いったん増えかけた出生数が2009年に再び減少し、少子化がさらに進んだ日本。平均して女性が生涯に産む子どもの数を表す合計特殊出生率が1.57になった「1.57ショック」から20年、このトレンドはずるずると進行してきた。関心も高まり、様々な施策を講じながら、少子化はなぜ止まる気配がないのか。自民党で長年、少子化問題に取り組んできた野田聖子衆院議員に聞いた。
野田 聖子(のだ・せいこ)氏
1960年生まれ。83年、上智大学外国語学部比較文化学科を卒業、帝国ホテルに入社。87年、岐阜県議会議員選挙に当選。国政へは、1度の落選を経て93年、衆院議員総選挙に初当選。98年、第1次小渕政権で郵政大臣。2008年、内閣府特命担当・消費者行政推進担当・宇宙開発担当大臣。6期目。少子化に関する著書に『だれが未来を奪うのか 少子化と闘う』(講談社)がある。
―― 2006年から少し反転したとはいうものの、自民党政権時代、長い間少子化が進み続けたのはなぜでしょうか?
野田 少子化って、今も日本の中心的な課題ではないですよね。言葉は頻繁に出るけれど、少子化担当大臣が単独で権限を持っているかというとそうではない。国会で、子ども手当のいやらしさについての議論はあっても、少子化全般への議論をしているわけではない。経済界でも、取り組んでいるのは大企業の一部です。
肝心なのは企業の9割を占める中小・零細企業ですが、ここでまったくやっていない。大企業だって経団連・経済同友会で女性の幹部はゼロですから、口では色々言うけれど、心ここにあらずでは、というのが私の実感です。10年前に比べれば、男の人も少子化を口にするようになったという程度です。
自民党は本気の少子化対策には邪魔な政党だった
―― この問題については、世代間の価値観の差も激しいですね。
私なんか、上の世代の価値観を押し付けられる政党にいるので、死にそうですよ(笑)。
この国はずっと、自分の子どもは自分の家で育てろという価値観でした。何より、子どもには票がないけれど、高齢者には票がある。社会保障費で、これまで高齢者に使ってきたお金と子どもに使ってきたお金を見てください。あまりに違う。少子化対策なんてしていないに等しい。パイの大きさの差で言うと、児童向けはほとんどおまけレベルですから。
この国は年寄り天国です。でもそういう認識が国民にもなく、子どもにほとんどお金を使っていないことは、広く知られてこなかった。
子ども手当は、政権交代の導火線の1つでした。過去10年、自民党は若年対策をしていなかったし、子どもを産みたい人に対するエールもなかった。政権交代は仕方がない。悔しいけれど私も、頑張っても抜本的なことは出来ませんでした。
自民党が与党のままだったら少子化対策は破綻していたから、民主党のお手並み拝見です。本気で少子化対策をするには自民党は本当に邪魔な政党でした(笑)。自民党の根本思想は、「(少子化は)女性のせいだ」というものです。
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