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秋葉市長の説明責任 会見で真意伝えるべき '11/1/21

 広島市長の座を3期限りで引くことを決めながら、秋葉忠利市長が記者会見や市議会での説明を拒んでいる。

 一方で、本紙を含む一部の報道機関に限って個別のインタビューには応じている。市広報課によると、信頼でき、マナーを守る記者かどうかで判断しているという。

 人気商売のスポーツ選手や芸能人なら許されるかもしれない。しかし公職にいながら、発言する場や相手をえり好みする姿勢は理解に苦しむ。

 市長は「そもそも選挙に出るか出ないかは公務でない」と言う。

 それなら、これまで3回の市長選はどうだったのだろう。記者会見で立候補の意思を明らかにしてきたのではなかったか。筋が通らないといわれても仕方あるまい。

 会見は記者の側が質問する。多様な視点からのやりとりを通じて、真意もより丁寧に伝えることができよう。

 とりわけ広島五輪の行方が気に掛かる。実現までの道筋がまだ見えていないのに、一番のけん引役がここで降板することに疑問を抱く市民は多かろう。

 構想に賛同している国内外の都市にしても市長の胸の内を知りたいに違いない。

 その答えがインターネットの動画サイト「ユーチューブ」に投稿した15分ほどのメッセージだった。言いたいことがそのまま伝わるのは確かだろう。

 「マスコミはストーリーを決めていて、それに沿う部分だけを当てはめる。こちらの言い分が全然反映されない」。根深い不信感があるようだ。

 大阪府の橋下徹知事も「意図と違う報道のされ方もある」とし、市長の言い分には一定の理解を示している。

 取材側が恣意(しい)的に事実をねじ曲げた報道をしているとすれば、言語道断といわざるを得ない。

 ただ、為政者の言いなりに右から左へとそのまま流すのがメディアの役割ではない。真意を踏まえた上で素材の取捨選択や評価が加わるのは当然である。

 鳥取県知事を2期務めた片山善博総務相は「報道に編集は避けて通れない。あとはジャーナリズムの見識や感性の問題」とする。私たちもしっかりと肝に銘じなければなるまい。

 政治家にとって言葉は命といえよう。広島市の平和宣言は世界中に伝えられている。殊のほか市長の演説のメッセージ性や発信力は高く評価されてきた。

 半面、足元に目を向けると、広島西飛行場の市営化や子ども条例の制定など積み残しとなりそうな懸案も少なくない。

 本紙には「記者会見は市民との絆を結ぶ場」「質問にふたをせず生のやりとりを」といった読者の投稿が寄せられている。記者会見の模様を動画や文字で伝えれば、市長の真意も市民に届くはずだ。

 2カ月半先の任期満了を待つまでもなく、できるだけ早くオープンな場で記者の質問に思うところを答えてもらいたい。




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