7月3日に最終号が発売されたことも記憶に新しい、ゲーム専門誌「ゲームサイド」。そのゲームサイド編集部によるトークショウが7月11日に催された。会場となったのは岩本町にあるゲームセンター、「ナツゲーミュージアム」。秋葉原駅から徒歩数分でたどりつけるこのゲームセンターは、名前が示す通り昔懐かしいレトロなアーケードゲームが現役バリバリで稼働中である。
当日は生憎の雨模様であったが、店内はイベントのために詰めかけたお客さんで大賑わい。イベントが始まるまでの間、店内では至る所で昔懐かしの名作ゲームに興じるお客さんの姿がいたるところで見られた。
なお店内では本誌編集部やライター・漫画家が推薦するゲームが稼働中であった。不朽の名作から、マニアックなタイトルまで、さすがゲームサイド陣といったラインナップ。
▲風のイオナさんは、2周クリアは朝飯前という駄菓子屋ゲーセン通いで鍛えたテクニックはいまだに健在とのこと!
▲編集部の名物デザイナー高橋みどりさんがオススメするのはオルカの『リバーパトロール』。永遠の14歳であるみどりさんが何でこんな古いゲームを知ってるのかは触れてはいけない
▲ゲームコレクター酒缶さんはタイトーの『ルパン三世』をプッシュ。
ゲームサイドを体現するかのような実に渋いチョイスである
▲シューティング大好きっ子の山本編集長は直球の『グラディウス』で来るかと思いきや、まさかの変化球、ビデオシステムの『SONIC WINGS』を推薦。編集長いわく、「縦シューティングの入門用にちょうどいい」との事
▲「ファミプロ」こと恋パラ支部長が推すのはナムコの『ディグダグ』。「全堀りプレイ」(※)にも挑戦していた!! 間近で見るマニアックプレイを前にギャラリーも興味津々でした。「ファミコン版とは敵の動きのアルゴリズムが違う」とは支部長の談
※「全堀りプレイ」……本誌で支部長が命名した、『ディグダグ』の1面をクリアせず、地面をすべて掘り尽くすプレイのこと。ルールは単純ながらやってみると案外難しい。
▲「P.S.すりーさん」や「レゲーさん」を連載していた漫画家のIKa先生は、メトロの『だるま道場』をチョイス。基板はなんと先生の私物! 筐体には描き下ろし(?)イラストも特別に展示
▲「電子の精たちに捧ぐ」の箭本さんがチョイスしたのは……これは貴重! 任天堂の『シェリフ』。スティック+ダイヤル式ボタンの純正コンパネで遊べる
このほか、末弘先生の選んだゲームは『バーチャファイター2』。
白川嘘一郎さんは『パロディウスだ!』。
さらに、当日は出演していませんでしたが、GERTACK!さんの選んだ『バーニングフォース』も稼働していた。
▲店内に常備してあるゲームサイドのバックナンバーを熟読するお客さんの姿も
さてさて、予定されていた15時になると山本編集長による司会進行でトークショウがスタート。トップバッターはライターである風のイオナさんと、漫画家IKa先生、それに編集部員の長門さんによる、IKa先生の連載漫画に関する裏話が始まった。
▲左から、長門・IKa・風のイオナの「チーム・すりーさん」3人組
「ゲームサイド」で連載されている「レゲーさん」だが、2回のボツを経てOKが通った作品であることが明かされた。2回目のボツはイオナさんと長門さんが合意の上でのものだが、最初のボツはイオナさんが独断で行い、長門さんもどのような作品かはわからなかったという。
これに対してIKa先生が説明したのは「ファミコンが壊れたのでゲーム屋さんに行った女の子が、今のハードのピカピカした派手なグラフィックについていけない」という内容になる予定だったそうな。
このほか、女児にこだわるIKa先生の「『マグマックス』や『いっき』の権べと田吾を女児化したかった」などの発言も飛び出し、多くの観客からの笑いを呼んでいた。
こうして3人のトークショウもつつがなく終了。
風のイオナ:
「たまたま一般のライターとして応募したところに、知り合いである長門さんがいたおかげで、これまで二人で色々やってきました。休刊は残念なんですけど、僕自身はこれからも色々な場で書いていこうと思っているので、これからもよろしくお願いいたします。」
IKa:
