軍強制・関与 明記せず 歴博「集団自決」要因言及

展示見直し公開

2011年1月6日 09時42分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 【千葉】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」のパネル説明文から日本軍関与の表現を削除していた国立歴史民俗博物館(佐倉市、平川南館長)は5日、沖縄戦関連の展示内容を見直し公開した。「集団自決」について、手りゅう弾の配布で示された軍人の指示や米軍に対する恐怖心、投降を避けるべきだとした一般の観念などを住民の意思決定の要因として挙げたが、焦点だった日本軍の強制、関与の表現は明記されず、沖縄側が求めた進展はなかった。

 沖縄戦などをテーマに、昨年3月に第6展示室「現代」を開設した同博物館は、軍関与削除に対する県内外の批判を受け、展示内容の修正を決定。学外の学識経験者などを交えたリニューアル委員会で4度にわたり協議し、見直した。

 これまでは「戦場の民間人」の項目に盛り込まれていた「集団自決」を見出し付きで取り上げ、「集団自決」を招いたさまざまな要因に言及したとしている。米軍の恐怖をあおり、投降を禁ずる軍の布告を同時に掲示した。

 また、沖縄戦特有の「住民の戦力化」と「軍・官・民共生共死の一体化」を指摘。日中戦争以降に国民総動員体制や皇民化政策が強化された「戦時体制下の沖縄」、防衛隊や学徒隊の動員など住民を戦力にしていく「防衛構想と実態」などの項目を新たに加えた。市町村史などの証言資料を来館者用図書室に設置した。

 平川館長は「現在の学界の研究状況を十分反映していないという意見から、展示意図が十分に伝わっていないとの反省に立ち再検討した」と言い、今後も検討し、改善を続けるとした。

 沖縄戦に詳しい高嶋伸欣琉球大名誉教授は「軍関与、強制が明記されず、期待はずれだ。『追い込まれた』という記述が削られ、強制された集団死という『集団自決』の位置付けをトーンダウンさせる内容になった」と批判した。

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