「千の風になって」の記事では、美しすぎることを書いてしまいました。
いささか赤面です。
さて、今回はいきなり不条理ともいえる現実を思いしらされた出来事。
イギリス人英会話教師・リンゼイさん殺害容疑で2年7ヶ月逃亡生活を続けていた市橋達也容疑者が逮捕されました。
きっかけは、市橋容疑者に整形手術を施した美容整形外科の警察への情報提供、市橋容疑者が偽名で働いていた建設会社からの情報提供、それに沖縄へのフェリー会社の職員の通報。この三つが逮捕の決め手になったことは周知ですね。
ところが、この市橋容疑者を犯人とは知らずに雇っていた建設会社へのバッシングがひどい、といいます。
【警察に通報があだ、取引停止も 市橋容疑者勤務の建設会社(中日新聞)】
「通報すれば事業に支障が出るのではと社員たちが話し合ったが『社会人の義務』と警察に連絡を取った」とのこと。
整形外科医でも、最初は市橋と気がつかなかったというから、雇った建設会社に全面的に非があるとはいえないでしょう。むしろ、自分の不利益を承知しながら通報した建設会社の社員の方々の「責任感」に感謝すべきではないのでしょうか。
これと似たような事例として、「西宮冷蔵」の水谷洋一社長が受けた世間からの「仕打ち」についてテレビで報道されていました。
兵庫県西宮市の倉庫会社・西宮冷蔵の水谷社長は、
「2002年1月に雪印食品の牛肉偽装を告発するが、自身も在庫証明書を改竄する等偽装に加担したとして国から7日間の営業停止命令を受ける。以後取引は激減し2002年11月に休業に陥る」。wikiより。
水谷社長も、最初は雪印食品の犯罪行為に気づかなかったようですね。しかし、どうも倉庫の出入状況に不均衡がある、と疑問を持ち、調べていったら偽装であることを確信した、というようです。
「雪印ブランド」といえば食品業界の天皇です。なかなか逆らえない。牛肉偽装の事実がはっきりしてからは、告発するかどうか思案を重ねたものの、持ち前の正義感から告発に踏み切ったわけです。この事件が表面化したことによって、雪印食品はつぶれ、下請けの多くの会社も倒産の憂き目に遭ったのです。
まず、消費者として、市民として考えなければならないのは、なぜ真っ先に雪印の偽装を摘発しなけれぱならなかった監督官庁の怠慢については責められば、民間の真面目な業者が、その責をすべて負わされるのか。
もっとも消費者の安全を考え、消費者の利益を考えたのは西宮冷蔵にほかならないでしょうに。反面、その怠慢さから、消費者にもっとも不利益を与えたのは監督官庁です。「犯人」の雪印食品は言うに及ばす。
己が被るであろう損害をも省みず告発した西宮冷蔵は、業者のバッシングに遭い、とうとう事業の閉鎖に追い込まれてしまいました。きっかけは、7日間の営業停止措置。水谷社長は、それなら「取引業者から金をもらわないで倉庫の営業を続けたらどうなのか」と役所に詰め寄ったとか。役所の結論は「利益を伴わないなら商売ではないので許可する」。
結局、西宮冷蔵はボランティアで倉庫活動を続け、資金難で事業停止。
「いままで取引していただいた会社さんへの最後の恩返し」と水谷社長。倒産覚悟で倉庫を開放していたのです。
農水省の愚昧で無責任な役人どもは、こんな功労者にペナルティを与え、自分たちは知らん顔。これほど醜い種類の人間はなかなかいるものではない。
この西宮冷蔵と、今回の市橋容疑者のことを通報した建設会社とがだぶって見えてしまうのです。
なぜ、己の身の上より、利他を優先して勇気ある行動を取った人たちが、社会的に苦しめられて、肝心の当事者は「一件落着」で何事もなかったような顔をできるのか。ほとほと官僚・役人の醜さには辟易する。
西宮冷蔵は、それでも自力再生を考えて路上で本を売り歩いたりした日々を送っている。見かねた市民たちがカンパを集め、事業再開に必要な800万円を草の根で集めてくれた。それで、毎月赤字ながらも事業は再開できた、とのこと。
その際にも、神戸税関が弾圧を加えた、ということで怒りに記事になっているようです。
【雪印告発の西宮冷蔵、神戸税関から弾圧】
とこまで落ちた人間たちなのでしょうか。
いまや官僚・役人は国賊である、とテレビで連日、コメンテーターが吼えていますが、誰もこれに異論をさしはさむことはできないでしょう。それほど腐ってしまっていますね。
この西宮冷蔵の勇気ある告発後、「公益通報者保護法」が議会を通過し、内部告発者の身柄の安全と尊厳を保護する法律として施行されました。法律ですから、不備があるのは当然です。
しかし、どうも内部告発者に対しては、いくら法律で保護しても、同業者の隠蔽体質が内部告発者に脅しをかける、という事態はなくなっていないようです。
社会に損害を与え、人の健康・命まで売り渡して、犯罪的行為を隠蔽すれば、いずれ、その同業者も同じ運命を辿ることがわからないのでしょうか。
私は、告発者に対して、こうした村八分的な陰湿な嫌がらせ、ブラフをかけた者も同罪とするような法的措置を考えるべきだと思います。
そして、一般の無関心が、陰にこもった一連の偽装の温床になっていることに気づくべきでしょう。忙しい中、そんなことにまで神経を使いたくない気持ちは誰しも同じです。しかし、安全な生活を送るためには、多少のコストを払わなければならない時代になった、ということです。
そのぶん、これまで「敷居が高かった(そのように権威の偽装を行ってきた)お役所」に対しても、きっちりモノ申すことが大切です。