「僕自身昔からゲームに携わる漫画というものを、それこそ雑君保プ先生とかに憧れて漫画をずっと書いてきたので、雑君先生と同じ雑誌で漫画を書けるなんて本当に光栄でした。本誌がなくなってしまうのは残念ですが、こういう文化はきっと廃れないと思います。皆さんも、昔好きだったゲームをずっと好きでいてあげてください。」
長門克弥:
「やりたい放題『ユーズド・ゲームズ』からいろいろやってきたわけですが、結局時代の流れに逆らい切れなかったのが僕個人の反省点でしょうか。だからそういう反骨精神を『P.S.すりーさん』にも活かしていきたいと思っております。IKa先生やイオナ氏に感謝しつつ、読者の皆様も本当にありがとうございました。」
小休止を挟んでお次は本誌の長寿コーナーであるファミプロこと恋パラ支部長と、同コーナーのイラスト・漫画担当である波多野ユウスケ先生に、山本編集長を交えた名物トリオによるトークショウ。
▲波多野先生からは「本当はファ美以外にも色々と新キャラを出したくて、本当はゲームギアを擬人化したキャラも考えてました」など、幻の新キャラの存在が明かされた
まずは「全てはファミコンのために。」を連載されている恋パラ支部長から。「連載の中で一番印象に残っている回は?」との山本編集長の問いに、恋パラ支部長は「ユーズド・ゲームズ」17号(このときのコーナー名は「マニアックファミコン」)の「『アイアム ア ティーチャー(手あみのきそ)』だね」と即答。手編みの方法を教えてくれるソフトの指示に従って、手編み初心者の支部長がセーター作りにチャレンジした、という企画である。
編集長が「連載第1回目がベストですか(笑)。普通なら回を重ねるにつれて徐々に良くなっていきますよね?」と訪ねると、「原稿料よりも毛糸代が高かった」とたたみかける恋パラ支部長。決してギャラが安かったわけではない、と思うことにしておくのが優しさだ。
それでは、二番目に印象に残っている記事は?
「ドラゴンズレアをクリアする企画だね。あれは50時間かかった」。
支部長の記事の中でも、特に時間を要した記事だったということだ。
波多野先生は、ご自身のコーナー「妄想エンジンコアグラフィックス」製作の裏話や、読者からの感想に対してコメント。
「ゲームサイド」Vol.07に掲載した『スクーン』のコミックについて、波多野先生が展開する熱いストーリーに「もう一度遊んでみたくなりました!」と感想をくれた読者に、「もう一度遊んでもゲーム内容は変わらないんですけどね」(笑)と言う波多野先生。もう一度ゲームに光を当てた功績が相殺される発言だが、本当のことでもあるので触れずにおこう。
「ゲームサイド」最終号に掲載した『スターソルジャー』のコミックは、「連載開始前に候補に挙がっていた」との事。その当時から編集長からは、「スターソルジャーを描いてほしい」とリクエストがあったそうなのだが、波多野先生が「今はまだ、メカがうまく描けないから、最終号で描きましょう」とお茶を濁していたところ、本当に最終号が訪れたため描くことになった、といういわくつきの作品。ゲームの説明書に書かれているストーリーを、見事に熱く漫画化したのだが、描かれるきっかけがきっかけだけに、複雑な思いを抱いた観客もいたことだろう。
恋パラ支部長:
「Game Bridgeでファミコン連載を始めるので、次はGame Bridgeで会いましょう!」
波多野ユウスケ:
「また描かせていただけるなら、Game Bridgeの方でもやらせていただこうと思っています。いつも突然仕事を振られることが多いので(笑)」
3つ目のトークショウのゲストは、ライターである以上に、ゲームコレクターとして名が通っている酒缶さん。
▲酒缶さんが持参した本日のレアアイテムはファミリーベーシックに関連する本「ミュージック・ワールド」。なんと、ゲームサイドの発行元・マイクロマガジン社の前身である、マイクロデザインから発売されていた本で、ファミリーベーシック用プログラム入りカセットテープ付き。現在酒缶さんはファミリーベーシックのコレクターを募集中だそうである
ゲームコレクターのみならず、ライターとしても活躍される酒缶さん。彼が書かれるレビュー記事はメーカーチェックでNGが出たことがないと山本編集長から明かされ、観客を驚かせた。
