ。

「ふん。本当ならお前らなんかに使う予定ではなかっけど…まぁ、良いか。舞え!!鮮血の剣!!ダインスレイヴ!!
はははははははは!!!邪魔をするからこうなるんだよ!!!ははははは!!!」」

魔剣の名を冠した魔法が2人に襲い掛かるのを、高笑いしながら、崩壊していくビルを見るシルヴァリアス。
しかし、それで終わる2人ではないのだ。

「ふはははは!!だが、しかし!!正義は負けないんだぜ!!とっておき使うぜ!!」
「…やばいな。エクス、シールドモード!!オメガの攻撃を防げるだけ防いで!!」
『了解しました。』

オメガの轟く彷徨。バリアジャケットの肩と、腕の部分が開き、噴射煙と共に膨大な魔力が溢れ出す。
そして、メビウスの不可解な言葉。エクスを巨大な盾のように変形させ、周囲にもタリズマンを展開させていた。
何故、味方であるオメガの攻撃を防ごうと言うのだろうか?
理由は簡単だ。オメガのこの技は、一時的に魔力を解放し、自分の全周囲に攻撃するというデタラメ極まりない技。
力を更なる力でねじ伏せる方法だ。現状、2人でダインスレイヴを防ぐにはこれしかなかった。
それに言うではないか、攻撃こそ最大の防御なり、と。

「いっくぜぇぇえぇ!!!!!だりゃあぁあぁあぁ!!!!!」


魔力が縮退、そして膨張し、ダインスレイヴやビルの天井、壁を薙ぎ払う。
それを上空で見ていたシルヴァリアスは唖然としていた。

「ば…馬鹿な…。こんな方法で…。だ。だが!!まだフラガラッパの弾幕があるぞ!!

直ぐに周囲にフラガラッパを展開し、放とうとしてくる。

「ターゲット…ロック!!XLAA、FOX3!!行け!!」

しかしメビウスも、バイザーに表示されているターゲットをロックしていた。
メビウスの周りに構成された4発の魔力弾が、撃ち出されていく。エクスとメビウスが考案した、対空遠距離攻撃魔法XLAAだ。
戦闘機のミサイルを参考にした魔法であり、メビウスも気に入っている魔法だ。
それが、シルヴァリアスの周囲に展開していた、フラガラッパを撃ち砕く。

「ちぃ、悪あがきを!!なら、これなら!!」

舌打ちしながら、新たな魔法を展開しようとするが、彼は気が付いていない。それより上空で自分を狙う…膨大な魔力と殺気に…
そして…気が付いたときには…もう遅かった。

「ディバイン…バスタあぁああぁぁぁぁ!!!!」
「い…ぃいぃいぃ!!???」

上空から放たれた非常識までの桃色の魔力の塊がシルヴァリアスを飲み込み、地面へと激突させる。
放った魔道師は…高町なのは。メビウスとオメガの後を追っきて、上空で待機していたのだ。

「メビウス君に…なにするのぉぉぉぉ!!!!ディバインシューター!!!!」

若干、涙目になりながら叫ぶなのは。肩に乗っかっているユーノは青い顔をしている。なぜなら、周囲に魔方陣が展開され、スフィアと呼ばれる発射台が構成されていた。
そこから、墜落したシルヴァリアス目掛けて、ディバインシューターが打ち出されていく。その弾幕も非常識極まりない。

(メビウスと、ほんの少ししか練習してなかったはずのシューターを、使いこなすなんて…女の子って…怒らすと恐いんだ…)

ユーノが内心、手を合わせながら冥福を祈っていた。
だが、まったくその通りである。流石のメビウスも2~3回しか練習してなかった魔法を、ここまで使いこなされるとは思って居なかっただろう。

「な…なのちゃん、その位にしてあげた方が…」
「は…!!メビウス君!!大丈夫!?」


堕とした辺りを絨毯爆撃しているなのはを止めるメビウス。その顔は、かなり青ざめている。
ちなみに、オメガは離れた地面に大の字で倒れていた。どうやら、魔力をかなり消耗したらしい。
なのはを落ち着かせながら、オメガのところに戻っていく。

「けど…やりすぎじゃ…ないかなぁ?」
「だって、メビウス君をあんな目にあわせたんだよ?私が怒るのは当然だもん!!」

メビウスは、頬を膨らませて怒るなのはを宥めながら、絨毯爆撃の後を見る。
流石に非殺傷設定でも、トラウマに成りかねない弾幕ではある。

「あ、メビウス君、ホッペ…切れてるよ!?」
「どうりでヒリヒリする訳だ。多分、掠ったのかな?」

青ざめたなのはが、メビウスの右頬に手を伸ばす。どうやら、最初の攻撃で軽く切ったようだ。

「そんなに深くないから…大丈夫だよ。」
「で、でもでも、血が出てるよ?」
「唾でも…つけてりゃ大丈夫じゃね…?」
「つ…唾を…め…メビウス君。」
「なに?」
「う…動かないでね?絶対だよ?絶対だよ?」
「えっと…あの?」

後ろで倒れているオメガが疲れきった声を出すのを聞きながら、メビウスとなのはも近くに座る。
オメガの提案を聞いたなのはが、顔を紅くしながら、何故かメビウスの右頬に顔を近づける。
そして、そのまま、右頬の傷口の辺りをペロペロと舐めだした。

「ちょ…なの…ちゃん!?」
「ん…ぺろ…ちゃぷ…れるれる…」
「まさか本気でやるとはなぁ。」
「…ぺろ。…こ…これで大丈夫だよね?」
「…その、ありがとうね。」

どっちも顔を真っ赤にしながら、寄り添う2人。オメガとユーノは若干、置いてきぼりな感じだが、仕方が無いだろう。

「き…貴様らぁぁ…」
「…まだ動けたか…!!」

低い怒りの篭った声が響き渡る。
絨毯爆撃された地面から、再び這い上がってくるシルヴァリアス。
直ぐにエクスを構えて、なのは達を庇う様に立つメビウス。なのはも、背中に若干隠れながらもレイジングハートを構えていた。

「両者とも、そこまでにしてほしいな。」

一触即発の空気が流れるが、それを止める冷静な声。
両者の間に。転移魔方陣が開き、1人の魔道師が立っていた。

「誰だ貴様ぁぁ!!」
「管理局時空航行8番艦アースラ所属、ブレイズ・トリスタン補佐官だ。両者とも、直ちに戦闘行為を中止せよ。
こちらも交戦及び敵対の意思は無い。繰り返す、戦闘行動を中止せよ。そして、こちらに交戦及び敵対の意思は無い。」

シルヴァリアスの怒声を聞き流して、冷静に所属と、自分の名前を明かす魔道師、ブレイズ。
確かに、管理局の制服を身に纏っている。そして、その言葉をあらわすかのように、バリアジャケットすら展開していなかった。

「管理局だって…!!」
「ねぇメビウス君、管理局って…なに?」
「極端に言えば、警察と裁判所がまとまった組織だよ。白い魔道師。」

そう言いながら、メビウスとなのはに視線を向けるブレイズ。そして、そのまま後ろのユーノにも視線を向ける。

「…ユーノ・スクライアだな?」
「え!?あ、はい、そうです。」
「一族の方から捜索願が提出されている。それに、ロストロギア輸送の件に関しても色々と聞きたいので、一緒に来てもらいたい。
もちろん…お前達もね。」
「私達も…?何故…?」
「管理外世界で、これだけ派手に、魔法を使った戦闘行為を行われると、流石に見過ごせないんでね。それに、一緒に居るところを見ると…現地で見つけた協力者だろう?
悪い様には決してしない。少し聞きたいこともある。…来てもらえないか?」
「メビウス君、どうするの…?」

真っ直ぐな瞳でメビウスを見つめるブレイズ。
彼もメビウスがリーダー格と言うのがわかったのだろう。

「…1つ、約束して欲しい。」
「なんだ?」
「絶対になのちゃん達に危害を…加えないでほしい。」
「安心しろ。俺が責任を持って、お前たちの身柄を預かろう。それに、俺の上司は優秀だ。…協力に感謝する。」

少し考えたそぶりを見せたメビウスだが、ブレイズの指示に従うことにした。
笑みを浮かべるブレイズを見て、小さく安堵のため息をついて、バリアジャケットを解除しようとするメビウス達だったが、1人納得しない魔道師が居た。

「ふざけるな…管理局だかなんだか知らないが…そいつらは僕に攻撃してきたんだぞ!!??」
「モニターで見ていたが…先に攻撃したのはそちらではないのか?それも殺傷設定だ。…むしろ、お前は強制的に連れて行くぞ。」
「き…貴様ぁぁぁ!!僕が誰だか知らないのか!!??」
「知らんな。」

ため息をつきながら、怒鳴っているシルヴァリアスの言葉を流すブレイズ。
実は、ゴッデンシュタイナーから、御曹司がいる。とは聞いていたが、写真や画像など、一切提供されていないのだ。
ならば、しらなくても仕方が無い。最も、ブレイズにとって御曹司だろうがなんだろうが関係ないのだ。

「い…良いだろう!!貴様も消えろぉおおおぉ!!」
「…敵対行動をとるなら…自衛させてもらうが、良いのか?」
「平局員如きが、僕を止められると思う…がふぁ!!??」

ブレイズは一瞬で、魔力刃を展開しようとしていたシルヴァリアスを吹き飛ばし気絶させた。そして、そのままチェーンバインドで雁字搦めに縛り上げる。
あまりの早業に、驚きを隠せないメビウス達。だが、それ以上に驚いていたのは、エクスとイジェクトだ。
その視線はブレイズのデバイスに注がれていた。

『あれは…まさか…』
『ヒュ~。久々にすげぇ懐かしい仲間に出会ったな。』

エクスのすら驚きを隠せない声。
闇で染め上げたような漆黒の鎧のようなバリアジャケットを纏い、手にはエクスと同等の大きさのデバイスが握られていた。
その先端から、魔力刃が鎌の様に展開していた。その姿はまるで、悪魔のようだ。
エクスとイジェクトはそのデバイスの名前を知っている。そして、どれ程強力で扱いにくいデバイスなのかも…
静かに、エクスから零れる名前。

『スペシネフ・ラーズグリーズ…』





新型魔法 XLAA 使用者、メビウス・ランスロット
ゲームでのメビウスの必殺のあれ。(笑


あとがき

戦闘描写が苦手すぎて泣きたい気分になる作者です。
あ~…うまくなりたい。とりあえず、フルボッコになってもらいましたゴっさんです。
そして、最後に登場ブレイズ君。そして久々に登場のVRデバイスはスペシネフでした。まぁ…悪魔という事で…
バリアジャケットのイメージはそのまま、ラーズグリーズが着ている鎧ですね。
次回は介入前のアースラ内部の様子でも…


以下返信

ユーロ様
おおぅ、ハイテンションですね。それなのにこんな戦闘描写で申し訳ないです。
PJも出したいのですが…まだ少し先になるかもしれないですね。ジャック・Oは難しいですねぇ。苦笑
下手すると物語が破綻しますから…。けど、ネタとかでもいいなら考えて見ますね。


34様
スーパーメビウスタイムにはなりませんでしたが…終了のお知らせではありました。笑
スカイアイの誕生日…すっかり忘れていた作者…なぜだぁぁぁ!!
彼は絶対に登場させたいキャラですからね。メビウスとスカイアイのセットは最強です…!!



ダンケ様
原作知っていて転生したから選ばれた、と勘違いしてるゴっさんです。
プレシアさんはこちらでも、難病に犯されてますが…それに対する描写をしてませんでしたね。後の話で入れたいと思います。
ランスロット夫婦については…次回辺りにでも分かるようにしようかとは思っています。
NTRはやりませんよ!!??入れ忘れただけですからね!?





[21516] 17話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2010/12/14 21:31
・閃・

「…よりによってアースラかよ。」
「どうかしましたか、帝博士?」
「いや、なんでもないんですが…。後、博士と敬語は止めてくれません?違和感ありますし、そちらが年上なんですから。」
「そちらが良ければ良いのですが。」

俺のぼやきが聞こえたのか、前を歩く、ブレイズ・トリスタンと名乗った執務官補佐が振り返る。
…まぁ、メビウスが居るんだから、他のシリーズの主人公がいたって可笑しくはないんだよな。
AC5の主人公ブレイズは、作中での僚機システムの関係で、単体での戦闘は無い。だからか、メビウス1に比べると、エース性は薄い、とよく言われてた。
だが、忘れてはいけない。彼は、ルーキーから成長し、悪魔、亡霊、そして英雄と呼ばれるまでに成長したエース。確か、作中でチョッパーに、戦局を変えかねない、とまで言われてた。
そして何より、あのバートレットが、自分のあだ名であった【ブービー】を彼に付けた。そして、秘蔵っ子とまで言っていたんだ。それだけでも、エースとしての素質がよく分かる。
むしろ、ブレイズと言うエースは、仲間と戦うことで真価を発揮するエースだと俺は思っている。まぁ、居ても良いだろ?孤高の英雄じゃなくて、多くの仲間に支えられる英雄だってよ。
まぁ、今はそんなことより、俺は博士と呼ばれるのを止めてもらうことにした。理由?むず痒いし…それに…

「隣のこいつが笑ってますので、出来れば止めて欲しいんですが。」
「では、そちらも俺の事をブレイズと、これで対等な立場と言うことにしま…しよう。」
「了解。…んで、てめぇら、何時まで笑ってんだよ。」
「ぷぷぷ…だって、帝博士だってさ。プゲラ。テラおもしろす。これは笑わずに居られない!!」
『帝博士、キリッ!!プギャー!!』
「おーし、てめぇら、一回虚数空間に叩き落してやろうか?」
「い…良い拳もってるじゃん。世界狙えるよ…。…ごふげふグフザク。」
『あだだだだ!!!砕けるくだけるクダケル!!!ららら…らめえぇええ!!逝っちゃううぅぅう!!!』

隣を歩いている主任の顎にアッパーをお見舞いして、待機状態のレーベンを踏みつける。
主任も最後までネタを入れるなよ…。そしてレーベンは、なんつう悲鳴を出してんだよ。前の歩いてるブレイズがひいてんじゃねぇか!!

「…多少、勘違いしてたかもな。…憧れていたデバイス開発者がこんな人物だったとは。」
「ちょっ、まっ!?いやいや!!待ってくれ!!違うから!俺はこう言うキャラじゃないから!?むしろ、こいつらが駄目なだけだって!!」
「…冗談だ。だが、憧れていたのは事実なんだよ。…改めて、会えて光栄です、帝 閃博士。」

振り向き、笑いながら右手を差し出される。一瞬、戸惑ったが、直ぐに俺も右手を差し出し、軽く握手を交わす。
会ったばかりで、真面目な奴だと思ってたけど…堅実な方なのかもしれないな。しかも、考え方が柔軟のな。



・メンテナンスルーム・


「ここが2人に待機しててもらう部屋になる。機材などは自由に使ってくれてかまわないし、足りないものがあったら言ってくれ。揃えれるのは揃える。」
「ほぉ、流石は管理局。いい設備が揃ってるねぇ。…うんうん、これなら、開発から整備まで出来そうだよ。ふふふふ。」
「…この変態が、いきなり見てまわるなっての。ところで、3世代のモニターしてくれている魔道師の人達は?」
「今、こちらに向かっている。それまで、適当にくつろいでてくれ。」

主任が、機材を見ながら恍惚の笑みを浮かべている。…ちなみに、最近では逆光メガネを習得したらしく、怪しさが格段にアップしてる。
ほらみろ、ブレイズが苦笑を浮かべてんじゃねぇかよ。
機材をハァハァ言いながら、撫で回している主任を横目に、椅子に座って、デスクの上を眺める。
…そう言えば…ブレイズのデバイスってなんだろうな。…まさかVRデバイスか…?
軽く視線を向ける。管理局の制服を着こなしていて、見た目は完璧エリート然としてる。…耳に変わったピアス、いや、イヤリングをつけているな。
そんな、俺の視線に気が付いたのか、ブレイズが笑いながら、右耳のイヤリングに指を伸ばす。

「これが気になるか?」
「ん、まぁな。…ピアスに見えないし、男でイヤリングってのもなぁ、てさ。じっと見て悪い。」
「気にするな、慣れている。これは、俺のデバイスだよ。待機状態はこうなっているからな。」
『お洒落ですねぇ。私なんかこの丸っこいネックレス状態ですよ?まぁ、私が超プリティゴージャスになっても、付けるのがこんな坊やじゃねぇ…』
「…てめぇ、さっきのでこりてねぇのか。」

レーベンを握りつぶそうとした矢先に、扉が軽い音を立てて、開く。そして、3人の女子の魔道師がはいてくる。年齢は…俺と同じくらいか?
…ド派手だな。制服の色、真紅じゃねぇかよ。………待てよ、真紅だと…?真紅で3人だと…?
あるうぇ?俺達が作った3世代の試作デバイスって…マイザー・デルタをイメージしてた気がするんだけど…なぁ。デルタで3人って、俺の知る限り、彼女たちだけなんだけどなぁ…
そんな事を考えてる俺とは裏腹に、綺麗に俺と主任に敬礼する3人。

「始めまして。シルビー・ファング3等空尉よ。」
「デボラ・バイト。準空尉だ。よろしくな。」
「ジェニファー・ポイズン…です。階級は准尉です、よろしくお願いします。」
「あ…あはははははは。帝 閃です。よろしく。」
「…主任です。よろしく。……うぉ、メガネが…」
『…閃!!閃!!大発見ですよ!!』
「なんだよ…?」

ですよねー。薔薇の3姉妹ですよねぇ。当たり前デスヨねぇ。ここまで来ると突っ込む気力も起きないな。
乾いた笑いを浮かべる俺と、メガネがずれ落ちたのを直している主任。
そんな中、興奮気味に俺を呼ぶレーベン。なんか、大発見って言ってるけど…。
…はっ!!こいつ…まさか…!!

『この3人の名前をあわせると、毒へ』
「そおぉおおい!!!!」

刹那、俺の右腕が光った。あの言葉を言おうとしたレーベンを、部屋の隅にあるダストボックスに投げ入れる。
その速度はイチローのレーザービームにも勝るとも劣らない…と思う。突然の奇行に唖然とする3姉妹とブレイズだが、そんな事に構ってられるか。
どんだけ危険なブロックワード言う所だったか…。

「…閃君。ちなみに、レーベンはなんて言おうとしたんだい?」
「決まってんだろう、毒蛇3姉妹って言おうと…」

……空気が固まった。ついでも俺も固まった。
言っちまった…俺が言っちまった。主任の古典的な方法に引っかかった。

『ふはははは!!自分で言ってれば世話ないですねぇぇぇ!!!ざまぁぁぁ!!!ばーかばーか!!』
「やーいやーい、引っかかってやんの!!だっせー!!」
「……てめえらぁ…いい加減にしろこらぁぁああぁぁ!!!!」

空気をごまかすように、主任にハイキックをぶちかまし、レーベンと同じくダストボックスに叩き込む。そして、ボックスを大型のダストシュートに投げ入れる。

「…ゴミの分別はしっかりとしてほしいのだが。」
「知るかぁ!!」



5分後

「…先程のことは、心の底よりお詫びします。だから、許してください、お願いします。」
「本当なら、許さないところですが、私達のデバイスの開発者であり、整備もしてくれる帝さんの言葉です。今回は許しますわ。」
「まっ、主任って奴もお前がふっ飛ばしたからな。それでチャラにしてやるよ。だから、とりあえず土下座は止めろって…」
「あははは…この際、プライドは抜きだ!!許してもらえればそれで充分だ…」

土下座に近い形で、3姉妹の長女と次女に懇願する俺。

「ザルトホック乙。」
「主任…てめぇ、生きてたのか…。そして何回も言うが…メタ発言をすんじぇねぇよ…。誰の責任だとおもってんだこら。」
「あらあらぁ。2人とも落ち着いてください。紅茶を用意しましたから、飲んでください。」

ゴミが全身に付着したまま、俺の肩をポンと叩く主任。しかも、さり気なく入れた俺のネタに反応してんじゃねぇし…
こめかみに青筋が浮かびそうになる俺の前に差し出される紅茶。
視線を向ければ、ジェニファーが笑顔でティーセットを用意していた。なくとなくだが、リリンと同じような人種の気が…する。マイペースでお嬢様的な意味で。

「あ、どうも。」
「いえいえ、お姉さま方も如何ですか?」
「そう…ね。頂こうかしら。」
「やりぃ!ジェニファーの紅茶はうまいんだよなぁ。」

手頃なデスクをテーブル代わりにして、何故か始まったお茶会。
飲んでおきながら言うのもなんだが…良いのかこれで?一応、勤務中なんだろうに。
それにブレイズも居るんだが…、と視線を移せば、小型端末で通信を取っているが、その表情は、厳しい。

「すまない。緊急の事態が起きた。3人はここで待機、デバイスの調整を受けてくれ。」
「私達は良いの?」
「今回は俺1人でも大丈夫だろう。閃に主任もここにいてくれ。3人は護衛も兼ねているのだから。艦内とはいえ、よろしく頼む。」
「「「了解」」」

それだけ言うと、俺達に軽く敬礼して早足でメンテナンスルームを出て行くブレイズ。
俺と主任に合図をすると、主任も分かっている、と言った視線を返してきた。恐らくだが…なのは達が見つかったんだろう。
さて…どうやって、介入するか…





・ブレイズ・

「先ほどの言葉どおり、自衛を取らせてもらった。…聞こえてないと思うが、自業自得だからな。…俺だ、こいつを艦内で拘束しておいてくれ。後で色々と聞きたい。」

仮面の妙な魔道師をバインドで拘束し、アースラへと強制転移させる。まったく、派手に暴れてくれたものだ。
廃墟とは言え、ビルを1つ崩壊させるとは…。まぁ、それを言ったら、彼らもなのだが…協力的だから何も言わんが…


『マイロード。この程度でよろしいのですか?』
「戦闘不能にさせれば充分だろう。」
『はっ。愚かな魔道師もいたものですね。マイロードに喧嘩を売るなどと。』
「そういってやるな。処で、久しぶりでじゃ無いのか?兄弟に会えたのは。」
『…エクスとイジェクト…か。再開を喜ぶほどの仲でもありません。所詮、私は異端で罪ですので。』
「…俺のデバイスの内は、罪と言うのは禁止としていた筈だが?」
『失言でした、マイロード。』

自嘲するラーズグリーズに声をかけ、俺は蒼い魔道師、メビウスと言ったか…。そちらの方向に振り向く。
案の定、驚いた表情をしているのを見て、小さく喉で「くっ」と笑いながら、バリアジャケットを解除する。
展開したのは自衛の為であり、彼らに危害を加える気も無い。交渉の場に銃や剣を持っていく馬鹿も居ないからな。

「驚かせてすまないな。では、行こうか。」
「行くって…何処に?」
「時空航行艦アースラへ、だ。転移魔方陣を使用するから、動くなよ。エイミィ、よろしく頼む。」

端末で通信を居れ、魔法陣の展開を要請する。
そのまま、一瞬でアースラ艦内へと転移していく。転移魔法は初めてなのか、メビウスと白い魔道師、ナノハ…と言っていたか。驚いているな。
そして、艦内の通路を俺が先導するように進んでいく。

「えっと、ブレイズさん。私達はどうすれば?」
「まぁ、付いてきてくれ。とりあえずは最高責任者と会ってもらう。」

困惑気味のメビウス達だが、納得してくれたのか、大人しく付いてきてくれるが…

「ユーノ・スクライア。変身を解除したらどうなんだ?」
「え、あぁ、そういえば…気が付きませんでした。解除しますね。」
「んぉ?お前って、なのはの使い魔とかじゃなかったのか?」
「オメガ君は、知らなかったんだ。うんと、私が最初に助けたんだけど、怪我や魔力の消費が激しくて、フェレットの状態になって回復していたの。」
「…お前、イタチじゃなかったのか…」
「ち、違うよ!?僕は人間!!しかも、フェレットだし!!」
「けど、私もメビウス君に言われるまで気が付かなかったよ…?」
「はっはー!!やっぱり、お前はイタチだぜ!!なのはもイタチって勘違いしてたみたいだぜ!!」
「そ…そこじゃないもん!!人間ってところだもん!!」
「さ…3人とも、ブレイズさんが笑ってるって…」

まったく、愉快な4人組だな。ユーノがナノハの肩から降りて、身体が光に包まれていく。
それが収まると、恐らくメビウス達と同年代と思われる少年が佇んでいた。
確かに、捜索願の出されていたユーノ・スクライアと同じだな。

「おおう…。…女子?」
「男だよ!?どうしてここで間違えるのかな!?温泉の時だって男子部屋にいたでしょ!?」
「そういやぁ、そうだったな!!」
「あはは…。すいません、ブレイズさん、騒がしくて…」
「いや、構わないよ。下手に緊張しすぎているよりは、ずっと良い。」

困惑気味のメビウスと小さく笑う俺。まったく、会ったばかりだが退屈はしないな。
さっきから俺は笑いっぱなしだよ。3人の口論と、1人のそれを止めようとする声を聞きながら、俺は先導していく。付いてきてくれる辺り、立場を弁えていると思いたいな。

艦長室

「「「…………」」」
「…お前ら、表情を出しすぎだ。」

まぁ、仕方の無いことではあるな。俺が案内し、入室した艦長室は、俺から言っても…異質だ。
最先端技術を駆使した部屋なのだが…如何せん、盆栽やら茶室もどきやら…ミスマッチの物だらけだ。
日本育ちである彼らが、困惑するのも無理はないだろうな。
部屋の中央では、リンディ提督とクロノが正座して待っていた。一瞬、クロノから「どうにかしろ」的な視線が飛んできたが、軽く無視しておく。俺とて限界がある。

「あちらが、アースラ艦長のリンディ・ハラオウン提督。そして、その正面に居るのがクロノ・ハラオウン執務官だ。
艦長、こちらが先ほどの魔道師たちです。」
「えぇ。ブレイズ君、ご苦労様。先ほど紹介されたけど、リンディよ。」
「クロノ・ハラオウンだ。ブレイズの上司になる。よろしく。」
「さぁ、こっちにいらっしゃい、立ち話もなんだから、座って。お茶と和菓子もあるのよ。」
「色々と聞きたいといっただろう?メビウス、座ってくれるか?」
「あ、分かりました。」

嬉々とした表情で、お茶と和菓子を4人に勧めるリンディ艦長なのだが、4人は4人で困惑気味だ。
まぁ、仕方が無いとは思うのだが…、とりあえずは、リーダー格であろうメビウスを、座らせる。
その隣にナノハが座り、ユーノとオメガが並んで座る。
俺はクロノの隣に座りながら、リンディ艦長の話を聞いていく4人を眺める。

