米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本国債の格付けを引き下げた。日本の財政の先行きに対する海外の目の厳しさが浮き彫りになった。欧州をみても、市場の信認喪失は財政・金融の連鎖的な危機の引き金となりかねない。菅政権は社会保障と税の一体改革の道筋を急いで示すべきだ。
格下げ後も日本国債はAAマイナスと上から4番目の水準で、S&Pは格付けの見通しを「安定的」としている。とはいえ、今回の格下げを軽く見るわけにはいかない。
まず、日本の政府債務の国内総生産(GDP)比がさらに悪化するとの見通しを示している点だ。大規模な財政再建策を実施しない限り、国債や地方債の発行を除く歳入から借金の元利払いを除く歳出を引いた基礎的財政収支を、2020年以前には均衡させられないという。
長引くデフレや低成長が問題の解決を難しくするなかで、04年度の年金改革を上回る規模の改革に踏み切らなければ、予算に占める社会保障費は一段と上昇する。菅政権は社会保障制度と消費税率を含む税制を見直すといっているが、これによって財政が大幅に改善する可能性は低い、とS&Pはいう。
今回の格下げで気になるのは、財政内容の悪さもさることながら、日本政府が問題解決に取り組む意志に疑問を呈している点だ。菅政権が問われているばかりでなく、与野党のねじれ国会の下で確固とした財政立て直しの見取り図を描けない、日本の政治システムそのものに対する疑問符が付けられたともいえる。
日本では家計や企業の安全資産志向が強く、貸出先の乏しい金融機関が国債を購入し続けている。おかげで、政府債務の残高が積み上がっても今のところ国債の消化には支障を来していない。
しかし、いったん長期金利が急上昇してからでは遅い。政府の元利払い負担が増えるばかりでなく、国債を保有する投資家の損失がかさみ、一層の金利上昇を招く悪循環に陥りかねない。欧州が直面している財政と金融の連鎖危機は決して人ごとではない。金融市場が本格的な反乱を起こす前に、危機感を共有し問題に取り組まないと大変なことになる。
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