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きょうの社説 2011年1月29日
◎日本国債格下げ 評価に振り回されぬように
米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債の長期格付けを
「AA」から「AAマイナス」に引き下げた。与謝野馨経済財政担当相はBSテレビ番組で「格下げは(消費税増税を)早くやりなさいという催促だ」と述べたが、一民間会社の評価を「外圧」のごとく言い立てて、消費税引き上げの口実にしてほしくない。デフレ経済下にあって国内の金融機関は融資先が見つからず、だぶついた資金が国債に 流れている。国債の95%は国内で消化されており、格下げで国債が急落し、長期金利が上昇する事態は考えられない。実際、格下げ報道で1ドル=83円台にまで急落した円相場も、あっという間に値を戻した。 S&Pやムーディーズなどの格付け会社は、サブプライム債券に、最高格付けのトリプ ルAを与えていた。S&Pには、貸し倒れの危険が高い低所得者の住宅ローンを組み込んだ「ジャンク債」を高く評価し、サブプライム問題を引き起こす要因をつくった責任がある。ムーディーズは2002年に日本国債をアフリカのボツワナより低評価にしたこともあった。 日本や中国が大量に買っている米国債は常にトリプルAで、日本国債は中国並みの評価 というのはいかがなものか。格付け会社の評価基準はあいまいで、正しいとは限らない。無視はできないにしても、さまざまな思惑が込められた格付け会社の評価に振り回されるのは良くない。 菅直人首相は、国債格下げについての記者の質問に対し、「そういうことには疎い」と 述べ、経済オンチぶりをさらけ出した。財務相まで務めていながら、この程度のことに即答できないで、本当に国のトップリーダーが務まるのか。菅首相は、自身の「疎い」発言について「情報が入っていない」という意味だったと釈明しているが、苦しまぎれの言い訳にしか聞こえない。 S&Pは格下げの理由として、日本の経済的困難を解決する与党民主党の能力に疑問を 呈し、国民の政治への信頼感の欠如を挙げている。問題の根本は、経済よりむしろ日本の政治状況にあると見てよいのではないか。
◎学校支援地域本部 補助縮小で途切れは残念
学校の教育活動をボランティアが支える「学校支援地域本部」の石川県内の取り組みが
、新年度からの国補助の縮小で、事業まで縮小する動きが出ているのは極めて残念である。文部科学省が2008年度に始めたこの制度は、地域コーディネーターを仲介役に、学 校側の依頼に応じて、ボランティアや地域の人材が学習支援、見守り活動などを担う仕組みである。県内ではすでに114の小中学校に広がっている。うまく機能させれば、学校支援という一義的な目的を超え、学校を核にした地域コミュニティーの活性化にも役立つはずである。そうした意義を考えれば、国の補助が減ったからといって事業を途切れさせるのは惜しい。 2011年度からの新学習指導要領実施で授業内容が増えれば、先生が授業に専念でき る環境づくりは一層大事になる。支援本部の役割もますます重くなろう。 国の全額補助は当初から3年間と決まっていたが、文科省自ら「社会総がかりの国民運 動」と大きく位置づけた事業である。現場の状況をみて現行の仕組みを延長する選択肢もあったのではないか。県教委も現場の思いにこたえ、支援策を前向きに探ってほしい。 県教委によると、学校支援地域本部の設置校は、初年度の93校から20校近く増え、 支援内容も授業の補助から図書室での本の貸し出し、校庭の花壇整備、部活動やスキー合宿指導、遠足の引率など幅が広がっている。 今まで住民が担ってきた活動もあるが、学校現場のニーズに沿い、より組織的に実施す るのが地域本部である。東京・杉並区立和田中の試みなどを参考にした事業だが、3年を経て、これからは地域の実情に合わせ、主体的に活動を肉付けする段階といえる。 地域本部の事業費は新年度から国、県、市町が3分の1ずつ負担する。このため、各市 町では活動を絞り込んだり、経費を抑えるなど事業を縮小する流れが出ている。学校と地域が連携する新たな機能が育ってきているなら、そこに一定の予算を投じても住民の理解は得られるのではないか。
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