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☆
「後は、ここを…」
トーチの先端が火花でパチパチと爆ぜ、破損箇所が塞がっていく。
あの怪生物が直接ぶつかったかは不明だが、外殻は思いのほか大きく損傷しており結構補修に手間がかかっている。
とはいえ、これが直らない限り動くこともままならないので地道に直していくしかない。
「せめてユリカがいればもう少し能率も上がるんだけれど…、いまはしょうがないか」
さすがにあんな酷い思いをしてベッドに臥せっているユリカに手伝わせる気にはなれない。
そのかわり体調が元に戻ったら、この埋め合わせはきっかりとしてもらおう。
一体どんな無理難題をふっかけてやろうか…
そんなことを思いながら手を動かしているケイトの後ろの扉が軽い圧搾音と共に開かれた。
「ん、小麦?何かあったの……」
今はユリカが臥せっている以上、ここに来るのは小麦しかない。
ケイトは後ろを振り向かずに後ろにいるはずの小麦に声をかけたが、返事は返ってこず足音だけがひた、ひたと聞こえてくる。
いや、足音だけではない。
何かはわからないがぴちゃ、ぴちゃと小さな水音も一緒に聞こえてきている。
「?どうしたの小麦。返事くらいしなよ……」
妙に思ったケイトがくるりと後ろを振り返ると…
「……ふふ…」
そこには小麦ではなくユリカが立っていた。
普通なら、意識が戻ったユリカをみてケイトは歓声を上げただろう。
「………っ!」
だが、後ろにいるユリカを見てケイトは戦慄した。
突っ立っているユリカは着替えた寝巻きは前がはだけ、引き締まった裸身が丸見えになっている。
が、そんなものは問題ですらない。
前が丸見えになっているユリカの腹は妊婦どころの比ではないほどに大きく膨れ、股下の秘裂から粘り気のある液体をボタボタと零して床を濡らしている。
薄笑いを浮かべた顔からは理性は感じられず、瞳孔が開ききった瞳は暗いエンジンルームの中で赤く輝いている。
「ユリ、カ……?」
「ウフフフ……ケイトぉ……」
呆然としているケイトに対し、ユリカは大きな腹をタプンタプンと揺らしながらじりじりと近づいてくる。
「ど、どうしたんだユリカ……。そのお腹、お前、一体……」
「うん?これぇ…?私のお腹ぁ……?
うふふぅ…、すごいでしょぉ……このお腹ぁ……。もうさっきからぁ……あ、あ!あぁぁん!!」
がたがたと震えながら自分のお腹を指差しているケイトを淫蕩な視線で睥睨し、愛しそうに膨らんでいるお腹を擦っていたユリカは突然ブルブルッと体を震わせ、両指で自らの秘裂を押し広げた。
「あぁぁっ!また、また産まれるぅぅぅんっ!!」
顔を仰け反らせ、満面の幸せな笑みを浮かべたユリカはそのまま大股に脚を開き…
ブシャァっと一際勢いよく吹き出した粘液と共に、ユリカの秘裂を割って乳白色の物体がボトボトとエンジンルームの床に零れ落ちてきた。
「ひっ……ユ、ユリカ……それって……」
ケイトの拳ほどもあるその物体は六角錘の体に数本の触手が伸びており、大きさこそ違うが先ほど二人が仕留めた怪生物と全く同じものだった。
ユリカの粘液に照り輝くそれはゆっくりと体を起こすと、あの怪生物と同じように体をくねくねと揺らしてあちこちに散らばっていく。
その姿をユリカはうっとりと、ケイトは震えながら見ていた。
「はぁぁ……。また、産んじゃったぁ……
どんなに産んでも産んでも、次々に産まれて来るから困っちゃうわぁ……ウフフフ……」
出産による消耗で荒い息を吐きながら嬉しそうに呟いているユリカの腹がまたぽこぽこと膨れ出している。またあの怪生物がユリカの子宮の中で増殖しているのだろう。
