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息子の障害悩んだ末に 殺人容疑の母、支援団体にも相談

2011年1月30日5時1分

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 東京都立川市で今月、4歳の長男を殺したとして殺人容疑で逮捕された母親。以前から長男の発達障害に悩んでいたことが警視庁立川署の調べで分かった。相談を受けていた友人らは「子どもがかわいそう」「周囲の見えない壁があったのかも」と悔やむ。

 逮捕されたのは鈴木紀子容疑者(35)。今月12日午後1時ごろ、自宅でひも状の布を使い、長男の隆正君の首を絞めて殺害した疑いが持たれている。翌朝、会社員の夫(36)から110番通報があった。容疑者の精神的動揺は大きく、東京地検立川支部は28日、鑑定留置を決めた。4月中旬までの間、責任能力の有無を調べる方針だ。

 「あの人だ」

 発達につまずきがある子やその母親を支援する「かたつむりの会」(東京都八王子市)の代表、西村南海子さん(41)は事件を知り、1年半前のできごとを思い出した。

 立川市で開かれた学習会の自己紹介の場で、順番が来る前に泣き出し、椅子から崩れ落ちそうになった女性がいた。それが鈴木容疑者だった。慌てて廊下に連れ出し、ぽつぽつ語り始めた言葉に耳を傾けた。「子供の障害を受け入れられない」「つらいと思う自分が嫌だ。パパが話を聞いてくれるからいいけど」。そして、自ら言い聞かせるように繰り返していた。

 「明るい、前向きなお母さんになりたい」

 立川市によると、隆正君は1歳半検診で発達障害と診断された。鈴木容疑者はトイレトレーニングがうまくいかない、集団生活に不安がある、と市に相談していた。

 鈴木容疑者は夫と長女(6)、隆正君の4人暮らしだった。犯行当日の午前、いつもの時間に登園しないため、保育園が電話したところ、長女が風邪なので隆正君も休ませると答えたという。逮捕後の調べに、「数日前から、この子は1人になったら生活できないと思うようになった」と供述しているという。

 隆正君は保育園で、部屋から飛び出すなど落ち着きのない時もあった。それでも、お菓子を友達にあげたり、以前よりも話せる言葉が増えたりしていた。

 保育園の保護者や支援グループのメンバーは、鈴木容疑者が保育士らの話に、うなずきながら聴き入る姿が記憶に残っている。周囲に積極的に交じるタイプではなく、最近の様子に大きな変化は見られなかった。ただ、保育園と交わす連絡帳の記述量は減っていたという。

 「かたつむりの会」の西村さんは、会員向けのメールで「支えられなかった」と自責の念を記した。30通以上のメールが会員の間を駆けめぐった。「紙一重の自分の姿です」「私も世界でひとりぼっち」「もっと強くなりたい。そしていつも子供の味方でいたい」「母親がどんなにつらかったか。そして信頼していた母親に。涙が止まらない」

 鈴木容疑者の夫は取材に対し、「まだ混乱している。頑張るしかない」と言葉少なに話した。(舟橋宏太、根岸拓朗)

    ◇

 〈発達障害〉 先天的な脳の機能障害とされる。他人の感情を読み取りにくかったり言葉の発達が遅れたりするコミュニケーションの障害▽読み書き計算などの学習の障害▽じっと待つことが苦手で、注意力が散漫――など様々な症状がある。状況に応じた適切な行動を増やす行動療法、ロールプレー、投薬などの治療で症状は緩和できる。文部科学省の2002年の調査では、小中学校の通常学級に発達障害とみられる子どもが6.3%いた。05年4月施行の発達障害者支援法では、発達障害の早期発見と支援を国と自治体の責務と位置づけた。

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