「貴方達が集めていたジュエルシードはロストロギアと言って、発達しすぎた科学や技術で滅びた世界の遺産。
そして、取り残された危険な遺産のことを、ロストロギアと呼んでいるわ。」
「使用方法などはまったくの不明だが、使い方次第で世界だけでなく、次元すら滅ぼせるほどの危険な遺産だ。」

艦長の言葉に続くクロノの声。メビウスやユーノは理解をしていた、表情を硬くしているが、オメガやナノハは今一、付いて来れて居ないようだな。
まぁ、ナノハは現地で見つけた魔道師のようだし、オメガは、失礼な言い方が馬鹿…なんだろうか?
なんにせよ、ジュエルシードは、ロストロギアの中でもトップクラスで危険なものだと言うことは理解してもらえたようだ。

「なら…なんでフェイトちゃんは…」
「なのちゃん!!」
「え…あ…」
「今、なんて言った?」

無意識になのか、ナノハの口からこぼれた言葉。咄嗟に止めたメビウスだが、それを聞き逃す俺ではない。

「…お前達と仮面の魔道師以外にも、集めている魔道師が居るのか?答えてもらおうか?」
「えっと…それは…」
「クロノ、落ち着け。脅迫みたいになってるぞ?」
「…これは次元世界に関わる重大なことだ。それを分からないお前じゃないだろ?」
「2人とも、静かにしなさい。」

艦長の制止の声を聞き、口を閉じる俺達。クロノは真面目すぎだと思うが、仕方が無いか。それがこいつの美点でもある。

≪彼らは俺達より年下なんだ。怖がらせるなって。≫
≪……気をつけるよ。≫

「正直に、全部話してくれるかしら?もし、手助けできるなら、したいのよ。」
「…わかり…ました。」

メビウスが代表してか、もう1人の魔道師、フェイトの事を話し始める。
内容は何か理由があってジュエルシードを集めている、と言ったことだが…、厄介だな。下手すると…犯罪者として捕縛しなければいけないか。

「なるほど。…貴方達は彼女を助けたいのね?」
「助けると言うか…理由を知りたいんです。それに、きっと話せば分かってもらえるはずだから。」
「…だが、下手すると犯罪者として、扱われるぞ?それを君達は理解しているのか?」
「それは…」
「…そう言えば、貴方たちの名前を聞いてなかったわね。」

重苦しい空気が漂ってくる。恐らく、メビウスはひかないだろうな。言葉の端からフェイトとやらを気遣う様子が見て取れる。
さて、どうしたものか…
その空気を察してか、艦長が笑顔を浮かべ、3人の名前を問いかける。
確かに、俺も曖昧だな。

「えっと、高町なのはです。」
「俺はオメガ・ガウェインだぜ!!よろしく!!」
「メビウス…メビウス・ランスロットです。」
「…なん…だと…!?」
「?」

クロノが驚いたように眼を見開くが…俺も同じような表情をしているだろう。
あのリンディ艦長ですら、驚いている。
ランスロットとガウェイン。この名をミッドチルダ全域で…知らぬ者は居ないはずだ。

「…もし、良ければ…私達に協力してくれないかしら?」
「艦長!?」
「これは民間人が立ち入るべき状況ではないと思いますが…?」
「2人は、静かにしてなさい。どう?メビウスさん。」
「協力…ですか?」
「えぇ。もし、貴方達が私達に協力してくれるのなら、彼女、フェイトさんの事はできる限り、良い方向に話をするわ。
…どうかしら?悪い条件ではないでしょう?」

…艦長の顔が…黒くなっている。何か企んでいる時の表情だ。
即答できない4人に気が付いたのか、艦長は柔らかな笑みを浮かべ、「今晩、ゆっくり考えて返事をして」と言って、別の局員を呼び退室させる。
部屋に残っているのは、俺とクロノ。それに艦長の3人だ。

「…母さん!!一体、どういうつもりだ!?」
「何が?」
「何故、民間人である彼らの協力を求めたんだ!僕達と薔薇の3姉妹でもこなせる筈だ!」
「俺もクロノと同意見です。その為に、3姉妹を借りてきたんですよ?」
「………」

俺達の質問に答える気は無いのか、静かにお茶を飲む艦長。…ちなみに、今日の砂糖の摂取量はこれで終わったな。
…そんな事を考える場合ではないか。…協力を仰いだ理由は、俺とクロノは察しがついているが、聞かずには居られない。

「…彼らが、メビウスが伝説と鬼神の、オメガが無敵の…子供だからですか?」
「…えぇ。そうよ。」

かつて、ベルカ戦争終結に導いた最強の傭兵達が居る。かの名だたるベルカの騎士達でさえ、彼らによって墜とされていた。
ミッドチルダ最大の英雄達。伝説、スカーフェイス・ランスロット、円卓の鬼神、サイファー・ランスロット、無敵、チャーリー・ガウェイン。
今尚、色あせることのない英雄だ。その息子達が、こんな所に居るとはな…

「理由を…お聞きしても?」
「…今の管理局は人員不足よ。それこそ、組織自体が悲鳴をあげているわ。それをなんとかするには…【ヒーロー】が必要なのよ。
多くの人の心をつかみ、管理局に憧れるを持たせる為にはね。」
「伝説と鬼神の息子なら…確かに最高の【ヒーロー】となるだろうが…。」
「それに、素敵じゃない?女の子の為に、一生懸命に身体を張って戦う男の子の姿。それだけでも充分な効果よ。」

この人は…とことん策士だな…何処まで読んでいるのか、時々、底が知れない。

「さぁ、2人は捕縛した魔道師の取調べにいってちょうだい。これから忙しくなるわよ。」
「了解しました。ほら、クロノ、いくぞ。」
「…あぁ。」

未だに納得できない様子のクロノを引っ張りながら、俺は退室する。さて、これからどうなることやら…





クロノ達が退室した後に、リンディは徐に通信端末を起動させる。
暗かった画面に光が宿り、1人の人物が映し出された。
そこに映し出されたのは、人を引き付けるような笑顔をした男性。
ハラオウン親子の友人でもある。

「おや、久しぶりだね。リンディ、元気そうで何よりだ。一体どうしたんだい?」

局員達だけでなく、ミッドチルダの市民達からも絶大な人気と支持を持つ提督。
その名は…

「お久しぶりです。ハーリング提督。」

…ビンセント・ハーリング。






あとがき

久々の更新でありながら、物凄くgdgdな内容になってしまいました。
いやはや…これからどうなることやら…
ネタ満載の転生者2人組、今日も彼らは何処へ行く。そしてヒーロー求める管理局。
最後の最後で出た大統領。うん、この人いたら、管理局、物凄く変わると思うんですよ。作者の実力が伴うかは不明ですが…


以下返信


ユーロ様

ユーロファイター…おぉ!!なるほど。気が付きませんでした。(失礼。
LRは面白いのですが…ラスジナさんが超強いデスヨネェ。勝率がかなり低い作者です。
ラプターは良いですよネェ。けど、作者はフランカー系統も大好物。…知人曰く「戦闘機は戦う芸術品」だとか。うん、心から賛成できます!!



天船様

おおう…まさかそんなキャラが居たとは…後で調べさせていただきます!!
…多分、ツカワナイトオモイマスヨ?


B=s様

時間系列とか場所とか色々とゴチャゴチャしてますからね。流石に、そう思うのも無理は無いですよね。
それでも、見てもらえるのなら、とても嬉しく思います。


ダンケ様

ナイスキル。言わせたいですねぇ。決め台詞でもいいかも?(笑
装甲の堅いメビウス。確かに違和感ありましたね、これから、そんな事の無い様にしていきます。
スペシネフの性能は…ブレイズ君の一応、主人公クラスですから、チート性能を居れて行こうかとは思っています。











蛇足&おまけ&介入前の様子見。

「プライマルア」
「サンダガ!!」
「ぎょぁあぁあ!!??」
「凄いな。あいつのPAを貫通したぞ。」
「恐ろしいくらいの潜在魔力だね。時の闇が狙うのも無理はないよ。」
「助け出せてよかったな。完全に取り込まれていたらどうなっていたか…」
「…ん~…」
「…どうしたんだ?」
「え?あぁ。どうにもおかしな世界の乱れがあってねぇ…。」
「ほぉ、調査に向かったほうが良いのか?」
「いや、まだはっきりと分かったわけじゃないから、様子見かな?とりあえず、覚悟はしておいてね。」
「了解だ。」





[21516] 18話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/02 18:11
・メビウス・

ランスロット宅 円卓…ではなく、食卓。

「メビウスちゃん、どうしたの?」
「え…?」
「さっきから少しも食べてないな。…今日は俺が作った料理だぞ?失敗はしてないはずだが…」
「…どうせ私の料理の腕は、フェイスには及びませんよ~だ!」
「まったく…子供じゃないんだから、いじけるな。まぁ、幾度ととなく、俺の胃を壊滅にまで追い詰めたお前にしては、上達したと思うがな。それでメビウス、何か悩み事か?」
「あ!!さては、なのはちゃんと喧嘩したわね!?駄目よ?女の子には優しく優しく、愛してあげなくちゃ!!」
「最後のは、関係ないだろう、最後のは。サイファーも茶化すな。…それで?どうしたんだ?」

心配そうに私を見つめる父さん。確かに、食事の手が止まってたかな。
…母さんも、ふざけてるようで、私の事を心配してくれている。
悩み事…か。今日だけでも、沢山のことがあった。仮面の魔道師との戦闘、管理局の介入、そして、協力要請。
私達が協力するなら、フェイトちゃんの罪は軽くなる…かもしれない。それなら、喜んで私は協力をする。
友達である彼女を…見捨てることなんて出来ないから。けど、それでも気になる。
私が…いや、私とオメガが名乗った時の、3人の反応。…正確には苗字のところだったと思う。
…父さんや母さんが・・・関係していること…?…全部、打ち明けてしまえば…楽になれるのにね。

「メビウスちゃん。」
「…なに?」
「私たちはね、家族なのよ?…もし、何か悩んでるのなら、教えてくれない?」
「1人で悩むより、3人で悩んだ方が解決するかも知れんぞ?」
「そうそう!!3人集まればもんじゃの知恵って言うのよ!!お母さん、物知りでしょ!!」
「…文殊だ。もんじゃは食べ物だろう。」
「冷えたビールともんじゃ焼きはピッタリなのよねぇ。…明日の朝ごはんは、もんじゃにしましょう!!私、ビールは飲めないけど!!」
「サイファー、そろそろ、俺は怒っても良いか?と言うか、怒るぞ?第一、朝からもんじゃ焼きなんか食べれるか」
「はは…父さん、そこなんだね…。でも、そうだよね、家族…なんだよね。」

私は、全部を話すことにした。フェイトちゃんのことも、管理局のことも、そして、名乗ったときの反応のことも…
少しずつだけど、父さん達の表情が変わっていく。父さんは真面目な表情に、母さんは困ったように微笑んでいる。
全部、話し終えると、父さんは静かに私の頭を撫でてくれた。…大きくて包み込んでくれるような…暖かい手だね。

「そうか。…メビウスは、その女の子を助けたいんだな?」
「うん…。絶対に助けたい。」
「そうね、女の子を見捨てるなんて、男の子の風上にも置けないからね。かっこいいぞ!メビウスちゃん!!」
「メビウスのやりたいように、したいようにすれば良い。俺達は、絶対にお前の味方だ。そして、どんな事があろうとも、守る。だから…後悔だけはしないようにしろ。」
「…ありがとう…母さん、父さん。」
「しかし、ランスロットって所で驚いてた…か。」
「もぅ、フェイスが目立ちすぎてたから、有名になっちゃってたじゃないの。」
「…よく言うな。お互い様だろう。」

苦笑しながら、頬をかく父さんと、むくれている母さん。
…目立ちすぎてたとか、有名とか…やっぱり、父さん達は過去に何かしてたのかな…?

「…気になるようだな。サイファー、話しても良いだろう。」
「そうね、メビウスちゃんも理解できる年頃の筈だものね。私達の馴れ初めを教えるのも良いわね♪」
「…馴れ初めでもあるが、俺達の過去の話だろ…」

キョトンとした表情の私に気が付いたのか、父さんが、少し顔を紅くしながら、咳払いをする。
それが、面白いのか、母さんは父さんの頬をツンツンと突っついて「照れちゃって」と言いながら笑っていた。

「…それでは、話そうか。俺達の過去を。」
「うん…。」
「メビウスちゃん。ベルカって…知ってる?」
「ベルカ…?ミッドの地名で、ベルカ自治領…だったよね?」

古代ベルカが存在した世界が滅びた時に、移民してきた人達が、治めている所…だったかな?
実は私は、ミッドの事をあまり知らない。正直に言うと、行こうとも思わなかったからね。

「そのとおり。だがな、今のベルカと俺達の知る【ベルカ】は違う。今では自治領となっているが、かつては違った。」
「…9年前までは、【ベルカ公国】と言う1つの国だったのよ。強大な軍事力と、魔道技術を誇っていたのよ。」
「かつて、世界を巻き込んだ戦争があった。ベルカ戦争。サイファーも言ったが当時のベルカは、軍事力、魔道技術両方においてに強大な力を持っていた。
それを使い、領土の拡大を推し進めていった。当然管理局は危険視し、両者の関係は悪かった。」
「けどね、当時のベルカは、無理な領地拡大が原因で、財政難に荒れていてたの。
だから、一部の領地を有力貴族達に自治運営させることにしたのよ。それで、財政難を乗り越えようとしたけど、無理だったのよ。
それだけ当時のベルカは逼迫していたのね。そして、ミッドや管理局が、その有力貴族たちを取り込んで、権限と領地を拡大して言ったの。…それで、お互いの関係は最悪。」
「その際に、極右政党が政権を獲得した。…強く正統なベルカを取り戻すためにな。…そして、ミッド派有力貴族【ウスティオ家】の領地から、膨大な魔道資源が発見された。
それを機に、ベルカはミッド等に侵攻を開始。ベルカ戦争の始まりだ。」

そこまで言うと、父さんはコップの飲み物を飲んで、喉を潤した。
私はと言う…一言で言えば…唖然としている。
だって…そんな大事件…いや、戦争があったこと自体、私は知らなかった。

「準備不足の管理局とミッドは、伝統のベルカ空戦隊の前に次々と敗走していった。…ベルカの騎士と言えば、管理局員たちの恐怖の的だったからな。
殆どの管理局員たちは、相手にならなかったな。」
「結局、ウスティオ家の領地は瞬く間に占領されて、一部の辺境地域以外は完全に支配下にされてしまったの。たったの1週間でね。」
「1週間で!?…そんなに凄かったんだ…」

ベルカ空戦隊…、どれだけ凄かったんだろう…?
たった1週間で、領地の大半を占領するなんて、それこそ、エース級が多数居ないと出来ることじゃない。

「そして、ウスティオ家は、辺境地のヴァレーに傭兵部隊を組織。ミッド及び管理局との合同反攻に託すことした。」
「そこで、フェイスと私が出会ったのよ~。…今でも覚えているわ、雪の中に佇むフェイスの姿…。あぁ…」

母さんが頬を両手で包みながら、クネクネとし始める。…時々、こうして妄想状態に入るから、困るなぁ。
けど、傭兵部隊なら…まさか、2人は…?

「もしかして…父さん達も傭兵だったの…?」
「あぁ、俺も傭兵として参加していた。ちなみに、オメガの父親のチャーリーもな。」
「スカーフェイス1とチャーリー11と言ったら、凄腕の傭兵として有名だったのよ~。」

…そうだったんだ。けど、納得できるかもしれない。
父さんって、なんていうか…凄く傭兵といった感じの雰囲気がある気がする。
士郎さんとの組み手でも、対等以上に戦っているから、納得できる。

「あれ?それなら、母さんは…?」
「むふふぅ~。私もね、傭兵だったのよ!!まだまだ、駆け出しだったけど!!」
「駆け出し所か、初陣だっただろうが…、俺やチャーリー、そして、あいつがどれだけ苦労したか…」
「あいつ…?」
「……いや、なんでもない。話が反れたな。聞きたいこととかあるか?」
「…なんで、ベルカは負けちゃったの…?」
「俺達や管理局の猛攻の前に、ベルカの騎士達も、少しずつだが墜ちていったのもあるが、最大の原因は…」
「ベルカはね…自国領内で…魔核弾頭を使用したのよ。進撃する連合軍を…食い止めるために。」
「魔核…弾頭…?」

聞きなれない単語に私は首をひねる。けど、父さん達は、険しい表情をしながら、何かを思い出すようにしていた。

「…至極簡単に言えば…魔力を用いた核弾頭だ。…結果、ベルカの街7つが…蒸発した。」
「蒸発…!!??そんな…ロストロギアじゃないか!!」
「そうよ。ロストロギア級に危険な物を、ベルカは作り上げることができたの。」
「…それだけでなく…他にもある物を作り上げても居た。」
「ある…物…?」
「…時空因果律制御機構、タングラム。…運命さえ書き換える装置だ。」
「そんな物まで…狂気の沙汰じゃないか…」
「あぁ。…結局、ベルカは自身の作り上げた狂気で潰れていった。敗戦後、自治領として残ってはいるが…な。」

そこまで話すと父さんは、母さんが入れたコーヒーを口に含む。
…魔核弾頭に…時空因果律制御機構。そんな物を作り上げてしまう、ベルカ公国。…それだけで、どれだけの技術を持っていたのか分かる…

「…その戦争で、父さん達が、活躍したから…管理局は私に反応したんだね…?」
「その通りだろうな。…どうする?もしかすると、管理局は、お前を何か利用する気かもしれないぞ?」
「……」

はは…そう言うことだったんだ…。父さん達の名前を、私を何かに使う気だったんだね。
けど、それでも良い。私は…フェイトちゃんを助けたい…

「それでも…私はフェイトちゃんを助けるんだ。私に出来るなら…私にしか出来ないのなら…」
「…決意は固いようだな。なら、約束しろ。」
「約束…?」
「最強になるな、最高を目指せ。最強は誰でもなれる、簡単になれる。
だが、最高は簡単になれるものじゃない。それでも最高を目指せ。最も強いと、最も高いは異なるものだ。
平和を目指すなら、平和のために血を流す覚悟をしろ、自分のだけじゃない、他人の血を流す覚悟もしろ。
平和の名の元に何万ガロンの血が流れていることを忘れるな。どんな正義をかざしても流れ出る血を止めることは出来ない。血で血は止められないんだ。
それでもお前は飛び続けろ。答えにたどり着くまで…覚悟し、背負い続けろ。誰かの為に泣け、その涙の数だけお前の心は強くなる。
希望を持て、理想を持て、だが現実を見つめろ。逃げるな、立ち向かえ。真実を見極めろ、偽りなどに騙されるな。」

真剣な表情で話す父さん。…血は血で止められない…か。
それでも、前に進む覚悟がなければ…護る事なんて出来ないんだ。真実を見極めて…戦えって…事だよね?

「ふふ。フェイス、回りくどいわよ。たった一言でいいじゃないの。」
「…それはサイファー、お前がいってやれ。」
「そうねぇ。厳しいことを言うのは父親の役割だものね。それじゃ、私が言っちゃうわね。メビウスちゃん!!」
「は…はい!!」
「頑張りなさい!!!ちなみに、家族が増えても大丈夫だからね!!むしろ大歓迎よ!!」
「え…あ、うん…?」

笑顔で親指を立てる母さんと苦笑する父さん。
一瞬、呆気にとられるけど、私も直ぐに笑顔になる。
頑張りなさい、か。母さんらしくて、凄く…凄く頑張れそうな気がするね。
私の覚悟は決まった。…大丈夫、大丈夫。まだ…飛べる…!!




深夜、ランスロット家リビング

「…管理局も出てきたか。」
「そうね。…きっと、あの子なら大丈夫よ。」
「そうだな。…念の為に、連絡を入れておくか。あの人にも苦労をかけるな。」
「ふふ。良いじゃないの。親友同士なんだから。…大丈夫よ。運命は切り開くもの。彼女が…良く言っていたわ。」

笑いながら、窓から満月を眺めるサイファー。いや、満月というより…何か懐かしむ表情を…していた。







あとがき

今回も短めです。そして、会話部分多!!
戦争部分はこじ付けも、良いところですね。
ベルカの科学力は世界1ぃいぃぃいい!!!!!


以下返信



ユーロ様

軍曹…確かに、磔にされてたのに、戦闘終了後に余裕で脱出してましたよね。
きっと、エネルギーを吸収されていたと思えば…!!
X2…スレイマニの変態機動にブチ切れそうになってた事がありますね。笑
デスモード…作者はないですが…友人がありますね。
友人、自分の彼女を騙しデスモード起動させる→友人調子に乗る→彼女、覚醒&種割れ→友人、ゲーム&リアルで撃破される。
まぁ、お互い、HPが少ない状況だったんですがね。苦笑


ダンケ様

3姉妹はそろそろ動き始めますね。…あぁ、戦闘描写が不安すぎる。
確かに、極端に言えばプロパガンダですね。リンディさん黒モード搭載してるかもしれないです。
ハーリングさんは…某紳士提督の代わりになっているかもしれないです。笑


ADFX-01G-2様

とりあえず、その大統領来たら、色々な意味で終わります。笑
敵の方々に合掌するしかなくなりますよ。
まだまだ出したい人物は居ますので…頑張ります…!!



[21516] 19話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/09 22:05
管理局 本局

本局の廊下を歩く1人の男性。軍帽を被り、猛禽を思わせる鋭い眼をしている。だが、他者を威嚇するだけでなく、優しさも併せ持つ不思議な眼をしていた。
制服の袖には魔術師のエンブレムが刺繍されていた。
通路を歩き、目的の部屋につくと、一呼吸置いて扉を開ける。

「失礼します。」
「ん?あぁ、もうそんな時間か。すまないね。」
「いえ、時間を作っていただきありがとうございます、ハーリング提督。」

軍帽を取り、見事な敬礼を返す男性と、机の向こうでも、ハーリングは敬礼を返す。
男性の名前はヴィクトル・ヴォイチェク。管理局時空航行艦【ケストレル】、それに所属する航空部隊【シュトリゴン隊】の隊長を務めている。
ヴォイチェクや、彼の部下達は9年前のベルカ戦争を戦い抜いてきた猛者たちであり、航空隊としての実力はトップエースだ。
彼の所属するケストレルも歴戦の艦であり、名将と呼ばれる艦長が指揮している。

「お忙しいところすいません。少しお話がありまして…」
「ふむ。なんだね?あぁ、ソファーに座りたまえ、立ち話もなんだろう。」
「いえ、大丈夫です。…実は先日、私の古い友人から連絡がありました。」
「ほぉ、彼からかね?」
「えぇ、どうやら、リンディが何かを企んでいるとか…。ご存知ですか?」

姿勢を崩さないが、ヴォイチェクは苦笑しながらハーリングを見つめる。
ハーリングも椅子に深く腰掛けながら、やれやれ、といった調子で首を振っていた。

「ランスロットという名前が出てきたところで察しはついてたよ。実はね、彼女の担当する事件で…。その前に長くなるから、座りたまえ。」
「では、お言葉に甘えましょう。」

今度は断らなかったヴォイチェクに満足し、ソファーに座った彼の対面に移動しながら、数枚の資料を渡すハーリング。
事の顛末を教えながら、呼び出した秘書官が入れてくれたコーヒーを口に含んだ。

「プロパガンダ…ですか。彼女の考えそうなことですな。」
「未だに伝説、鬼神、無敵の知名度は衰えていない。その息子達を担ぎ上げれば、管理局の信頼も高くなるだろう。だが…」
「提督は反対…なのですね?」
「うむ。彼らはまだ9歳なのだ。そのような重荷を背負わせたくは無い。リンディが私、ひいては管理局の為に考えてくれるのは分かる。だが、若すぎる。」

英雄の息子を担ぎ上げれば、管理局、そして見つけたリンディや、採用したハーリングの株も上がるだろう。
だが、9歳という若さ、いや、幼さで危険な管理局の仕事を押し付けるのは、大人としての良識ではどうなのだろうか。

「スカーフェイスからも聞きましたが、フェイト・テスタロッサと言う少女を助ける為に、彼の息子、メビウスは協力するようですが…。
もしや、プレシア・テスタロッサが関係してるのかもしれませんな。」
「テスタロッサ…か。彼女は優秀な技術者であり、魔道師だったからね。関係ないとは言いきれないな。」
「ジュエルシードを使い、何かを企てていると?」
「なんとも言えんよ。だが確かに、この事件の解決に貢献したとして、メビウス君達を大々的に表彰すれば、知名度も跳ね上がるだろう。」
「…どうするおつもりですか?スカーフェイスは、出来れば、そっとしておいて欲しいようでしたが…」
「…リンディには悪いが、今回ばかりは昔の好で彼らの側に立とうか。なに、話せばわかってくれるさ。
なにより、まだ未来ある少女を犯罪者として、過酷な人生を歩ませたくは無い。私の方からも手を回して置こう。もしかするとヴィクトル、君の力を借りるかもしれないから、
その時はよろしく頼むよ。」
「はい、お任せください。」
「ははは。頼りになる友をもてて、私は幸せだな。」

優しげに笑うハーリングを見ながらヴォイチェクは思う。
誰よりも優しく、誰よりも暖かく、懐の大きな人物だ。この人こそ…管理局のトップに立つべき人間だろう。なにより、我々の事を友と呼んでくれる。
忠誠を誓うのに値するほどの人物だ。

その後、ハーリングと軽く雑談を交わし、部屋を出て行くヴォイチェク。今日は珍しく訓練もなく、手持ち無沙汰になってしまっていた。

「お、隊長じゃないですか。お疲れ様です。」
「ん?あぁ、ジンか。ご苦労、今日はどうしたんだ?」

エントランスに行くと、制服にシュトリゴン隊のエンブレムをつけた男性が、自販機で飲み物を買っていた。
ジン・ナガセ。シュトリゴン隊の副隊長を務める男性であり、ヴォイチェクの右腕でもある。

「いや、隊長は今日、オフでしょう?よければ、家で食事なんてどうかな…と思いましてね。部隊の連中も誘ってんですよ。」
「ふ…大方、娘の自慢でもしたいんだろう?」
「はは、ばれちゃいましたか。いいじゃないですか、ケイだって、隊長に懐いてんですよ。」

カラカラと笑うジンと軍帽を深く被り、口元に笑みを浮かべるヴォイチェク。
それなりに、年齢の差はあるが、良き友人、上司と部下として関係を築いていた。

「実は、グランガイツ隊長にナカジマ夫婦も誘ってるんですよ。ケイもあいつらの娘達とは、仲が良いですから。」
「まったく…私が行くことは既に決定してたのか?」
「部隊の連中に隊長も連れてくる!!って大見得きっちまってんですよ。さぁ、行きましょう!!」





アースラ、情報管理室

・ブレイズ・

「……」


カタカタとキーボードを打つ音だけ、室内に響き渡る。
現在、作成しているのは事件の報告書の一部。未解決だから、事の始まり程度しか作れていない。
最も、これはカモフラージュであり、本当の目的は違う。報告書なら自室でも作成できる。

「…突然、地球に行くと言い出し、学園を退学。行動原理がさっぱりわからんな…」

まさか、仮面の魔道師がシルヴァリアス・ゴッデンシュタイナーだったとは…。
厄介な事になると思ったが、なぜか奴は「不問にする代わりに、協力させろ。」と言ってきた。
ますます意味が分からん…。何が狙いだ…?
開口一番に、高町 なのはが協力するのか?と聞いてきたが…彼女が何か関係しているのか…?
先ほど、彼女達は協力する意思を表明、今頃はリンディ艦長から規則等の話を受けているところだろう。
俺は、1つのデータを画面に表示させる。
自己申告のデータと、こちらで計らせてもらった簡単な魔法系統のデータだ。

「高町なのは、性別、女、年齢9歳。…3人兄妹の末っ子で、私立聖祥大学付属小学校に在学。なお、魔力はAAAクラスに匹敵…か。
…魔法要素以外は、ごく普通の小学3年生にしか思えんデータだな。」

シルヴァリアスとの接点は、同じクラスと言うだけか…。なんなんだ…?
彼女の魔法要素が狙いなのか…?