「ち、ちょっと待てよユリカ……。お前、何をしているんだ……。なんで、あの化け物を……」
「ケイト……。私ね、あの時ぃ……
アレに圧し掛かられてヘルメット割られたとき……、アレにたっぷりと飲まされたのぉ……
とってもとっても素敵な、アレの『DNA』をぉ……」
そう言っている間にもユリカのお腹はどんどん膨らみ、収まりきらなくなったのか膣口から粘液を引いてあの怪生物がぽとぽとと生まれ落ちてきている。
「そ、そんなバカな……。さっき、なんの異常も発見されていないのに…」
そうだ。スキャン装置ではユリカの体には何の異常も発見されていなかった。
もし、なんらかの異物を飲まされていたのなら即座に発見できるはずだ。
「ウフフ……。確かに毒物とかならすぐに見つかったかもしれないけど……
アレが注ぎ込んだのはただのDNA。毒物でもなんでもないから発見できるわけはないのよ……」
薄ら笑いを浮かべてゆらゆらと体を揺らすユリカの瞳が一際赤く輝き、肌の色が赤みを失って磁器のように白く変色していく。
人の姿という決定的な違いはあるにせよ、今のユリカはあの怪生物を思い起こさせるには充分過ぎる容姿をしていた。
「そして、アレは他の有機生命体にDNAを注射して、その生物のたんぱく質を利用して増殖するの。
だから、ほらぁ……。この子達は私のたんぱく質…、卵子を使ってどんどん生まれてくるのよぉ……」
ユリカは足元の怪生物を一匹掬い取ると、艶かしく舌を使ってべろりと舐めしゃぶった。
「気持ちいいのよ……この子達を産むのってぇ……癖になっちゃいそうなくらいにぃ……
経験しているから言うのよぉ。ほぉらぁ、また、産まれちゃぅぅ〜〜っ!」
嬌声を上げながらユリカは股座をケイトへと向けてグッと息み、その勢いでブシュッと噴出した怪生物がべちゃりとケイトの膝に当たり、床にぱちゃりと湿った音を立てて落ちた。
「フフ……。ケイトにも、この素晴らしさを教えてあげる……
『私たち』のDNAをたっぷりと注ぎ込んで、『私たち』のように『私たち』を産み増やす生体プラントにしてあげるわ…!」
ユリカの口元がゴボリと膨らみ、唇から真っ白で艶のある肉管が粘液の糸を引きながら競りだしてきた時、ケイトの恐怖心は一気に弾けた。
「い、いやあああぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!」
もう目の前の物体はケイトの目には化け物にしか見えず、手に持ったトーチをめくらっぽうに投げつけてから泡を食ったように逃げ出した。
当然ユリカはケイトを捉えようとして触手を伸ばすが、偶然か投げたトーチがケイトの触手に命中して軌道がそれ、ケイトは辛くも襲い掛かった触手をかわすことが出来た。
ケイトの目先にはユリカが入ってきて開いたままの扉がある。
『とりあえずここから出ないと!』とケイトは一足飛びに扉を抜けると、壁を蹴って体勢を立て直し扉の電子ロックを物凄い速さで打ち込みはじめた。
扉の向こうではユリカがぺた、ぺたと近づいてくるのが見える。
あの怪生物と同じになったことで歩き方もそれに準じてしまったのか、急いではいるようだが走る気配はない。
「これなら…!」
ユリカを完全に閉じ込めることが出来る!
一安心したケイトは電子ロックの最後のキーを押そうとした。
その時
「っ?!」
ケイトの手が後ろからガシッと掴まれ、そのまま上に持ち上げられてしまった。
「うふふ、ケイトさん。なにをしようとしているのですかぁ〜〜」
「こ、小麦?!」
後ろから聞こえる小麦の声に、ケイトは焦りと戸惑いを感じていた。
なぜ小麦は自分の邪魔をするのだろうか。もしかしたら、エンジンルームの内部の事を知らないのか。
「小麦!手を離して!!
