2011年1月28日15時20分
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キョンキョン、と呼ぶのは、何となくためらわれた。
1980年代を代表するアイドル。フリルのミニスカートで「渚のはいから人魚」や「なんてったってアイドル」を歌い踊る。その残像が頭にあると、女優業が板に付いた現在の居住まいに戸惑う。遠くを見ているような、達観した風情で……。
新作映画「毎日かあさん」は、ほぼ全作品を読んでいる西原理恵子の漫画が原作。好きな作家だから、かえって出演したくなかった。その気持ちを翻したのは、監督やプロデューサーから聞いた「見る人が元気に、たくましくなれる映画になればいい」という話だった。
母親役は経験済みだが、今回はわんぱく盛りの6歳と4歳の子供に振り回される。「小さい子を育てると、毎日大きい声を出さないといけないのかって。カメラが回ってない時も『もう、走んない!』みたいな」
とはいえ、割と自然に演じられるとか。「小さい子が拾ったものを食べたら、女は『ダメ』って絶対言うと思うんですよ、知らない子でも。男より子供と関わることが多いから」
家族を混乱させるアルコール依存症の夫(永瀬正敏)と一度は離婚。闘病する姿を見て再び受け入れる。永瀬とは実生活でも夫婦だったが「記憶にないですね、昔過ぎて。共演できているのは、いろんなことをお互いに消化したから」とあっさり。
歌手に女優に、新聞の読書委員。いろんな顔があり、肩書は「自分からは言わない」。そんな「コイズミ」も、2月5日の公開日前日に45歳に。将来の理想像がある。生きてきたことが表情や言葉に出てくるような、「格好いいおばあちゃん」だ。
自分の経験、言葉、考えていることが、40代から調和してきたと実感する。「老いに向かって変わっていく、その入り口が見えてきた気がして。それを、進化と呼びたいです。10年、20年、30年後がすごい楽しみ。いまは45歳の若造、って感じ」
奔放な素顔も。「年末年始に、外へ出たのは1回だけ。買い物で仕方なく」「家では猫と寝たり、本読んだり、映画やテレビを見たり。仕事以外の趣味もない」「出無精で、人に会うの、ホントに嫌いなんです」
浮世の雑事に惑わされない、仙女のよう。アイドルの進化形が、輪郭を現し始めた。
(文・井上秀樹 写真・伊ケ崎忍)