「メビウス・ランスロット、性別、男、年齢は9歳。…学校及びクラスはなのは等と同じ…か。
気になるのは…魔力の量だな…。」

多すぎて、測定不可能なら、まだ分かる。仮にも伝説の息子だ、それだけの魔力を持っていても不思議ではない。
だが、彼は違う…。魔力の量が…一定ではなかった。計測中も絶えず上下を繰り返していた。故に計測不能。
大雑把に見れば、Sクラスなのだろうが…。

「何かしらのスキル持ち…か?」

徹底的に精密検査を行えば、わかるだろうが…。時間もない。後で簡単なメディカルチェックも行うが…どうなることやら。
そして何故か知らんが、現場指揮権限が俺に回ってきている。本来はクロノの権限のはずなのだが…
あいつ、押し付けたな…

「部隊戦術…本格的に勉強しはじめるかな。」

背伸びをした後、俺はまたパソコンのキーボードを叩き始めた。




・閃・

え~…俺、自分でもヘボいと思ってます。
いや、どう介入すっかなぁと、考えてたのはいいんだよ。と言うか、考えてる時って、滅茶苦茶楽しいんだよね。
祭りも、準備の方が楽しいって言うし…。

「閃君、現実逃避はやめようか。」
「ねぇ、閃…?どうして、ここに…居るの?」
「え?あれ?えぇ!?せせせせ…閃君?な…なんで?」
「だはははは!!!白衣とめがね!!完璧に、理系オタクだぜ、せぇぇえぇぇぇん!!!」

あ~…首を傾げるなメビウス。ただでさえ、女の子っぽいんだから。可愛いだろ、惚れるだろ。
なのは、お前もメビウスの真似してかしげんなよ。さり気なく、そいつの腕を握ってんじゃネェよ。小動物か?
あとオメガ、こっち指差して笑うな。俺だって白衣と眼鏡は、似合ってねぇとおもってんだよ。そして謝れ。全国に居るメガネ白衣さん達に謝れ。

「閃と君たちは、知り合いだったのか?」

「あ~…ん~…まぁ、そうなんだが。…説明すっか。」

5分後

「そっか。閃もミッドの人間だったんだ。」
「そうだな。ごめん、今まで黙ってて…」

部屋の中央の、テーブルを囲んで座る俺達。クロノは用事があるとかで、部屋を出て行った。
簡単に説明を終えた俺は、メビウス達に頭を下げる。流石に秘密にしてて、悪くないって開き直るわけにはいかないしな。

「あ、良いよ。閃が悪いわけじゃないし…」
「そ、そうだよ!!私達も魔道師って事を秘密にしてたんだから、お互い様だよ!」
「あ~…そう言って貰えるとありがたいな。サンキュー。」
「おう!!それに、閃が居るなら心強いしな!!」

こいつら…どんだけ御人好しなんだか…。少し涙出てきたぞ。
メビウスとなのはは笑顔だし、オメガなんか親指立ててるし…
まったく、こいつらは俺にとって大事な友人達だな。
けど、俺は戦力外も良い所なんだが…

「うん、オメガの言う通り。閃が居るなら安心できるよ。」
「いや、俺はお前らみたいに、強くないぞ…?むしろ、雑魚いぞ?」
「そんなの関係ねぇ!!俺達3人!!親友パワーは最強だぜ!!お前を信じる、俺を信じろ!!」
「そうそう、私達は親友同士なんだから…きっと大丈夫!!」

……やべぇ、マジで泣けてきた。
なんつうか…認識に違いがあったんだな。
俺は友人って思ってたけど、この2人は…親友って思っててくれたのか…
今更だけど、俺…転生して…こいつらに出会えて…本当に良かったって…思えるよ。

「ねぇねぇ、閃君。そっちの人は…誰なの?」
「始めまして、主任です。よろしく。」

俺の隣に座っていた主任を、指差したなのは。それに気が付いて、主任も何故か優雅に一礼する。

「あ…高町なのはです。よろしくお願いします。…あの、主任さんの名前…」
「主任です。」
「え?…あの、名前は…」
「主任です。」
「…なま「主任です。」うぅ~…メビウス君…」
「あははは…よしよし、ほら泣かないで。」

涙目でメビウスに縋り付くなのは。…いやぁ、完璧に被せたな主任。
お前、どんだけ本名言いたくないんだよ…。しかも、初対面で泣かせんなよ…。

「泣き顔なのちゃんハァハァ…!!」
「鼻息を荒くしてんじゃねぇよ…!!」
「だって、生原作キャラで、主人公で小学生で泣き顔少女!!ロリコンには堪らげふぁ!?」
「廊下で頭でも冷やしてろ!!」

メタ発言&危険発言を繰り広げる主任に、アッパーをブチかまして、廊下にたたき出す。
まったく…油断も隙もあったもんじゃねぇ…
冷や汗をたらす俺を苦笑しながら見ているメビウスと爆笑しているオメガ。
ちなみになのはは、何故かメビウスの背中にピッタリとくっ付いて赤面している。…恥かしいならくっ付くなよ。
ドアが軽く音を立てて開く。主任が復活したのか?
そう思い振り返った俺は…表情を固くした。

「て…めぇ…」
「やぁ、帝君。クロノから話を聞いている。まぁ、仲良くしようじゃないか。」

白々しく笑顔を浮かべる…シルヴァリアスが立っていた。

「シルヴァリアス君!?」
「やぁ、ランスロット君にガウェイン君。先日は失礼したよ。まさか、君達とは思わなくてね。」
「先日…?」
「はは、仮面をつけた魔道師がいただろ?アレは実は僕なんだよ。」
「っ!?君…が…!?」
「おっと、今は争う気なんて無いよ?僕が、彼女を捕まえようとしてたのにも理由があるし、助けた君達にも理由があったんだろう?
それに、先に攻撃してきた君も悪いんじゃないのかな?」
「…それ…は。」
「まぁ、お相子と言う事にしよう。…僕も混ぜてくれるかな?」

笑顔を浮かべ、なのはの対面に座るシルヴァリアス。
3人の表情は、かなり硬い。メビウスなんて、苦虫を噛み潰したような顔をしてるぞ。
まぁ、俺も人の事いえない表情してるがな…

「クロノから話を聞いたけど…なのはは凄い魔力の持ち主なんだってね?AAAクラスだって?」
「え……うん…」
「凄いじゃないか!!僕はAクラスなんだけど、だからかな?君とは何か合う気がするんだよ!」
「……」

完璧に…引かれてんぞ…。AクラスとAAAじゃ差が在りすぎるだろう…
しかも、高町さんから、何時の間にか、なのはって呼び捨てにしてるし…
名前を呼ばれた瞬間、なのはの顔が怯えたようになってたな…。今じゃ、完全にメビウスの背中に隠れてるよ。

「始めてみたときから、なのはは普通の子とは違うって思ってたんだ!!どうかな?今度、僕の家に遊びに来ない?色々な魔法の道具もあるんだよ!!
それか、一緒に魔法の訓練なんてどうかな?こう見えても、僕は魔法に詳しいんだ!今からでも…」

それに気が付かずに、必死に自分の自慢話を繰り広げてる…。ある意味で…大物だな。
…よくもまぁ、空気も読まずに…しゃべり続けれるな。メビウスも、何かを感じ取ったのか、なのはを庇うようにしてるし…オメガなんて殆ど敵意丸出しだ。

「…ここに居たのか。3人とも、これからメディカルチェックをするから、付いてきてくれるか?閃も一応、立ち会ってくれ。」
「…なのちゃん、行こう。」
「う…うん!」

天の助けとばかりに登場したブレイズ。唯単に呼びに来ただけだろうが…助かったな。
直ぐになのはの手を引っ張りながら、出て行くメビウス。…さり気なく握る辺り…好感度高いだろうな。
遅れて、俺とオメガも部屋を後にする。…ちなみにシルヴァリアスは、自分によっているのか、誰も居なくなった部屋で延々と自慢話を繰り広げている。

「……不安要素が…大きすぎるな。修正が必要だ…」
「ハスラーワン乙!!」
「主任…もう一回、沈んどけえぇぇぇ!!!」





あとがき

さて、次回から色々とすっ飛ばして行こうかと考えております。
厨2はウザくかけているでしょうか…?
…書いてる作者は、ウザイと思っております。
そして、今回も出ました、ACEのキャラとオリキャラ。
苗字で分かるとおり…彼女の父親です。さて…これからどうなることやらで…



以下、返信

34様

ん~…詳しいこと言うと、後々の物語の楽しみが無くなる?ので…PJや相棒の事は秘密で…申し訳ないです。
v2は…危険すぎると思っていただければ、結構です。その危険度をどう書くかは…作者の実力次第…(汗



ダンケ様

タングラムについては設定集の部分で、少しですが書いてみました。自我を持たせたのはリリン嬢ではない事は確かです。
パパの言うあの人はヴォイチェク中佐でした。予想外…だったでしょうか?笑
フォース…出ましたね…!!ACE6の為に箱を買いましたが…フォース…やってみますか!!


ユーロ様

ははは!!同志よ!!作者もあの動きが可能と思い込んでいました!!蓋を開ければ、マルチロールというね…。
スピード特化のX02が愛機の作者には物足りない…!!
ベルカ戦争の話は…いつか書いてみたいとは思っていますが…確実に、メビウス君達のお話が終わってからですね。すいません。
オメガ隊100機…勝てる気がしません…!!





[21516] 20話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/15 23:18
・メビウス・

アースラに乗船してから数日がたった。その間に色々とあったんだ。
オメガが薔薇の3姉妹さん達の事を、毒蛇3姉妹って言って、本気で戦ったときもあって大変だった。ちなみに、私とユーノも何故か巻き込まれたんだよね…

「蒼い奴は後回し!!この熱血馬鹿を先に黙らせるわよ!!!」
「ハッハー!!かかって来ぉおぉぉおい!!!!ComeComeComeCome!!!」
「ちょ!?魔法障壁をただの蹴りで破壊するって、あんた何者よおぉおおぉ!!!???」
「ゆ…誘導弾を片手で弾き飛ばすな!!こ…こっちに来んなぁあぁぁ!!!!」
「あらあら~。」
「……まぁ、オメガだしね…。ユーノ、私達は、邪魔にならないようにしてようか。」
「デタラメじゃないか…。」

閃の知り合いのリリンちゃんとの、初対面のときも、大変だった。閃がお兄様って呼ばれてたのには、私も少し笑っちゃったな。
けど、頼りがいがあるから変じゃないんだけどね。リリンちゃんって、凄く頭がいいんだ。まだ小さいのに凄いなぁ。
そうそう、なのちゃんと直ぐに仲良くなっても居たね。なのちゃんも、「妹が出来たみたいで嬉しい!」て笑ってた。
食堂で、クッキー作りとか教えで上げてたりしてる。ちなみに、それにジェニファーちゃんも参加してる。

「なのはさん、こちらはこうで良いのですか?」
「うん、それで大丈夫だよ。あ、リリンちゃん、計量カップはこっちを使ってね!」
「はい!なのはお姉様!」
「リリン様、張り切ってますね。」
「えぇ、閃お兄様に、美味しいクッキーを差し上げたいのです!」
「えへへ、そうだよね!私も、メビウス君においしいの作ってあげないと!」
「あらあら、それでは、私はお姉様方に作りますわ。」

そして今日は、シルヴァリアス君とブレイズさんが模擬戦をするから、モニターで見学させてもらうことになっている。
私のほかに、なのちゃんとクロノさんも一緒。薔薇の3姉妹さん達と、先に模擬戦をしていたオメガとユーノは、船室で休んでいる。
ガルムは艦橋で索敵の手伝いをしているはずだし、閃と主任さんはエクス達のデータを取って、解析とかをしてるみたい。

「あ、メビウス君、始まるみたいだよ?」
「さて、ブレイズに何処まで通用するかな。」
「クロノさん、ブレイズさんって、そんなに凄いんですか?」
「あぁ、強いぞ。僕も本気で戦って、勝てるか怪しいところだからな。」

モニターから視線を外さないままのクロノさん。横顔だけだけど、ブレイズさんを信頼しているのが良く分かる。
私も、モニターに視線を戻す。ブレイズさんはデバイス、スペシネフに鎌のように魔力刃を展開して、空中に待機している。
シルヴァリアス君もアスカロンを順手と逆手に構えて、周囲に魔法を展開しているけど…あれは、フラガラッパ…かな?

「フラガラッパあぁあ!!」
「サンダーボルト、打ち砕け。」

ブレイズさんの周りに、バレットスフィアが2つ展開して、魔力弾が打ち出されていく。
まるでガトリングみたいに、掃射していく。弾速自体はそんなに速くないけど…弾幕が凄い。フラガラッパを文字通り、撃ち砕いていく。

「ちぃ…!!ロンギヌス!!」
「集束魔法か…!!」

槍のように魔力光が、一直線にブレイズさんに向かっていくけど、回避しようとしない…!?
ブレイズさんが左手をかざすと、空間が揺らめきだす…?

「ファントム、返すぞ。」
「…なにぃ…!?」

揺らいでいた空間に魔力光が吸い込まれたと思うと、直ぐに撃ち出されて来る…?
まさか…空間をゆがめて反射したって事!?

「ねぇ、メビウス君、今のって…なに?」
「空間を歪めたのはわかったけど…反射したのかな?」
「ブレイズは空間制御は得意な方だから。簡単に言えば、小型のワームホールを作り出したんだ。それを反射専用にしてるだけだ。」

クロノさんが、補足で説明を入れてくれる。ワームホールって…そんなに簡単に出来るものなのかな…?

「…えっと???」
「メビウス、後でなのはに分かるように、説明しておいてくれるか?」
「あはは…そうしますね。」

頭の上に???マークを浮かべるなのちゃんを見て、溜息を付くクロノさんと、苦笑する私。
「なんで笑うの~!」といじけそうになったなのちゃんを、撫でて慰めながら、モニターに視線を戻す。
ブレイズさんは、さっきから場所を移動していないのに対して、シルヴァリアス君は周囲を旋回するように攻撃してるけど…
全部、ファントムで返されるか、スペシネフで切り払われている。実力差がありすぎる、私でも勝てるかどうか…。

「ナイトホーク、起動。」
「フラガラッパ…!?…なんで追尾しない!?貴様、なにをした!?」

フラガラッパが追尾しないのに驚くシルヴァリアス君。ある程度の追尾性能は持ってるようだけど、ほんの少し上昇したブレイズさんを追尾しないで、そのまま飛んでいく。
可笑しいな…?普通なら、追尾していくはずなのに…?

「ん?一々、説明するのも面倒だが…仕方がないか。俺のバリアジャケットには、ステルス性能が搭載されている。
今、使っている魔法は、その性能を更に上げている。」

シレっとして話すブレイズさんだけど…凄いことだと思う。
ステルス性能があれば、索敵魔法にだって引っかからないし、誘導魔法だって、ある程度は無効化に出来るんだろうからね。

「ひ…卑怯だぞ!!それは禁止だ禁止!!それに、そのファントムとかもだ!!」
「別に良いが…。…ミラージュ。」

溜息をつきながら、スペシネフを振って魔法を解除する。けど、なにか新しいのも展開したみたいだね。
あれ?一瞬…ブレイズさんの周りの空間が…揺らいだように見えたけど…?

「…彼も馬鹿だな。ブレイズのあれが…一番厄介なんだよ。」
「あれ…ってなんですか?」
「見てれば分かる。」

丁度、シルヴァリアス君がブレイズさんの周囲に、ダイスンレイヴを展開していたところだった。
ただ、旋回してただけじゃなくて、これを仕掛けていたんだね。…えげつないなぁ。

「これならどうだ!!」
「ミラージュ、出力上昇。」
「…嘘ぉ…!?」
「あれがブレイズの切り札、空間湾曲だ。」

ダインスレイヴがブレイズさんに襲い掛かるけど、全部手前で曲がっていく。中には同士討ちのように、ぶつかって消えていくのもある。
肉迫すらしない…。クロノさんが言っていた空間湾曲。…自分の周りの空間を、自由に歪めれるって事だよね…?

『スペシネフは、空間制御機構が搭載されていますので、あのようなトリッキーな魔法が使用できるのです。』
「エクス、空間制御機構って?」
『魔道師自身が持つ空間把握能力を、最大限に引き出し空間制御のアシストをするのですが…。用意に扱えるものではありません。』
「…ブレイズは努力家だからな。確かに天才だが…、あいつの場合、努力の天才と言った方が良いか。」

そうか…。エクスとスペシネフは同じVRデバイスなんだよね。
空間把握能力…かぁ。クロノさんの言うとおり、ブレイズさんって、凄く努力してきたんだろうね。

「ふ…ふざけるなぁあぁぁ!!貴様!!さっきからなんなんだ!?妙な魔法ばかり使って!!」
「仕方が無いだろう。別に攻撃しても良いが、後悔するなよ?」
「ふん!!貴様程度に負ける僕じゃない!!なのは!!見てて!僕が勝つ…」
「よそ見してると…堕ちるぞ?」

距離が離れてるのに、ブレイズさんが魔力刃を展開させたスペシネフを振り下ろす。
届くはず無い距離なのに、なんでたろう?
けど、次の瞬間、私は眼を見開いた。

「き…貴様あぁぁ…!!」
「だから言っただろう…後悔するぞ…と。」

ブレイズさんの斬撃がシルヴァリアス君に襲い掛かっている。…斬撃が飛んだ…?
いや、違う。空間を…跳躍した!?空間湾曲の他に跳躍まで出来るのか!?
1閃、2閃と振るうたびに、シルヴァリアス君の目の前に、現れる斬撃。

『ありえません…。空間跳躍まで使いこなしている…!?そこまでの適合率とは思いませんでした。こけは…私とマスター並みの適合率です。』
「えっと、メビウス君、どういうことなの?」
「至極簡単に言っちゃうと…攻撃がワープしたんだよ。」
「わ…ワープって…えぇ!?そ、そんなのどうやって避けるの?」

シルヴァリアス君を尻目に、驚く私となのちゃん。実際に避ける方法なんてあるんだろうか…?
私が思いつく限りでは、速度で振り切るか、先読みで防御するしかない。
モニターに視線を戻すと、ブレイズさんの左手に魔力光が収束していた。それを、開けたワームホールに撃ち込んでいる…?

「これで、チェックメイトだ。…シンファクシ!!」
「う…うわあぁぁ!!??」

声と同時に、シルヴァリアス君の周りに開く無数の黒い穴、ワームホール。
そこから、さっきブレイズさんが撃ち込んだ魔力弾が放たれていく。それが、直撃して堕ちていく。
結局、模擬戦はブレイズさんの圧勝だった。
すごいなぁ…。私もまだまだ強くならないと…



・閃・

現在、俺と主任はメンテナンスルームでVRデバイスである、エクスとイジェクト、それにスペシネフのデータの解析を行っている

「ん~…本体部、コアの部分は完璧に自立してるね。これさえ無事なら、外装を弄っても問題は無いみたいだねぇ。」
「いや、そうでもないみたいだな。…神経みたいに回路が、張り巡らされてるぞ?」
「むしろ、コアから出てるし…、もしかすると。自分で出してるんじゃないかな?別なのにも接続可能かも…?」
「おいおい、つまりなにか?極端な話、1世代のコアを別なデバイスに接続すれば、直ぐに活動可能…ってか?」
「多分ね。しかもコア自体にも、ある程度の自己修復機能も付いてるね。」
「んで、魔力を自己変換、別なエネルギー体に変換可能って…凄まじいな。…デビルガンダムもびっくりだな。」
「自己増殖は付いてないみたいだから、安心して。けど、変換方法次第では、魔力をレーザーやビーム体に変換可能のようだね。魔法が使えない空間でも、戦闘可能って事か。」
「本体自体、魔力発生装置付きっと。…それなんてGNドライブ?つうか、本当に作ったの誰だよ…。超高性能過ぎるわ…。」
「…一応はうちの会社のはずなんだけど…。これだけ凄いと自信なくすよなぁ…。」

俺達は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべる。いやぁ、仕方が無いだろう。
高性能だって事は知ってたけど、ここまでとは思わなかったしなぁ。正直、下手なロストロギアなんかより、謎なんじゃないかと思える。
コア本体に備え付けられている魔力発生装置に自己修復機能。この2つをつけるだけで、どれほどの費用がかかることやら…

「正直言うと、ここまでとは思わなかったよねぇ。」
「…だよな。」

俺の心を代弁するかのように呟く主任。どうやら、こいつもここまで高性能とは思ってなかったみたいだ。
しかし、なんでか、俺の顔を真面目に見つめてくる。

「…ところでさ、閃君。」
「ん?なんだよ?」
「…君ってさ、何か…持ってる?」
「はい…?某ハンカチ王子じゃねえぞ?」
「いやいや、違うよ。僕の場合はデバイス関係については、下地もあるから理解できるんだけどさ。君の場合って…何にも無いはずでしょ?
なのに、なんで設計やら解析やら出来るのかなぁ…とね。なにかレアスキルでも持ってんじゃないのかなって思ったんだよ。」
「……おぉ。気が付かなかった。」

確かに、なんで俺ってこんなに簡単に理解できてんだ?
生前が大学生とはいえ、リリンのように天才でもないし、専門知識を学んだわけでもない。むしろ、独学と我流だ。

「本当に、何かレアスキルでも持ってんのかな?」
「流石は転生者!!それらしいのを持ってるんだね!!」
「いや、知らねぇって…。第一、主任の下地ってなんだよ?何処で勉強したんだよ?」
「……それは…」
「それは?」
「男の子のひ・み・つ♪てへ!」
「……ぶん殴って良いか?全力全開でぶん殴って良いか?」
「…ごめんなさい。と言うかすでに、ぶん殴ってる…。ごふ」
「これはぶん殴ったんじゃねぇよ。殴ったんだ。」

主任の顔面に右ストレートをブチかまして、デスクに沈める。
ったく、本当にこいつは真面目な時とそうでないときのギャップが激しすぎるわ。

「まぁ、冗談は程ほどにしといて…。1世代目って、過剰性能もいいところだよね。」
「それは言えてる。何の為に、ここまでの性能を持たせたん…だ…か。」
「……………閃君、気が付いちゃった?」
「……気が付きたくないけど、気が付いた。もしかすると…あいつら…か?」
「それ以外、考えられない気がするんだよねぇ…。」

顔を上げて、天井を見つめる主任。
あぁ、気が付いちまったよ。これだけの性能を持つデバイス。唯単に、犯罪者とか、テロ鎮圧になら、ここまでの過剰性能をつけなくても良いだろう。
そう、【人間相手】なら…。だが、俺達は知っている。本当のVRが、フレッシュリフォーのある世界が、どんなのだったのか。そこに、どんな【敵】が居たのかも。
…多分だが、1世代を作った人間は、奴らに備えていたんだろう…。虚数空間に潜む…過去の亡霊…【ダイモン】に…。







スペシネフ・ラーズグリーズ。魔力刃は鎌の状態で固定。空間制御機構搭載。
バリアジャケットには、強力なステルス性能が付加。

サンダーボルト バレットスフィアから魔力弾を撃ちだす。
ナイトホーク   バリアジャケットのステルス性能を向上。
ファントム    任意の空間にワームホールを作成。
ミラージュ    自分の周囲の空間を湾曲させる。
シンファクシ   ワームホールに魔力弾を撃ち込み、ターゲットの周囲に出現させ、攻撃。

あとがき

とりあえず、汁なんちゃらは、フルボッコになってもらいました。もっとスピーディーな戦闘描写にしないと…
ブレイズさんの魔法の名前は、戦闘機とかから持ってきてみました。
上に簡単に、説明モドキを書いてみましたが…要らないかな?
次回は、海上決戦を書いて…また飛びます。目標は、後5話以内で無印終了!!


以下 返信 

ユーロ様

ナガセとブレイズの年齢差ですか。
とりあえず、ナガセはギンガと同い年…と言う事になっています。そして、仲も良いということに…。
マルセラ姐さんとエスパーダ1…ですかぁ。正直、あの人達は幸せになっていて欲しいですね。
…ミッドの何処かで小さなお店でも営んでいるとか…ありかも?笑
オメガ隊は豊富な人脈に、コミュニケーション能力が半端ないそうです。某所でそんなのが書かれてましたね。


ダンケ様

いや、こんな奴に友達も出来ないと思います。
まぁ、だからこいつは生前、引きこもりオタクと言う設定なんですけどね。笑
ん~、リンディさんは管理局と言うか…ハーリング派? けど、一応は親としての心も持ち合わせては居ますよ。
今回は、そんな風に見られても仕方が無かったとも思います。すいません。
リリン嬢にも一応は見せ場を作る予定にはしてますので…頑張ります!!


