スポーツ【産経抄】1月23日2011.1.23 02:53

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【産経抄】
1月23日

2011.1.23 02:53

 ちょうど30年前の昭和56年春、当時の横綱・北の湖(現北の湖親方)が大阪府庁を訪れたことがある。大阪場所の直前で、前年同場所の優勝者としてあいさつにきたのだろう。だがやじ馬根性で知事室に取材に行って凍りつく思いがした。

 ▼横綱と当時の岸昌知事が向き合って座っているのだが、2人とも押し黙ったままである。まるで土俵上のにらみ合い状態だ。こちらが「横綱、子供さんお元気ですか」と声をかけると、やっと「いやあ、ヤンチャでねえ」と相好を崩し、多少の「会話」が成り立った。

 ▼北の湖親方は無口が多いお相撲さんの中でも口の重いことで知られた。対する岸さんは一応政治家であるが、こちらも仕事一筋で余計なことは一切しゃべらない。相撲にもあまり関心はなかったのかもしれない。だからこの対面自体が完全なミスマッチだった。

 ▼岸さんは旧自治省の官房長までつとめた典型的なエリート官僚出身である。しかし「口下手」に加えパフォーマンスは苦手で、失礼ながら風采も今ひとつだった。今なら選挙で当選できたか疑わしい。「日本一地味な知事」という呼ばれ方もあった。

 ▼それでも3期12年にわたって、課題がいっぱいの大阪の知事を勤めあげた。政財界とのパイプを生かし、暗礁に乗り上げつつあった関西空港を開港に向け一気に動かした。大阪の地盤沈下に一定の歯止めをかけたことは間違いないだろう。

 ▼その岸さんが88歳で亡くなった。4代後の橋下徹大阪府知事をはじめ、今や全国にタレント性豊かな政治家や首長がそろう。それだけに、地味な官僚知事の時代が懐かしく思えてくる。民主党政権が「官僚排除」を改めるというニュースを聞いた直後だった。

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