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安保研究機関 「県外移設」の理論武装を2011年1月5日  このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

 沖縄の米軍基地問題を含む日本の安全保障全般を議論する研究機関の設立に向け、県が近く具体的な調査、検討に着手する。
 仲井真弘多知事が昨年の知事選で公約した「日米共同声明の見直し」「普天間飛行場の県外移設」を実現するには、国民を納得させる明快な理論が不可欠だ。早期に研究機関を創設し、「県内移設」の不合理を、学術的な視点からも内外に示してほしい。
 前原誠司外相は新春インタビューで「日本の安全、周辺地域の安定のために米軍の存在は極めて有効。特に海兵隊は即応展開能力があり、そういう面での存在感も極めて大きい」と言明している。
 沖縄に海兵隊を置く理由については「県外、国外移設を模索したが結果として受け入れてもらえなかった。水面下で受け入れる意向を示した首長もいたが、運用上、適していなかった」と釈明した。
 基地を沖縄に押し付けるための詭弁(きべん)にすぎないが、事情を知らない人にはもっともらしく聞こえるだろう。県が真っ先になすべきなのは、米国の意を受けて官僚がつくりだした政府見解を筋道を立てて論破することだ。
 在日米軍専用施設(面積)の74%が集中する沖縄の県土は国土のわずか0・6%。99・4%を占める46の都道府県に、たった480ヘクタール余の普天間飛行場を受け入れる場所さえないと言い張るのは、子どもだまし以外の何物でもない。政府が県内に移設先を求める理由は、県外に移す意思がないからだ。
 在沖海兵隊の抑止力にも疑問が多い。海兵隊は専ら外国の領土に進攻する際に用いられる「殴り込み」部隊だ。沖縄に1万数千人も駐留しているが、尖閣諸島付近では中国漁船衝突事件が起きた。ちっぽけな尖閣の防衛にさえ“抑止力”は効いていない。
 県外に住む人々は安全地帯に身を置き、事実上、沖縄だけに安保の負担とリスクを負わせている。差別的な対応だ。わが国の安全のため米軍の駐留が必要と言うのなら、不公平を改めるのが政府の務めではないか。
 普天間飛行場は住宅地に囲まれている。発着する飛行機やヘリが墜落でもしようものなら、たちまち大惨事になりかねない。これ以上放置することは許されない。
 仲井真知事は、安保研究機関の研究成果を基に、誤った安保・基地政策の是正を政府に迫るべきだ。


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