「ゲームをコレクションしてるだけで終わりと思われたくないので、ちゃんと遊んでるんですよ、ということを示したかった」とも語る酒缶さん。
知り合いのゲームコレクターにも連載コーナー(「酒缶のゲームコレクター訪問」)出演の声をかけたものの「自分などまだまだ」と断られることが多かったという苦労話も明かされた。確かに1万本以上のゲームをコレクションしている酒缶さんからのお誘いには、遠慮してしまうのも無理からぬことだろう。
酒缶:
「本誌は終わりましたが、Game Bridgeの方でまだ何かしらの連載が続くはずなので、よろしくお願いします。」
Game Bridgeでも、「酒缶のコレクター訪問」を継続していくとの事。出演希望者は、本誌サイトの投稿フォームにて受付中→ http://gameside.jp/modules/liaise/index.php?form_id=1
4つめのトークショウでは「幻のゲームを追え!」の担当ライター天野譲二さんがダンディーな出で立ちで登場。
▲写真にある制服は、未発売となった幻のゲーム『制服ハイスクールカウントダウン』のプロモーション用で作られたレアな一着。決して天野さんが趣味で手に入れたものではない
「幻のゲームを追え!」の連載開始が「ユーゲー」最終号(No.25)となったことに「微妙なタイミングでしたね」と苦笑される天野さんだったが、「陽の目を見られなかったゲームも、記事という形で記録に残して、光を当ててあげたかった」という言葉に、会場に集まった観客からも共感の声が。
そして「今が旬! 全女性が憧れる『フロンゲ』のモテ男BEST50!!」(「ゲームサイド」Vol.06)なる企画記事が「読者アンケート史上ワースト」を記録してしまったことも明らかになったが、アンケートハガキには「カラーページを使ってまでやることじゃない」、「これをやるくらいならゲームを紹介してください」、「どのキャラも違いがわかりません」などのコメントが踊っていたという。
こうしたおバカな企画も「ゲームサイド」らしさ、と言い切るには少々先を進みすぎていたのかもしれない。もっとも今、時代が追いついたかというと……。
そして、天野さんからの一言。
天野譲二:
「創刊号から最終号まで休むことなく掲載させてもらい、編集部の方々には深く感謝しております。誰がこんな企画喜ぶの?! っていうような企画が多かったですが、それでも応援していただいた読者の方々にはとても感謝しております。」
5番目のトークショウのゲストは山本編集長曰く、「ゲームサイドで一番危険な男」と言われる、「やさしい!! 地獄ゲーム先生」でお馴染みの末弘先生。
▲「残ゲー」(残虐ゲーム)という言葉を本誌に定着させた、「やさしい!! 地獄ゲーム先生」
連載を開始したころは、雑誌のカラーや読者の傾向を意識してレトロゲームを扱うようにしていたという末弘先生。ところが「ゲームサイド」Vol.16で取り上げた日本未発売の『DEAD SPACE』の評判が思いのほかよかったため「みんな今のゲームが好きなのか! と思いましたよ。今まで遠慮していたのは何だったんでしょう」との言葉に会場は笑いに包まれた。
波多野先生のピンチヒッターとして末弘先生が「ファ美」を描いたときの秘話も披露。末弘先生は「怒られるんじゃないかと思いながら描いた」というが、周囲の反響は読者のみならず原作者にまで恐ろしく好評だったとか。
そして、来場者2名に「地獄先生」と「末弘版ファ美」の色紙を、その場で描きおろしてプレゼントしてくれるというサプライズに、会場が熱狂!
末弘:
「描かせていただけるだけで光栄なので本当にありがとうございました。新参者ではありましたが、応援してくださった皆様もありがとうございました。」
そして後半部分となる7回目のゲストはバカゲー専科の名物ライター、白川嘘一郎さん。途中からはスペシャルゲストとして白川さんが原作を担当しているWeb漫画「れとろげ。」の作者・くさなぎゆうぎ先生も迎えてのトークショウとなった。
▲「『萌える』か『萌えない』かで白川さんからよくボツを喰らいます」とはゆうぎ先生の談。厳しい「萌え」審査を乗り越えてお届けする、萌えるレトロゲーム漫画「れとろげ。」は当サイトとマンガごっちゃで好評連載中!
