満足出来る出産をする為に


石井信厚

 出産は、女性にとって人生最大の感動と喜びに満ちた瞬間だろうと思う。残念ながら私は男なのでその感動と喜びを味わう事は出来ない。それに変わる物も男にはない。そんな私が、なぜ出産を取り上げ文章にしようとしたかと言うと、何年か前に年配の助産師さんと知り合い、彼女から色々な話を聴くうちに、何故か現代の病院での出産やそれに関る法律、出産する年代の人達に違和感を感じ始めた事から色々調べ始めたのがきっかけとなった。 また、以前からホリスティック医療に関心を持ち、自然治癒力やホメオパシー、千島学説やマクロビオテックなど多くの現代医療に逆行するような治療法に興味を持っていた。これらのことが基となり多くの医療関係者に話を聞き、勉強会なども開いて行きたいと思っている。

 出産に関しては、多くの問題が有る事は知っていた。しかし、子育てをしている訳でもない私が興味を持てる筈もなく今日まで過ごしてきましたが、助産師さんに会って、こんな出産を続けていたら将来の日本が、アメリカの様になってしまうのではないかと、とても不安になってくる。

 戦後、アメリカGHQの指導の下、出産は病院で行なうようになってきたが、実際に病院で出産が増えたのは第一次オイルショックの頃からです。個人の産婦人科病院は、その頃から豪華ホテルの様な入院設備や、豪華な食事を女性誌などで宣伝し、若い女性の支持を集めてきました。 「本来、出産は病気ではなく動物が自然な営み(出産)の中で行なってきた生理現象なのです。」と助産師さんは私に力強く語ってくれた。 日本には、昔から産婆と言う人がいて出産に立会い安全に出産できるよう介助してきました。自然分娩を望むお母さんが非常に多い日本では、医師の都合や病院の都合で医療行為が施される現状は、健全な出産の妨げでしかない。のか?
 はっきり言って、帝王切開や会陰切開などの医療行為をすれば、医者は莫大な医療費を請求できるのです。おおまかな金額だが、自然分娩で、助産師さんや医師が妊婦さんに請求するのは一週間の産後入院を含めても、35万から40万位の金額なのだ、しかし、会陰切開や帝王切開をした場合、50万から100万位の金が医者には入って来る。だが、それだけの金額を妊婦さんが払う訳ではない。だから妊婦さんやその家族には判らない。また、医療保険の計算によっては、自然分娩より妊婦さんが支払う金額が少なくなる場合もあると、出産した友人に聞いたことある。
 また、日本助産師会のパンフレットを見ると、帝王切開をした経験者(妊婦さん)は、助産院での出産は出来ませんと、はっきり表紙に書いてある。また、逆子やへその緒が首に巻いた子、双子等など、日本助産師会のパンフレットに堂々と表紙に書いてある事に驚かされた。なぜなら、自分達の仕事を宣伝する為のパンフレットに自分達が出来ない事を宣伝するなんて事は、長い間コマーシャルに関って来た私には、理解が出来ないことでした。日本助産師会は、「助産師の仕事はもういらない、全て出産は医師に任せれば良い」と言わんばかりのパンフレットでした。また、地方の助産師会もこの様なパンフレットが配布されても、抗議もしていない。多くの助産師は、今や病院勤めの中で医師の顔色を伺いながらの仕事に慣れてしまっているので抗議どころか、うなずく助産師すら多い。


 助産師は、助産師になる為に看護師の免許を取り、その経験を何年も積んだ上で助産師になる為の国家試験を受け、助産師になっているにも関らず、なぜ、医師の顔色を伺いながら仕事をしているのですか?

 江戸時代、大名行列を横切れば「無礼打ち」で切り殺されても文句も言えない時代に、産婆さんは、大名行列を堂々と横切れる唯一の存在だったのですよ。昭和の後半に助産師と名前を変え、一般の人々に対し助産師が認知されていない事は、まさに、助産師会や助産師自身が広報活動を怠った結果なのです。産婦人科医師不足の問題が大きく取り上げれられている今こそ、助産師の存在をアピールする良い機会ではないでしょうか?


