世界を引っ張る超大国ではなく、経済発展を遂げようとする新興国の指導者の演説にも聞こえた。「未来を勝ち取る」「未来に投資する」と繰り返したオバマ米大統領の一般教書演説は、そんな内容だった。
演説の大半を費やしたのは経済の分野である。米国の技術革新と、それを支える教育の改革に焦点を当てた。さらに、企業の競争力向上を阻む障害をなくそうと訴え、法人税率の引き下げを呼びかけた。
外交・安全保障政策は新味に乏しい。優先課題に掲げてきた中東和平にも触れていない。米国は一段と内向きになったようにも見える。だが単なる内向きではない。大統領の演説の根底にあるのは、「ゲームの途中でルールが変更になった」という世界経済に対する冷徹な認識だ。
経済グローバル化が進み、多くの産業分野で米国は優位性を保てなくなっている。「世界は変わった」という言葉に焦りが映る。大統領は中国が世界最大の太陽エネルギー研究施設を建設し、最高速のコンピューターを開発したと指摘、先端技術を米国内に確保すべきだと説いた。
新興国の中でも特に中国は着実に経済力をつけ、外交や安保でも世界への影響力を強めている。
こうした米国だけでは仕切れない新しいルールの下で、国内の雇用を増やし国際社会での指導力を保つには、まず経済力を強くしなければならない。そのために企業の活力を高め、技術革新を促す必要がある。
世界の現実と米国が置かれた立場を、正確に位置付けたといえるだろう。大統領が打ち出したのは、クリーンエネルギーやバイオ・医療、情報技術などの分野で技術革新を推し進める方針だ。超党派で大きな事をなし遂げようとの呼びかけに、共和党の議員も拍手を送った。
大統領は経済政策のかじ取り役として、ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルト会長を政権内に招き入れた。米政権と産業界の一体感が急速に強まりつつある。
大統領が示した課題の多くは、日本にも当てはまる。米国が官民共同で技術開発に突き進む以上、対抗する政策がなければ、日本企業の競争条件は不利になってしまう。
教育改革も共通の課題。投資を呼び、企業の活力を高める法人税率の引き下げも急がなければならない。自由貿易協定(FTA)戦略の強化や規制改革が必要なのも同じだ。
中国、インド、韓国などに言及した演説に、日本は全く登場しなかった。日本の政治指導者にオバマ大統領のような危機感があるだろうか。
オバマ、イメルト、ゼネラル・エレクトリック、技術革新、FTA、経済、コンピューター、安全保障政策
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