この中に、この中に化け物がいるのよ!!あんたが見たがっていた、あの化け物が!!」
「ばけ、もの…ですかぁ?」
「そうよ!だからここに閉じ込めておかないと!あいつは、他の生物にDNAを打ち込んで同化し、て……」
ちょっと待て。
ここからなら小麦からでも中を見ることが出来るはずだ。
なのに、小麦は自分の手を離そうともしない。
というか、なぜ小麦は自分の手を掴み続けているのだ…
(まさか……)
嫌な予感、いや確信か。
ケイトは恐る恐る後ろへと振り返ってみる。そこにいた小麦は…
「うふふふぅ〜〜〜。ケイトさぁ〜〜〜ん。化け物って、こんなのですかぁ〜〜〜?」
ユリカと同じく乳白色の肌色をし、腹が異常に膨らんでいる異形の姿をしていた。
「こ、こむぎ……まで……?」
呆然とするケイトの前で、小麦の眼鏡の奥の赤い瞳が嫌らしそうにグニャリと歪んだ。
「ふふっ、どうです私のこの体ぁ。
さっきユリカさんに押し倒されて、上と下からたぁっぷりとDNA注ぎ込まれたんですよぉ。
最初はすっごく苦しかったんですけどぉ、DNAが体に染み込んでいくとどんどん気持ちよくなってぇ……
ぷちゅぷちゅ赤ちゃん産むのがもう……クセになっちゃいそうなんですぅぅ!」
どうやら怪生物が産道を下ってきたのか、ケイトが見ている前で小麦は感極まった嬌声を上げるとブシャッと粘液が弾ける音と共に夥しい数の怪生物がボタボタと産み落とされてきた。
「ひゃぁぁぁ……。きもひぃぃ……さいこぉ…
ねえケイトさぁん。ケイトさんも気持ちよくなりましょうよぉ〜
ケイトさんも『私たち』になれば、延々と『私たち』を気持ちよく産み続けることができるようになるんですよぉ〜〜」
ニタァと笑った小麦の口からも、ユリカのものと同じ肉管が飛び出してくる。
その先端からは乳白色に濁った液体がこぷこぷと湧き出し、肉管全体を艶かしく濡らしている。
おそらくこの液体こそ怪生物のDNAがたっぷりと含まれているものなのだろう。
「うふふふぅ〜〜」
小麦の肉管がケイトの頬をぬろりと撫で、そのおぞましさと気持ち悪さにケイトの顔がぴくぴくと引きつる。
(これを体に挿入れられたら、私もユリカや小麦みたいになってしまう!!)
萎む暇もないボテ腹から延々と化け物をひり出し、産むことから生じるおぞましい快感の虜となって身も心も化け物にされてしまう。
いや、問題はそれだけではない。
卵子を使って産み続けるということは、もしこの怪生物が延々と拡散していったら人類は子を残すことが出来なくなる。
ということは、ここで自分が食い止めないと人類という種の存亡に関わることにすらなりかねない。
幸い現在この警備艇はエンジンの故障で動けない。
が、ユリカと小麦が人間だった頃の知識を残したまま化け物となっている以上、このままにしておいたらエンジンを直して警備隊本部へと戻ることになるだろう。
そうしたらそこでまた化け物が増殖していき、いっぱいに溢れた化け物は今度は星に……
(そんなことは絶対に駄目だ!!)
こうなったら、この警備艇を自爆させて全部吹き飛ばすしかない。
最初に来た化け物が真空中で生きていた以上致命傷を負わすことは不可能かもしれない。
が、宇宙空間を自力で進むことはさすがに出来ないだろう。
(ブリッジにあるメインシステムから自爆コードを入力すれば…)
自分が死ぬことは間違いないが、この化け物たちを本部へ連れて行くわけにはいかない。
悲壮な覚悟を固めたケイトは、ケイトを突き飛ばしてブリッジに戻ろうと考え自由になっている左手に力をこめた。
が、
「あらあら、おいたはいけませんよケイトぉ〜〜」
今にも突き出そうとしたその手を、扉からぬっと出てきたユリカの冷たい手がガシッと掴んで阻止してしまった。
「はっ!」
そうだ。迂闊だった。化け物は小麦だけじゃない、ユリカもいたんだ!
「は、離せ化け物ぉ!!」
「化け物とはひどいですねぇケイトさん」
「そうよ。もうすぐケイトも私たちと同じになるんだから……」
「!!」
両腕を掴むユリカと小麦の力は強烈でとても離すことはできそうにない。
(このまま、化け物にされるくらいなら!)