真っ黒歴史様

そんな!!失礼ですよ!!ス○オに!! 笑
彼は映画とかではやるときはやる男なんですから!!
こっち?…後で物凄くウザイ事をやるのでお楽しみに…




[21516] 21話 伸ばしても届かない手
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/18 22:19
・ユーノ・

「そう言えばユーノは両親に、元気って事を報告しなくて良いのか?」
「え?」

それはオメガの何気ない一言で始まった。
僕達は、アースラの食堂でなのは達が作ったクッキーでおやつを楽しんでいたんだ。
ジェニファーさんの入れた紅茶と、なのはのクッキーは相性抜群でとても美味しい。
メビウスは、ブレイズさんの要請で何故かもう一度メディカルチェックを受けてるけど、それが原因で、クッキーを作ったのに、食べさせれないって、なのはがいじけてた。

「ん~、実は僕には両親居ないんだ。」
「…すまん。聞いちゃいけなかった。」
「良いよ。慣れたし、部族のみんなが家族同然で育ててくれたから、寂しくないよ。」

困ったように頭をかくオメガに、僕は笑いかける。
スクライアの皆はとてもよくしてくれている。部族自体が1つの家族だから、僕も特別寂しいと感じたことは無い。

「オメガ達には、両親居るんでしょう?」
「おう!!俺の父さんは警官やってるぜ!!昔は傭兵だったみたいだけどな!!」
「家は平凡なサラリーマンだな、うん。」
「重役がサラリーマンって…」
「閃お兄様、いけませんわ。帝さんは、わが社にとってしても重要な方ですわ。もちろん、閃お兄様もです!!」

閃の両親が、有名なフレッシュリフォーの重役だとは知らなかった。あそこの重役を、普通のサラリーマンって言ったら駄目だと思うなぁ。
けど、あのリリン・プラジナーとも知り合いだったなんて、今更ながら、閃やメビウス達には驚かされるよ。

「そう言えば、なのはとメビウスって幼馴染なんだよね?」
「うん、そうだよ。小さい頃からずっとずっと一緒に居たの。オメガ君とは少し後だよね。」
「だなぁ。俺は一時期、海外に居たからよ!!」

なのはは、嬉しそうに笑いながら、髪に結んでいるメビウスとお揃いのリボンに触る。
幼馴染…か。なのはが、メビウスにそれ以上の感情を持っているのは、誰が見ても明らかだと思う。
…それを向けられている本人は妹のような感じで扱っているから、少し不憫だけど…

「幼馴染…私と閃お兄様もそうなるのでしょうか?」
「あ~。少し遅いからな、残念だが、違うと思う。」
「そうですか…残念ですわ。」

落ち込んだリリンを苦笑しつつ、撫でながら慰める閃。
こっちの方は、本当に兄妹って感じがすね。こう…なんて言うのかな…。閃は少し大人びてて、同い年なのに年上に思う。
メビウス達も、そういってたし、頼りになるって、よく言っていた。

「そう言や、なのはと俺が会う前に、士郎さんって…事故で大怪我したんだっけか?」
「うん。それで、お母さんやお兄ちゃんが忙しくて、家の中でひとりぼっちの時があったの。」
「寂しく…なかったの?」
「どうだろう…。寂しくなかったかもしれないし、寂しかったかもしれないね。」
「なんだそりゃ?」
「大方、メビウスが一緒に居てくれたから!!とか言うんじゃないのか?」
「わ、凄い!!閃君、なんで分かったの?」
「……分かるっての…」

驚いたなのはを無視して、呆れたようにしてクッキーに手を伸ばす閃。
流石の僕でも、この位は予測できたよ。

「まぁ、素敵ですわ!」
「でしょ!!寂しい時は、私がずっと傍に居るから、って言って夜も一緒に居てくれたときもあったし…」
「お~い。誰か、なのはの惚気を止めろ。」
「人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて冥界行きだぜぇぇぇ!!」
「…つまり、命がおしいって事だね。」

幼馴染の事や、そう言う女の子の好きそうな話題で盛り上がるなのは達を見ながら、僕達は紅茶とクッキーを楽しむ。
まぁ、そう言いながらも、閃はリリンの事を暖かい眼差しで見守っている。

「僕も…君たちみたいな友達が出来て、良かった。」
「……ユーノ、恥かしいなら言うなよ、顔が赤くなってんぞ。」
「ハッハー!!今更だぜユーノおぉお!!俺達とお前はBest friendsだぜ!!」

小声で言ったはずなのに、聞こえちゃったかな。けど、そう言いながら、閃の顔も少し赤い。
オメガは何時ものように、明るく笑って親指を立ててくれる。スクライアのみんな、こんなにも暖かくて、優しい友達が…僕にも出来たよ…。





・ブレイズ・

「現状報告、一体どうなっているんだ?」
「あ、ブレイズ君。海上で膨大な魔力反応が感知されたのよ。」

エイミィから通信を貰った俺は、艦橋まで走りこんできていた。
視線をまわりに配れば、クロノと艦長は既に自分の席についていた。

「エイミィ、映像をモニターに映せるか?ブレイズ、メビウス達にも見てもらえ。」
「了解。今呼び出している。」

端末を起動させ、メビウス達に連絡を入れると同時に、アラートを起動させる。
艦内にけたたましく鳴り響くアラートは、何時聞いても心地の良いものではないな。
それが表情に出たのか、艦長が笑いながら、「私も慣れないわ」と言っている。心配してくれたのか、その一言で俺はもう一度、表情を引き締めなおす。

「ブレイズさん!!なにかあったんですか?」
「海上で魔力の反応が見つかった。恐らくは…残りのジュエルシードだろう。」
「今、モニターに映像出すからね。あ、なのはちゃん、クッキーご馳走様、おいしかったよ!!」
「あ、はい!よかったです。」
「エイミィ、真面目にやってくれ。」
「了解です、クロノ執務官殿。」

通信とアラートを聞いたメビウスとなのはも駆け込んできた。…他の奴らはまだか。
おどけたような口調でエイミィが、端末を操作していく。クロノは溜息をついて額を押さえているが、まぁ、分かっているだろうな。
これが彼女なりのリラックスの方法だ。現に、彼女だけでなく、少し緊張してたようななのはもリラックスできている。

「…本日も海上は大荒れ注意報…か。」
「クロノ…?」
「いや、なんでもない。」

…なんでもない…か。なら、俺も聞かなかったことにしようか。…こっちを少し睨んでいるクロノの視線を、キッチリと無視する。
第一、聞こえたのは俺だけじゃないんだがな。ほら、艦長だって、少し笑ってるぞ。
視線をモニターに移すと、金髪の少女が巨大な魔方陣を展開していた。その魔力の影響でか、天候がかなり悪い。

「やっぱりフェイトちゃんだ…。」
「…あれがそうか。」
「魔力の増大を確認!…まさか、海中のジュエルシードを暴走させる気!?」
「エイミィ、ジュエルシードの数量と魔力量を確認。各員はその場で待機。」
「待機って…どういうことですか!?」
「そのままの意味だ。メビウス達も待機だ。」

クロノが冷静に指示を飛ばす。おそらく、フェイト・テスタロッサはジュエルシードを、故意に暴走させ一気に封印しようとしているのだろう。
…客観的に見ても、無謀すぎる方法だ。展開してる魔方陣の維持で、かなりの魔力も使っているだろう。

「このままいけば、確実に自滅するだろう。それか弱体化したところを一気に叩く。残酷だが…現実だ。」
「そんな…」
「メビウス君…フェイト…ちゃん。」

それに納得できなかったのは、メビウスは異を唱えるが…クロノが押さえつける。
うつむくなのはとメビウスだが…、何か意を決したかのように顔を上げ、艦橋から出て行こうとする。

「待ちなさい!!2人とも!何処の行くの?」
「決まってます。フェイトちゃんのところです!!」
「見捨てるなんて…出来ないです!!」
「駄目よ。今、海上は魔力流で危険な状態。そんな所に2人を向わせるわけには行かないわ。」

静かに、諭すように2人を止める艦長。確かに、魔法を受けて空中に浮いた6個のジュエルシードが暴走して、海上はかなり大荒れだ。

「…私は…私達はフェイトちゃんを助ける為に協力する、と言いましたね。誰も彼女を捕まえる為に協力するなんて…言ってません!!」
「フェイトちゃんは大切な友達なの…。だから!!絶対に助けるんです!!」
「あ!2人とも!!」

やはり…か。制止を振り切ると、そのまま走っていく2人を眺める俺。
クロノと艦長はどうにか止めようとしているが…無理だろうな。
だが…ある意味で好都合だ。

「エイミィ、頼みがある。」
「え?なに、ブレイズ君。」
「メビウスのデータを取っておいて欲しい。」

そうエイミィに頼むと、俺はモニターに視線を戻す。

(さぁ、メビウス・ランスロット。実力の程…見せてもらおうか。)

だが、ふとそこまで考えると、1つの不安要素が浮かんでくる。

(奴が…居ない…?)



・メビウス・

艦橋から飛び出した私達は、転送ポートのある場所まで走っていく。
確かに、フェイトちゃんの自滅を待つ方が捕まえやすい。けど、私達は…フェイトちゃんを捕まえたいんじゃない、助けたいんだ…!!
目の前で、苦しんでいるのに…見捨てるなんて出来ない!!

「メビウス様!こちらです!!」
「ガルム!?」
「せ…閃君にユーノ君!?それにオメガ君も!?」

転移ポートに行けば、閃達が待っていてくれて、端末のほうを見ると、主任さんが操作している。
閃も呆れたように、空中に映し出してたモニターを消して、端末を操作し始める。

「やれやれ。まぁ、んな事だろうとは思ってたけどよ。ほら、行くんだろ?」
「手伝って…くれるの?」
「当たり前だよ、なのは。ほら、すぐに転移させるから準備して!!オメガ、僕と一緒に魔力装填して!!」
「おう!!メビウスも早くするんだぜ!!」

ユーノ達が転移装置に魔力を注ぎ込んで、起動させていく。

「さてと…いっちょやりますか。主任、急ぐぞ。」
「愚問だねぇ。転移シークエンス、4から8まで省略。座標軸は…こんなところかな。」
「転移させるのは、メビウス、なのは、ガルムの3人だ。ほら、準備しろ!!いきなり空中だからな!!バリアジャケット展開しとけ!!」

閃の指示に従って、慌てて転移ポートの上に乗る私達。
みんな…協力してくれている。

「魔力は充分!!よし、転移させるぞ!!」
「皆!!ありがとう!!」
「なのは!!礼は終わってからだ!!序に説教も一緒に受けてやるよ!!」
「頑張れよ、なのはぁぁぁ!!メビウゥゥゥウス!!」

閃達の応援を聞きながら…私達は海上まで転移していく。

光が収まると、私達はフェイトちゃんが展開していた結果に居た。
視線を向ければ、フェイトちゃんとアルフが暴走した魔力流に弾き飛ばされていたところだった!!拙い!!

「危ない!!」
「え…?」
「まったく…無謀極まりない。」
「あ…あんたら…!?」

フェイトちゃんを私が、アルフをガルムが受け止める。ふぅ…間一髪だったね。
なのちゃんは、私達を庇うように、障壁を展開してくれていた。

「メビウス、どうして…ここに?」
「決まってるでしょ。フェイトちゃんを助けに来たんだよ。…その前に…」
「あう!?」

私は軽くフェイトちゃんの頭を小突く。それに驚いたのか眼を丸くして頭を押さえるフェイトちゃん。

「まったく…心配かけさせないで…。こんな危ない事したら駄目だよ?」
「…ごめんなさい…」
「うん、よろしい。」

素直に謝ったフェイトちゃんの頭をなでながら、私は一安心する。まだ、限界までは無理してないみたいだね。
視線を移すと、ガルムがアルフにフィジカルヒールをかけているところだった。

「まったく…お前も無理をするな。」
「わ…分かったから、サッサと離しなよ!!」
「まだヒールをかけているところだ、大人しくしてろ!!」

抱きとめた状態で、ヒールをかけられるのが恥かしいのか、顔を真っ赤にしているアルフ。
ガルムは顔色1つ変えてないんだけどね。

「フェイトちゃん。」
「…なのは…」
「メビウス君の言ったとおりだよ。もぅ、心配したんだからね!!」
「なのは…も?」
「そうだよ!!私とフェイトちゃんはもう友達なの!!」

そう笑いながら、フェイトちゃんの手を握るなのちゃん。フェイトちゃんもぎこちないけど、小さく笑っている。

「それじゃ、はい、ふたりできっちりはんぶんこ!」
「あ…。ありがとう、なのは…」

なのちゃんが、消耗しきっているフェイトちゃんに魔力を供給する。これで大丈夫だろうね。

「エクス、解析を。」
『既に済んでおります。まぁ、見ての通りの状況…なのですが。6個の暴走体はかなりのものです。』
「みたいだね…。」

空中に浮いて、球体に包み込まれているジュエルシード。そこから、非常識なまでの魔力流で辺りを荒らしている。

「2人とも、聞いて。タイミングを合わせて、3人で特大の魔法を撃ち込むよ!」
「3人で…?」
「そう、3人で、せーので一斉に…ね。」
「うん、分かった。やろう!!フェイトちゃん!!」

戸惑い気味のフェイトちゃんだけど、なのはの明るい声を聞いて、静かにうなずいてくれる。
その瞳には、決意が現れていて、とても綺麗だ。

「レイジングハート…力を貸して!」
「バルディッシュ、お願い…!!」

2人の周りにピンクと金色の魔方陣が展開されていく。それを私は少しはなれた場所で眺めている。
…凄いな、ジュエルシードに匹敵する魔力量だよ。

「ディバイン…バスター!!」
「サンダーレイジ!!」

それぞれの魔法がジュエルシード目掛けて飛んでいくのを見て、私も自分の魔法を展開させる。
そう、最強の単体攻撃魔法を…!!

「はああああ!!!!一撃必殺!!ブルー・スライダー!!」

キャンセルで最高速度までスピードを上げて、周囲で荒れ狂う魔力流も纏めてなぎ払いながら、空中のジュエルシードに突撃!!
エクス本体に展開している魔力刃と、暴走体の魔力がぶつかり合い、魔力光が辺りに撒き散らされる。
くぅ…周囲に展開してる障壁が…持たないか…?
速さは質量に勝てないのか…!!いや、そんな事はない!!速さを一点に集中させて突破すれば…どんな分厚いものだろうと…!!

「砕けちれえええぇぇぇえ!!!!」

私の声と同時に、ジュエルシードの暴走集体を包み込んでいた魔力を貫き、力ずくで暴走を止める!!
そのまま、空中で封印を施す。

「はぁぁ…。疲れた…。」



・ブレイズ・


「…予定が違ったが…仕方がないか。」

メビウス達が暴走を鎮圧したのを見計らって、俺は転移ポートで移動していた。
ちなみに、今頃、閃達は艦長に説教を貰っているところだろう。

「あ…ブレイズ…さん。」
「そう構えるな。別にどうこうしようというわけではない。」

フェイトを庇うようするメビウス達に苦笑しつつ、攻撃する気は無いとアピールする。
メビウスに観察するが…可笑しいな。あれだけ無謀な突撃と魔力を使えば、疲労してるはずだが…してないだと?

「メビウス、誰…?」
「フェイト・テスタロッサ…だな?俺は管理局所属、ブレイズ・トリスタン執務官補佐役だ。」
「管理局…!?あんたら、まさかあたし達を捕まえにきたのか!?」
「アルフ、落ち着け。メビウス様はそんな気は全くない。」
「こちらとしても、穏便に済ませたい。攻撃する気も無いしな。」

飛び掛ってこようとして使い魔らしき女性を、ガルムが止めてくれる。
ありがたいな、攻撃されれば、望まぬ戦闘をするところだった。

「フェイトちゃん、私はフェイトちゃんを助けたいんだよ。…何か理由があるんでしょう?…ね?一緒に行って、話を…してくれないかな?」
「こちらとしても、悪いようにはしない。メビウス達も君を心配している。どうだろうか?」
「……私…は。」

何か迷うようにしているフェイト。その視線を優しく微笑むメビウスに向けられている。
…彼の説得で揺らいでいるようだが…。

「甘いなぁぁ!!ブレイズ!!」
「きゃぁ!?」
「フェイトちゃん!?」

突然、フェイトを拘束する…バインドだと!?誰だ!?
視線を上に向ければ…一番、来て欲しくない奴、シルヴァリアスが居た。


「何をしてるんだよ!?」
「決まってるだろ!!犯罪者は…懲らしめないとなぁぁぁ!!」
「シルヴァリアス君やめて!!フェイトちゃんは何もしてないんだよ!?」
「なのは、君はこいつに騙されてるんだよ!!」
「シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー、今すぐバインドを解け!!」
「ふざけるな!!消耗してる今が消すチャンスだろ!!」

こいつ…聞く耳持たないか…!!メビウスがバインドをエクスで叩き切ろうとしているが、うまくいかないようだ。

(ち、あの馬鹿にシンファクシを叩き込むか…)

そう思い、ワームホールを作成しようとしたが…背筋に悪寒が走った。
シルヴァリアスの真上に…巨大な魔方陣が展開されている…!?

「ブレイズ、気をつけろ!!次元跳躍魔法だ!!」
「っ…!!各員、退避!!避けろぉおぉぉ!!」
「なに…があぁああぁ?!!!????!??」

クロノから通信が入ると同時に、魔方陣から強大な雷光が襲い掛かってくる。シルヴァリアスを直撃し、海面に叩きつけていく。
生命反応があるから…一応は無事か。だが、気にかけている余裕など…ない!!
俺はファントムを作成し、雷光をワームホールに吸い込ませていくが…くそ、消費が洒落にならない…!!

「フェイトちゃん!?」
「なのちゃん!危ない!!」

フェイトの傍まで、行こうとしたなのはをメビウスが抱えて、雷光を回避していく。
雷光はフェイトを庇うように、俺達に襲い掛かってくる。メビウスは、強固な障壁を展開していたガルムの近くに、なのはを連れてくると、自分は直ぐにフェイトの方に向かっていく。
それに気が付いたのか、雷光は執拗にメビウスを狙うが、それを回避していく。

「フェイトちゃん!!」
「メビウス…!!」

お互いに手を伸ばしあうが、その間を遮るようにする雷光と、フェイトの周りに展開される強制転移魔方陣。
あと少しというところで…メビウスの手はフェイトをつかむことなく、虚空をきる。
強制転移…させられたか…

「…フェイトちゃん……」

後に残ったのは、先ほどまでの荒れ具合が嘘のような空と…メビウスの零れる言葉だった。






あとがき

休みなので一日かけて書いてみました。
…ちょっとですが、テンポがいい感じじゃないか!?と作者は思っています。
ストーブつけようと思ったら大破しているというね!!新しいのを買わないと…
話のタイトルは思いついたところは入れようかと思います。

あと返信って…感想掲示板の方が…見やすいですか?



以下返信

春河様

確かに…性能的にグランゾン目指してます。笑
まぁ、後で更に色々と追加していく予定ではありますよ。今の時点では確かに過剰ですね。
チョッパーのデバイス…考えてなかった(おい。




34様

実は当初、汁さんの名前はセマカ・ラヤキブモと言う案もあったのですが…変なので却下でした。笑
反対に読むと、噛ませ・モブキャラというね…。
主任がセラフ…ACERのトンでもセラフですね!!…デバイスで…あり・・・か?





名無しの獅子心騎士様

作者は汁さんに後々、今回以上にウザい事をやらせる計画を立てております。
リリン嬢とジェニファーさん、若干、キャラが被るのが悩みどころです。作者の実力不足名だけですが…
ダイモンは…何時から出てくるのかは秘密にしておきますね。ただ、灰色の男達との関係は…どうなるでしょうね。笑



ダンケ様

踏み言うか…自業自得?笑。まぁ、自己中厨二はこんな扱いでしょう。
確かに…ブレイズさん、単独戦闘向きになってしまった…!!ウォードック隊について…ハードル上げないで…!!作者の実力が…!!
シャドウVRフラグは…ふふふふ…ということで、笑




[21516] 22話 決意の母は美しく、恋する乙女は可憐なり。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/20 22:57
・フェイト・

「フェイトちゃん!!」

あの時、彼が伸ばした手を…私は咄嗟に握ろうとした。
けど、その前に母さんの転移魔法で、私は時の庭園に連れて来られていた。

「フェイト!!大丈夫だった!?」
「あ…」

名前を呼ぶ方を向くと、母さんが心配そうに駆け寄ってきてくれた。そのまま、優しく抱きしめて……嬉しいけど、少し苦しい…
アルフは「ジュエルシードおいてくるよ」と言って、先に部屋から出て行った。気を…使ってくれたのかな…?

「か…母さん、少し苦しいよ…」
「あ、ごめんなさい。…怪我はしてないようね、安心したわ。」

抱きしめる力を弱めてくれる母さん。…心配をかけちゃったみたい。

「…ごめんなさい。ジュエルシード…3個しか…」
「良いのよ、フェイトさえ無事なら…。けど、あんな方法を使えなんて…危ないのよ?」
「うん…分かってるけど…」

少しうつむきながら、私は母さんの顔を見る。…やっぱり、顔色が悪い。
…母さんは秘密にしてるけど、私は知っている。母さんが重度の病気を患っていることを…。きっと、私に心配をかけたくないから秘密にしてるんだ。

「…ところで、フェイト。」
「なに?」
「もしかして…あの蒼い魔道師が、メビウス・ランスロット?」
「あ…うん、そうだよ。」
「そう……。良い子みたいね。フェイトを庇ってくれてたみたいだし…ね?」
「うん…。メビウスと居ると…凄く安心できて、それなのにドキドキ…するの。」

そこまで言うと、母さんが眼を丸くして、すぐに微笑んでくれる。

「フェイト、そう言うのを…好きって言うのよ?そして、それは恋をしてるのよ。」
「…恋…?」
「そう、彼と一緒に居ると嬉しいでしょ?楽しいでしょ?それはフェイトが、メビウス・ランスロットが好きで好きで仕方が無い証拠。だから、貴女は恋をしてるのよ。」
「あ…う…」
「ふふ、少し早かったかしら?けど、母さんは嬉しいわ。フェイトもそんな年頃なのね。」

私が顔を真っ赤にするのを見て、楽しそうに笑う母さん。
…うん、そうだよね…。私はメビウスが好き…大好き。だけど、言葉にする勇気は…無いと思う。きっと、彼の傍に行けば、嬉しくて、恥かしくて…それどころじゃないと思う。
もし私が、彼女のように…なのはのように強くて、けど…優しく笑えるならこの気持ち…伝えられるのかな…?









「はぁはぁ…時間が…無い…わね。」

フェイトを自室で休ませた後、プレシアは研究室の椅子に座り、口元を押さえていた。
愛する娘を助けるために次元跳躍魔法を多用したのが、病によって弱っている彼女を更に衰弱させていく。。
激しく咳き込むと、口の中に広がる鉄の味。どうやら、少し吐血してしまったようだ。

「…管理局まで出てきたのね…。もう、どうにもなら無いかもしれないわ…。」

アリシアの入ったカプセルを見つめながら、自嘲気味に呟く。
愛する娘を蘇らせたい一心で研究を続け、病に冒されながらも突き進んできた。その際に、もう1人の愛しい娘が出来たのだから、後悔はない。
自分の命はもうすぐ消えるだろうが、それはそれで別に構わない。しかし…

「フェイトは…どうするの…?」

こんな自分を母親と慕ってくれる娘を、1人残すのか?管理局に犯罪者として捕まったらどうするのだ?
そう考えるだけで、プレシアの心は締め付けられ、痛んでいく。

「…私は…本当に最低な母親ね。…愛しておきながら…幸せにすることなんて出来ない…。」

知らず知らずに涙がこぼれていく。だが、ほんの少しだけ…希望はあった。
フェイトが好きと言った、1人の少年の存在。彼なら…フェイトを幸せにしてくれるのではないか?少年は伝説と鬼神の息子だ。愛する娘を確実に守ってくれるだろう。
だが、管理局はどうなのだ?希望と不安、ごちゃ混ぜになりながら、頭を中をまわっている。

「そうね。最低な母親なら…最後まで最低な母親を演じましょうか…。」

自分は犯罪者の、最低な母親の烙印を押されても構わない。だが、娘だけは…愛しい娘だけは…幸せにしたい。
決意を新たに、立ち上がるその姿は…どこまでも母親であり、どこまでも、美しかった。




・なのは・

海上での騒動から次の日、私達は一回お家に帰る事になったの。
…メビウス君は、少し元気がなかった。やっぱり、フェイトちゃんの事が心配なんだ…。

「…のは?なのは?」
「え?あ…なに、お母さん?」
「もう、なにじゃないでしょ?さっきから、ご飯一口も食べてないじゃない。どうしたの?」
「なにかあったのか?」
「メビウス君と喧嘩とかしちゃった?」
「なん…だと…」
「わぁわぁぁ!!お兄ちゃん!!違うからね!!」

お姉ちゃんの言葉を真に受けたお兄ちゃんが、怒ったように椅子から立ち上がろうとするのを、私はあわてて止める。
もぅ…別に喧嘩したとか、そんなんじゃないのになぁ。今、私はお家で家族みんなでご飯を食べているところ。
メビウス君達と食べるご飯も美味しいけど、やつぱり家族で食べるご飯も凄く美味しい。
慌てる私を見て、楽しそうに笑うお父さんとお母さん、もぅ、笑わないで欲しいなぁ。

「それで、何か悩み事かい?」
「…うん、その…ね。メビウス君、少し元気がなくなっちゃって…」
「あのメビウス君が?…何かあったんだね。」
「それで、なのはは心配でしょうがないって訳ね。…姉ながら、妬けちゃうわ。」
「メビウスは何時も、笑っているイメージがあったんだが…。」

お父さんやお兄ちゃん達も、心配そうにしてくれる。にゃはは、メビウス君は凄いなぁ。色々な人から心配されてるよ。

「そうだ!!いい考えがあるわ!!」
「いい考え?」
「えぇ。少し待ってなさい。」

お母さんがキッチンに行って、何かをラッピングして持ってくる。
あれ?これって…私がさっき作ったクッキー?

「お母さん、これ、私が作ったクッキーだよね?」
「そうよ。これをメビウス君にプレゼントして、元気を出してもらいなさい。」
「…元気になってくれるかな…?」
「大丈夫よ。なのはみたいな可愛い女の子で、しかも、好きな子から貰ったら誰でも嬉しいわ!」
「すすすす…好き!?メビウス君が!?」

あわわわわ…メビウス君が私を好きで、私がメビウス君を好きでメビウス君が好きな私で好きな私が…

「なのは、落ち着くなさいって!!ああもぅ、母さん、なのはの頭から煙出てるよ?それに、顔も真っ赤。」
「好意を隠さないのに、言葉にすると駄目なのか…」

…はっ!?お姉ちゃんが、私の肩をゆすってくれる。…うう、あと少しでメビウス君と…ごにょごにょ…
って、こんな事、考えてる場合じゃないの!!
深呼吸を繰り返して、少し落ち着く。

「わ…私、メビウス君に会ってくるね!!」
「…言っても無駄だろうが、もう夜だぞ?」
「大丈夫なの!!それじゃ、行ってきます!!」

お父さんの言葉を聞きながら、私はポーチにクッキーの袋を仕舞つて、お家から飛び出していく。
そうだよね、言ってたもんね。

「寂しい時は、私がずっと傍に居るから。だから、我慢なんてしないで?思いっきり甘えて良いから、我侭言っていいから。だから、自分を…いらない子なんて言わないで?」

小さい頃、メビウス君が私に言ってくれた言葉。ずっとずっと、一緒に居てくれて…一緒に笑ったり、泣いたりした。
落ち込んだ時も励ましてくれたし、助けてもくれた。だから…今度は私がメビウス君を元気にしてあげるの!!




