金洙榮

2000年7月12日意 見 陳 述 書原 告 金洙榮原告団を代表して意見を述べたいと思います。 1959年に国民年金制度が始まったときから、わたしたち在日朝鮮人・韓国人は税金を払っているのに、排除されてきました。1982年に難民条約の加入に伴って国民年金法の国籍条項が撤廃されました。マスコミの報道を見て、私も年金がもらえるようになったと思い込んで喜び、京都市上京区役所へ障害年金受給のための裁定請求をおこないました。しかし窓口でだめだと言われました。担当者からの説 ...
もっと読む 2000年7月12日意 見 陳 述 書原 告 金洙榮原告団を代表して意見を述べたいと思います。
1959年に国民年金制度が始まったときから、わたしたち在日朝鮮人・韓国人は税金を払っているのに、排除されてきました。1982年に難民条約の加入に伴って国民年金法の国籍条項が撤廃されました。マスコミの報道を見て、私も年金がもらえるようになったと思い込んで喜び、京都市上京区役所へ障害年金受給のための裁定請求をおこないました。しかし窓口でだめだと言われました。担当者からの説明はありませんでした。何故もらえないのか解りませんでした。1910年に朝鮮が日本に併合され、植民地にされました。多くの朝鮮人が日本に強制連行されました。わたしはその事実をアボジ(父親)から聞かされて育ちました。私が生まれたのは、「サンフランシスコ条約」が発効した頃です。その時多くの在日朝鮮人が日本の国籍をなくしました。私は生まれて数年後にはしかにかかり、熱を下げるための注射をして耳が聞こえなくなりました。それは病院のせいだと思います。
私のオモニ(母親)は50年以上織物の仕事をしていました。私もオモニと一緒に20年以上働いてきました。しかし、バブル崩壊後、織物の仕事が少なくなり、会社の経営も悪化しました。私は弟やろうあ者の友人に頼み込んで土木の仕事を紹介してもらい、食いつないできました。下水道管をつなぐ工事をしていたとき、「耳が聞こえないと、土が崩れる音が聞こえない、危ないからだめだ」といわれたこともありました。仕事を始める前に、「私は耳が聞こえない」と言っておいたのに、話しが通じないと文句を言われ、自宅に戻ってから、電話がかかってきて「明日から仕事にこなくてもいい」と解雇されたこともありました。とにかく仕事をしないと生活できないので、別の仕事を探すとき、家族の写真を見せて「家族がいるから何とか仕事をさせてはしい」と何度も頼みました。
また、他の人々と同じ仕事をしているのに給料が少ないので理由を聞くと、「障害者は年金をもらっているから、それで充分だろう」といわれました。社長に「私は障害基礎年金をもらっていない」と、いくら説明しても理解してくれませんでした。社長の無理解さに腹が立ちました。在日障害者の立場を理解してくれないことが本当に悔しいのです。私のオモニは80歳になります。私に障害があり、年金がもらえず、仕事もないことを思い悩んで、生命保険をかけて自殺未遂を起こしました。私はオモニに「頼むから自殺は止めてくれ。生命保険のお金はいらない」といってオモニを説得してなだめました。私たち原告団は、在日外国人であると同時に「障害者」であるという二重の苦しみを背負ってきました。ろう学校の中では民族教育もなく、それぞれが民族差別を受けた経験をもっています。「いじめ」にあっても無視されることが多かったです。教師から露骨に帰化を勧められた者もいます。ろう学校を出ても就職差別があります。就職できた場合でも、社会保障の完備した企業ではありません。賃金も一般に比べて安いです。仕事を失えば生活保護しかありません。生活保護を受けると祖国にある先祖の墓参りにもできなくなります。原告の一人になる予定だった故金光孝氏の父母は韓国の済州島に埋葬されていますが、彼が生活保護を受けていたため、結局、死ぬまで墓参りができませんでした。本当に無念だっただろうと思います。今日本は不況で、わたしが就職することは大変困難です。それでも税金を納めつづけなければなりませんが、障害基礎年金の受給資格がないことの不利益はたくさんあります。「地域振興券」をもらえなかったのはその一例です。なぜ私たち在日外国人障害者がこのような不利益を受け、生活苦に追い込まれなければならないのか、理解できません。原告の中には、子供や年金のために「帰化」した者もいますが、「帰化」して選挙権が与えられても年金をもらえません。とてもおかしなことだと思います。また、在日外国人でも1982年当時20歳未満だった人達は受給でき、世代間の分断を生むようになってしまいました。このような矛盾を改め、原告各人に障害基礎年を支給せよとの判決を求めます。同時に、本来実施されるべき立法がされなかったことによる経済的損失と精神的苦痛に対する損害賠償を求めます。 以上
戻す

http://munenkin.hp.infoseek.co.jp/ple... より抜粋