いっそ死んだほうがましだ、と覚悟し、ケイトは舌を噛み切ろうと口を開いた。が、
「んんぅっ?!」
そこへビュルッと伸びてきたユリカの触手が潜り込み、ケイトの口腔を埋めてしまった。
「んんんぅ〜〜っ!!」
「ふふっ。ケイトったら、大きく口を開けちゃって。
そんなに私の触手が欲しかったのかしらぁ?ククク……」
(しまった!)
ケイトは自分が取り返しのつかない失敗をしたことに気がつき酷く後悔した。
ユリカや小麦が狙っていたのは、自分の触手をケイトの体に埋めることだ。
それが分かっていながら短絡的な考えで口を開いてしまった。これを迂闊と言わずになんと言おう。
「んーっ!んーっ!!」
ケイトは何とか触手を吐き出そうともがくものの、両腕を掴まれているので身を捩るか顔を振るしかなく、そんなことでは触手はうねうねとうねるだけで全然口から抜け出てはこない。
むしろ触手は喉をズルズルと這いずって食道の先まで達し、その圧迫感で呼吸すらままならくなってきている。
「無駄な抵抗は止めなさい…。ほぉら、たっぷりと飲ませてあげるわ!」
嬉しそうに目を細めるユリカの喉が『ぐびり』と膨れたかと思うと、触手の先端から熱い粘液がドバッと溢れ出てきた。
「んん――――っ!!」
飲み込まないという選択肢すら与えない、直接胃の腑に注ぎ込まれる粘液の熱さにケイトは口を塞がれたまま苦悶の叫びをあげた。
吐き出される粘液はたちまち胃の中を満たし、収まりきらない分は小腸へ下っていったり食道を逆流してきたりしてきているのが粘膜に当たる感触で分かる。
「ふぁ…ふぁめへぇういあぁ……お、おえいようああぁ……!」
このままでは化け物にされる前に殺されてしまいかねない。
それはそれでケイトが望む結末なのかもしれないが、やはり死が目前に迫ると人は恐怖を感じるものだ。
が、そんな恐怖すらケイトは長く感じてはいられない。
「うふふぅ〜〜〜。ユリカさんが上から注ぎ込むなら、私は直接卵子にDNAをかけてあげちゃいますねぇ〜〜」
いつの間にかケイトの股下に潜り込んだ小麦がケイトの股間部分のスーツを引き裂いて素肌を露わにさせ、剥き出しになった秘裂を口から伸びた触手でぶすりと貫いてきた。
「んぐぅぅ!!」
まるで体を引き裂かれるような痛み。そして体を割ってぐいぐい進んでくる触手。
性経験がなかったわけではないが、全く下準備もなしに突っ込まれたらさすがに痛みしか感じない。
「あはっ!痛かったですかぁケイトさぁん。でも、そんな痛みもすぐに消えてなくなっちゃいますからぁ〜〜!」
子宮口を貫き、子宮へと触手が達した感触を感じた小麦は、ニィッと邪悪に笑うと子宮の中へDNAがたっぷりと含まれた粘液を注ぎ込み始めた。
「んおおぉ―――っ!!」
性器にどぷどぷと注がれる粘液。内臓よりも容積が少ないそこはあっという間に満たされ、隅々まで行き渡らせていく。
まだ卵子を生成していない卵巣もたちまち粘液漬けになって、異形のDNAを細胞に取り込み、変質させ、書き変えらせていく。
それは上から注ぎ込まれているほうも同様で、内臓を満たした粘液はどんどん体内に吸収され、それまであったケイトの人間としての細胞を異形の物へと変え、その体を別なものへと変えていった。
「きゃはははぁっ!ケイトの喉がきゅうきゅう閉まってとても気持ちいいわ!いくらでも注ぎ込めそうよぉ!!」
どうやらユリカはケイトに注ぎ込むことに強烈な愉悦を感じているようで、触手を激しく抽送させながら止め処なく粘液を吐き出し続けている。
「下の方も凄いですよぉ!ケイトさんの赤ちゃんの孔、エロ過ぎですぅぅ!!」
小麦も完全にケイトの肉に溺れ、うっとりとした顔でケイトの膣内へ粘液を注ぎ込んでいる。
「うぶぅうぅ!!」
そして、そのあまりの粘液の多さにとうとうケイトの体から逆流してきた粘液が触手と口のわずかな隙間から、小麦の粘液も膣口から勢いよく噴き出てきて、2体の異形の白い顔をさら真っ白く染め上げた。
(い……息が、できな……い?)