いささか赤面です。
さて、今回はいきなり不条理ともいえる現実を思いしらされた出来事。
イギリス人英会話教師・リンゼイさん殺害容疑で2年7ヶ月逃亡生活を続けていた市橋達也容疑者が逮捕されました。
きっかけは、市橋容疑者に整形手術を施した美容整形外科の警察への情報提供、市橋容疑者が偽名で働いていた建設会社からの情報提供、それに沖縄へのフェリー会社の職員の通報。この三つが逮捕の決め手になったことは周知ですね。
ところが、この市橋容疑者を犯人とは知らずに雇っていた建設会社へのバッシングがひどい、といいます。
【警察に通報があだ、取引停止も 市橋容疑者勤務の建設会社(中日新聞)】
「通報すれば事業に支障が出るのではと社員たちが話し合ったが『社会人の義務』と警察に連絡を取った」とのこと。
整形外科医でも、最初は市橋と気がつかなかったというから、雇った建設会社に全面的に非があるとはいえないでしょう。むしろ、自分の不利益を承知しながら通報した建設会社の社員の方々の「責任感」に感謝すべきではないのでしょうか。
これと似たような事例として、「西宮冷蔵」の水谷洋一社長が受けた世間からの「仕打ち」についてテレビで報道されていました。
兵庫県西宮市の倉庫会社・西宮冷蔵の水谷社長は、
「2002年1月に雪印食品の牛肉偽装を告発するが、自身も在庫証明書を改竄する等偽装に加担したとして国から7日間の営業停止命令を受ける。以後取引は激減し2002年11月に休業に陥る」。wikiより。
水谷社長も、最初は雪印食品の犯罪行為に気づかなかったようですね。しかし、どうも倉庫の出入状況に不均衡がある、と疑問を持ち、調べていったら偽装であることを確信した、というようです。
「雪印ブランド」といえば食品業界の天皇です。なかなか逆らえない。牛肉偽装の事実がはっきりしてからは、告発するかどうか思案を重ねたものの、持ち前の正義感から告発に踏み切ったわけです。この事件が表面化したことによって、雪印食品はつぶれ、下請けの多くの会社も倒産の憂き目に遭ったのです。
まず、消費者として、市民として考えなければならないのは、なぜ真っ先に雪印の偽装を摘発しなけれぱならなかった監督官庁の怠慢については責められば、民間の真面目な業者が、その責をすべて負わされるのか。
もっとも消費者の安全を考え、消費者の利益を考えたのは西宮冷蔵にほかならないでしょうに。反面、その怠慢さから、消費者にもっとも不利益を与えたのは監督官庁です。「犯人」の雪印食品は言うに及ばす。
己が被るであろう損害をも省みず告発した西宮冷蔵は、業者のバッシングに遭い、とうとう事業の閉鎖に追い込まれてしまいました。きっかけは、7日間の営業停止措置。水谷社長は、それなら「取引業者から金をもらわないで倉庫の営業を続けたらどうなのか」と役所に詰め寄ったとか。役所の結論は「利益を伴わないなら商売ではないので許可する」。
結局、西宮冷蔵はボランティアで倉庫活動を続け、資金難で事業停止。
「いままで取引していただいた会社さんへの最後の恩返し」と水谷社長。倒産覚悟で倉庫を開放していたのです。
農水省の愚昧で無責任な役人どもは、こんな功労者にペナルティを与え、自分たちは知らん顔。これほど醜い種類の人間はなかなかいるものではない。
この西宮冷蔵と、今回の市橋容疑者のことを通報した建設会社とがだぶって見えてしまうのです。
なぜ、己の身の上より、利他を優先して勇気ある行動を取った人たちが、社会的に苦しめられて、肝心の当事者は「一件落着」で何事もなかったような顔をできるのか。ほとほと官僚・役人の醜さには辟易する。
西宮冷蔵は、それでも自力再生を考えて路上で本を売り歩いたりした日々を送っている。見かねた市民たちがカンパを集め、事業再開に必要な800万円を草の根で集めてくれた。それで、毎月赤字ながらも事業は再開できた、とのこと。
その際にも、神戸税関が弾圧を加えた、ということで怒りに記事になっているようです。
【雪印告発の西宮冷蔵、神戸税関から弾圧】
とこまで落ちた人間たちなのでしょうか。
いまや官僚・役人は国賊である、とテレビで連日、コメンテーターが吼えていますが、誰もこれに異論をさしはさむことはできないでしょう。それほど腐ってしまっていますね。
この西宮冷蔵の勇気ある告発後、「公益通報者保護法」が議会を通過し、内部告発者の身柄の安全と尊厳を保護する法律として施行されました。法律ですから、不備があるのは当然です。
しかし、どうも内部告発者に対しては、いくら法律で保護しても、同業者の隠蔽体質が内部告発者に脅しをかける、という事態はなくなっていないようです。
社会に損害を与え、人の健康・命まで売り渡して、犯罪的行為を隠蔽すれば、いずれ、その同業者も同じ運命を辿ることがわからないのでしょうか。
私は、告発者に対して、こうした村八分的な陰湿な嫌がらせ、ブラフをかけた者も同罪とするような法的措置を考えるべきだと思います。
そして、一般の無関心が、陰にこもった一連の偽装の温床になっていることに気づくべきでしょう。忙しい中、そんなことにまで神経を使いたくない気持ちは誰しも同じです。しかし、安全な生活を送るためには、多少のコストを払わなければならない時代になった、ということです。
そのぶん、これまで「敷居が高かった(そのように権威の偽装を行ってきた)お役所」に対しても、きっちりモノ申すことが大切です。