米国でトップレベルの大学院に在籍する日本人留学生らが、後輩たちの留学を支援する「米国大学院学生会」を結成した。留学に消極的な学生の「内向き志向」が指摘される中、危機感を抱いたのが設立の背景にある。同会のメンバーは「日本をもっと元気にするのが究極の目標」と話し、昨年末に国内6大学で説明会を開いたほか、個別相談に応じる。【日下部聡】
米国際教育研究所によると、08年に米国留学していた日本人(高校生以下を除く)は3万人弱。統計が残っている中では最多だった97年の6割まで減少した。
同会の発起人であるマサチューセッツ工科大(MIT)博士課程の小野雅裕さん(28)=宇宙工学=は「中国語を学ぶ米国人が多い。(米国への)留学生自体の数は増えているのに、日本人は減っている。日本の存在感低下への危機感が国内で共有されていない」と話す。小野さんは米航空宇宙局(NASA)で働くのが夢で、MITでの日々は「この上なく充実している」という。
同会は10年7月に発足し、理系中心。説明会やニュースレター発行の他、会に登録した約200人の留学生がマンツーマンで後輩からのメールによる相談に応じる予定。
12月20日夜に東京都新宿区の早稲田大で開かれた説明会は200人余の学生で満席だった。小野さんやスタンフォード大、カリフォルニア大バークリー校で研究生活を送る男女6人が登壇し、世界トップレベルの研究者と身近に接することのできる喜びや、好成績を維持すれば奨学金で生活の不安はないことなどを語った。
慶応大からスタンフォード大博士課程に進んだ郡司まり香さん(27)=材料工学=は「安定って何でしょう?」と問いかけ「日本で安定を求めるより、もっと広い世界に出よう」と訴えた。
学生からの質問は途切れなかった。英語の勉強法を質問した早稲田大基幹理工学部3年の岡田啓太郎さん(21)は、英語が不安で留学を迷っているという。「でも、隣の研究室の先輩がスタンフォードで頑張っていると聞いて『僕もできるかも』と思えてきた」
同会幹事の1人でコロラド大博士課程に留学した東京工業大の坂本啓助教(宇宙工学)は「将来は留学経験者を優先的に採用するよう企業に働きかけるなどの活動もしたい」と抱負を語った。
詳細は会のホームページ(http://gakuiryugaku.net/)。
毎日新聞 2011年1月5日 東京朝刊
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