ピンポーン。

チャイムの音が響き渡る。何時もより、大きく聞こえたのは、静かだからかな?

「はいは~い。…どちらさま~?」
「こんばんわ!サイファーさん!!」
「あらぁ、なのはちゃん、こんばんわ。どうしたの?」
「えっと、メビウス君に会いに来たんですけど…」

玄関を開けてくれたのは、サイファーさん。私は、メビウス君に会いに来たことを伝えるとサイファーさんは、困ったように笑う。
あ…やっぱり、親子なんだ。なんだか、メビウス君の困ったときの笑顔とそっくりなの。

「ごめんなさいね。メビウスちゃん、天体観測に行っちゃったのよ~。…あら?」
「そうなんですか…。臨海公園にですか?…あれ?」

私とサイファーさんは、2人して眼を丸くして、すぐに笑いあう。
だって、ずっと前にも同じ様なことをお話したんだもん。そう、私がユーノ君に会って、魔道師になった夜と同じ。
あはは、なんだか可笑しいな。

「ふふ。なのはちゃん、メビウスちゃんの事を元気付けに来たんでしょ?」
「ふにゃ!?…はい、そうです。」
「あらあら~。良いわねぇ。…なのはちゃん、途中まで一緒に行きましょう♪」
「え?あ、はい。」

そう言うと、サイファーさんは私のお家に電話をかけて、少し遅くなるって言ってくれた。
そして、2人で夜の道を歩き始める。所々に街灯もあって道は明るい。

「綺麗な星空ねぇ。メビウスちゃんが好きそうな空ね。」
「メビウス君、空が大好きですよね!」
「そうねぇ。…ねぇ?なのはちゃん。」
「はい?」

サイファーさんは、夜空を見上げながら、優しく微笑んでいる。こうしてみると、メビウス君って本当にお母さん似なんだなぁ。

「メビウスちゃんはね…弱い子なのよ?」
「え…?」

メビウス君が…弱い?…どういうことだろう?メビウス君は、何時でも笑顔で…

「メビウスちゃんの笑顔は、弱い自分を隠す為の仮面なのよ。あの子は…優しくて、優しすぎて…弱いの。」
「……」
「けどね、少しずつだけど…仮面を本物にしてるし…強くなっているのよ?貴女のお陰ね。」
「私の…ですか?だって、私…何時もメビウス君に迷惑ばかりかけてます…。」
「ふふ。だからよ。」

サイファーさんが、笑いながら私の頭を撫でてくれる。…少し恥かしいな。
けど…なんで私のお陰なんだろう?

「なのちゃんは私が守るんだ。なのちゃんが寂しくないように一緒にいるんだ。…士郎さんが入院してたときに、メビウスちゃんがよく言ってたわ。」
「え…?」
「ふふ、なのはちゃんって言う大切な人が居るから、メビウスちゃんは強くて優しくなれるのよ。それにね、私達も…なのはちゃんを大切に思っているのよ?
メビウスちゃんの大切で大事な人は、私たちにとっても大切で大事なのよ。」
「サイファー…さん。」
「フェイスもね、そう思っているわ。恭也さんが…1人で無茶してたときがあったわよね?」
「あ…はい。」

お父さんが入院してたとき、お兄ちゃんは1人で我武者羅に修行してたときがあった。
あの時の私は、凄く…暗かったと思う。皆に迷惑をかけたくなかったから…何も言わないで、全部全部我慢してた。
けど…そんな私をメビウス君は…助けてくれた。暖かく…包み込んでくれたんだよね。

「その時に、なのはちゃん、メビウスちゃんに私は要らない子って…言ったのよね?」
「うう…はい、そうです。」
「それをフェイスが、聞いた時は本当に怒っていたわ。…その後に恭也さんを、本気で殴ったのよ。」
「えぇ!?お兄ちゃんをですか!?」
「そうよ~。まだ幼い子に気を使わせるとは何事か!!貴様1人の自己満足のために、家族を犠牲にするな!!その程度では、士郎さんにはどう足掻いても届かない!!って、説教までしたのよ?あの時はフェイスは、怖かったけど、かっこよかったわぁ。」

…そっか、だから次の日、お兄ちゃんは泣きながら私に謝ってきたんだ。ごめん、ごめんって…本当に泣いていた。
あはは、私もなんでか一緒に泣いちゃったんだけどね。
けど、そんな事があったんだ。なんだか…メビウス君だけじゃなくて、サイファーさんやスカーフェイスさんにも迷惑かけちゃってたんだなぁ。

「ふふ…。なのはちゃん、家の空が大好きな息子を、よろしくお願いするわね?」
「は…はい!!」

何時の間にか、臨海公園のすぐ近くまで来てたんだ。サイファーさんは、私を見送ると来た道を戻り始めた。
…けど、何がよろしくなんだろう?


臨海公園


メビウス君…何処に居るんだろう?
私は周りをキョロキョロと見渡して、考える。
そして、フッと前の時のことを思い出して、あの場所に向かうことにした。
2人で天体観測をした…展望台に。

「…なのは様?」
「あ、ガルムさん!!」
展望台に続く階段を見つけると、上からガルムさんが降りてきた。ここに居るって事は、メビウス君も一緒って事だよね。

「こんな夜分遅くにどうかなさいましたか?」
「あの!!メビウス君って…上に居るんですか?」
「えぇ、メビウス様は現在、展望台で天体観測を行っておりますが…。あぁ、なるほど。」

ガルムさんは、私のポーチを見つけると、少し笑いながら「我は少し散策してきますので…」って言って、階段を下りていった。
…えっと、2人きりにしてくれたって…事かな?
私は、少し顔を赤くしながら、階段を上っていく。


・ガルム・

メビウス様の事は、なのは様にお任せしてよいだろう。我は辺りを散策しながら、ある人物を探していた。

「……念話を飛ばしておいて、出てこないつもりか?」
「ちっ、本当にあんたはって奴は…」

物陰から現れる女性-アルフが、我を軽くにらみつける。

「お前が先に我を呼んだんであろうが。」
「あ~はいはい。そうですよ。あたしが呼んだんですよ。」

ぞんざいに返事をしながら、我の隣にアルフが並ぶ。…何故、並ぶ必要がある?

「…少し歩くよ。」
「別にここでもよいだろう?メビウス様達からは、充分な距離が…」
「良いから!!気分の問題だろう!!」

顔を赤くしながら叫ぶな。みっともない…。結局、我は何故かアルフと臨海公園内を散策する事になった。

「……」
「……」

……歩き始めて数分たつが…一言も話さんな、我らは。

「…だぁぁぁ!!あんた、なんかしゃべりなよ!!」
「無茶振りだな。第一、何か用事があって我を呼んだのであろう?」
「…あ~…そうだった。2つあるんだけどね。1つは、フェイトが明後日の早朝、ここで決着をつけよう…だってさ。」
「ほぉ…相手は、なのは様か?」
「当たり。流石のフェイトもメビウスと戦う気もしないみたいだし、そっちもだろ?」
「もちろんだ。…なのは様は強いぞ?」
「はん!フェイトも充分強いさ。」

明後日…か。それまでになら、メビウス様やなのは様達もベストコンディションであろう。まぁ、向こうも同じだろうが…

「あと…もう1つは…その、…り…とう。」
「…なんだ?」
「だから…あ…と…」
「…聞こえんぞ?」
「ああもう!!ありがとうって言ってるんだよ!!」

顔を真っ赤にしながら叫ぶアルフと、耳を抑える我。…聞き取りにくいから、耳を近づけた瞬間に大声を出すんじゃない…!!
しかし…何故、ありがとう?

「昨日、ヒール使ってくれただろ?結局、礼をいえなかったから…」
「それで言いに来たのか?…なんとも、律儀な奴だな…」
「悪かったね!!」

そう言ってアルフはそっぽを向く。…しかし…なんとも…見てて面白い奴だ。
我は知らず知らずに、笑みを浮かべていた。

「あ……」
「ん?なんだ?」
「あんたって、そう言う風に笑うんだね。」
「…なに?」
「あたし達と居るときは、常に仏頂面だったじゃないか。」
「…放っておけ。」
「なんだい?機嫌悪くしたか?」

アルフが笑いながら、我の顔を覗き込む。…言われっぱなしは好きではない。
それに…我も始めてみたな。我はジッとアルフを見つめる。

「ほぉ…。」
「な…なんだよ?」
「いや、案外、可愛らしく笑うものだな…と。」
「んな!?」

音がなりそうな程に顔を赤くするアルフ。…まったく、見てて退屈しないな。

「ああああ…あんた、何を!!」
「あんたではない…ガルムだ。覚えておけ、アルフ。」
「それは今関係…って…へ?今…あたしの名前…」
「アルフ…だろう?」
「え~…あ~…うん。」

なんなのだ…本当に感情の突起が激しいな…。
っと、そろそろ戻らんといかんか。

「ではな、我は戻る。…伝言はしっかりと、伝えて置こう。アルフも早く帰ることだ。」
「言われなくても、分かってるよ…ガルム。」

こうして我らは、分かれる事にした。







「あ~……まだ顔が熱いよ…。どうしてくれんのさ…ガルム。」

その夜、アルフは少し時間を潰しながら、顔が冷めるのを待つ事になった。





・なのは・


階段を上りきると、展望台と空が広がっていた。
メビウス君は…居た!!

「メビウス君!!」
「うぇ!?…なのちゃん?」

展望台の端で、シートを広げて望遠鏡を覗き込んでいるメビウス君を見つけると、私は駆け寄っていく。
いきなり名前を呼ばれたのに驚いてか、メビウス君は変な声を上げる。あはは、おもしろい。

「えへへ、こんばんわ!」
「あ、うん、こんばんわ。こんな所まで…来てどうしたの?あ、座って。」
「ありがとう!」

メビウス君がシートをあけてくれたから、一緒に並んで座ると、すぐに私はポーチを開けて、メビウス君にクッキーを手渡す。

「はい!プレゼントなの!」
「あ…クッキーだ。…ありがとう。」
「うん!!」

お礼を言って笑うメビウス君だけど…やつぱり元気がない。すると、風が少し強く吹き始める。
うう…寒いなぁ。

「くしゅ…!」
「メビウス君?」
「ああ、大丈夫。少し肌寒かったから…毛布、あるから使おうかな。」

そう言ってメビウス君は、置いてあるリュックから毛布を取り出す。…そうだ!!

「メビウス君、毛布貸して!」
「え?良いけど。」

私は毛布を受け取ると、最初にメビウス君の背中に毛布をかけて…。そのまま、私はメビウス君の正面に回って、毛布に前を閉じる!!
前に一緒に毛布に包まったときと…同じ事を私はしている。けど、ほんの少し違うのは…

「えへへ、メビウス君の鼓動、トクントクンって聞こえるよ?」
「あはは…この体勢なら…しょうがないよ。」

違うところは…私とメビウス君が向かい合っているところ。私が抱きつくような形で毛布に包まっているの。
そのまま、メビウス君の胸に顔を擦り付ける。はふぅ…メビウス君だぁ…。メビウス君の匂いだぁ…。
って、違う!!ふにゃ~ってしたいけど、今は違うの!!

「…ねぇ、メビウス君。」
「なぁに?なのちゃん。」
「私…メビウス君に何が出来るのかな?」
「え?」

メビウス君の声はすごく優しくて、私を…包み込んでくれる。
心地よくて…凄く…凄く安心できる。

「寂しい時は、私がずっと傍に居るから。だから、我慢なんてしないで?思いっきり甘えて良いから、我侭言っていいから…。ね、覚えてる?」
「…うん、覚えてるよ。あはは、今聞くと、生意気なこと言ってるね。」
「ううん…そんなことないよ?メビウス君のお陰で…私は笑えたんだよ?」

メビウス君の胸に耳を押し当てる。聞こえるのは…確かな温もりと…鼓動。

「メビウス君は強いよ?けど…なんでも全部、1人で背負い込まないで…。今度は、私がメビウス君の傍に居るから…
我慢しないで、泣いてもいいんだよ?私が慰めてあげるし、一緒に泣いてあげるから…。」
「なの…ちゃん。」
「メビウス君が私を支えてくれたみたいに、私もメビウス君を…支えたいの!1人で…無理しないで?」
「あはは…そう…だよね。なのちゃんは…強いんだよね。」
「そうだよ?メビウス君のお陰で、私は強くなれたの!だから、今度は私が助ける番!!」
「…うん、ありがとう。なのちゃん、…これからもよろしくね。」
「うん!!…ねぇ、メビウス君。」
「なに?」
「…ぎゅーって…してほしいなぁ。」
「…うん。」
「えへへ…気持ち…いいなぁ。」


ねぇ、メビウス君?まだ…まだ、伝えられないけど…いつか伝えるね。…大好きだよ…。







あとがき

…時々、無性に甘いものを食べたくなりませんか?
ただのラブコメに1話使うという、作者の暴挙をお許しいただきたい。
タイトルの通り、母親は強く美しいと言う事と、恋する乙女は可憐で、どこまでも可愛いと言う事が伝われば…!!
さて…多分ですが…あと3~4で終わりに出来る!!予定…です。あぁ、どんどん伸びていく…



以下 返信


ユーロ様

まぁ…汁は…救いよう皆無ですから…。と言うか、こんな奴、本当に居たら作者が全力でぶちのめします。笑
ゲーセンでバーチャロン…やりましたねぇ。作者はコクピットタイプのバーチャロンをやりましたねぇ。
神操作のおばちゃん…物凄く・・見てみたいです。



ADFX-01G-2様

溺死してくれれば、多分、作者的には良かったんですが…物語的には、子悪党が消えてしまうというね…
まぁ、撃墜フラグをたてまくるでしょうネェ…。真の主人公(笑)と思ってますし…。笑


ダンケ様

娘をあんな風にされたら、誰でもブチギレるでしょうに。笑
プレシアとアリシアについては…少し考えがあるので…少しお楽しみに…。




[21516] 23話
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/25 00:21
・なのは・

臨海公園の上空、そこで私とフェイトちゃんは向かい合っている。
まだお日様が昇る少し前だから、辺りは薄暗い。
フェイトちゃんは、静かにバルディッシュを握って、私を見つめてくる。
…にゃはは、なんだか、凄く綺麗で…凄く強い眼をしてるね。

「…私は…絶対に負ける訳にはいかない。母さんの…為に…!!」
「……」

リンディさん達にお説教してもらった後で聞いたけど、フェイトちゃんのお母さん、プレシアさんが関係してるみたい。
ずっと前に、違法な実験を行って行方不明になっていたみたい。
そのお母さんの為に、フェイトちゃんはジュエルシードを集めてたのかな…?

「…そっか。だけどね、フェイトちゃん。私も…負けれないの。」

レイジングハートを両手で握り締めながら、私は眼を閉じる。
魔法の事を教えてくれたユーノ君。何時も明るく笑って、楽しくさせてくれたオメガ君。呆れたようにしてても、私にアドバイスしてくれている閃君。
私の事をお姉さまって言って、懐いてくれたリリンちゃん。アースラで色々とお世話をしてくれたクロノ君にブレイズ君。
そして…私の近くにずっとずっと…一緒に居てくれたメビウス君。みんなが私を支えてくれて…ここに私は居ることが出来る。
眼を開けて、展望台の方向を向く。心配そうに…困ったように笑いながら、私達を見守ってくれているメビウス君が立っていた。
もう、心配性なんだからなぁ。

「私ね、少しフェイトちゃんが羨ましいの。」
「…なのは?」
「だって、こんなにメビウス君が心配してるんだもん。きっと、それだけフェイトちゃんが大切ってことなんだね。」
「わ…私はなのはの方が…羨ましい。」
「にゃ?」

フェイトちゃんが真っ赤にうつむきながら、メビウス君の方を見つめる。
あ、気が付いたのかな?メビウス君が、小さく手を振っている。

「…ずっと…一緒に居れるから…」
「…フェイトちゃん…。にゃはは、なら同じだね。」
「同じ?」
「うん!フェイトちゃんもメビウス君のことが…大好きなんだよね?」
「…うん。そうだよ、けど…言葉にする勇気は…」
「私もそうだよ。…まだ伝えれないと思うの。けど、大丈夫!!メビウス君なら絶対絶対、受け入れてくれるから!」
「…ふふ、そう…だよね。優しいもんね。」

私達は、一緒に笑いあう。…こうしてると、フェイトちゃんはやっぱり可愛いなぁ。うぅ…私も頑張らないと。

「だからね…。私も負けれないの。」
「なのは…。うん、そうだよね。…それじゃ、始めよう。」
「うん!…高町なのは!!全力全開でいきます!!」
「負けない…!!」


・メビウス・

あぁ…始まっちゃったけど…大丈夫かな…。
上空で交差する桃色と、金色の魔力光。それを、私はさっきから冷や冷やしながら見上げている。
後ろに立っているアルフも心配そうに、フェイトちゃんの事を見ているね。

「…落ち着かない…。」
「メビウス様、心配なのも分かりますが…少し落ち着かれては?」
「私もそうしたいけど…あぁ、2人とも怪我しなければ良いんだけど…」
「あんたって…本当に底抜けに、優しいねぇ。」
「それがメビウス様の美点だ。今更気が付いたか?」
「…ガルムも一々、ムカつく言い方するね…。」

後ろで、取っ組み合いを始めそうな2人は無視しながら、上空を見上げ続ける。
…幾度となく、魔法が交差して、ぶつかり合って消えていく。まるで花火みたいだ。
フェイトちゃんは、スピードでかく乱して攻撃してるけど、なのちゃんの強固な防御障壁を突破は出来ていない。
けど、なのちゃんも、フェイトちゃんのスピードに中々付いていけなくて、攻めきれてないね。

「フェイトちゃん…速すぎるよ!!」
「そう言うなのはこそ…防御が硬すぎ…!!」

どっちも、決め手が出ず…か。…いや、違う…フェイトちゃんが…仕掛ける?

『フェイト様の周囲に、高魔力反応を確認。…どうやら、必殺の魔法のようですね。』
「一気に決着をつけるのかな…。なのちゃん、フェイトちゃん、どっちも…無理しないでよ…。」

祈るように私は、空の2人を見つめる。
フェイトちゃんが詠唱を始めようとしたのに気がついたて、なのちゃんが誘導弾で妨害しようとするけど…その前にバインドで拘束されたね…。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ…

っ…!?周囲に多数展開されるフォトンスフィア。…物凄く…嫌な予感が私の背筋を走る。
一瞬、エクスを展開して、飛び出そうとした私の肩をガルムが静かにつかんで、押しとどめる。
それに気が付いたのか、フェイトちゃんが私に視線を向けて…けど、すぐに詠唱を再開する。


「バルエル・ザルエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ファランクスシフト!!撃ち砕け、ファイアー!!」

発動の声が響き渡り、槍型の魔力弾がなのちゃんに襲い掛かっていく。
これは…流石に、なのちゃんの防御障壁でも…無理か…!?
幾度となく、爆音が轟き響き渡る。
それが、終わる頃には、フェイトちゃんの魔力は底を付きかけていた。正に…必殺って言うことか。
肩で息をしながら、爆発しで出た煙を見つめている。

「うう…ま…まだまだだもん!!」
「う…そ…!?」

…フェイトちゃん、その声には…なのちゃんには悪いけど、私も同意する…。
あれだけの攻撃を受けて…無事って…ありえないよ…。しかも、ほぼ無傷。

「それじゃ、今度は私の番だね!!捕まえて!!バインド!!」
「しまった…!!」

呆気に取られていたフェイトちゃんを、バインドで捕まえる。体力、魔力の消費ともに激しくて、身動きが取れないみたいだね。

「うわ…。なんだいあの魔力…。反則じゃないか…。」

アルフの言うとおり。なのちゃんが自分の周りに、展開している魔方陣は凄まじいの一言だ。太陽の光をあびて…見惚れるくらいに綺麗…。
集まる魔力も、維持する魔力も何もかもが桁外れ。…これがなのちゃんの…必殺か…。

「私の全力全開!!受けてみて!!いっくよおぉおおぉお!!!メビウス君直伝!!」

いやいや!!??私は何も直伝とかしてないけど!?

「一撃必殺!!スターライト!!ブレイカァァァァ!!!」

あ…そこなんだ…一撃必殺ね…。
レイジングハートから放たれた魔力は狙いたがわずに、フェイトちゃんへと向かっていく。



・フェイト・

なのはの桃色の魔力光が目の前に迫ってくる。避けようにも…もう私は動けない。
激流に飲まれ、全部貫かれたような衝撃を受けながら、私は力尽きて堕ち居てく。

(ごめんなさい…母さん…。約束…守れなかった…。)

けど、静かに…静かに海面に向かって堕ちていく私を誰かが…フワリと抱きとめてくれた。
何度も何度も感じた事のある温もりで……何時までも感じていたい温もり…。

「…フェイトちゃん、お疲れ様。」
「あ……」

眼を開けると、優しく優しく微笑む…メビウスの顔があった。
堕ちていく私を…受け止めてくれたんだ…。

「ふぅ…一時はどうなるかと思ったけど…。」
「心配してくれた…の?」
「当たり前でしょ?…さぁ、アースラに一緒に行こう?…キチンとお話すれば、みんな分かってくれるからさ…ね?」
「…うん。」

良い子、と言ってメビウスが更に笑みを深くする。
抱き止められているからか、彼の顔が近い……。あれ…?
私は、落ち着いて自分の状態を見る。……あ…う…この状態って…

「あぁ~!!フェイトちゃんだけずるい~!!」
「ずるいって…なのちゃんが撃墜したんだよ…?」
「けどけど!!お姫様抱っこしてもらってる!!」

…なのはの言うとおり、私はメビウスにお姫様抱っこをされている状態だった。
そっきから、心臓が聞こえちゃうかと思うくらいに、高鳴っている。
けど…なのはだって…甘えてるんだから…私も甘えちゃっても…良いよね…?
私は顔を真っ赤にしながらも、彼の胸に顔をうずめる。なのはが何か騒いでるけど…今は少し…甘えたい。

「もう、2人して甘えん坊なんだから…。」
「ずるいよ!!ずるいよ~!!」

5分位して、私はメビウスから離れる。正確には、なのはが引き剥がしたんだけど…。
そして、私はバルディッシュからジュエルシードを取り出すと、メビウスに手渡す。負けちゃった…からね。

「うん。確かに、さぁ、アースラに…!?」
「きゃ!?」

何故かメビウスが私を突き飛ばして、そのばから離れる。どうして…!?そう聞こうとする前に、彼のいた場所に襲い掛かる雷光。
そんな…これって…母さん…!?

「メビウス君!?」
「クロノさん聞こえますか!!すぐに2人をアースラに転移させてください!!」

なんで…どうして母さんが、メビウスを攻撃するの!?決着を付けにいきなさい、って言ったのは母さんなのに!?
なのはと私が、彼の近くに行こうとする前に、転移魔法に私達は包まれていった。


・ブレイズ・

「なのは及びフェイトの収容を確認!!メビウスも転移させろ!!」
「無理だよ!!あんなに動き回られていたら、転移させられない!」

エイミィの悲痛な声が艦橋に響く。
先ほどまでの戦闘は、俺達もモニターで見ていた。ジュエルシードの受け渡しまでは、うまくいってたんだが。
跳躍魔法での襲撃…くそ、考えてなかった自分の無能さに腹が立つ…!!海上でも似たような事があっただろうが…!!
だが、すぐに俺は頭を振って思考を切り替えて、端末を操作し始める。

「跳躍魔法の発射位置の座標を調べるぞ!!そこにプレシア・テスタロッサが居るはずだ!!」
「分かっている!!」

クロノの指示で、艦橋の局員達が端末や装置を使い、座標を割り出していく。
メビウスもそれが狙いなのか、さっきから回避に専念している。
…止まったと思えば、一瞬でトップスピードまで速度を上げて飛び回っている。
直進してたかと思えば、直角に上昇したり、下降したりとありえない機動をしているな。

「…慣性の法則というのがないのか…?」
『エクスには、慣性制御機構が搭載されてます。ある程度なら、無視できるはずです。』

なるほど…。スペシネフにも空間制御機構が搭載されているから、別段不思議ではないな。
っと、冷静に分析してる場合ではないか…!!

「座標軸特定完了!!メビウス君、退避して!!」
「了解…ぐぁ…!?」

エイミィの通信で、一瞬気を取られたのか、メビウスが被弾する。
いや…辛うじて回避したようだが…その衝撃でジュエルシードを落としたか…!?
すぐに拾いに行こうとするが…くそ…物質転移させられたか…。
狙いはジュエルシードと言うことか。跳躍魔法も既にやんでいる。…面倒な事になったかもな。
俺は、メビウスを転移させたのを確認すると、武装局員たちに戦闘を準備を始めさせる。
さて…どう動くか…。


10分後



「さて…モニターに映像が出るが…良いのか?」
「…はい。」

メビウスに寄り添うようにしていたフェイトがうなずく。全部見届ける覚悟は出来ている、と言うことか。
先ほど、フェイトから多少の事情は聞くことが出来た。…彼女の出生についても聞いたが…
アリシア・テスタロッサのクローン…か。だが、そんな彼女を娘と扱っているプレシア・テスタロッサ。
…願わくば、こちらの指示に従って欲しいものだ。そして、罪を償って、彼女と共に生きて欲しい。

「映像…出せ。」
「了解。」

モニターに映し出される映像は…薄暗くて陰気な雰囲気の広間。
そこの中央にプレシア・テスタロッサは佇んでいた。…サーチャーを撃墜しない所を見ると…話し合いつもりと言うことか?