 ホリスティック(代替療法)を提唱する先生達は、人間には自然治癒力や免疫力がありガンでさえ治す力があると言っています。また、今の医療には、大きな問題があるとまで言っています。それは、ガン治療や難病治療の事だけでなく、患者を人として尊重し、モルモットや医師の研究材料とした扱いに不満を持っているということなのです。それでも、患者は自分の病気が治る事を信じ医師を信じているにもかかわらず、多くの医師は医療報酬や勤務時間の改善に終始したり、自分の研究に役立たせる事に没頭しています。医師や教員は一昔前までは「聖職」と言われ、自分の事よりも患者や生徒の事を第一に考える職業で、それに、憧れ尊敬されて来ました。しかし、その「聖職」も地に落ち報酬第一の医師や教師が増えている事は嘆かわしい事です。


 私の知り合いが、出産後に書いた物を紹介したい。

『助産院で、こんな素晴らしい出産が出来るなんて、想像をはるかに超え、とても感動的でした。やり直せるなら上の子たちをもう一度、お腹に戻して出産しなおしたいくらいです。一人目の長女、二人目の長男、それぞれ違う産婦人科で出産しましたが、それぞれ納得いく出産とはいきませんでした。

一人目の長女は自然分娩を望む書類を出したにも関らず、時間がかかり過ぎるという理由で陣痛促進剤を打たれ、いきんでも赤ちゃんが出ないからと会陰切開されお腹をキューキュー押され、それでも出ないからとバッキュームの様な吸引機を押し込まれゴーゴーと引っ張り出された。とんでもなく痛くて恐ろしい出産でした。出血も多くてホントにフラフラでした。

二人目の長男は、うって変わってスルッと産れたけど立会いも、出産直後の赤ちゃんを抱っこする事も出来ず淋しいものでした。身内すら抱っこさせてもらえず・・・ 出産ってこんなものなのかなぁ〜って。楽しいとは、程遠いものでした。産後の入院生活だって病室ですればいいようなものの、態々授乳室まで行く事「休んでばりいないで、歩いて、動いて」とせかされ、ゆっくり心身リラックスとはいきませんでした。』

2008/03 Y.Aさん


 この様に、妊婦さん自身が感じて書き残すほど病院での出産には、問題を提起している。そして、もう一人の妊婦さんは次の様に書いている。


『一人目の子は、病院で産んだので、助産院での検診(健診)、出産、入院、全てにおいて前回との違いに驚くばかりでした。もっと早く助産院のことを知っていたら、病院で嫌な思いをすることはなかったのになぁ、私は長男の出産の時の会陰切開のジョキ、ジョキという音と夫が間違って撮ってしまった私の血まみれの体と血まみれの赤ちゃんの写真がトラウマになりお産がとても恐怖でした。でも、「出産とはそういうものなんだ」と思っていたので誰にも言えずに隠してきた気持ちだったのです

2007/12
 N.Fさん


 これもまた、病院での経験を書き残すほど、大変な経験をしている。この様に、病院での出産が人間としての出産というよりは、馬や牛のお産のように扱かわれていることに驚く。この様な出産ならば獣医の方がマシかもしれない?
 この様な出産が、病院内で当たり前の様に繰り返されているのです。出産経験をしたお母さん達の中には、もっともっと悲惨な思いを経験し、人にも言えず、心の中で悔やんでいる人も多い事を察する事が出来ます。また、この様な出産をした母親の中には、我が子に対しての愛情も、間違った物になってしまう事も危惧されます。多くの母親や父親は、我が子に間違った愛情など施す事はないと思いますが、アメリカやブラジルなど帝王切開の多い国の犯罪率等を見ても多い事に、心配せざる得ません。西洋医学の安全とは、訴訟されない事に対しての安全で、人が人としての安全とは大きくかけ離れた物の様に思えてなりません。 また、厚生労働省も、妊婦や患者側に立って医療を監視するのではなく、製薬メーカーや病院、医師、企業の立場からの目線で見ている様な気がします。エイズ問題や肝炎問題など今までの政策も全て、患者側からは、かけ離れた製薬メーカー側の保護に終始しました。この様な国の政策や、医師の都合での出産がいかに危険な物かを、妊婦さんや、これから結婚し出産するであろう若い人達に知らせなくてはいけないのです。


