国民一人ひとりや法人に番号を割り振り、社会保障給付や納税を適正にする「共通番号制」の基本方針を政府が決めた。2014年6月に番号を配布し、15年1月には運用を始めるといった目標年月も掲げた。
国民や企業の所得を正確につかむ番号制の導入は、高齢化と財政悪化が並行して進む日本にとっての急務だ。導入時期のメドを明示したのは前進だが、4年もかかるのは本来遅すぎる。合意形成と準備を急ぎつつ、入念に作業を進めてほしい。
基本方針によると、個人向けの番号は住民基本台帳ネットワーク、企業は登記の時の会社法人番号を、それぞれ活用する。6月に番号制の大綱を示し、秋以降に関連法案を国会に提出して成立を期す。必要な情報システムを整え、全国民に番号と本人確認用のICカードを配る。
現在は出所が複数にまたがる所得を個人単位で「名寄せ」するのが難しい。所得が低いと装って不当に給付を受けたり、所得をごまかして税を逃れたりする行為を防ぎきれない。番号制で公平な納税や効果の高い社会保障への道が開ける。
生活に困る世帯や子育て世帯を、減税や給付で支える「給付付き税額控除」の導入にむけた条件も整う。こうしたことで、消費税率の引き上げなどの税制改革に対する低所得者層の理解を得られやすくなろう。
所得の正確な把握で医療や介護の重複給付を抑え、財政の安定度を高めることも期待できる。
政府は共通番号制がどう生活の改善や社会制度の安定に結びつくか、丹念に分かりやすく説明すべきだ。一方、番号制導入の問題点も正面から説明し、どんな手立てを講じるかの段取りをきちんと示してほしい。
不安の筆頭に個人情報保護がある。番号によって集めた情報を行政機関が目的外で使いかねないとの疑念や、情報網への不法侵入で個人情報が漏れたり偽造されたりする危険が考えられる。自己情報を引き出そうとした記録を本人が確認できる仕組みや、プライバシー権を確立させる法律の整備が欠かせない。
番号を管理し活用する体制も重要だ。基本方針は税と社会保険料の徴収を一元化する「歳入庁」の創設を検討する一方、当面は国税庁や総務省が付番を所管すると併記した。歳入庁構想には財務省などの抵抗が強いが、着実に実現すべきだ。
番号制が必要という点で主要政党間に意見の隔たりはない。与野党は番号制を将来の国民に欠かせない社会の基盤と捉え、迅速な実現に向けた法整備などで歩み寄るべきだ。
番号制、基本方針、条件整備、納税、早期導入、高齢化
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