「プレシア・テスタロッサだな。」
「…えぇ、そうよ。」

フェイトが何か口を開こうとするのを、メビウスが止める。…まぁ、今は話をややこしくしない方が良いだろうな。
クロノも、気にせずに話を続ける。

「多数の違法行為及びロストロギア強奪の容疑で逮捕する。直ちに武装を解除し、こちらの指示にしたがってもらいたい。」
「……断ると…言ったら?」
「遺憾ながら、こちらも実力行使を取るしかない。繰り返す、直ちに武装を解除せよ。」

クロノの呼びかけにも答えずに、佇むプレシア。…さて、どうしたものか。
流石のクロノも、少し戸惑っている。攻撃してくるなら、武装局員を送り込むのだが…何も行動しないとなると…困ったな。
クロノが静かに、フェイトに目配せをする。彼女に説得してもらうしかないと判断したんだろうな。

「母さん、もう、止めよう?まだ、間に合うから…。お姉ちゃんだって…」
「……黙りなさい…。」
「え…?」

冷たく響く無機質なプレシアの声。…なんだこれは?彼女の言っていた…優しい母親の声なのか…?

「貴方に母さん…だなんて呼ばれたくないわ。」
「な…んで…?」
「…フェイト、貴方も知ってるでしょう?所詮は、アリシアのクローンなのよ。分かる?つまり…ニセモノ。」

…しまった…。プレシアが行っていた実験は…クローンだけじゃない…!!ある種の蘇生術だった。
これ以上、フェイトに聞かせる訳にはいかない…!!
メビウスやアルフも気が付いたのか、すぐにフェイトを連れて行こうとするが…彼女が動かない。

「作り物でしかない貴方に…母さんなんて呼ばれる度に、虫唾が走ったわ。」
「あ…あぁ…。」
「作っても作っても…アリシアに1つも届かなかった。貴方は、偶然にうまくいっただけ。」
「貴様…!!」

クロノの怒りの声が漏れる。それだけじゃない、艦長やエイミィでさえ、怒りを隠していない。

「けど、もう良いのよ。貴方みたいなニセモノ。いえ、こう言ったほうが良いわね。失敗作には用はないの。
ジュエルシード…これがあれば、アルハザードにたどり着ける…。ほんの少しだけ、役に立ったわね。失敗作で…ニセモノの貴方でも。」
「……」
「だから、もういらないわ。何処かに…消えなさい。」

冷たく笑うプレシアを見たフェイトが、力なく崩れるのをメビウスとなのはが抱きとめる。
その眼は…暗くて虚ろだ。

「くくく…あははは!!」

…最悪な奴が笑い出しやがった…。シルヴァリアスがフェイトを指差して笑い声を上げる。

「だから言ったじゃないか!!そいつは化け物だと!!人の形をした人じゃないものだ!!だから、消すべきだと僕はいったんだ!!」
「…れ…」
「だが、貴様も同じだ!!こんな化け物をつくった貴様も、人間ではない!!ただの薄汚い犯罪者には、正義の鉄槌が…」
「黙れえぇぇえ!!!」

メビウスが、思いっきりシルヴァリアスを殴り飛ばす。魔力の補助でも使ったのか、軽く吹っ飛んで壁に激突させる。
…まぁ、あと少し遅ければ、俺が全力で殴り飛ばしていたがな。

「き…貴様、なにを…!!」
「シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー。今すぐ出て行け。」
「クロノ!?貴様まで僕に歯向かうのか!?僕はただ、化け物は」
「出て行けといっている!!」

クロノがS2Uを解除して突きつける。どうやら、こいつもかなり頭にきているようだな。その眼光はかなり鋭い。
それに、気が付かないのか?シルヴァリアスには、多数の敵意の眼が向けられている。あの温厚そうななのはまで…だ。
小さく舌打ちをしながら、出て行くのを見届けずに、メビウスが静かに前に歩み出る。

「どうして…そんな事を言うんですか…?」
「事実よ。私はその娘を…」
「物としか見てないのなら…その【娘】なんて…使わないはずです。それとか…あれって言う筈です。」

静かに、力強く響くメビウスの声。

「……」
「フェイトちゃん…言ってました。料理を作ったら、美味しそうに食べてくれたって。笑って褒めてくれたって…。
そんな事、いらないものには…絶対にしないはずです。」

傷ついたのは、自分じゃないはずなのに、泣きそうなメビウスの声。
その声が届いているのか、プレシアも押し黙る。

「怪我をしてないのか…心配もしてくれたって言ってました。今度、一緒に料理をしようって…約束してたっても言ってました。
どうして…どうして、フェイトちゃんに本当の事を言ってあげないんですか?どうして、そんな冷たい事を言うんですか?」

視線をフェイトに向ければ、虚ろな表情で、メビウスを見つめていた。
なのはやアルフの呼びかけには、反応しないのに…。

「いらないなんて…うそですよね?」
「本当よ。ニセモノなんて…」
「なら、どうして…貴方はそんなに…泣きそうなんですか?」

ハッと息を呑むプレシア。…薄暗いモニターの向こうで、俺には表情は良く分からない。
何か言葉を続けようとしたが、突然映像が乱れる。
なにがあった…!?

「どうやら…時間が来たようね。…さようなら。」
「プレシアさん!!」

メビウスの声が届く前に、映像が途切れる。ち…一体、なにがあった…!?

「え…。と…時の庭園内で戦闘を確認!?」
「どこのどいつだ!?」
「し…シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナーです…!!」

ふざけるなあああぁぁ!!!!!!!!!!と叫びたい俺のクロノ。
転移ポートに連絡を入れれば、無理やり起動させて、出撃したらしい。
額に青筋浮かべるクロノと、口元をヒクヒクさせる艦長。俺は…小型端末を握りつぶしている。

「ジュエルシードの発動を確認!!次元震も発生している模様です!!」
「各員出撃!!クロノとブレイズ君も出て!!私は次元震を抑えるわ!!」
「「了解!!」」
「わ…私も手伝います!!」


なのはがバリアジャケットを展開して、付いてくる。
クロノが端末で3姉妹と閃達にも連絡を入れているから…戦力は申し分ないか…!!






時の庭園


「ごめんなさい…ごめんなさい…フェイト…!!!」

両手で顔を覆いながら泣き崩れるプレシア。
思い出されるのは、崩れ落ち、虚ろな表情のフェイト。
こんな方法しか思いつかなかった。非道な母親に利用された哀れな娘。愛する娘を助ける方法は、これしかなかった。
だが…代償はあまりにも大きかったかもしれない。フェイトの心は壊れかかっているのかもしれない。
…しかし、犯罪者として、暗い場所で生きるよりは…時間がかかっても、明るい場所で生きていくほうが数倍良い。

「…ここまでが私の役割…後は貴方の役割よ…。メビウス・ランスロット。」

人の為に、泣いてくれたメビウス・ランスロット。
彼ならきっと……フェイトの心を治してくれるだろう。

「さぁ…最低な母親らしく……迎えるとしましょうか…。」

悲しみを捨て去り、彼女は歩く。愛する娘の為に…母親は修羅にもなれるのだと言う事を…正銘してみせる。






・メビウス・



「メビウスさん。」
「リンディ…さん。」

皆が出て行った後、動けない私に優しく声をかけてくれる。

「…今は泣いても良いのよ?大変な時だけど…貴方もつらいでしょう?」
「いえ、私は…まだ泣けないです。」
「…強いのね。ごめんなさい、貴方を利用するみたいな事を…最初に言ったわね。」
「あはは、後で気が付きましたよ。父さん達の名前が…必要だったんですよね?」
「…えぇ、けど、これだけは信じて。貴方達が協力を拒否しても、無理強いはしなかったし、フェイトさんの事は穏便にすませる気だったのよ。」
「分かってますよ。…リンディさんは優しいですから。」

この人も母さんと同じ…凄く優しい母親だって事は、私にも理解できる。
だから、私も素直に協力する気になったし、ブレイズさん達だって信頼してるんだからね。
笑顔を浮かべながら、リンディさんが私の背中を押してくれる。目的地は…決まっている。


・医務室・

「フェイトちゃん。」
「…メビ…ウス…」

よかった…。呼びかけには反応するね…。
私は静かに、フェイトちゃんのいるベットの近づく。
アルフはここにつれてきた後に、「プレシアを殴りに行く!!」と言って、庭園に向かったらしい。
…彼女なりに、何か思うところがあったんだろうね。

「私…要らない子…なんだって…どうして…どうして…。」
「うん…。」
「母さんに笑って欲しいから…どんな事でも一生懸命にやってきた…。母さんとお姉ちゃんと一緒に暮らしたいから…」

フェイトちゃんの口から零れてくるプレシアさんとの思い出。縋り付く様に…思い出が消えないように…零れてくる。
魔法がうまく行ったときに褒めてくれたこと、病気になったときに必死に看病してくれたこと。眠れないときに一緒に眠ってくれたこと。
一緒なら、全然さびしくなかったこと。沢山の思い出を、私に話してくれた。

「けど…全部…いらないって…言われちゃった…。どうしよう…メビウス…!!私、母さんに捨てられたら…なんにもないよ…。何処にもいけないよ…!!」

フェイトちゃんの瞳から、大粒の涙がこぼれてシーツをぬらしていく。
私はソッと優しく抱きしめて、背中をポンポンと叩く。

「…フェイトちゃんは…プレシアさんの事…好き?」
「……好きだよ…だって…だって、私のおか…あさん…だから…。」
「そっか…。なら、その想いを…言葉にして、プレシアさんに伝えよう?」
「つた…える?」
「そう…。お母さんの事が好きだって…一緒に居ようって…伝えなくちゃ」
「…でも、それでもいらないって…言われたら。」
「その時は…私と家族になろう?」
「家族…に?」

腕の中で、フェイトちゃんが驚いたような表情をする。
前に母さんが言ってたからね。家族が増えても大丈夫って…。

「うん。そうだなぁ…私の妹になっちゃえば良いんだよ。」
「メビウスの…妹…?」
「うん。…それならずっと…ずっと一緒居れるからね。」
「けど…私は…人間じゃなくて…クローンなんだよ…?ばけも…ひゃ!?」
「…そんな悲しいこと言わないで。」

化け物。そう言おうとしたフェイトちゃんを、力いっぱい抱きしめる。だめだよ…。そんな事は…絶対に言っちゃ駄目。

「約束するから…私が絶対に…フェイトちゃんを必要にするから…。絶対に離さないから…ずっと一緒にいるから。」
「メビウス…。」
「だから…もう2度と、自分が化け物なんて…要らないなんて言わないで…。約束だよ?」
「…良いの?私…ずっと…ずっと…メビウスの傍にいても…良いの?」
「うん…。良いよ。だから、今は…泣いて…ね?
「…メビウス…メビウスメビウスメビウス…!!」

背中を手を回して、フェイトちゃんも抱きついてくる。
優しく抱きしめれば、聞こえてくる泣き声。…辛かったんだね。
背中をなでながら、私はフェイトちゃんが落ち着くまで、ずっとそうしてあげる事にした。

「落ち着いた?」
「うん…ありがとう。」
「それじゃ…伝えにいこうか?プレシアさんに…好きだって事を…ね。」
「…うん、この気持ち…伝えてみる。」

そういって微笑む【フェイト】の手を私が握ると、照れながらも握り返してくれる。

「さぁ、行こう!!フェイト!!」
「うん…!!お兄ちゃん!!」












あとがき


…あぁ、3時間かけてこの程度~。泣けますね…
予定では、あと2話…!!
…そして例の計画もあと少しで…成就する…!!
次回は意外な人が本領発揮!!



ユーロ様

あぁ…容赦なく、叩き落しますからね…。
X2の散弾は…泣けますよね。モルガンのを見習えと言いたいです…!!


名無しの獅子心騎士様

いえいえ、お粗末さまでした。
今回もKYすぎる汁なんとかさん、如何でしたでしょうか?
まだまだ、こいつのKY差とウザさに磨きをかけて生きたいと思います!!


ダンケ様

修羅の皮を被りましたね。…作者の実力ではこの程度…なんですがね。泣
救いの手を差し伸べる人は居ますが…この物語の人物では…ないですね。
ずっと前に書いたおまけが仄かに…関係してるかもしれません。笑



[21516] メイン 【偉大なる母の愛。】 サブ 【凡人の本気。】
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/25 23:58
・ユーノ・

「A班は遊撃!!B班は現地の確保だ!!C班は後方援護!!2人で1体の敵に当たれ!!単独戦闘は禁止だ!!」
「「「了解!!」」」

スペシネフで傀儡兵を切り伏せながら、ブレイズが指示を飛ばしている。
僕達は、時の庭園の門前で足止めを食らっている状態だ。傀儡兵の数が多くて、思うように進めない。

「おい、オメガは何処だ!?」
「どぉおぉりゃあぁあ!!」
「あの馬鹿…突出し過ぎだっての!!」

閃が呆れたように、前線を眺める。なんか……傀儡兵が…纏めて吹っ飛んでるように見えるんだけど…

「ねぇ、閃。オメガって…ベル」
「ユーノ、もし、あいつの戦い方をベルカ式とか言ったら…ベルカ魔道師を敵に回すぞ?」
「……」

さて、僕は黙って、後方からサポートしようかな。閃も空中に開いたウィンドウを何か操作している。…なんか物凄く…手の動きが速い。
視線を戦場に戻すと、シルヴァリアスが魔力剣で傀儡兵を両断している。
……彼が先走らなければ、こんな事にならなかったのに…

「フラガラッパあぁあ!!雑魚はどけ!!」

フラガラッパの数本を、回転させながら放って、傀儡兵を纏めて砕いていく。
…性格に問題あるだろうけど…魔道師としては一流みたいだね。アスカロンで切り伏せながら、上空に飛び上がって…

「軍神の槍よ!!雷神の怒りよ!!悪しき者に裁きを!!グングニル!!」

槍のような魔力弾を作り出て、雨のように降らせていく。…感心したくないけど、かなりの数をそれで撃破してる。
けど…戦っているのが、他の局員達と連携の取れない密集地帯だから…大して意味がない。

「ち…3姉妹は上空から爆撃!!C班も長距離砲撃だ!!」
「分かったわ。行くわよ、デボラ!ジェニファー!!」
「あいよ!!久々に腕が鳴るね!!」
「それじゃ、皆様、行ってきますね。」

シルビーを筆頭に、3姉妹が上空に飛び上がって、高速で動き回る。
凄い…フェイトやメビウスにも勝る速度だ!!魔力弾を前線で戦う局員達の前に、落としながら上空に飛び回る。
いや、飛んでいるというより…舞ってるみたいだ。

「ちっ…クロノ、敵増援を確認!!何処かに供給源があるはずだ!!ブレイズ、総数30だ!!」
「やはりか…、閃、割り出しを頼めるか?」
「了解。…んで…あいつらはまだか!?」

クロノがシューターで傀儡兵を一体ずつ確実に撃破して、周囲に目を配る。
ブレイズが部隊指揮を執っているから、彼も単独で動きやすいんだよ。僕?僕は、閃の近くで障壁を展開している。もしもの時のためにね。

「…閃お兄様、私も戦いますわ!!」
「うぉわぁあ!!??リリン!?なんでこんなとこに!?」

閃並みにじゃないけど…僕も驚いた。彼女はアースラで待ってるはずなのに…

「梃子摺っているのですよね?なら、手を貸しますわ!!」
「貸すったって…お前、戦えるのか…?」
「はい!!任せてください!!」

戸惑い気味の閃に、元気に返事をしながら、リリンがポケットからハート型のデバイスを取り出す。

「ビビットピンクにナイトな私!!リリン・プラジナー、参りますわ!!」
「「………」」

僕と閃は2人して、呆気に取られている。リリンがバリアジャケットを展開するのはいいんだけど…
フリフリスカートで腰には大きなリボンが結んである。……えっと凄く…女の子らしい…って言えば良いのかな?
手にはレイピアのようなデバイスが握られている。

「それでは、行きますわ!!」
「はっ!!リリン、待ちなさい!!そんな格好で飛び回るな、見えるだろ!!こら!!少し俺の話を聞け!!ちょっとぉ!!」

正気に戻った閃が呼び止めようとしてるけど…無理じゃないかなぁ。
…いや、別に僕はなにも見てないよ?だから、閃…そんなに睨まないで欲しいんだけど…





・ガルム・

「まったく…数が多くて面倒だな。」
「ああもう!!邪魔だね!!」

我とアルフが背中合わせで、傀儡兵どもと対峙する。周囲には、我らが砕いて、朽ちた傀儡兵の残骸が散らばっている。
近づいてきた1体を回し蹴りで破壊し、その回転を利用し、後方にいたもう1体に飛びまわし蹴りを叩き込んで粉砕する。
アルフも1体ずつ破壊していくが…ちっ、きりがない。

「…ほぉ、なかなかやるではないか。」
「そう言うあんたこそね。」

再び、背中を合わせ、軽口を叩き合う。ふ…以前の我らではこうもいかなかっただろうな。
やはりメビウス様、そしてフェイト様のお陰…なのだろうな。アルフの存在が頼もしく感じる。

「…フェイト…大丈夫だと良いんだけど…」
「なんだ?心配なのか?」
「当たり前だろ。フェイトは、あたしの大切なご主人様なんだからね。」

まぁ、その気持ちは我にも理解は出来る。使い魔である以上、主とともに在るのが常だ。
それに、魔道師にとって、使い魔は使い捨ても出来る存在。だが、メビウス様は我を家族として迎えてくれた。
ならば、我もその想いに答えねばならぬ。それが、我が絶対の忠誠を誓っている所以。

「案ずるな。メビウス様ならば、フェイト様を救ってくれる。」
「はは、あんたは本当に…メビウスを信じてんだね。」
「当然だ。我の主だぞ?」
「…それもそうだね。なら、あたしも…信じてみようか。あんたの…ガルムのご主人様をね!!」

そう笑い合うと、我らは再び傀儡兵の無理に飛び込む。
さて…久々に我も…本気を出さねばな。
両手に魔力を収束し、2本の鞭を作り上げ、振るう。それが傀儡兵に直撃するたびに、縦に、横に両断していく。

「アルフ!!しゃがめ!!」
「うわっと!?」

アルフがしゃがむのを確認すると、我は身体を回転させ、鞭を振るう。周囲にいた10数体の傀儡兵はこれで一掃できたな。
鞭が通った後は、焼き切れた様な断面の傀儡兵どもが転がっていた。

「あんたねぇ…。危ないじゃないか!!」
「だから、しゃがめといっただろう?」
「もっと早くに良いなよ!!第一、今のはなんだい!?」
「…ヒートロッド…とでも名づけておこうか。さぁ、無駄口を叩く暇はないぞ!!」

続々と沸いてくる傀儡兵に向き直ろうとした瞬間、上空から見慣れた魔力光が降ってきた。
…来ましたか…我が主よ!!


・閃・

「ラジカル・ザッパー!!」

前線を奔る蒼い砲撃魔法。数10体の傀儡兵を纏めて消し飛ばしていく。
まったく…やっと登場かよ。

「遅いぞメビウス!!遅れてきた分、きっちり働けよ!!」
「はは、閃、厳しいよ。」

やっと現れた主人公、メビウス・ランスロットに俺は軽口を叩く。
ったく、こいつがいれば、最初から苦労なんかしなかったんだろうがなぁ。
隣にはフェイトが寄り添うようにして立っている。ん…顔色も良いみたいだし…もう大丈夫だろうな。

「始めまして、帝 閃だ。まぁ、詳しい自己紹介は後にしようぜ。」
「あ…はい。フェイト・テスタロッサ…です。」
「いや…敬語じゃなくても良いんだぞ?同い年だし…」
「え…?そうなの、お兄ちゃん?」
「うん。閃は私と同い年だよ。」

ったく…俺が年上に見えるのかよ。まぁ、転生者だし…もしかすると、そんな雰囲気が出てたのかもしれないな。
…って…おいおいおい。まてマテ待て。いま…フェイト、なんて言った…?

「なぁ、フェイ…」
「ディバイン…バスタァァァァァ!!」
「ビビットピンク・エクストラ!!」
「うぉぉ!!??」

叫び声とともに、奔る2つの桃色の魔力光。…うへぇ、こっちはこっちで、凄まじい威力だな…。
ハート型の魔力と、魔力そのものの塊が、まとめて吹き飛ばしていく。

「あ!!フェイトちゃん!!」

いち早く、気が付いたなのはがこっちに飛んでくる。…あぁ、凄く安心したって顔してるな。
ったく・…こっちの主人公もお人好しで…優しすぎるな。まぁ、それが良い所なんだろうけど。

「なの…ひゃう!?」
「もうもう…心配したんだよ!?話しかけても返事してくれないし!!ずっと下向いたばっかりだし!!」

なのはが勢いそのままに、フェイトに抱きつく。本人は、精一杯心配してたことをアピールしてるんだろうが…。
フェイトが眼を白黒させてるぞ。そこに…加わるもう1つの人影。

「フェイトォォォ!!」
「あ…アルフまで!?」

傀儡兵をなぎ倒して、こっちに走ってくるアルフ。いや、お前…最初からそれやってくれよ…。
一緒に戦ってたガルムが、ポツーンと呆気に取られてるぞ…。
とりあえず俺は後ろで、なのはとアルフにもみくちゃにされているフェイトを放っておいて、メビウスに声をかける。
あの単語についてだな。

「…さっき、お前の事…お兄ちゃん言ってたけど…。まさか…」
「え?あぁ、フェイトは私の妹になったんだ。」
「…妹って、お前…良いのかよ。そんなに簡単に決めて…」
「ん~…まぁ、大丈夫だよ。」

いや、お前…そんなにあっけらかんと重要な事決めて良いのか?
義理の妹なんて…それなんてエロゲだよ。

「それに閃だって、リリンちゃんにお兄様って呼ばれてるでしょ。」
「お兄様ぁぁ!!私の活躍、見ててくださいね!!」
「………」

しまったあぁああぁぁあぁぁ!!!!!!!!人のこと言えねぇえぇぇえ!!!
い…いや!!俺の場合はただ単にお兄様って呼ばれてるだけで、決してそう言う関係ではないのであって…。
ええい!!誰に言い訳してんだよ俺は!!笑いをこらえているユーノを軽く睨みつけ、俺は無言でウィンドウの操作を再開する。

「さて…前線を押し上げてこないとね。」
「突出してる馬鹿がいるから、援護してやってくれ。」
「…どっちの方を言ってる…?」
「決まってんだろ。俺達の親友のほうだよ。」
「…だよね!!」

軽く親指を立てて、戦場に向かうメビウス。蒼い魔力光が尾を引いていくが…って、おいこら。
そのまま魔力光が消えないで…下にいた傀儡兵に攻撃してるんだが…爆撃か!?

≪メビウス、お前、なんの魔法使った?≫
≪SFFSだよ。飛んだ後の魔力光に攻撃属性を持たせたんだ。≫

SFFS…本当に戦闘機の武装を再現してやがる…。確かに、こんだけ密集してるなら、効果は期待できるだろうな。

「って、お前ら!!さっさと戻れ!!ここが片付かなきゃ話にならないっての!!」
「わ!?…そうだね、行こう!!フェイトちゃん!!」
「うん!アルフ…また一緒に付いてきてくれる?」
「当然だろ、フェイト。どこまでも付いていくよ!」


後ろで未だに抱き合ってる3人を叱責しながら、左右と正面に展開しているウィンドウを再び操作し始める。


「ったく…俺はお前らと違って凡人なんだぞ…。少しくらい、楽させてくれ…」
「…いや、閃、3つのウィンドウを操作してる時点で…凡人じゃないと思うよ…?」

そうなのか?ユーノの言葉を聞き流しながら、眼はウィンドウから離さない。
左右のウィンドウは両手で操作してるし、正面のウィンドウは、俺の眼の動きで操作が可能にしてある。
斜め上には、小型のウィンドウで前線の状態が逐一、報告されるようになっている。

「ブリッツトルネード!!」
「パワーウェイブ!!」

メビウスがエクスを構えた状態で、コマのように回転して傀儡兵をなぎ倒し、その勢いのまま上昇してラジカルザッパーで周囲を掃討して行く。
慣性制御が搭載されているならではの動き…か。高速で飛び回りながら、魔力弾で爆撃なんかをしている。
オメガは…ただ単純に、殴る蹴るで破壊してるな…。地面を殴りつけると、魔力が柱のように一直線に突き進み、さえぎる敵を破壊していく。
…なんつう技だよ。あいつの場合は、魔法というより技だな。…しかも、なんかの格闘ゲームで似たような技を見たことあるぞ…。
別ななウィンドウに視線を向けると、クロノとブレイズが映し出されている。
こいつらは…別段、派手な魔法を使ってはいないが、撃破数は1番だろうな。確実に堅実に撃破してるようだ。
ブレイズがスペシネヌで切り伏せると、クロノがシューターで援護、もしくは牽制している。

「サンダーボルト。スペシネフ、ショットガン。」
『イエス、マイロード。』

掃射しながら、スペシネフの銃身部をスライドさせると、放たれる散弾の魔力弾。弾幕が半端じゃないほどに凄いな。
確かに…ショットガンってのも理解できるな。…空間制御とかそれ以外にも、長けてるなブレイズは。

≪閃、増援の位置情報は特定できたか!?≫
≪っと、特定できたけど…結構、奥だぞ?≫
≪…仕方がない、クロノ、俺がここを抑えるから、突撃してくれるか?≫
≪現状、それしかないか…。≫

念話で2人と相談しながら考える。確かに、なのはやフェイト達が纏めてなぎ払っても、後から後から沸いてこられては、流石に洒落にならない。
それには、傀儡兵を作っているだろう施設を破壊しないといけないんだが…庭園内の奥まった場所にある。
…仕方がないか、あれを使う。

「よーし、レーベン、派手にやるぞ。」
『お、やっちゃいます?むしろ殺っちゃいます!?』

興奮気味の相棒に軽く笑って、ウィンドウを切り替える。
さてと…出てきたターゲット全てにロックカーソルを合わせて…っと。

「閃…凄いことしてるね…」
「そうか?」
「…一瞬で100体以上をロックするなんて、考えられないよ…。」

いや、ユーノ、驚くなって。多分、お前でも出来ると思うぞ?

