菅さん、子ども手当を白紙にすることから始めたらどう
昨日、一部だが菅首相の国会答弁を見た。生彩がなかった。小学校でイジメにあってしょげながらうつむいて教科書を音読している子供のような印象だった。過去の首相もそんなもんだといえばそうだが、菅さんの場合はさらにひどいのではないか。
これも昨日だが、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズが日本国債の長期格付けを引き下げた。失笑を買うようなことするなあ、S&P。日本国債の格付け下げても意味ないと思うが、さて、僕らの菅首相。官邸で記者団に答えるに、「そういうことに疎いので、(コメントは)改めてにさせてほしい」(参照)と。そうだろう、経済には疎そうだし、と思うが、2002年には公式サイトこう言っていたものだった(参照)。
2002年5月31日 00:00 :
日本の国債に対するムーディーズの格付けが二段階下がった。景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果。日本の国債はほとんどが日本国内で消化されその多くは銀行が買っている。通常なら格付けが下がれば国債も下がるのだが銀行は資金運用先が国債以外に無いため、国債の価格が下がらないという奇妙なことになっている。外国に資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する恐れがある。能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか。
苦笑・失笑以前に、ひゅるるるぅっていうか、寒くもの悲しいごんぎつねみたいな感じがしてしまう。
失言の部類ではないのかもしれないが、たちあがれ日本を離党した与謝野馨氏を経済財政担当相起用したことでも、「社会保障改革に高い見識と志を持っている方だ。責任者として内閣に三顧の礼を持ってお迎えした」というのだが、三顧の礼かよ。
辞書を見るに、「真心から礼儀を尽くして、すぐれた人材を招くこと。また、目上の人が、ある人物を信任して手厚く迎えること。▽「顧」は訪ねる、訪れること」(参照)なので、そりゃ菅首相が目上だわな、くらいなものだが、この言葉は言うまでもなく三国志から。隠棲していた諸葛亮こと諸葛孔明を軍師に迎えるべく蜀の劉備が訪ねたが、孔明は身を隠して会えず、再訪しても会えず、ようやく三度目に会い、お迎えできたという話である。
あー、与謝野さんの場合、違うんじゃないか。彼はうずうずしていて、北沢さんのお声を待って、ほいほい民主党にくっついたんでしょ。こういのを三顧の礼というのか。
前振りはこのくらい。
与謝野氏の経済財政担当相起用はどう考えてもおかしい。どう菅首相が繕うのか(参照)。
――比例に当選してその後離党した大江議員について、当時総理が「離党と共に辞職すべきだ」と発言しながらも、今回与謝野氏を起用したことに野党から批判が相次いでいますが、総理は「改革という大義において起用した」と答えました。具体的にあの時と今回の与謝野氏のケースとの違いは何か教えてください。
「私のなかでは、社会保障と税の一体化というのは、本当に、どなたが総理になっても、どなたが内閣を担当しても、ほんとに避けて通れない大きな課題ですから、そういうものを進めていくうえで、それに対する見識や志をもってのぞもうとしている、そういう存在が与謝野さんだと思ったんです。そういう意味は大きい。そういうことです」
政治家なら普通、国政の志は持つものだが、問題はどういう志を持つかということ。そしてそれを政党である民主党は掲げてやってきたはずなのだが。毎日新聞「菅首相:年金改革「白紙で議論」 代表質問で」(参照)より。
菅直人首相は27日の衆院代表質問で、年金制度改革に関し「ある意味で白紙の中で、あらゆる提案を議論の場に載せて検討したい」と述べ、民主党案にこだわらない考えを示した。
菅首相が「ある意味で」と言い出したら、どういうことになるかについては、以前、「菅新首相会見から、「ある意味」を抜き出してみた: 極東ブログ」(参照)に書いたが、ようするに「なにをおっしゃっているのかわかりません」ウサギになってしまう。
民主党は、政権取ったら、年金制度改革は白紙にするということなのだろうか。
考えてみれば、後期高齢者医療制度も実質、麻生政権のまま引き継いだ。高速道路無料化はお笑いとなった。八ッ場ダムについてはもう触れないのではないか。高校無料化ってなんかメリットがあったのか、以前から補助厚かったのに。
挙げ句の果ては環太平洋経済連携協定(TPP)推進を言い出した。菅さん、どこまで自滅が好きなんだろう。TPPにはメリットとデメリットがあり、メリットを得るにはデメリットへの対応の合意ができてからでないと無理に決まっている。
ここまでなにもかも白紙にするなら、もう一番変てこな政策となってしまった子ども手当を廃止にすることから始めたらよいのでないか。
こういうとなんだが、私は、民主党の子ども手当という政策自体は悪いものではないと思う。ネーミングが変で、どうやら民主党員も結局理解してなかったようだが、あのウルトラ頭脳の鳩山さんは理解していた。これは、出生率を増やすとか、子供の成育環境をどうたらというのではなく、高齢者層を中心に所得移転を強制的に行うということだ。未就労の子供に所得を与えると理解してもいい。
だからと言うべきなのだが、子ども手当は規模がでかくなくては意味がないし、必然的に税制も根本的に変革する必要があった。所得移転なんだから当然高齢者層を中心に増税となる。国民からカネをむしり取って再配分するということだ。
だが、これはもう民主党政権の最初から頓挫。地方自治の児童手当を食うに至っては本末転倒。そして、残るは増税だけ。与謝野さんに至っては、子ども手当も消費税でというお考えのもよう(参照)。
このまま民主党がつっ走れば、ただ増税だけが残り、所得再配分にはならない。日本経済の宿痾は高齢者がカネを溜め込んでいることなのに。そしてそれをじっくり時限爆弾になるように温めている。
菅首相、すでに形骸化してしまった子ども手当をやめるべきでしょう。
実際、できるわけもないのだし。与野党の合意というなら、まずそこを土俵にしていけばいいのではないか。
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