「ユーズド・ゲームズ」時代の読者さんには、「白川さん」より「ヨダレ団長」(白川さんが管理人のサイト、「神聖バカゲー騎士団」で使用していたハンドルネーム)のほうが馴染み深いかも、との山本編集長の言葉にうなずいていた観客も見受けられた。古くからのファンも駆けつけていた様子。
「ゲームサイド」で「バカゲー選科DESTINY」を連載されていることから、バカゲーライターの印象が強い白川さんだが、『ユグドラ・ユニオン』などスティングから出ている難易度の高いシミュレーションRPGシリーズの小特集や、ゲーム名作選で、良作ゲームの紹介記事を真面目に執筆されたことも多々あった。こうしたギャップにうならされた読者もいたことだろう。
くさなぎゆうぎ先生の登場には、シークレットだったことに加えて女性ゲストだったこともあってか、観客のテンションも上昇。
常にスケッチブックを持ち歩き、それに漫画のアイデアとなるイラストを描くという、くさなぎ先生。「わんぱっくコミックで発売されていた『消えたプリンセス』や『デッドゾーン』などのゲームコミックが小さい頃から好きだったので、ゲームコミックに携われて嬉しいです」と、連載作品にかける想いを語ってくれた。
白川嘘一郎:
「数奇な運命で連載することになり、ブランクがあったけれどこうして再び戻ってくることができて感謝しています。でも、これで終わりというわけではないので、また何かの機会に形になるものを作りたいと思っています。本日はありがとうございました。」
くさなぎゆうぎ:
「本誌の最終号のあとがきと少々内容がかぶってしまいますけれど、大好きなレトロゲームの記事に関われたりして本当に幸せでした。もし『アドベンチャーゲームサイド』とか作るようなら、是非『ファミコン探偵倶楽部』を取り上げてください(笑)!」
イベントも、いよいよ終盤。約30分の休憩を挟んで再開されたトークショウ後半のトップを飾ったのは、箭本進一さん。
▲丁寧な文体と、そこからにじむ熱い内容の記事に共感する読者も多い箭本さんだが、実際の語り口も静かながらも熱さを感じさせるものだった。観客もそうした箭本さんの語りに真剣に聞き入っていた
「グラディウス特集」(「ゲームサイド」Vol.09)に掲載された箭本さんの小説に出てくる「バブルシステム起動時の音楽とカウントダウン画面に触れたときの衝撃」に関して熱く語る山本編集長。
「バブルシステムが起動したときの音楽と、カウントダウンの画面に関する情報は、今もネットで得られますが、リアルタイムであの音楽を聞き、カウントダウンの画面を見たときの衝撃・感動を、読者が共感できる形で文章化した記事って、ほとんど見当たらないんです。だからこの小説を読んだときに、他のあらゆるグラディウスの記事に勝った! と思いましたね」
リアルタイムで体験したときに受けた衝撃を、臨場感豊かに描写できるライター陣がそろっているのも「ゲームサイド」の強みだった。そのことを改めて実感させてくれるエピソードといえよう。
「電子の精たちに捧ぐ」を書くにあたって大変なのは、自分の痛い体験もさらけ出すこと、と語る箭本さん。例えば、自分が大好きになったものの良さを熱心に説明してもわかってもらえなかったときのむなしさなど、つらい思い出にも向き合わなければならなかったという。(このエピソードは現在発売中の「ゲームサイド」最終号Vol.24の「電子の精たちに捧ぐ」で詳細を読むことが出来る)。
これを受けて山本編集長も「私も「ユーズド・ゲームズ」を熱心に友達に勧めたんですけど、まったく相手にされなくて。どうしてみんなこの雑誌の良さがわからないんだ! と思いましたね」と似た体験をされたことを熱弁。このコーナーでの編集長が全体的に熱かったのは、箭本さんの熱さが移ったからだろうか。
▲箭本さんの熱いトークに息を呑み、真剣に聞き入る会場。しかし非情にも訪れた静寂は『パロディウスだ!』のタイトルBGMを目立たせてしまうのだった(なぜか『パロ』だけ音量が大きかった)。「音量下げて」と泣き叫ぶ編集長を、ゲストの箭本さんがなだめる一幕も
箭本進一:
「今、ゲームについて語ることは、新作の攻略など、プレイヤーの損得に関わるものが重要視されている気がするのですが、そういったお役立ち情報だけではない、“ゲームに関して語る”という事が、本誌が休刊しても、商業でなくても構わないんです、みなさん一人一人がゲームへの想いをお持ちだと思いますので、何かの形でつながっていけたらいいなと思っています」
続いて登場したのは、「怒涛のインタビュアー!」多根清史さん。
テンポよい語りと内容の面白さから、観客からは笑いが相次いだ。その中から特に笑いが起きたエピソードを厳選して紹介しよう。
▲山本編集長の問いかけに間髪いれずツッコミを入れる多根さん。わずかなボケも見逃さない。さすがは怒濤のインタビュアー!