「さて…いくぞ、俺の最強魔法!!各員に告ぐ!!その場を動くなよ!!」
『いっきますよおおぉおおぉ!!!』
『「アサルト・セル!!」』

俺の有りっ丈の魔力を上空に撃ち出し、ロックした傀儡兵に襲い掛からせる。全部の標的をロックしたはずだから、恐らくは1発も外れは出ないだろう。
まさに天から降り注ぐもの…って所かな。

「す…凄いよ閃!!…閃?え…ちょっと!?」

はしゃぐユーノの声を聞きながら、俺は地面へとダイブする。もう…全部使い切っちゃいましたよ…。




・ブレイズ・

「これから庭園内部を攻略する。3姉妹とB班は入り口を維持。僕とユーノは動力炉とジュエルシードの確保だ。
A班とC班は、傀儡兵の製造施設の破壊だ。」
「「了解。」」
「シルヴァリアスは…どうします?」
「…あんな奴のことなど知らない。放っておけ。」

庭園内部でクロノが簡単に役割分担を支持する。閃の活躍で外の傀儡兵は一掃できたが、まだ内部の攻略が残っている。
ちなみに、閃は魔力を使い切って倒れてしまった。これ以上の戦闘続行は不可能と判断して、アースラに帰還させた。
その付き添いでリリンも撤退したから…今頃、医務室で手厚い看護を受けているのかもしれないな。

「ブレイズ達は…プレシア・テスタロッサの確保だ。」
「任せろ。そっちも気をつけろよ」
「あぁ、ブレイズも…油断するなよ。各員、気を引き締めろ!!行くぞ!!」
「ユーノ君、頑張ってね!!」
「うん、なのはやメビウスたちも…無事で!」

クロノと軽く拳をぶつけ合い、それぞれの分担場所に向かって進み始める。

「フェイト、案内を頼めるか?」
「うん、こっち。通路が遮れてなければいいんだけど…。」

庭園内部は所々が崩れ落ち、何時崩壊しても可笑しくない状況だ。
しかも、虚数空間の穴が開いているから、下手に飛行魔法を使うわけには行かない。
結局は、徒歩で移動するしかないんだが…。フェイトの心配も杞憂に終わった。

「うなれ!!パイルバンカー!!」
「…便利だな。」
「あ…あはははは…。」

崩れた壁で通路が遮られていようが、オメガが問答無用でパイルバンカーで粉砕する。
…まるで削岩機だ。途中で、傀儡兵に遭遇するが、なのはやフェイトがピッタリのコンビネーションで撃破していく。
メビウスに頼りっきりの2人かと思ったが…考えを改めなければな。
彼女達も…立派な魔道師だ。手を取り合う2人を見て、メビウスも笑顔を深めている。

庭園内部 大広間


「ここまで…きてしまったのね。」
「…母さん…!!」

プレシアと対峙する俺達。ここには既に、虚数空間に通じる穴が出来、天井が崩れてきている。
彼女の後ろには、フェイトのオリジナル、アリシアが入ったカプセルが鎮座していた。
一歩、フェイトが歩み出ると、彼女の足元に撃ち込まれる雷光。

「失敗作の分際で…ここまで来たのね。それに、母さんなんて呼ばないでといってるでしょう?」
「……」
「目障りなのよ!!アリシアの偽者の癖に…母さん母さんだなんて!!」

フェイトはただ、無言でプレシアとアリシアを見つめている。メビウスやなのはも、何も言わずに佇んでいるだけだ。
…俺も…何も言わないさ。

「…それでも…良い。私は、母さんの…プレシア・テスタロッサの娘で居たい!!」
「っ…!!」

俯いた顔を上げると、眼に涙を溜めて叫ぶフェイト。

「母さんが一緒なら…私はどんな事にも耐えられた!!母さんの温もりがあったから夜も恐くなかった!!」

耐え切った感情があふれ出るかのように…フェイトはプレシアに訴える。

「笑ってくれたから、私も笑うことが出来た!!私の名前を呼んでくれるたびに…凄くうれしかった!!」
「だ…だからなんだというの…?今更、貴方を…娘だと思えと…?ふん、作り物の分際で…」
「作り物でも、偽者ではなんでも良い!!それでも、私は…私は母さんの娘なの!!」
「…どうして、こんなにも私が嫌っているというのに…!!」
「だって…だって…私は母さんの事が…大好きだから!!!ずっとずっと一緒に居たいから!!」

大広間に響くフェイトの泣き声。…母親…か。俺の両親は…ベルカ戦争で戦死しているからな…。こんな事言う相手なんか…いない。

「…貴方は…どうして、こんな私を…好きでいてくれるのよ…。」
「かあ…さん。」

プレシアが泣き崩れる。口から漏れるのは…悲しいまでに…母親の言葉。

「私だって…貴方が…フェイトが大好きよ!!愛しているのよ!!けど…もう巻き込めないじゃない…。
私1人の欲望の為に…貴方の未来を奪うことなんて…私には出来ないのよ…!!」
「だから…私をいらないって…」
「そうよ…。貴方が私を嫌いになっても…私を憎んでくれても、光の当たる場所で生きてくれれば…それでよかった!!
貴方が私を忘れて、生きてくれれば…私はそれで充分だった!!…ごふ…!!」

っ…!!吐血しただと…!?彼女が重度の病を患っていると聞いたが…ここまで進行してるとは…!!

「母さん!!」
「来ないで!!」

駆け寄ろうとしたフェイトの足元に炸裂する雷光。

「貴方は…非道な母親に利用された悲しい娘。…良いわね…。」
「どうして…私は母さんが一緒に居てくれるなら耐えられる!!だから、一緒に!!」
「…貴方が…メビウス・ランスロットね。」

プレシアがメビウスを見つめる。彼も静かに「はい。」と返事をして、フェイトの傍に歩み寄る。

「……貴方は…フェイトを守ってくれるのかしら?幸せに…してくれるのかしら…?」
「当然です。彼女は…私の家族ですから。」
「そう…家族…ね。ふふ、私も…アリシアとフェイトと一緒に…笑って…料理して…眠りたかったわ。」

そういってにこやかに微笑み、アリシアのカプセルへ歩き始める。その顔は…慈愛に満ち溢れた、聖母の顔。

「…フェイト、こんな身勝手で…最低な母親からの最後のお願いよ…。」
「…幸せになりなさい…」

彼女の足元に…カプセルと一緒に虚数空間が開き…堕ちていく…。
「お母さぁあぁぁああぁあぁん!!!!」




・メビウス・

…私は手を力いっぱい握り締めていた。…助けれなかった事と…悔しさで…

「メビウス君…。」
「なの…ちゃん。」

ソッとなのちゃんが私の手を握り、指を一本ずつ優しく離していく。

「落ち込んじゃ駄目だよ。フェイトちゃんの事…支えてあげなくちゃ。」
「…そう…だよね。」

アルフに抱きついて泣きじゃくるフェイトちゃんを、見つめる。
…アルフも…分かってたんだね…。プレシアさんがこういう行動を取るって事が…。
何か言葉をかけようとした瞬間に、庭園が揺れる!?

「…次元震の活性化か…?至急脱出するぞ!!」
≪ブレイズ、聞こえるか!?厄介な事になった!!≫
≪クロノか、厄介なことってなんだ!?≫
≪第1種…せ…ぐぁぁ!?≫
「おい、クロノ!?クロノ!!…急いで脱出するぞ!!」

焦り気味にブレイズさんが、指示を出す。…クロノさんとの通信がなんで突然切れたんだろう…?
崩壊を始めている庭園内部を私たちは走り出す。堕ちてくる破片は、ガルムが鞭で払いのけてくれるから助かる…!!



庭園 入り口付近。

「ここまでくれば…」
「ぐおおぉぉお!!!」
「うぉ!?」

突然、上空から落ちてくる人影。…シルヴァリアス君!?
バリアジャケットがボロボロになっている…!?上空に眼を向けると…

「ジュエルシード…?」

9個のジュエルシードが円陣になってまわっている。そこから、海上の時とは比べ物にならないほどの、魔力があふれ出ていた。

「クロノぉぉ!!」
「ブレイズか…!!他の局員達は退避させた!!君達もすぐに退避…ちぃ…!!」
「うわぁ!?」

魔力流にクロノさんとユーノが吹き飛ばされる!?

「大丈夫ですか?クロノ執務官。」
「しっかりしろよ!!」

けど、地面に激突する前に…シルビーさんとデボラさんが受け止めるのに成功した…。ふぅ、よかったぁ…。

「あらあら~…けど、これは大変な状況ですね。」
「あぁ…最悪の状況だ…!!」
「ブレイズさん…一体…?」

そのとき、ジュエルシードがまばゆく光り始め、回転する。
それが徐々に速くなり…何かを形作るようにして…砕ける…!?

「やはり…奴らか…」
「あぁ…第1種接触禁止目標…。」

そこに現れたのは、2つの人型。1つは男の人の形で…1つは女の人の形をしている。


「戦闘結晶構造体…アジムとゲラン…!!異界の破壊者だ」








帝 閃 所持レアスキル、超演算・思考回路及び処理能力上昇。並行計算速度上昇
なぉ、常に発動しているので、彼の魔力量が少ない原因でもある(現在、本人には使用している自覚はない。)



あとがき

ふははは…閃君も転生者として恥じぬ活躍!!…だと思います。
そして最後の最後で出てきたアジムとゲラン。さて、彼らとどう戦う!?どうする作者!!
遂に…次回で最終回を迎える無印…地味に時間がかかって申し訳ないです…!!
現在、作者の妄想力フィーバー状態ですので…早めに更新したいです!!




Corporal様

画面外と言うか…存在自体、消しちゃったほうがいいと思う、作者です。
IBISの台詞…分かりましたか。カッコいいボスなのに、今一、性能が…泣


ユーロ様

いつかは…その台詞、言っちゃうでしょうね…。主に3期辺りにでも…
お父さんすげぇ!!F-15Eのキーホルダーとか…物凄くうらやましい…。
ラプターのプラモ…俺、この小説書き終わったら、メビウスカラーで作るんだ…。


真っ黒歴史様

母親の愛とはこれほどまでに美しい。そう言う想いが一応、こめられています。
父親は逞しく背中で語り、母親は優しく包み込む。作者の両親論です。苦笑


ダンケ様

一応は…予定ではそのつもりでいました。その方が後々、書きやすいことも出てきますので…主に入学前とか…。
ん~…現金な娘に見えましたか、少し気を付けるようにします。後でアルフとのモフモフ話でも書いて見ましょうか。
リニスは消滅したという事にしてます。使い捨てじゃなくて、寿命とか、そう言うので…。
中二はAKY(あえて 空気 よまない)で突き進みます。本人はあれでなのはが惚れてくれると信じているようです。



[21516] 一期最終話 ただいま、と、おかえりなさい。
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/28 21:41
・メビウス・

「これは…流石に拙いな…。」

ブレイズさんが障壁を展開しながら呟く。アジムとゲランが出現してから、次元震が更に大きくなり、しかも虚数空間に通じる穴が大きく開いてきている。
脱出しようにも、魔力流とアジム、ゲランの攻撃で身動きが取れない状況…!!
ブレイズさん、なのちゃん、ガルム、オメガの4人で強固な障壁を作り上げて、なんとか防御してる状態だ。

「クロノさんにユーノ、大丈夫…?」
「なんとか…だが、魔力が底を付きかけている…。」
「僕も…ごめん、こんな時に…」

私はフィジカルヒールをかけ続ける。2人は、他の武装局員達の退却の時間稼ぎで、ジュエルシードを抑えていたから、既に魔力を使い切ったしまったみたい。

「っ…!!くっそ、特大の来るぞ…!!」
「フェイト!!フォトンランサー使って!!迎撃するよ!!」
「うん!」
「ワームホールを開く!!そこに叩き込め!!」

ゲランが腕を振るうと、幾条ものエネルギー弾がこちらに向かって襲い掛かってくる。流石に…あれを食らったら拙い。
すぐにブレイズさんが、小型のワームホールを開いて、私のランチャーと、フェイトのフォトンランサーを転移させエネルギー弾と相殺させる。
ワームホール自体で、エネルギー弾を無効化すればいいんだろうけど、魔力の消費が高くて今の状況では使いにくいらしい。

≪エイミィ!転移は出来ないのか?≫
≪無理だよ!時空軸が滅茶苦茶で転移させても、別な所に行っちゃう可能性があるよ!!≫
「本当に…打つ手なしですわね…。」
「だったら早い話、総攻撃かければ可能性あるんじゃないか?」
「駄目よ。これだけの魔力流が起きてると、私達の装甲じゃ持たないわ。」

デボラさんの提案をシルビーさんが一蹴する。…正直、3姉妹さん達と私やフェイトちゃんの装甲は…かなり薄い。
私は、エクスがシールド形態にもなれるけど、逆に速度が低下するから、大して意味がない。
今は速攻でアジム、ゲランを無力化しないといけないから…。
…けど、デボラさんの言う通り、攻撃を仕掛けなければどうにもならないのは確かだ。

「…メビウス、お前なら、全ての攻撃を…回避できるか?」
「………可能性はあると思います。」

ブレイズさんの問いかけに、私は静かに答える。
…エクスの慣性制御をフルに使えば、急制動、急加速を駆使して、攻撃を回避することも出来ると思う。
まぁ、当たったら…文字の如く、終わりなんだけどね。

「まさか…メビウス君、駄目だよ!!危ないよ!!」
「絶対に…駄目!」

まだ何も言ってないんだけど…感じ取ったのか、なのちゃんとフェイトが私を止める。
ん~…こう言う所は鋭いんだから。

≪エイミィ、俺が時空軸をなんとか合わせるから、こいつらを転移させれるか?≫
≪や…やってみるけど…ブレイズ君は大丈夫?≫
≪やるしかないだろ。このまま続けたら、押し負けるか、虚数空間に飲み込まれるのかの2択しかないしな。≫
「…聞いたでしょ?私なら…避けれる可能性があるんだから、オトリ役にはぴったりなんだよ。」
「け…けど、メビウス君1人なんでしょ!?その後、どうやって逃げるの!?」
「お兄ちゃんが行くなら…私も行く…!!」
「なんとかするよ。フェイトも付いてきちゃだめだよ?」

はは…2人して、心配性なんだから…。まぁ、どうやって逃げるか…なんて事は考えてないんだけど…。
こんな所で、終わるなんて絶対にいやだ。まだ母さん達に、フェイトの事を紹介してないし、まだまだやりたい事だってたくさんある。

「スペシネフ、空間制御最大。時空軸強制介入、再構築。」
『イエス、マイロード。』
「さてと…エクス、出力最大、リミッター解除。」
『了解です。マスター、ご武運を…』

エクスのリミッターを解除すると、淡く蒼い光が私の周りに集まってくる。
未だに泣きそうなフェイトと心配しているなのちゃんを交互に撫でて、私は障壁の外に歩き出す。
ブレイズさんも隣に並んで、スペシネフを構えている。

「メビウス君!!」

なのちゃんの呼び声に、軽く手を上げて…私は一気に加速して宙に舞う。
魔力流を減速して、やり過ごす。アジムが腕を突き出すと、巨大なエネルギー弾が私に向かって放たれる。

「時空…固定!!いまだ!!」

ブレイズさんがエネルギー弾をスペシネフで両断し、その衝撃波を開いたワームホールに無理やり叩き込んで内部で爆発させる。
その影響でなのか次元震が一瞬静まった。それを確認したエイミィさんがなのちゃん達の回りに転移陣を開いて、アースラへと導いていく。

「レイジングハート…!!お願い!!」
「バルディッシュ!!」

転移させられる寸前に、なのちゃんとフェイトがアジムとゲランにバインドを使ってくれた。まったく…本当に優しいんだから…。

「これは…好機かもしれない。」
「…どう言うことですか?」
「どうやら奴らは、完璧に具現化してないようだ。通常なら、バインドなんて直ぐに引き剥がされるはずだからな。」
「倒せるって…事ですか?」
「いや、現状では倒す事は不可能だ。しかし、虚数空間に押し戻せるだけなら…或いは。…その為には、奴らの構造体を更に減少させないといけないがな。」
「ここで放って置いたら、無差別に攻撃を繰り返すんですよね。なら…やるしかないですよ…!!」
「あぁ!」

ブレイズさんはゲランに、私はアジムへと向かっていく。
大体の攻撃パターンは読めている。腕を振るったときに来るエネルギー弾の1つをエクスで切断して、更に速度を上げる。
攻撃は少し大振りなのが多いのが、せめてもの救いだったよ!!
追尾してくるエネルギー弾は、ぎりぎりまで引き付けて、すれ違うようにして回避して、後ろに回ったところをソードウェーブで撃破!!
一瞬、弾幕が途切れたのを見過ごさずに、ランチャーを撃ち込めば…

「よし…!!確かに外郭が割れた!」

っと…!!こちらに向かってくる魔力流を真横にスライドして回避する。なるほど…魔力流もあいつらの攻撃手段って事か…!!
また放たれるエネルギー弾…、こんどは追尾性能が高い…!!
トップスピードでまで速度を上げて、後方から追尾してきたエネルギー弾をバレルロールで避ける…!!
旋回して…周囲にありったけのXLAAを構築して…撃ち出す!!

「XLAA、FOX3!!」

数十発以上のXLAAがアジムへと襲い掛かる。反撃する暇を与えずに、ラジカル・ザッパーで砲撃を加える。
ブレイズさんの方は、シンファクシを使って、連続で魔力弾を叩き込んでいる。そして、大型のチェーンバインドで拘束している所だった。

「いけ…、アークバード!!」

スペシネフの銃口部に魔力が収束し、魔方陣が展開される。その魔方陣を貫くように、圧縮された魔力が撃ち出される。
まるでレーザーの様に圧縮された魔力は、障壁ごとゲラン本体も貫いた。私の方も、弾幕がはれると、アジムが半壊状態になっていた。
これなら…押し戻せるか…?

「開け…時空の扉!!」

ブレイズさんが、2体の後方に巨大なワームホールを開き、バインドを使い、中に引きずり込もうとする。
具現化が中途半端なのと半壊状態が幸いしてか、2体とも反撃はしてこない。

「よし、これなら…ぐぁぁぁぁ…!!」
「ブレイズさん!?」

突然、ブレイズさんが胸元を押さえて苦しみだす。その影響でか、ワームホールが制御下から外れた!?暴走して全てを吸い込んでいくか…!?
しかも…引きずり込もうとしていたバインドも外れて、アジムとゲランが這い出るようにして戻ってこようとしている。

『マイロード、これ以上の侵食率は危険です!!撤退を!!』
「よりによって…こんな時に…!!」
≪ブレイズ君、今すぐ撤退しなさい!!≫
「しかし…艦長。」
≪これは命令よ!!これ以上続けては危険だわ、メビウス君も撤退して!!≫

リンディさんから通信が入る。その声は、焦りと心配に満ちている。確かに…ブレイズさんがこの状況じゃ…どうにもならない。
けど…ここでアジムとゲランを倒しておかないと…近い私達の世界にまで影響が起きる。それだけは…絶対にいやだ…!!

「…いえ、最後まで…やります。」
≪メビウス君!?分かっているの!?もう、この空間は崩壊するの、貴方まで巻き込まれるわ!!≫
「あいつらを…倒せば問題はないんでしょう?今なら…出来ます!!」
「…艦長、ここは彼に…託しましょう。何より、あいつらを倒さないと…メビウス達の世界も危ない…。それが分かっているんですよ。」
≪…………≫
「一撃です。それでだめなら…あきらめます。」
≪…分かったわ。ただし、必ず無事に帰ってくる事。…なのはさん達も心配してるのよ。≫
「了解です。…ブレイズさんも、撤退してください。」
「最後の最後まで…すまないな。」

ブレイズさんが転移するのを確認すると、私はアジムとゲランに向き直る。

「エクス、…やろうか。」
『はい、マスター。』

ソッと私は空を見上げる。…力を…貸して…!!





アースラ艦橋

「ブレイズ、大丈夫か…?」
「あぁ…なんとかな。お互い、満身創痍だな。」

包帯を巻いたクロノと青い顔をしたブレイズ。艦橋に付くと、緊張感に包まれていた。
正面のモニターに移るのは、蒼い少年、メビウス。その姿を心配そうに見つめ、祈るようにしている2人の少女、なのはとフェイト。
少年が対峙するのは、異界の破壊者、アジムとゲラン。

「メビウス君、お願い…神様…!!」
「………ずっと一緒にいるっていったんだから…帰ってきて…!!」

2人の祈りの言葉。親友であるオメガ、閃、ユーノも静かに見守っている。
願いは1つ、少年の無事の生還。

「…エクス、フルドライブ…!!」

メビウスが静かにエクスに命じると、ラジカル・ザッパーのように砲身が伸びるが、その長さは倍になっている。
そこに収束される蒼い魔力。周りの空間からも、徐々に集まり、光を増していく。

「え…うそ!?」
「どうした、エイミィ?」
「め…メビウス君の魔力が…測定不能…!?」
「いや、前もそうだったんだろ?」
「そうなんだけど…今回は一瞬で、メーターを振り切っちゃったよ!!」
「なに…!?」

クロノが慌てて、エイミィの前にあるメーターを確認する。そこに移る文字は測定不能。
以前から、メビウスの魔力は計れなかったが、正確な量が分からないだけで、測定はある程度可能だった。
しかし、今回は文字の如く、測定不能。そう、彼の魔力がまったく分からないのだ。

「…ソラノカケラ…ですね。」
「ソラノカケラ…?」

メビウスの従者たるガルムが零した言葉に、なのはが反応を示す。

「メビウス様の所持するレアスキルです。…ソラノカケラと名づけていましたね。」
「レアスキルだと…?」
「ソラノカケラ。メビウス様は、常に空と言う空間から、魔力が供給され続けているのですよ。」
「空から…常にって…、つまり、空がある限り…メビウスの魔力は無限と…言う事か…?」
「そう解釈しても良いでしょう。…もっと簡単に言えば…【空】がメビウス様のリンカーコア…と言えるでしょうね。」
「…デタラメも良いところだ。」

驚くクロノとブレイズ。その反応は最もだろう。メビウスの輪、無限を表す輪の如く、彼の魔力は無限なのだ。
ある意味で、卑怯極まりないレアスキルである。

「…その結果が、あの魔法か。」

閃がモニターを見て、つぶやく。
超巨大な砲身になっているエクスに収束する魔力。だが、全てが集まるわけでもなく、メビウスの周りにこぼれていくのも存在する。
しかし、それは霧散する訳でもなく、球体として収束し、彼の周りを漂っている。
それが10、20と収束するたびに増えていく。それが収まる頃には…彼の最強の広域殲滅魔法は…完成していた。

「これで…最後だ。…堕ちろぉぉぉぉ!!ユリシィィィィィィズ!!!!!!!!」

発動キーと共に放たれる、蒼い極光、その姿は、まさに流星群。その全ての魔力がアジムとゲランを飲み込み…ワームホールすら消滅させていく。
蒼い極光が収まれば、全てが消え、ただ1人、メビウスが…静かに漂っているだけだった…。







・閃・

メビウスがアジムとゲランを撃破して、帰還すれば、歓声が上がっていた。
そりゃそうだろ。途中まで、ブレイズと協力してたとはいえ、接触禁止目標を1人で撃破したんだ。
局員達に揉みくちゃにされた後で、なのは、フェイトに泣き顔で、抱きつかれて困ったように笑ってたよ。
ちなみに、俺は背中を思いっきり、叩いた。心配かけさせやがって…。とここで終わりなら良かったんだが…

「ふざけるな!!そいつは犯罪者だぞ!!」
「それでも、情状酌量の余地はあるはずだ!!」

艦橋に響く声、神経質そうなのがシルヴァリアスで、もう1つはメビウスの声だ。
内容はもちろん、フェイトの処遇についてだ。ち…医務室で眠ってりゃ良いのに、今更出てきやがって…。

「しかも、クローンだ!!人間じゃないんだ!!すぐに消すべきだろうが!!」
「そんな事は、関係ない!!フェイトは1人の人間で、私の家族だ!!」
「貴様ぁぁ!!そいつに家族なんて居ないんだよ!!母親にすら、捨てられた化け物だぞ!!??」
「そんな事無い!!フェイトちゃんは捨てられてないよ!!どうして分からないの!?」
「なのは、君はそいつに騙されてるんだ!!そいつのせいで、アジムとかゲランて言う化け物が現れたんだよ!?」

…さっきから、好き勝手言いやがる。本気で反吐が出そうだな。第一、アジムとかは関係ないだろ。
メビウスとなのはがフェイトを庇うようにして立ってなければ、すぐにでも攻撃しそうな勢いだ。
フェイトも…何もいわずに、健気に我慢してるな。アルフはガルムが何とか押さえつけているから良いけど…。
そう言えば…クロノ達は?艦橋内に視線を巡らせると、艦長席の辺りで、何か話し合っている…?

「クロノ!!貴様もそう思うだろ!!」
「…お前に呼び捨てにされる覚えはないんだが…確かに、犯罪者は…処罰しないといけないだろうな。」
「クロノさん!?」
「ふん、ほらみろ、僕の言ったとおりだ!!今すぐ、フェイト・テスタロッサをこちらに…」
「…ん?なぜ、彼女が犯罪者なんだ?」

シルヴァリアスの言葉に、わざとらしく驚いてみせるクロノ。…ちなみに、これには俺やリリンも一枚かんでいる。
さて、これからどういった反応をしめすのか…楽しみだ。

「は…なにを言ってるんだ!?後ろのそいつがフェイト・テスタロッサだろ!?」
「君こそ、なにを言ってるんだ?彼女は…フェイト・T・ランスロット。…メビウスの妹だろう?」
「な…に…!?」

ああ、もう駄目。笑いがこらえられない。シルヴァリアスの動きが一瞬止まる。メビウス達も、驚いた表情をしているが、俺が目配せをする。
そう…フェイト・テスタロッサと言う人間は…確かに存在しない。その代わり、フェイト・T・ランスロット…という少女なら存在する。
…プレシアの最後の願い、それが…聞き届けられたって事だな。

「ふ…ふざけるな!!貴様ら、僕を馬鹿にしてるのか!!??」
「静かにしろ、今、通信が入っているんだ。」

ブレイズが無視して、モニターに映像を映す。誰からだ…って…は?

「やぁ、クロノ君、ブレイズ君、久しぶりだね。」
「…ハーリング提督、お久しぶりです。」

モニターに男性が移った瞬間、艦橋に居た全局員が敬礼を返す。
…しかも、ハーリングって…まさか…ビンセント・ハーリング!!??大統領!?
俺が知っている大統領より少し若いが…確かに面影がある。…一体、とう言う世界なんだよ…。

「お久しぶりですわ、ハーリングおじ様。」
「おじ様ぁぁ!!??」
「やぁ、リリン、元気そうだね。」

スカートの両裾を持って、優雅に一礼するリリンとにこやかに笑うハーリング提督。
…えっと…どう言う関係なんだ…?

