持続可能な財政や社会保障制度の再構築が急務であり、そのためには日本経済を着実に成長させていく戦略が不可欠――2011年度予算案を映して改定した経済財政の中長期試算は、そんな警告を発している。
名目で1%台半ばと低めの経済成長率を見込む「慎重シナリオ」の試算では、国債や地方債の発行を除く歳入から借金の元利払いを除く歳出を引いた基礎的財政収支の赤字額が20年度に23.2兆円に達する。
政府は基礎的収支の赤字の名目国内総生産(GDP)に対する比率を15年度に半減させ、20年度に黒字にする目標を置いた。23兆円の赤字穴埋めには消費税率に換算して9%の引き上げが必要な計算だが、1%台の名目成長で日本経済がこれほどの増税に耐えられるだろうか。
政府は実質2%、名目3%成長という「成長戦略シナリオ」も示した。この場合、20年度の名目GDPは今より約160兆円、慎重シナリオより90兆円近く多い645兆円で、赤字のGDP比は縮小する。成長確保がいかに重要かは明白だ。
政府試算で物価動向を示すGDPデフレーターがプラスに転じる時期は、成長戦略シナリオで13年度、慎重シナリオで14年度と先になり、その後もかなり低い数字が続く。デフレからの脱却が遅れるほど税収低迷が長引き、財政も視界不良になる。
消費税率引き上げも含め、持続可能な社会保障や財政を目指す改革はもう先送りできないが、一方で力強い成長を早く実現しないと、改革を進める環境が整わない。最近の菅政権は前者に傾きすぎ、成長戦略を軽んじているように見える。
政府は昨年6月に新成長戦略を決め、日銀総裁や経済人、学識者を交えた「新成長戦略実現会議」も発足したが、まだ成果は出ていない。成長策の実行加速を求めたい。
まず日銀の積極的な金融政策も加えたデフレからの脱却が急務だ。医療や環境、都市再生などの規制改革も前倒しで進めるべきだ。法人税率も11年度の実効税率5%下げに続いて再引き下げの道筋を打ち出し、国内への投資を喚起してほしい。
消費税を上げればすべてが解決するわけではない。成長促進は財政立て直しに欠かせない道である。
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