年金など社会保障制度と消費税増税を含む税制の一体改革について、政府は具体案と新たに必要になる財源の規模を4月に公表する。菅直人首相は細川律夫厚生労働相にその作業を指示し、あわせて労組代表などから考えを聞く会議をつくる。
与謝野馨経済財政相を担当閣僚に据え、首相は改革に熱意をみせる。自民党など野党との政策協議を始めるためにも、政府が早く具体案を出すのは当然だ。しかし、この期に及んで各界の声を聞く会議が必要なのか。求められるのは、社会保障の立て直しに向けた首相の行動である。
最近の首相発言からは、年金や医療の持続性を高める策がみえない。
年明け後、テレビ朝日のニュース番組に出て、消費税増税の理由を「国に入る税収は7兆円、必要な費用は17兆円」と話した。基礎年金、高齢者医療、介護の給付費のうち国費分は消費税収で賄う原則を説明したものだ。消費税率の10%への引き上げを公約にした昨年の参院選のときの繰り返しである。
3分野の不足分に、国債発行による借金や霞が関埋蔵金を充てるのはやめるべきだ。だが字義どおり、現状を大きく変えずに消費税増税で賄うのなら、穴開きバケツに水を注ぐようなもの。年金や医療費の膨張を抑える切れ目ない工夫が先決だ。
例えば、年金保険料を払う現役の働き手の収入はデフレで伸び悩んでいるのに年金額の実質価値が高まっている矛盾の解消、民主党政権が待ったをかけた病院と診療所への診療報酬のオンライン請求義務付け――などは、すぐにできる。
同時に、年金の財源論を固め直す必要がある。民主党が創設を公約した最低保障年金は、消費税だけで賄う。無年金者が出るのを防ぎ、高齢層も消費を通じて相応の負担をするので世代間の不公平を和らげる利点がある。この方式への転換を軸に社会保険料や消費税をいつ、いくら上げるのか、工程表を納税者に示して信を問うのが筋だ。
その過程で野党側に政策協議の席に着く責任が生じる。首相は「野党が参加しないなら歴史への反逆行為だ」との発言を早く取り消し、行動で超党派への環境を整えるべきだ。
改革の目標の一つは若者やこれから生まれる世代が将来も保険料と消費税を無理なく払える水準にとどめること。年金の支給開始年齢の引き上げに触れた経財相に、首相は理解を示した。経財相は発言後に「中長期のビジョンだ」と、趣旨を弱めたが、目の前の大課題として首相が政治生命を賭すに値する改革である。
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