「君が…帝 閃君だね。」
「え、はい。そうですけど…」
「ははは。驚かせてすまない。私はビンセント・ハーリング。君の父上や彼女の父上とは友人でね。よろしく頼むよ。」
「…は…はい。」

笑いかけるハーリング提督。それを見た俺は、確実に固まっただろう。
いや…だって、仕方がないだろ。あの笑顔は卑怯だって…メビウス以上のニコポだぞ。無条件で膝を付いて、忠誠を誓いたくなるって。

「おい!!僕を無視するな!!」
「君は、シルヴァリアス君だね?」
「あぁ、そうだ!!ハーリングとか言ったな!!こいつらの上司なら、なんとか言え!!」
「ほぉ、なにをだね?」
「こいつらがフェイト・テスタロッサを庇ってるんだよ!!犯罪者には正義の鉄槌を与えるべきだ!!」
「…はて?フェイト・テスタロッサとは…誰のことかな?私の所には、フェイト・T・ランスロットと言う少女が協力者として参加してくれた事なら届いているが?」

そういって惚けるのを見る限り…なるほど、ここまで根回しが出来てるって事か…。
ブレイズを見れば、軽く笑っている。流石は…未来の英雄。やることが凄いな。

「き…貴様も無能か!?」
「無能は…貴方ではありませんの?」
「あ゛あ゛!?」
「1人でなにを喚いてるかと思えば…居ない人間の事を何時までも言ってますの?」

あの…リリンさん?なんか…黒いオーラ出てるんですが…?

「それじゃなにか?こいつがフェイト・T・ランスロットって言う証拠があるのか!?」
「はい、ありますわ。我がフレッシュリフォー社が後見人ですもの。それ以上の証拠がありまして?」
「ふむ、フレッシュリフォー社が保障してくれるのなら、安心だ。それで言いかね、シルヴァリアス君?」
「言い訳あるかぁ…!!貴様もばかか…!!」
「そろそろ…黙れ。」

まだ何か喚こうとしているシルヴァリアスを、ブレイズが見事な背負い投げて沈めて、片腕をひねり上げる。

「ききき…貴様!!なにをする!!」
「犯罪者は…処罰すべきなんだろう?クロノ。」
「シルヴァリアス・ゴッテンシュタイナー。現時刻を持って、名誉毀損、器物破損及び傷害罪と公務執行妨害の罪で、管理局執務官権限で逮捕する。」
「はぁぁぁぁ!!??」

クロノが宣言すると、数名の武装局員がシルヴァリアスを羽交い絞めにする。
…凄いな。本当にドラマみたいな感じになってるぞ…。

「僕が何時、そんなことをした!?」
「…フェイトに攻撃、及び、殺傷設定でのメビウスとの戦闘。そして、停戦勧告を行っているブレイズへの攻撃。それに、彼らに対する暴言の数々。更に、先の無断出撃で転移ポートの一部が破損。挙句、無差別に魔法を使った結果、数名の武装局員が負傷した。…どこをどう見ても…立派な犯罪者だ。」
「ら…ランスロットだって僕に攻撃しただろ!?」
「彼等は、今回の事件解決に尽力、更にアジム、ゲランの撃破に多大な貢献をしてくれた。よって…まぁ、厳重注意だけだろうな。連れて行け!!」
「なのは…心配しないで、僕はすぐに戻ってくるから…!!」
「…二度と、なのちゃんと…フェイトに近づくな。…もし近づいたら…」
「メビウス、それ以上は脅迫罪だ。我慢しろ。」

シルヴァリアスが、なのはに何か言おうとしたのをメビウスが遮る。その眼は…殺意と憎悪に満ちている。…こいつには似合わない感情だな。
連行されていくシルヴァリアスを全員が、視界に移らないようにしている。最後まで何か喚いていたけど…とのあえず、無視だな。
画面でハーリング提督も困ったように笑っていたが、すぐにメビウスに視線を移した。

「メビウス君…だね?」
「あ、はい。」
「なるほど、良い眼をしている。君の父上や母上と同じ…空の瞳だ。」
「……フェイトの事…ありがとうございます…!!」
「ありがとう…ございます…!!」

深々と頭を下げるメビウスとフェイト。その眼には涙が浮かんでいる。それまでに…嬉しかったんだろうな。
それを満足げに見て提督はうなずく。

「もっとゆっくり話したいが…時間がなくてね、すまない。…後でこちらに遊びにおいで、美味しいお茶と菓子を用意して待って居よう。もちろん、皆で来なさい。」
「はい…!!」

皆、気が付けば、笑顔を浮かべていた。なのはとフェイトは抱き合って喜んで、メビウスとオメガ、ユーノは笑顔で、俺の周りに集まってくる。
リンディさんや、ブレイズとクロノもそんな俺達を眺めて、嬉しそうに笑っていた。
こうして…俺達の長くて短いような…PT事件は幕を閉じた…。






・メビウス・

「ただいま~。」
「お…お邪魔します。」

緊張気味に、家に入ってくるフェイト。あの後、色々な手続きとかあって大変だったけど…フェイトは晴れて、私の妹という事になった。
聞いた話では、既に父さん達が話を付けておいてくれたらしくて…本当に助かった。

「お、いい匂いがするね。」

アルフり言うとおり、扉を開けると、凄くいい匂いが漂ってきた。その匂いと一緒にパタパタと聞こえてくる足音、母さんだ。

「メビウスちゃん、フェイトちゃん。おかえりなさい~♪」
「うん、ただいまって…母さん…苦しい。」

いきなり私を抱きしめる母さん、流石に…いきなりで驚いたし…苦しい。
フェイトも、眼を丸くしてる。

「あ…えと、…サイファーさん…ですよね?これからよろしくお願いします。」
「サイファー…さん…?あぁ…!!」
「…え!?」
「どうした、サイファー?」

フェイトとが挨拶するけど…なぜか。母さんか悲しそうな顔をして…崩れた!?
その音に気が付いたのか、父さんもリビングから出てきた。…オタマもってるって事は…今日は父さんの料理か。

「あぁ…フェイス…!!フェイトが反抗期よ!!私の事、サイファーさんだなんて…!!しかも、よろしくお願いしますって…!!」
「…難しい年頃だからな…。しかし、それは悲しいな…」

そう言って、母さんの肩に手を置いて慰める父さん。えっと…なにこの寸劇…?
まぁ、言いたいことは…分かる。未だに訳が分からずに混乱しているフェイトの手を私は握る。

「お兄ちゃん…?」
「フェイト、違うでしょ?…ここは私達の家。…それで、今帰ってきたんだよ。なら、言うことは…1つでしょ?」
「あ……た…ただいま…?」
「うん。おかえりなさい、フェイト。」
「おかえりなさい♪フェイトちゃん♪ああもぅ、可愛いわ~。」
「おかえりフェイト。さぁ、お腹も減っただろう?食事にしよう。」
「…うん…!!お父さん、お母さん…それに、お兄ちゃん…!!」

返事をするフェイトの顔は…まっすぐで…凄く綺麗な笑顔だった…。






あとがき

このような駄文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。
無印はここで終了となります。ここまで読んでくださった読者様には、感謝しても仕切れないです。
最後の最後まで、グダグダでしたが…楽しんでいただけたでしょうか?
ここまで書いて多数の反省点があると思いますが…1つずつ直していけるように努力していきます。
次回からは、フェイト祭りと2期までの物語を計画しております。
これからも、習作 リリカルなのは×ACE COMBAT ×色々&オリ主&転生キャラ と、作者 へタレイヴンをよろしくお願い致します。
では……タイトル…考えないといけないですね。




[21516] ランスロット家温泉旅行記 家族団欒 ポロリもあるよ!!その1
Name: ヘタレイヴン◆68301820 ID:6f3e2b37
Date: 2011/01/29 18:35
「そうだ!!温泉に行きましょう!!」
「…はぁ!?」

フェイトがランスロット家の一員になって数日が立ったある日の夕食。
唐突にサイファーが提案をする。

「えっと…お母さん、どうして温泉?」
「だって、フェイトちゃん。まだ学校の転入手続きまで時間があるでしょ?学校に行くようになると、家族団欒の時間も、少し減っちゃうと思うのよ!!
そして、日本には裸のお付き合いって言うことわざもあるくらいだからね!!だから転入前に、みんなで温泉に行って絆を深めたいもの!!それに、私も行ってみたいし!!」
「あの…母さん、私は学校在るんだけど…」
「休みなさい!!」
「ちょ…!?」

最もなメビウスの意見を、笑顔で切り捨てながら、サイファーは何故か新幹線の時刻表をチェックする。

「そうと決まれば、明日は速いわよ!!みんな4時起きね!」
「待て待て、サイファー!!一体、どこの温泉に行く気だ!?」

スカーフェイスが慌てて、サイファーに問い詰める。当然だろう、彼はてっきり、すぐ近くの海鳴温泉に行くと思っていたのだ。
だが、彼女は笑顔でテレビを指差した

「ここよ!!凄く景色もよさそうだし!!」
「……おいおい。冗談だろう…?」
「ふわぁ~。お兄ちゃん、楽しみだね!」
「…あの、私、学校…」

「東北で一番高いところにある温泉!!源泉かけ流し!!眺めも最高!!」

…東北は岩手県にある…ある温泉のCMが流れていた。


【ランスロット家温泉旅行記。家族団欒、ポロリもあるよ!!】


「……眠い。」
「アルフ、寝るな。」
「ガルムごめん。ちょっと…寝る。」
「ちっ…支えてるから、気をつけろ。」
「ありがと……。」

ガルムが立って寝そうなアルフを支えながら、荷物を下に置く。
現在、ランスロット家は新幹線の駅に勢ぞろいしていた。前日にいきなり決まった旅行であり、荷造りも時間がかかってしまったのだ。
そして、朝4時起きと言うかなり厳しいタイムスケジュール。正直、ガルムも気を抜けば、睡魔に負けそうな状況だ。
現に、メビウスとフェイトはベンチに座り、寄り添うようにして眠っている。流石に、9歳にはつらい時間帯でもある。
だが、1人元気な人物も居る。

「ん~…!!気持ち良い朝ね!!」
「…周りは未だに薄暗いがな…。」

自分の妻であるサイファーの元気さに呆れながら、眠気覚ましのコーヒーを飲むスカーフェイス。実はサイファー、興奮して一睡もしてないそうだ。
まるで遠足前の小学生である。

「しかし…岩手県か。…名産はなんだったか…。」
「やっぱり前沢牛に、三陸海岸の海の幸じゃないかしら?」
「後で高町家にも、お土産を買って帰らないとな。」
「そうねぇ、なのはちゃんから、メビウスちゃんを取っちゃったものね。フェイトちゃんは、喜んでくれたけど。」
「…すぅすぅ…」
「くぅ…。」
「ふふ、本当に可愛いわ♪」

静かに眠るメビウスとフェイトの頭を笑顔で撫でるサイファー。少しくすぐったかったのか、フェイトは身じろぎをして、更にメビウスにくっついていく。
それを見て、スカーフェイスも笑みを深くする。優しい息子と可愛らしい娘。彼らにとって、掛け替えの無い宝物だ。

「さて、そろそろ時間だな。ほら、2人とも起きろ。」
「ふへ…?…時間…?」
「すぅ…すぅ…」


東北新幹線内部


「…眠い。」
「なんだい?今度はガルムの番か?」
「あのな…我が支えてたお陰だというのに…えぇい、寝る、起こすなよ。」
「はいはい。まっ、ゆっくり寝てな。」

隣のアルフに視線を送り、ガルムが椅子に深く腰掛ける。
新幹線に乗れ込み、一路岩手県に向けて出発したのだ。席の割り当ては、サイファーとスカーフェイス、メビウスとフェイト、そしてガルムとアルフである。
やはり、フェイトはまだ眠いのか、メビウスの肩に頭をチョコンと乗せて、夢の中に居る。メビウスは、持ってきた本を読みながら、動かないようにしている。
サイファーとスカーフェイスも、パンフレットを読みながら、旅行の計画などを考えているところだった。
ソッとガルムを起こさないように、アルフは顔を覗き込む。

(へぇ、結構、綺麗な顔してんだね。)

何時ものガルムと違い、安心しきった寝顔を、不思議そうに見つめるアルフ。
メビウスの傍に居るときは、常に周囲を警戒している彼なのだが、今はみんなが傍に居るということもあってか、完全に熟睡していた。
アルフはその顔を少し見つめた後に座りなおし、フェイトと同じようにガルムの肩に頭を乗せて、眼を閉じた。
なんとなく…やってみたい気分になったようだ。最も、少し顔が赤くなって入るようだが…。

(…なんだか、いい夢が見れそうだよ…ガルム…。)



「…んん…ふにゃ…。」
「…ふふ、フェイト。」
「ん~…。」

メビウスが小さく笑って、名前を呼んで頭を撫でれば、満足げに再び眠りにつきフェイト。頭を撫でれば、金の髪がサラサラと指の間を流れる。
再び、メビウスは持っている本に視線を戻し、大切な妹を起こさないように静かにページをめくり、続きを読み始める。

「お兄…ちゃん…。」
「ん?」
「すぅ…すぅ。」

呼ばれて反応してみれば、どうやら寝言のようだ。くっ付いているからか、その顔は安心しきっている。
メビウスも本にしおりを挟み、眼を閉じる。フェイトの寝顔を見ていたら、自分もまた眠たくなってきたのだ。
小さくあくびをしながら、メビウスも夢の世界に旅立つことにした。



「やれやれ。我が家の子供と使い魔達はみんな、夢の世界…か。」
「ふふ。仕方がないわよ。朝早いもの。」
「……」

一瞬、誰の立てた計画だ。と、突っ込みたくなったスカーフェイスだが、そんな事を言えば、笑顔で色々とされるので黙っておくことにした。
彼女の笑顔の圧力は…凄まじい。

「しかし、レンタカーまで準備してるとは…何時の間に…。」
「そうと決まったら即行動よ!!」
「…無計画な一面もあった気もするが…。もっと事前に教えてくれればよかったのに。」

ため息をつきながら、パンフレットを捲るスカーフェイス。…これもサイファーが準備してたのだが、一体何時から行く気だったのだろうか。

「しかし、二泊三日とはね…。」
「そうよ~。久々の家族旅行、思いっきり満喫しなきゃ!!まずはリアルグルメレースをやって…あ!!わんこ蕎麦大会があるじゃないの!!」
「…それだけはやめろ。というか、止めてくれ…」

本日、10回以上のため息を付いているスカーフェイス。ため息をつくと幸せが逃げる…とよく言われているが、恐らく迷信だろう。
何故か?理由は簡単だ。こんな事を言っているが、彼は今、最高に幸せだからだ。
愛する妻と大切な息子、娘。頼りにしている使い魔達。家族で一緒に居ることが…彼にとって何よりの幸せだ。






「さぁ、着いたわよ!!岩手県!!」
「か…母さん、周りに人が見てるよ。」

両手を挙げて、宣言するサイファーを顔を赤くしながら止めるメビウス。…流石に恥かしいようだ。
スカーフェイスとガルムは他人の振りをしながら、レンタカーに荷物を積み込んでいた。息子に頼らずに止めてやれ。

「フェイト、フェイト。なんだか珍しいのがあるよ?」
「あ…本当だ。玉子…?」
「お菓子みたいだよ。へぇ、おもしろいねぇ。お、試食があるから、食べてみるかい?」
「うん。あ…甘くておいしい。」


フェイトとアルフは着いて早々に、駅のお土産コーナーを見てまわっていた。
文字の如く、初めての旅行なのだ。お土産探しも、旅の醍醐味である。

「さぁ!!メビウスちゃんも一緒に!!着いたぞー!!」
「え…えぇ!?」
「はい!!ついたぞー!!」
「つ…着いたぞ~…。」
『マスター…恥ずかしそうにしながらもやるのですね…。……録画録画…。』

顔を真っ赤にしながらも、サイファーと一緒に叫ぶメビウス。…親子である。

「メビウス様…可哀想に…」
「…すまない。」

いや、だから止めてやれ。



・レンタカー・

本日、僕が乗せるお客様は、とても元気なお母さんと、静かなお父さん、そして、可愛い子供さん達と…犬?
人間と同じ姿をしてるけど…まぁ、お客様には代わりありません。僕のお仕事は、みんなを運ぶことですから。

「いざ!!山登り!!」
「…本当に疲れ知らずだな。」
「お兄ちゃん、顔真っ赤だよ…大丈夫?」
「フェイト、なんでもないよ、大丈夫…だと思う。」

男との子は、さっきお母さんと一緒にやったことが恥かしいのか、顔が真っ赤になっています。僕が見てて、珍しい光景でした。
女の子は、そんな男の子、お兄ちゃんが心配なのか顔を扇いであげたり、飲み物を渡したりと、甲斐甲斐しくお世話をしてあげてます。
凄く仲が良いんですね。

「ガルム、あれってなんだい?」
「あれは…」

一番後ろに座っている女性が、隣に居る男性に街中の珍しいものを指差して、質問をしています。
男性も邪険にせずに答えてあげてますから、こちらも仲は良いみたいですね。…恋人同士とは…少し違う気がします。

『………』

すると、男の子のペンダントさんが、ジッと僕を見つめてきます。なんだか、同族の気がします。

『始めまして。エクスです。今回はよろしくお願いしますね。』
あ、どうも。僕はレンタカーです。レン太って呼んでください。
『レン太…。分かりました。』
なんだか賑やかな家族ですね。
『そう思いますか?』
はい、僕も結構レンタカーしてますけど、ここまで賑やかなのも久々です。初めての旅行ですか?
『そうですね。フェイト様とアルフ、女の子がフェイト様で、後ろの女性がアルフです。家族になった記念で旅行をすることになったんですよ。』
へぇ~。そうなんですか。家族になった記念…良いじゃないですか。
『えぇ。実は私も始めての旅行なんですよ。柄にもなく楽しみで仕方ありません。』
ここはいいところですよ~。緑も多くて、美味しいものも沢山あります。ご紹介しましょうか?
『それじゃ、お願いします。』


僕はエクスさんとお話をしながら、ようやく冬季封鎖が解除された山道を登っていく。
目的地は、どうやら山の上にある温泉のようです。あそこは見晴らしも良くて、正に天然温泉ですからね。お肌にもいいはずですから。

「自然が一杯だね。」
「うん、…あ、何か動いたよ?」

女の子が男の子と窓の外を眺めて、遠くの何かを見つけたようですね。あぁ、多分、狐かな?ここら辺は、狐や狸が良く出ますから。

「あらぁ。きっと狐じゃないかしら?あ、ほら、こっち向いたわよ?はい、双眼鏡。」
「あ、ありがとうお母さん。…本当だ、可愛いなぁ。」
「そうだね。私も始めてみたよ。」

狐なんてそんな頻繁に見ることないから、僕も得した気分です。ところで、母親さん、…その双眼鏡、何処から出したんです?
更に僕は山道を登って、トンネルを潜る。さぁ、ここから先はとても綺麗な景色ですよ。

「ふわぁ~…凄いよ、お兄ちゃん!!」
「本当だ…雪の壁だ!」
「もう溶けてなくなったかと思っていたが、まだこんなにあったんだな。」

はしゃぐ男の子と女の子。特に女の子は始めてみたからか、男の子の手を凄く引っ張っています。
ふふふ~。有名なところには劣りますが、ここの雪壁凄いんですからね。僕の倍はある高さですから。
山の上にはまだまだ沢山、雪があるからこういう光景が楽しめるんですよ。
山頂に着けば、いい景色が見れますからね。


・山頂・

「凄い凄い!!父さん、こんなに空が近いよ!!」
「雪も沢山残ってる…、きれい…。」

はしゃぐメビウスと、残っている雪に触るフェイト。流石はソラノカケラを持つ少年。空に近いだけで、かなり元気になるようだ。
山頂の施設で休憩をとることにしたランスロット一行。周囲には、観光バスや、他の旅行者たちの姿も見える。
まだ地面には雪が残っており、肌寒い。しかし、そんな事はお構い無しに、空を見上げるメビウスと寄り添うフェイト。

「凄いね、ここの空は…凄く澄んでる。」
「そうなの?」
「うん。あぁ、こんな空を飛べたら…気持ち良いだろうなぁ。」
「ふふ、お兄ちゃん、すごくはしゃいでる。」
「そう言うフェイトだって、雪を見てはしゃいでだでしょ?」
「あう…。そうだけど、初めての旅行だし…」
「あはは、冗談だよ。けど…ん~、いい気分だよ。」

眼を閉じて背伸びをするメビウス。そんな2人を眺めて笑う彼等の両親。
ガルムとアルフは休憩所に行き、人数分の飲み物を買っているところだ。

「つれて着て、よかったわね。」
「あぁ、フェイトも喜んでくれてるみたいだからな。」
「メビウスちゃんと一緒なのが…良いのかもしれないわね。」

どちらからともなく手をつないで、景色を眺める子供達を見てサイファーは思う。
自分がこんな暖かい家庭をもてるなんて…夢にも思わなかった。きっと、夫のお陰だろう、とその横顔を見つめるのだった、

「くしゅん…」
「あ、フェイト、寒い?なかに戻ろうか?」

小さくフェイトがくしゃみをする。やはり雪が残っているだけあって、山頂は寒いようだ。
しかし、フェイトは首を振って、メビウスの腕をつかんで、もっと寄り添うようにした。

「こうしてれば…暖かいから…。」
「そう?けど、無理しないですね。」
「うん…。」

肩に頭を乗せて、フェイトは幸せそうに笑顔を浮かべていた。




「…なんか、変な匂いがする。」
「硫黄の匂いだな。大丈夫か?」
「うん、少し鼻がむずむずするけど、大丈夫だよ。」

山頂から出発し、少し進むと感じる硫黄の香り。いち早く、匂いを感じ取ったのは、やはりガルムとアルフだった。
流石に嗅覚は優れているようだ。確かに、少し向こうから湯気が立ち上っているのが見える。

「あれって…温泉!?」
「海鳴の温泉と違う…。本当に湧き出てる。」

メビウス達も驚いている。ここは源泉がすぐ傍に、見えるところにあるのだ。
そして、硫黄の匂いも強く、まさに天然温泉であり、秘湯。
その先に見える、小さな温泉宿。東北で一番高いところに存在する温泉だ。(実在)
一行は車から降りて、温泉宿を見上げる。ある意味で風情がある。

「あ、荷物は乗せてて良いわよ。泊まるのは下だから~。」

荷物を降ろそうとしたスカーフェイス達を止めて、サイファーは館内に歩き出す。
その後ろを追いかけていくメビウスとフェイト。

「えっと、子供2人と大人4人でお願いします。」
「はい、こちらですね。お昼は12時から2時までとなっております。時間内にきてくださいね。休憩室は向こうですので。」
「ありがとう~。」

受付に軽く礼を言いながら、休憩室に向こう一同。歩くたびに床がギシギシとなるが、造りが悪いわけではないのだろう。
そうでなければ、数10年と東北の雪等に耐えられないはずだ。

「あ…ねぇねぇ、お兄ちゃん、これなに?」
「ん?…山菜や木のマップだね。何処になにがあるのかって、ここに書いてあるんだよ。」

メビウスの手を引っ張って、廊下に張り出されている地図を指差すフェイト。他にも、野鳥や野生動物達の生息地域などが書かれている。
その上には、野花などの写真も飾られており、見ているだけで楽しい。

「しっかし、誰も居ないねぇ。」
「冬季封鎖が解除されたばかりだからな。山頂の観光程度で終わるのだろう。」

ガルムとアルフはタオル等が入ったバッグを休憩所に置き、周りを見渡す。
確かに、彼ら以外、客の姿は見えない。

「ふふふふ…好都合ね…!!そうと決まれば、温泉よ!!」
「…う…寒気が…」

密かに怪しく眼を光らせ、笑みを浮かべるサイファー。そして、売店でお茶を買っていた、スカーフェイスが感じる特大の寒気。


露天風呂


「はふぅ~…最高…。」
「メビウス様、とろけてらっしゃいますね…。」
「まぁ、確かに最高だな。」

男性陣が入っている露天風呂。これがこの温泉の自慢の風呂だ。周囲は大自然ということもあって、何も遮るものはなく、山脈を眺めることが出来る。
そして、上は澄み切った青空に、周囲にはまだ白い雪が残っている。
ここの露天風呂の特徴は、6つの露天風呂を、木の板で出来た通路で結んでいるのだ。しかも、見えるところに、源泉が流れており、それを眺めて楽しむ事も出来る。
そして、白濁した湯のそこには、湯の花が溜まっており、それを身体に塗ることも出来るのだ。

「最初はどうなるかと思ったけど…こんな良い温泉があったんだねぇ…」
「本当だな。天気も良いし、眺めも最高だ。…紅葉時はもっと綺麗だろうな。」
「先ほど、日の出の写真や、星空の写真を見ましたが、とても綺麗でした。ここに一泊しないのが少し残念です。」
「日の出と星空かぁ。見たかったなぁ。」
「また来ればいいさ。今度は、秋にしよう。紅葉もみたいからな。」
「良いの父さん!!」
「あぁ。その場合はまた4時起きだけどな。」

3人で温泉につかりながら、笑いあっている。すると、後ろのほうで扉が開く音が聞こえた
誰か来たのか?と後ろを振り向いたスカーフェイスは…硬直した。

「フェイス~、来たわよ!!」
「なんであんた等がここに!?…って、サイファー!!タオルタオル!!」
「当然よ!!ここは混浴だもの!!」
「え!?こ…混浴!?って、お兄ちゃん!?え…えぇ!?」

そこに居たのは…服を脱いだサイファーと、タオルを巻いたフェイトとアルフ。
石化の魔法を受けたように固まるメビウスとガルムと…

「た…タオルを巻けえぇえぇぇええぇぇぇえ!!!!!!」

スカーフェイスの声が…露天風呂に響き渡っていた。

続く!!




あとがき

やってみたかった、後悔は…してないはずです…。
騙して悪いが東北人なのでな、自慢させてもらおう。

興・千「さぁ、みんなも温泉で、裸のお突き愛を…や・ら・な・い・か?」

ここの温泉は実在します。行ってみてください、本当に気持ちが良いです。作者もお気に入り。年に数回しかいけないですが…。
とりあえず、こんな話を少し続けてから、二期に突入したいと思います。
予定は…立てません。多分、守れる自信ないです…。
次回、明かされるサイファーお母さんのプロポーし(通信途絶。

以降も返信は感想掲示板に載せる事にしました。













おまけ


堕ちる…堕ちる…母と娘は堕ちて行く。
深淵の闇の中…堕ちて行く。
だが…そこに聞こえる…優しき声。

「おい、界…誰か倒れてるぞ?」
「んな訳ないでしょ。誰も呼んでないし…って、なにぃ!?本当に倒れてる!?」
「先ほど、巨大な次元の揺れがありましたから…それに巻き込まれたのでしょうか?」
「時の迷い人…か。…助けるぞ。」
「ふふ!!今こそ、コジマの真髄を見せるとき!!」
「絶対に来るな、お前は絶対に来るな!!」
「……だ…れ…?」

母と娘は消えるはずだった。しかし…世界は見捨てなかった。
この優しき母と…悲しき娘を見捨てずに…世界は界に導いた。
たどり着くは…時の果て。出会うのは…果ての使徒。
そして、この出会いにより…彼らと少年達の運命が交差する。


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