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【農は国の本なり】

第2部・農地転用の闇〔3〕 端っこ論理で拡大

2009年2月3日

幹線道路沿いに並ぶ倉庫群=1月、愛知県豊田市で、本社ヘリ「まなづる」から

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 広大な農地が、ドミノ倒しのように倉庫用地へと転用される。厳格な規制をかいくぐる特別な理屈が、そこにはあった。

 「一団の農地の周辺部にあり…」

 愛知県豊田市の倉庫群で、国が許可の前提にした市の調書にそんな記述がある。「周辺部」は役所言葉で「端」の意味に解釈するという。

 倉庫群一帯で、最初の転用は1984年度に除外申請があった農振農用地(青地)=図の1。川沿いで、対岸は寺の境内。いまは物流会社の倉庫が建つ。かつての農地が転用されたいきさつを、地元の農業委員だった野村守(86)は覚えていた。

 「あそこは端っこだから、影響は少ない、と認めた」

 ただ、その後も隣接する青地が次々に転用され、倉庫群ができたことには「こんなに建つなんて、想像もしていなかった。あそこらへんの青地は土地改良で国の補助金がどえらい入っとるのに。よっぽど規制緩和されたのか」と驚く。

 市農業委員会の事務局員(市職員が兼務)が「当時の者でないと正確には分からないが」と前置きし、解説する。

 「図から想像するに、最初の農地が周辺部と解釈され、そこをくさびに、その隣、そのまた隣へと広がったんでしょう」

 昨春物流センターが開業した4・5ヘクタールの農地(図の12)は、市農政課長児嶋宏之(54)によると「もともとは青地に囲まれ絶対に許可できない場所。それが、隣り合う農地(図の2、8)の転用で結果的に端っこ扱いになった」という。

 「ここは端っこだから、問題ないじゃないか。さっさと許可してくれ」

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 転用を受け付ける同市の窓口では、業者が催促する場面も珍しくない。

 実際、倉庫群の一帯は、トヨタに部品を運ぶ物流会社の間で、農地の奪い合いになった。最初に進出した会社の関係者は「うちが川沿いの端っこ(図の1)を転用したことで、ライバル社も『許可が出るならここだ』と自然に集まってきた」と証言する。

 “端っこ”の論理に歯止めがなければ、オセロゲームのようにすべての青地が、いずれ白地(農振農用地以外)になる。

 東海農政局の担当者は「農地は守りたいが、何もかも突っぱねていては、経済活動が回らない」と説明し、こう言った。

 「たとえこの場所で不許可にしても、ほかの農地が犠牲になるだけでしょう」

  =文中敬称略

 

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