没後120年 ゴッホ展
2月22日(火)〜4月10日(日)
名古屋市美術館
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【農は国の本なり】第2部・農地転用の闇〔5〕 農地には戻らない2009年2月5日
倉庫群を出入りするトラックは、トヨタ自動車の減産とともに減っていった。 「万一、倉庫が撤退したら、どうなっちゃうんだろう」 愛知県豊田市の物流倉庫群に農地を貸した地主は自問する。 わずかな年金を数える暮らしに別れを告げたはずだった。仮に倉庫が撤退すれば税負担が重い宅地として残る。「株みたいなもんだったかなあ。運送会社に逃げられたら、破産だわ…」。予想もしなかった現実に、ふと不安がよぎる。 トヨタがまだ絶頂期だった昨春、4・5ヘクタールの物流センターを開業した子会社の運送会社は「高岡工場、堤工場から、ともに15分以内」での倉庫建設を条件付けられた。市内にある県の工業団地には用地が余っていたが「15分の範囲外」のため、候補地から外された。 徹底した効率化を求める「カイゼン」の理論。在庫を持たない方針のトヨタの注文量に応じ、数十分おきに納入する。地元の自治会関係者は「田んぼが工場のラインに変わった」と驚いた。 耕作地を奪われた農業法人中甲(なかこう)の立ち上げにかかわったJAあいち豊田の常務理事柴田文志(58)は「工場から15分以内なんて、あちらの都合。もっと言えば、トヨタの都合でしかない。効率一本やりの最たるものが、あの物流倉庫」と異議を唱える。 転用申請書の利用期間欄には必ず「永久年間」と書かれる。そうでなければ、農振農用地の転用許可が下りることはないからだ。 「本当にこれでいいのかなあ、とは思ってた。不景気になれば真っ先に影響を受けるのは、こうした在庫を扱うところですから」 市職員の不安は的中した。転用手続きに詳しい地元の行政書士は「農地を埋めたまま、倉庫建設が中断し、放置されているところがある。不況の影響でしょう」と証言する。 空き倉庫となった後、転用を認めた責任を許可権者はどうとるのか。「農地に戻してほしいけど…」。そう答えかけた東海農政局の前局長は続けた。 「無理でしょうね。農地にコンビニとかができて、つぶれても、廃虚がそのまま残っているのをよく見ますものね」 農地法の規制がはずれた“転用後”の土地は農林水産省の管轄外。責任を問う相手は法律上、どこにもいない。 =文中敬称略 【農地の税制優遇】 食を担う公共性から、相続税は耕作継続(20年)を条件に免除。固定資産税も、豊田市の倉庫群付近の田10アールで年1400円。倉庫用地に転用後は同46万円と、約330倍に跳ね上がる。 PR情報
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