 話を戻さないと・・・

 私が知り合った産婆さん(助産師さんだがあえて)は「逆子だろうと臍の緒が巻いていようが双子でも、ちゃんと産まれていたんだ」と言い切った。また「今は、子供が少ないから、死産とかになると大変な事になるが、昔は栄養の面からもリスクがあったので子沢山だったんだよ」と話してくれた。
 この話をするのは何故かと言うと、今、助産師会や、医師会では「逆子をお母さんのお腹の中にいる間に治してはいけない」と言っている。また、医学生や助産師教育の中でも逆子の治し方などは教えてはいない。助産師会や医師会がその理由もはっきり言っていない。医学論文が何より大切な医学者や医師が逆子を治さないで帝王切開をすることが、医学的に最高の方法と書いた論文などあったら見てみたい物だ。産婆さんの時代、母体や胎児に負担をかけない為にお腹の中に居る間に逆子を治し出産してきたが、今は、全て帝王切開をしている。なんの為に少しでもリスクがある場合、帝王切開をしなくてはならないかというと、医師の技量不足と医療報酬が反比例しているからだ。今の医療報酬制度は、技術が無く自然分娩出来るにも関らず帝王切開や会陰切開した方が、報酬が多いんだ。また時間的にも帝王切開すれば、勤務時間内に出産が出来るなど医師の都合が優先されている。その為、医師は妊婦さんが8カ月に入ると、今までの、健診(検診)結果を見せ、「帝王切開をしなくてはいけないかも知れない」と曖昧な事を言って布石する。この言葉で何人の妊婦が不安を感じて帝王切開をした事だろう。これで、いつでも医師の都合の良い時に帝王切開が出来るのである。しかし、そこには助産師がいる筈なのに助産師の話を聞くことはない。


 新しい命を授かった若い両親も、それまでの教育の中で、出産の大切さや、出産の危険性に付いて学ぶ事は少なく、医師の言う事を聞くしかない。そんな知識のない若者を騙す事など、人生経験の豊富な医師に取っては屁の河童だ。
 それと、多くの人が誤解する言葉がある。「けんしん」というと、普通の人は「検診」と書く。しかし、この検診は病気を見つけるための物で、本来妊婦けん診は「健診」と書く。こちらの健診は健康状態を把握する為の物で、市町村から補助が出ているので妊婦は病院や医療機関で料金を請求される事はほとんどない。しかし「検診」は、違う病気を見つける為の物だから多額の料金を請求される。病院や医療機関では「健診」では儲からない為、いつの間にか「検診」になってしまう。同じ「けんしん」という言葉に妊婦や患者は錯覚をし料金を払ってしまう。この様な詐欺まがいの事も、まかり通ってしまうという事になる。それに、国は出産まで14回の妊婦健診が出来るようにと、県に対し補助金を出している。しかし、岐阜市などは、出産まで14回分の補助金が出ているにも関らず、5回分しか認めていない。それも、完全な健診が出来る分の補助金を出していない。(金額は、知っているがここではあえて書かない)では、その補助金は何処へ行ってしまったのだろうか?(オンブズマンに期待したい)
 こんな、無茶苦茶な事を平気でしているのです。社会保険庁と同じ事をしていると、疑いを持たれても仕方がない事ではないだろうか?

 この問題に関しては、助産師と医師が一緒になって追求しなくてはいけない問題だと思う。


 ここでは、余り関係ないことですが、環境問題も今から出産する親に取っては大変な問題だと思う。なぜなら、例えば地球温暖化の問題を取り上げてみよう。

 日本では余り感じないかも知れないが、今まで日本は、熱帯雨林の木材を大量に輸入してきた。しかし、熱帯雨林の木材が底を付き始め、それに変る木材を輸入し始めた。それが北洋材なのだ。熱帯雨林の森を切る事も大きな問題だが、複雑になってしまうので、ここでは止めておく。この北洋材は、永久凍土の上にありその木を切る事で永久凍土に日が当り、溶けて小さな池になり、その池はやがて湖ほどの大きさになる。それだけならまだ良いのだが、この下には、メタンガスが大量にある。このメタンガスが溶け出す。そうなるともう人間には止められない。このメタンガスは、二酸化炭素の23倍もの温室効果を進めてしまうのです。この様な悪循環を止められるとするとそれば、ここ何十年で何か手を打たなければなりません。今日産まれた赤ちゃんが、二十歳になり投票権をもって「この社会を変えるんだ」と言っても、もうこの環境問題を変える事は出来ない社会になっています。だから、この悪循環を始める前までに、止めなくてはならないのです。と日夜講演に飛び回る人達がいます。
 この様な、問題も含め社会がどんどん変化していく中で、それが良い事と信じて来た事の間違いに気付き、正しい方向に変えようとしなくてはいけないのです。今助産師の存在と、助産師がいかに健全な出産の手助けをしているか、を広く知ってもらう為に出産の現状を知らせなくては、これから先健全な出産は望めなくなるのではないでしょうか?


 私は今回、産婆さんと呼びたくなる様な助産師さんと知り合い「自然なお産」の素晴らしさと、産婆さんに受け継がれた知恵と技術を、助産師と言う名前に変り、絶やしてしまう事の無念さを感じずにはいられない。


2009/02/02