きょうの社説 2011年1月30日

◎「金沢しぐさ」登録 誰もが「善意の贈り主」に
 金沢市の金沢しぐさ検討懇話会は、金沢に伝わる心配りや所作を表す「金沢しぐさ」に 新たに6点を登録し、「しぐさ」は合わせて「くらしの気づかい」や「うやまいのしぐさ」など6つのテーマに計20点となった。市は今回で登録を一区切りとし、今後は市民に周知し、もてなしの心の醸成やマナーの向上などに役立てたいとしている。

 「金沢しぐさ」は「雪の積もった道での譲り合い」や、思わぬ客に手みやげに頂いたも のを出す「お道忘れ」など、いずれも相手への配慮や思いやりが込められている。全国に広がった「タイガーマスク現象」と同列に論じられないとしても、良い行いというのは、多くの人の支持があって初めて広がっていくことを、この現象は教えてくれた。「金沢しぐさ」も多くの共感と支持を集めれば、行動の輪は広がるはずである。昔ながらの習慣を身近に教えてくれる人が少なくなっているだけに、今回の「金沢しぐさ」の登録は、その良さを広く伝えることに意義があり、行動への第一歩となろう。

 「金沢しぐさ」は日々の暮らしのなかで、さりげなく実践できて、誰もが「善意の贈り 主」になることができる。金沢ばかりでなく、それぞれの地域で人の心と暮らしを豊かにする先人の知恵が伝わっている。それらの「しぐさ」を息長く継承し、できるものから実践していきたい。

 折しも降雪が続く今冬は、金沢市民の「金沢しぐさ」が試されているといえる。家の前 の除雪や高齢者宅への手伝い、歩行者に配慮した車の運転、バスに乗る際の傘の雪落としなど、自分も含めて、雪に関わるさまざまな人の行為に遭遇している。それらの行いを通じて、感謝したり、時には迷惑に感じる体験を重ねている。

 東京でも相手を気遣うマナーの復権として「江戸しぐさ」や「東京しぐさ」の普及活動 が行われているが、冬場にお互いが住みよくしようとしてきた習慣の数々は、金沢の風土から生まれた「しぐさ」であり、実直で粘り強い北陸の気風とも深い関係があるだろう。思いやりの心を行動に表している人々を見習いたい。

◎代表質問終了 「熟議の国会」には程遠い
 菅直人首相の施政方針演説に対する各党の代表質問が終わった。自民、公明両党が解散 や退陣を迫り、菅首相が税と社会保障の一体改革に関する与野党協議などを呼び掛ける、いわば型通りのやりとりに終始し、「熟議の国会」には程遠い内容だった。菅首相は原稿を棒読みするだけで、答弁に余裕がなく、野党に歩み寄る姿勢に欠けている。

 野党の協力を得なければ、予算関連法案の成立がおぼつかないというのに、菅首相は社 会保障と税の一体改革や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加問題に加えて、マニフェストの見直しまで先送りするつもりのようだ。重要課題にどう取り組むかを全く示さずに、与野党協議への参加を呼び掛け、応じないなら「歴史への反逆行為」とまで言い切る強気の理由が分からない。

 自民党が歴史的な惨敗を喫し、民主党が参院で過半数を得た2007年7月の参院選後 、当時の小沢一郎代表は「(自民党は)何が起きたのかをまったく分かっていない」と指摘した。自民党は「ねじれ」の何たるかを理解せず、まだ天下を取った気でいるという意味だろう。それ以降、自民党は小沢元代表の言った意味をいやというほど思い知らされた。菅首相が現在の立場を本当に分かっているなら、もっと大胆に野党との間合いを詰める必要がある。

 自民党などは「ばらまきのための財源調達を手伝うわけにはいかない」と主張し、マニ フェストの撤回や衆院解散を迫った。ねじれ国会を最大限に利用し、菅政権を追い込もうとするのは、野党の戦術としては当然だろう。

 これに対して、菅首相は努めて低姿勢で協力を呼び掛けようとしている様子はうかがえ るが、単に言葉遣いを丁寧にしているだけで、具体的で分かりやすい説明がほとんどない。重要課題をすべて先送りしておいて「まず予算を通して欲しい」と頭を下げても野党はソッポを向くだけである。少なくともマニフェストの見直しを前倒しで行う柔軟さを示さねば、「熟議の国会」はまたぞろ絵に描いたモチに終わるだろう。