口腔内の隙間すら粘液で占められて全く呼吸の出来ない状態になり、ケイトは窒息の危機を感じていた。
が、どうしたことか呼吸は全く苦しくならない。
というか、ケイトは今呼吸をしていなかった。にもかかわらず、体はなんの異常も示しはない。
(ま、まさか……)
そう言えば、あの化け物は宇宙を生身で平気だった。ということは、化け物は呼吸をしなくても生きていける。
(ということは、私もあの化け物にないつつある?!)
自分の体がユリカたちと同じにになり始めているある現実にケイトは目の前が真っ暗になった。
「あはぁぁっ!ケイトォ!!もうすぐケイトも『私たち』になるのよぉ!」
「ケイトさぁん!みんなでたっくさん産んで、基地のみんなも『私たち』にしましょうねぇ!
あぁぁ!すっごい楽しみぃぃ!!」
目の前で仲間が増えつつあるのを感じているのか、ユリカも小麦も快感に戦慄き『自分たち』を産み落としながら嬌声を張り上げていた。
そのため、ケイトを拘束する力が僅かながら緩んでしまった。
「!!」
この油断をケイトは見逃さず、僅かに自由になっていた脚を振り上げるとユリカの臍あたりを渾身の力で蹴り飛ばした。
「ガァッ?!」
完全に油断していたユリカは廊下の壁面まで吹き飛ばされ、その拍子でケイトの腹に潜り込んでいた触手もズルルッと吐き出されていった。
「ユ、ユリカさん?!」
まさかのケイトの反撃に面食らった小麦もケイトに足蹴にされ、そのままケイトは飛び跳ねるようにブリッジへと走り始めた。
「待ちなさいケイト!」
「ケイトさーん!!」
後ろでユリカと小麦の声がするが、やはり彼女達は走れないようでぺた、ぺたという足音が聞こえてくるだけだ。
「こ、これなら……いける…!」
自分の体が凄い勢いで変わっていくのが嫌でもわかる。
体の内にたっぷりと注ぎ込まれた化け物のDNAが自分の細胞を取り込んで同化し、化け物の細胞に変わった自分の細胞がまた他の細胞を変質させ変化させていく。
走る足は次第に動きが覚束なくなり、五感が鈍っていくのが感じられる。
呼吸などとうの昔に止まっており、いくら走っても息切れすることはない。
このまま脳まで侵食されきる前に、この船を爆発させないとならない。
まだ何とか人間の自我を保ってはいられるが、それとていつまで持つのかなど分かりはしない。
なだから、一刻も早くこの船と自分たちの始末をつけないとならない。
「は…早く、早く!」
もうまともに走れなくなった足を必死に動かし、なんとかケイトはブリッジまでたどり着くことが出来た。
「あ…あとは、あとはぁぁ……」
細かく震えてうまく動かない指を何とか動かし、緊急自爆モードのパスワード入力をしていく。
普段の何倍もの時間を使って入力を終了し、ディスプレイに入力実行の是非を問う文字が出てきた。
「こ、これでぇぇ……!」
これで『OK』の入力をすれば即座にこの船は即座に爆発する。
(やった!私は、人類の危機を救った……)
自分の勝利を確信したケイトは晴れ晴れとした笑みを浮かべ、承認のボタンを押そうとした。
まさに、その時
(ドクン!)
