ライフ【産経抄】1月24日2011.1.24 03:00

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【産経抄】
1月24日

2011.1.24 03:00

 広島で原爆によるケロイドに苦しんでいた25人の少女が昭和30年、渡米して治療を受けた。仕掛け人となったのは、ノーマン・カズンズというジャーナリストだ。原爆孤児の援助にも奔走し、「アメリカの良心」と呼ばれた。

 ▼カズンズはまた、医師から見放された難病を、独自の療法で克服したことでも知られる。その経験から、医療における「笑い」の効用を広く訴えた。笑いを生み出すユーモアの本場といえば、英国である。

 ▼もっとも、英BBC放送が昨年12月放映したお笑いクイズ番組の内容は、効用どころか被爆者の心を深く傷つけるものだった。いや、日本人だったら不快に思わない人はいないだろう。番組は、出張先の広島と、帰宅後の長崎で二重に被爆し、昨年93歳で亡くなった山口彊(つとむ)さんを、「世界一運が悪い男」などと、ジョークまじりに紹介していた。

 ▼在英邦人から指摘を受けた日本大使館の抗議に対して、BBCと制作会社は謝罪声明を出した。この国のメディアは、第二次世界大戦中の日本軍による英国人捕虜の取り扱いを、糾弾することには熱心だ。一方、原爆の惨禍には関心が薄い。不謹慎な番組も、無知のなせる業といえる。

 ▼山口さんは、平成14年に、「人間筏(いかだ)」と題した歌集を出した。英訳もある。〈大広島炎(も)え轟(とどろ)きし朝明けて川流れ来る人間筏〉。広島に原爆が落ちた翌朝、市内の川へ足を向けると、川面に人と人とがひっついて流れていた。それがまるで筏のように見えたという。

 ▼記録映画「二重被爆」にも出演し、ニューヨークの国連本部での上映会にも足を運んだ。番組のプロデューサーには、山口さんの過酷な体験に触れる機会がいくらでもあったはずだ。

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