菅直人首相は外交政策の演説で、貿易や投資を自由化する環太平洋経済連携協定(TPP)について「6月をめどに交渉参加の結論を出す」と語った。米国や東アジア各国との関係強化を目指す方向に間違いはない。問題は、いつまでに何を実行するかという時間感覚だ。
TPPをめぐる日米2国間の協議で分かったことは、米国やシンガポール、ベトナムなど現在9カ国が参加するTPP交渉が、日本の想像以上の速さで進んでいる現実である。米国は今年11月までの交渉決着を目指し、既に協定文の原案づくりが始まっている。
9カ国は今月、相互の関税撤廃に関する具体的な提案の交換に入り、2月には各国の案が出そろう。3月には、さらに投資やサービス分野の提案が始まる。これらと並行して、人の移動や知的財産権の保護、政府調達などの分野で、新しい通商ルールづくりが進みつつある。
日本が6月に交渉参加の意思を決めても、それまでには日本不在のまま協定の骨格が固まっている可能性がある。既に出来上がった協定を日本が受け入れるのではなく、早急に交渉に参加して、日本の主張を協定内容に反映させるべきだ。
菅政権の動きは遅すぎる。菅政権が結論を6月まで先送りしたのは、農業改革の議論に時間を費やそうという判断からだろう。だが、農業関係者からの反発や4月の統一地方選への影響を気にするあまり、加速するTPP交渉の現実から目を背ければ、改革の好機も逸してしまう。
菅首相は外交演説で「日本の農業は貿易の自由化が進む進まないにかかわらず、このままでは衰退の一途を遂げる」との問題認識を示した。その考えに基づけば、議論をしながら交渉参加の判断の時を待つのではなく、衰退を防ぐ農業改革を直ちに実行すべきではないか。
TPP参加に消極的な意見は地方で強い。たしかに農産物の市場をいま直ちに完全に開放すれば、国内農業に影響が出るだろう。だが、TPP交渉への参加は、関税の即時撤廃を意味するわけではない。米国など現在の交渉国が想定しているのは、段階的な市場開放である。
地方に残る不安や誤解を解消するため、菅政権は「開国」の看板を掲げるだけでなく、貿易自由化の経済効果やTPPの仕組みについて、説明を尽くすべきだ。いま日本に必要なのは、強い農業を築く政策への転換である。改革から逃げる時間かせぎや、「農業壊滅」などと危機感をあおる政治のゲームは不毛だ。
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