昨日のこと。
私はゆったりとした休日を過ごしていた。
朝早く給油している際に、リアワイパーに付いていたカマキリを茂みに逃がしてあげて、慈愛に満ちた自分にご満悦〜なところから始まったその日は
祖母を病院まで送り、アホの様に長い待ち時間と短い診察に付き合い
(しかもおばあちゃんの指示した予定到着時刻は予約の40分以上前だし、ほんとやめてほしい)
帰りにスシローに寄って、原価率が高いという理由だけで、好きでもない中トロを(おばーちゃんの指示により)モリモリと食べ(美味しいかったけどねっ)
それから田畑に囲まれた祖母宅でお昼寝をし、スイカを食べ、沢山出てくるお菓子を食べ
ゴロゴロし、ペチャクチャし、ムニャムニャし
祖母から聞こえてくる昼寝の音を聞きながら
「こういう何もない日常を過ごせることは幸せなんだろうなぁ」と思う
そんな穏やかな時間を満喫したのであった。
しかし、自宅への帰り道、なんだか運転し足り無い気分だったので、ダム沿いの長いクネクネ道を選んでしまったのが良くなかった。
いつも通りに、山を越えてとっとと帰るべきだったのだ。
なんのこっちゃと言うと、私は人生で初めて動物を車で轢いてしまったのである。
ひとつのカーブを過ぎたところで、三匹の生き物が綺麗に直列しテコテコと、左から右へと横断していくのが見えた。
見えた直後、右側のタイヤでゴツンと固いものを踏んだ感触がした。
正確に言うと、三匹の生き物が見えた瞬間
「狸!?いやいや尻尾がシマシマや!アライグマや!!アライグマて尻尾がシマシマや!テコテコ歩いて可愛いけど!しかも三匹並んで可愛いけど!対向車線からも車来てるし轢かれるぞ!横断の判断ミスやぞ!てゆうか対向車線の車より私の方が近い!?あれ!この距離は無理やぞ!無理すぎるぞ!なぜ横断したー!なぜー!」
と、色々なことを思ったのだけれど
頭がそれを思うだけの時間は、私の身体にとっては避けることもブレーキを踏むことも出来ない程の一瞬で
キャー!ゴツン!
と、なってしまった。
私の頭と身体との連携がもう少しマトモであれば…と反省する部分もあるが、その辺りを鍛えるのはなかなか難しそうだ。
普段からフロントガラスに羽虫をビシバシ当てて殺戮している私だけれど
大きな生き物、毛が生えていて温かくて目が潤んだ生き物を殺すというのはとても嫌な気持ちだ。
轢かれたアライグマを想って、その他の二匹(恐らく家族)がキューキュー鼻を鳴らして悲しむという情景まで想像してしまう。
小学校の図書室にあったシートン動物記が好きで、変わった動物を飼いたいなぁアライグマなんて素敵だなぁと考えつつ、調べてみるとアライグマは狂暴で飼いづらいことを知り残念に思った、そんな子供時代を過ごした私が
羽虫をビシバシ殺しても持たない感情と想像を、アライグマに対して持つことは大して問題の無いことだろう。
命の受け止め方は関係性によって全く違うのだなぁということを改めて思う。
もしもアライグマが狸だったとしたら、私はこんなにショックを受けなかったかもしれない。
いや、ぽんぽこ狸合戦を観てるからやはりショックか。
轢いた直後は後続があった為に停まることが出来ず、その後も一本道だったので引き返せず(というか動転していたのでとりあえず冷静になるために車を走らせていた感もあるけれど)
自宅に一旦帰ってから、肉片が付いてやしないかとビクビクしつつ車を降りた。
ドアを開けた瞬間、生臭さが漂い「これが獣の血の臭いなのか!」とドキドキしたが
なんのことはない、今週まわってきたごみ当番のネットが臭っていただけだった。
車は普段と何も変わらない状態だった。
その後、自分が轢いたアライグマがどういう状態に成ったのか知りたかったので、事故現場に引き返すことにした。轢き逃げは心に残りすぎてしまう。
暗く、多少の交通量もある道なので処理は不可能だと思ったが、念のためごみ袋と懐中電灯を車に積んでおく。
しかし、結局センターラインに血のあとらしきものが見えるだけで、その姿は無かった。
動ける状態だったのか、何方かが動かしてくれたのか、車の底にへばりついているのか、分からないが、自分が起こした後のことを見たかった私は少し残念だった。
1日経って今日になり、明るいうちにまた向かおうと思っていたアライグマ探しだが、結局は行かなかった。洗車も面倒だしやめておいた。
そして、この日記も朝のカマキリ話しからから長々書いたは良いが、もう面倒臭くて眠たくて、書き出した頃の自分を叱りたい気分だ。
15年前にシートン動物記好きだった少女は、フィクションでも題材に出来ないような愛も情も無い只のナマケモノの大人になってしまったようだ。
ただ、日本対グアテマラを日本対アライグマと見間違えてしまう程度のショックは残っている。
それから面白いことに、アルミ製のザルの二重になった網の間にムカデが入り込んでグッタリしているのを発見して超絶ビックリした際、アライグマの呪いだ!と思ってしまった。
テレビニュースの交通事故や頬っぺたの虫刺されも、アライグマの呪いだ!と思ってしまった。
アライグマが私のことを呪っているのなら、今頃全速力で台風が我が家の方向に向かっているだろう。
すまんかった。轢いたアライグマとその家族とその子孫よ。
無駄な殺生はよくないね。