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[事件]ニュース トピック:主張
【主張】警官発砲に殺人罪 治安守る大切さ考慮せよ
逃走中の車に乗っていた男性が警察官2人の発砲で死亡した事件について、殺人罪でも審理されることになった。付審判(ふしんぱん)制度に基づく裁判だが、身を挺(てい)して犯罪捜査や治安維持にあたる警察官を萎縮させる恐れがあるといわざるを得ない。
事件は平成15年、奈良県大和郡山市で起きた。男性2人が車上狙いを犯したあと警察車両に追跡され、時速100キロを超える猛スピードで信号無視や蛇行運転、一般車両との衝突を繰り返した。警察官が計8発を発射し、うち2発が助手席の男性の頭部と首に当たり、男性は亡くなった。
この発砲行為について奈良地検は、警察官職務執行法第7条「武器の使用」の「長期3年以上の懲役にあたる凶悪な罪を現に犯し、警察官の職務の執行に対して抵抗し、もしくは逃亡しようとする」に該当するとし、「逮捕するために他に手段がないと信じるに足る相当な理由がある」として不起訴処分にした。
これに対し遺族らは、公務員の職権乱用が疑われる事件を検察で不起訴にされた場合に告訴人らの請求によって裁判所が独自の判断で刑事裁判にあたる審判を開く付審判制度を使って審判を請求し、奈良地裁で認められた。
警察官2人は、特別公務員暴行陵虐致死罪と同致傷罪に問われていた。しかし公判前整理手続きによって訴因が追加された。付審判事件で、殺人罪で審理されるのは初めてという。
確かに、助手席の男性が死亡した結果は重大だ。しかし状況は、取り囲んだ警察車両に衝突を繰り返し、さらに逃走しようとするほど緊迫していた。逃走を阻止するため、警察官が拳銃を使用したのは必要なことだった。
助手席の男性に対する至近距離からの発砲については、「未必的な殺意があったのでは」という疑いも残らないわけではない。
だが、当時の現場は夕刻の交通渋滞にあたっており、市民が巻き添えとなる交通事故なども起きかねない状況だった。事件の鎮圧を優先させねばならなかった事情も汲(く)むべきだろう。
事件は今後、裁判員裁判によって審理される。裁判員には、発砲による死亡という結果だけでなく、治安を守るという警察官の職務の重要性を考慮したうえでの判断を強く望みたい。
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