「うっ!!うはぁぁぁぁあ!!」
突然自分の下腹部に生じた、痺れるような快感。
そのあまりの甘美さ、強烈さにケイトは大きく後ろに仰け反りそのまま倒れ伏してしまった。
「な、なにぃ……!なにこれええぇぇええええええ!!!!」
まるで下半身全てが剥き出しの性器にでもなってしまったような猛烈な快感。
その快感はケイトの体内でどんどん大きく膨らみ、外に噴出しかねない勢いで広がっている。
いや、それは比喩表現ではない。
実際ケイトのお腹はボコボコと歪に膨らみ、伸び、宇宙服を真っ二つに引き裂いて膨張し、青黒い妊娠線が蜘蛛の糸のようにびっしりと広がっていった。
「ひ、ひぃぃっ!!まさか、これってぇ……!!」
ケイトの快感で霞む思考にあることが思い浮かんでくる。
それは、先ほどユリカと小麦が快感に悶えながら延々と繰り返してきた行為。
(私のお腹から、化け物が産まれようとしている!!)
あの乳白色の、蜘蛛とも蛸ともつかないような異形の物体。
それを今度は、自分が出産しようとしているのだ。
「や、やめ、やめて!やめ……うはぁぁ!!」
ケイトはなんとか出産を抑えようと両手を膣口へあてがおうとしたが、子宮の中で異形が蠢くことで起こった痺れるような快感にビクビクッ!と全身を震わせてしまった。
そのまま異形は子宮口を押し広げ、産道を通って外に出ようと移動し始める。
「や、やだぁぁ!でちゃ、でちゃだめぇぇ!!」
気が遠くなるような快感に悶えながらケイトは拒絶の言葉を口にするが、声とは裏腹にその手は自らの膣口をきゅっと押し広げ、顔は出産の快感に甘く蕩けている。
腰が快感でビクンビクンと跳ね、膣口からプシュッという音と共にどろりとした粘液が堰を切ったかのように噴き出すと共に、夥しい数の異形の怪生物が膣口を押し広げて飛び出してきた。
「きああああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜っっっ!!!」
その何もかも吹き飛ばすような凄まじい快楽にケイトの頭は真っ白になり、壊れた笑みを浮かべたまま大きく膨らんだ腹が完全に萎むまでケイトは怪生物を産み出し続けた。
「あ…は…、はひぃぃ……」
最後の一匹がちゅるっと飛び出してようやっと出産の快感が収まり、ケイトは大きく溜息をついた。
「こ、これ……すごい。すごすぎるぅ……」
快楽で頭が完全にオーバーヒートし、『すごい』以外の感想が思い浮かんでこない。
確かにこれは凄まじい快感だ。ユリカや小麦が癖になってしまうといっているのも頷ける。
「すごすぎる……けど…」
けど
けど、だからこそこれを伝播させてはならない。
なんとしても、ここだけで終わらせなければならないのだ。
なんとまだケイトは人間の自我を残していた。すでに体の大部分は異形のDNAに犯されてはいるものの、まだ辛うじて完全に侵食されきってはいなかった。
幸いまだ自爆モードの承認キーは生きている。たった一つ。たった一つのボタンを押せばいいのだ。
ケイトはほとんど言うことを効かない体を何とか起こして、一つのボタンを押そうとしようとした。
しかし、それはもはや及ばない夢だった。
「あ………?!」
ケイトのお腹に僅かな疼きが走った。
と思ったそれがあっという間に大きく膨らみ、全身を侵していく。
「あ、あ……。ま、またぁぁぁ?!!!」
さっきからまだ僅かも経っていないのに、ケイトのお腹はどんどん大きくなり、それに伴い抗い難い禁断の、出産の快楽も増していっている。
そう言えばあの二人も出産し終わった直後からまた腹が大きく膨らみだしていた。
「またなのぉ?!またでちゃうのぉぉぉぉ?!」
ケイトの口から出た叫びは、終わらない快楽に対する絶望と期待が入り混じったものだった。
こんなことを繰り返されてはとても人間の自我など残りそうもない。
きっとユリカに犯された小麦も同じ思いをしていたのだろう。
僅かに残った人間の自我を、繰り返し起こる出産の快楽でどんどん塗りつぶされ、最終的に出産に快楽を感じることしか出来ないように変えられてしまうのだ。
「あっあっ!産まれるぅ!産んだばかりなのに、また産まれちゃうぅぅ!!」
エンドレスに続く妊娠、出産の繰り返しによる人外の快楽に、虚ろに泳ぐケイトの瞳は次第に赤い輝きを放ち始めていた。
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