日本では引き続きデフレの克服が大きな課題だが、米欧を見渡すとインフレの心配やデフレ懸念の後退が語られ始めている。食料、エネルギーが目立って上昇しているからだ。日本ではインフレを語るのは時期尚早とはいえ、物価をめぐる微妙な変化には注意が怠れない。
今年に入り「短期的なインフレ懸念」を繰り返すのは欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁だ。直近のユーロ圏の消費者物価上昇率は総合指数でみて前年比2.2%と、ECBがメドとしている「2%をやや下回る水準」を若干上回る。
財政・金融不安がくすぶるなか、インフレとは大げさと思われるかもしれない。だがエネルギー価格をみると、原油上昇の波をかぶり11.0%も上昇している。原油が最高値をつけた2008年以来の上昇率だ。
米国でもバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長は「デフレの危険性は著しく後退した」と述べている。昨年秋の追加金融緩和が功を奏し景気が上向いてきたのは朗報だが、米国内ではガソリンや食品の価格上昇への不満も高まっている。直近の消費者物価のなかで、エネルギー価格の上昇率は7.7%だ。
日本にも食料やエネルギー価格の上昇の波は押し寄せつつあり、消費者物価の総合指数はわずかながらプラスに転じた。食料が1.5%、エネルギーは3.9%と、上昇率は米欧をかなり下回っているが、これは円高で輸入価格の上昇が抑えられた面が大きい。為替の動向次第では上昇率が高まりかねない。
日本は食料やエネルギーの多くを輸入に頼るだけに、それらの価格が上昇することは、海外への所得流出が拡大する結果を招く。白川方明日銀総裁も指摘するように、貿易条件の悪化に伴う交易損失の増大には警戒が怠れない。輸入価格の上昇分を販売価格に上乗せできなければ企業の収益が圧迫されるし、価格転嫁されたらされたで消費者の所得が実質的に失われるからだ。
もっとも食料、エネルギーの上昇の背景には、予想を上回る新興国の経済拡大という要因があることも見逃せない。日本の景気が再び上向く気配を見せてきたのも、新興国向け輸出が大きな原動力になっている。
規制緩和や減税などで企業の活動を後押しし、グローバルな需要をつかまえつつ、エネルギーなどの価格上昇には一層の効率化を急ぐ。その技術は新興国も必要としているはずで、日本の売り込み材料ともなる。デフレ下の食料、エネルギー価格上昇にはそんな対応が必要だ。
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