金融市場は時に歴史を予言することがある。米国の南北戦争で、北部の連邦政府と南部の連合政府は、戦費をまかなうためにそれぞれ巨額の債券を発行した。当時の記録を調べると、北部政府の国債の金利の方がかなり低かったそうだ。
▼南部は綿花の一大産地である。欧州で150年前に売られた「コットン債券」を博物館で見たことがある。細かい線で描かれた風景や人物が美しい。現金ではなく、現物の綿花で元本と金利が支払われる仕組みだった。綿花の値段の高騰を見越し、一獲千金を夢見た投資家もいたはずだ。その多くは大金を失った。
▼魅力的な高い金利や、投機心をあおる決済の方法は、そうした工夫を凝らさなければ、債券の人気が出なかったからだろう。北部政府が低い金利でも資金を集められたのは、市場の大勢が北軍の勝利を予想していたからとも解釈できる。日本の国債が格下げになった。この国の未来は、市場の目にどう映るだろう。
▼不幸中の幸いというべきか。菅直人首相の「そういうことに疎い」という失言に、市場はほとんど反応しなかった。これがユーロ圏での話なら、ただでは済むまい。首相の存在感が薄いからか。それとも、日本の国債のほとんどが、日本国内で保有されているからなのか。危機感なき安定が長続きする保証はない。
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長期金利(%) | 1.215 | -0.010 | 28日 17:56 |
NY原油(ドル) | 89.34 | +3.70 | 28日 終値 |
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