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性犯罪前歴者の監視案 宮城県に意見百出
宮城県が検討を始めた性犯罪前歴者らの行動を警察が常時監視する条例の制定について、全国から賛否の意見が寄せられている。電話などによる意見は28日、計100件に達し、行動監視に賛成が51件、反対は33件で、その他が16件となっている。
県によると、差出人は県外55件、県内25件、不明20件。電話やメール、手紙、県のホームページから投稿可能な「知事への提案」で届いた。居住地別の賛否は、県内が賛成7件、反対13件。対照的に県外は賛成32件、反対13件で、条例化を支持する意見が7割に上った。 反対派は「前歴者とはいえ、基本的人権は守られるのが当然。反省して二度と性犯罪に手を染めない人もいる」と指摘。監視対象にされることで「家族が社会的いじめに遭う」と懸念し、条例化されたら「県外に引っ越す」という声もあった。 「警察に強大な権力を与えることは危険」「ゆくゆくは性犯罪者以外にも監視が及ぶのでは」と危惧する意見も多く、「現行の憲法下で条例化はあまりに無謀」と検討を中止するよう求めた。 これに対し、賛成派は「犯罪(前歴)者の人権も守る必要はあるが、それ以上に市民の安全が守られるべきだ」と強調。「監視されていると思えば再犯抑制につながる。加害者を救うことにもなる」と効果に期待した。 「前歴者の教育や矯正も重要だが、現実に再犯は後を絶たない」「女児、小学生を持つ親は(犯罪に巻き込まれる)心配を抱えている」との声もあり、「被害者の立場を優先すれば必要な施策」と検討方針を評価した。 県環境生活部は「監視に賛成の意見が多く驚いたが、条例が適用される県内で反対が多い。再犯抑止の狙いはいいが、監視はどうかという総論賛成、各論反対の民意があるのではないか」と分析する。 県が同様に条例化の検討に入った児童ポルノの「単純所持」禁止に対しては、これまでの集計で計50件の意見が寄せられ、反対が41件に達した。
◎「憲法抵触の恐れ」「刑終えた人に新たな刑」 <仙台弁護士会 反対声明発表>
宮城県が検討している性犯罪前歴者らを常時監視する条例案に対し、仙台弁護士会は28日、「憲法に抵触する恐れがある」として制定に反対する会長声明を出した。 声明は、衛星利用測位システム(GPS)端末を使った性犯罪前歴者らの監視は「既に刑を終えた人に新たな刑を科すことに等しい」と指摘し、憲法が禁止する二重処罰に当たると主張。DNAの提出義務については「裁判所の令状によらない証拠収集につながる恐れが大きい」と非難した。 仙台市青葉区の仙台弁護士会館で記者会見した新里宏二会長は「性犯罪者に関する宮城での再犯率や他県と比べるデータもなく、条例案の検討は拙速すぎる」と批判。玉山直美副会長は「韓国やフランスでも性犯罪者にGPS携帯を義務付ける法律はあるが、裁判を経た判決での刑罰の一つ。条例案とは全く別物だ」と述べた。 仙台弁護士会は同日、県議会議長や県警本部長らに声明文を送付した。
[宮城県の行動監視条例] 宮城県内在住の性犯罪前歴者らに衛星利用測位システム(GPS)端末の携帯を義務付け、警察が常時行動を監視する内容。強姦(ごうかん)、強制わいせつなど性犯罪で服役した前歴者、ドメスティックバイオレンス(DV)で裁判所から保護命令を受けた加害者が対象で「再犯の恐れが高い」と判断された場合に適用される。村井嘉浩知事は年度内に条例化の可否を判断する。
2011年01月29日土曜日
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