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F.E.R.C Research Report - File No.036

大台ケ原に出現する妖怪の正体を暴け!
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1999/07/04  報告 報告者:桐島 夏子、桜田 直美、小杉 良子


三重県と奈良県の県境に「大台ケ原」という標高1400〜1600mの台地がある。森林が鬱蒼と茂り野生動物の宝庫となっている。都会からの登山者が多く、一部はハイキングコースとして整備されているが、実は、ここで遭難者が後を絶たない。1998年の遭難者は32人でうち死者7人、5年間では遭難者116人うち死者19人に達する。これらの数値は日本で山岳事故の多い北アルプスや富士山など標高3000m級の山々に匹敵するのだ。一般に遭難の原因には「軽装備での登山」「道に迷う」「転落」が考えられる。

大台ヶ原に詳しい、吉野熊野国立公園・公園指導員の田垣内進一氏によると、この山には入山した人を襲う"ひだる"という妖怪がいると言い伝えられているという。妖怪"ひだる"とは、「ひだる神」「ダリ」とも呼ばれる悪霊の一種で、昔から西日本を中心に全国の山中に現れたといわれている。この"ひだる"に、取り憑かれると突然の脱力感に襲われ、何かにのしかかられたような重みを感じ、歩くことも出来なくなるという。地方によっては餓鬼の一種と解釈されている。そして、この"ひだる"によると思われる事故が、実際に報告されているというのだ。

1.十数年前の夏、山小屋の奥さんが薪集めのため山中を歩いていると、突然何物かが体に取り憑いた様な強い疲労感に襲われ、もうろうとしながら半日近くさまよい歩き、なんとか山小屋にたどり着いた。しばらくすると体の異変はウソのように消えた。
2.1991年の風のない夏の日、一人の写真家が撮影中、突然生暖かい不気味な気配を感じ、何者かに取り憑かれたような脱力感に襲われた。動悸が激しく、全身に響く感じだった。自力では歩けなくなり、奥さんに助けられながら駐車場へ戻り、その後まもなく体は正常に戻った。

そこで、これら"ひだる"によると思われるような目撃証言を調査したところ、次のようなことが判った。
・ 何かに取り憑かれたと感じるが誰一人として姿を目撃していない。
・ 直前に何か異様な気配を感じる。
・ 意識がもうろうとし体に急激な脱力感を感じる。
・ それは2、3時間で消え去り後遺症は残さない。

原因として考えられる仮説のうち、「病気の発症」と「植物毒」はいずれも当てはまらなかった。そのほかに山で人間が体調不良を起こす原因として、「火山性ガスによる中毒」がある。 そこで「大台ケ原」でガス濃度の計測を行ったところ、大気中の二酸化炭素濃度が、通常の大気中に含まれる濃度の約20倍だった。しかし、大台ヶ原には、火山は存在しない。そこで考えられた原因は、腐食性の二酸化炭素。植物の枯れ葉など、有機物が腐る際、大量の二酸化炭素が発生し、これによってめまいや脱力感が起きるというのだ。そこで、大台ケ原を調査すると、腐食性の二酸化炭素が発生する 1.有機物の存在、2.暖かい気温、3.湿度などの条件が整っていることが判明。

二酸化炭素を大量に吸い込むと、心拍数が増加し、脱力感、意識障害などの中毒症状が現れる。これは"ひだる"に襲われたという被害者の症状に一致している事から、"ひだる"の正体はこの腐食性の二酸化炭素と推測されるのだ。 山に登った際はガスが溜まりやすい窪地は注意が必要で、万が一急激な脱力感に襲われた時は、顔を高い位置に保って高い場所に避難する。また、単独での登山は避けることが注意点としてあげられる。





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