数々のインタビューをこなしてきた多根さん。特に思い入れが深いのは、 かつてナムコの広報誌「NG」でドット絵講師をされていた、Mr.ドットマンさんのインタビュー(「ゲームサイド」Vol.23)と語る。
『ゼビウス』のナスカの地上絵が描かれる経緯の真実が掲載されているのだが、多根さんが取材して聞き出した真実が、従来の神秘的な内容の通説とは大きく異なっていたのだから、それも当然だろう。
Mr.ドットマンさんから「(地上絵の真相は)うまくぼかしてください」と言われたにも関わらず、そういったやり取りをそのまま載せていることにも笑いが起きた。よく大丈夫だったものだ。
▲『ゼビウス』のwikiが書きかわってもおかしくない取材ができた! と語る多根さん
「自分がやりたい企画をやっているだけですよ」と何度も語っていた多根さん。そのノリのよさが出ていたためか、どの記事も好評だったとのこと。ライターにとってはひとつの理想系といえる仕事ぶりである。
シューティング特集(「ゲームサイド」Vol.18)では「人類滅亡ゲーの系譜」を企画した多根さんだが、山本編集長が最初この企画を見たときはあっけにとられたという。
そもそも、タイトーのシューティングゲームには人類が滅亡する設定が多いことに着目したからだそうだ(実際にはタイトー以外のメーカーも紹介されている)。
多根清史:
「みなさんが一生懸命にゲームを語り、そしてゲームの文化を想っている中で、一人だけ好きなことをさせてくださって、本当にありがとうございました。本当にすいません」(笑)
そしてついにやって来た最後のコーナー。本イベントのトリを飾るのは、「ゲームサイド」山本編集長と、同誌のデザイナーにして読者コーナー担当でもある、高橋みどりさん。
「ゲームサイド」の中心人物が登場するとあって、会場からはさらに大きな拍手が沸き起こった。
ここで語られたのは、お二人が好きな記事を紹介するというもの。「ユーズド・ゲームズ」から「ゲームサイド」まで14年間の長きにわたる歴史を振り返ることにもなった。
まずは山本編集長による、好きな記事、印象に残る記事の紹介。
「シューティングゲームの深層」(「ユーゲー」No.13)は、山本編集長が「ユーゲー」編集部員となってはじめて企画した特集だけに、特に思い出深いとのことだった。
「ユーゲー」2号の「夏ゲー」記事での「強引なこじつけだけど、季節でゲームを語るという切り口もありなのかと思った」ことや、「ユーズド・ゲームズ」2号のシューティング特集での『シルフィード』の紹介記事からは「普通、シューティングゲームはシステム、ストーリー、音楽が語られることがほとんどだが、この記事はプログラムの技術力の高さがひたすら語られていた」ことに感銘を受けたことが語られた。
様々な要素でゲームを語ってもいい。その精神が山本編集長に少なからぬ影響を与えたことを示すエピソードである。
山本編集長が挙げたベストの記事は「ダライアスの深層」(「ゲームサイド」Vol.21)。
▲ついに最後のトークショウ。良く見ると、高橋さんの来ているジャージは……。『ペルソナ4』?
この特集を組むにあたり、タイトーさんから多くの資料を提供してもらったが、このことによりタイトーさんは自社のタイトルを本当に大切にしていることを実感した、と感慨深く語った。「グラディウス特集」(「ゲームサイド」Vol.09)とどちらをベストにするか迷ったが、記事構成の完成度の高さでこちらとのこと。
ちなみに当初の特集名は単に「ダライアス特集」だったが、デザイナー高橋さんの「これだと物足りなくない?」の一言で変更されることに。結局、山本編集長が編集部に入って初めて企画した特集「シューティングゲームの深層」(「ユーゲー」No.13)から取って「ダライアスの深層」となった、との裏話も。
このほか「ナムコット特集」(「ユーゲーNo.13」)での「サンシャイン60を階段を登って踏破する企画」の裏話も語られたが、かなり無茶をしていた内容に観客から笑いが起きていた。
というのもこの企画実行当日は、翌日が印刷所への入稿日なのに2ページが空白という緊急事態。どうしようと悩んでいたら「『ドルアーガの塔』が60階あるから、60階あるサンシャイン60に登ろう」という温存していた、榎本副編集長(当時)のアイデアの決行に至ったという。
当時の編集部員である北郷編集長と、榎本副編集長の3人で入稿前日の日曜日、原稿待ちで休日出勤していたデザイナーを待たせて登りにいったというのだから恐れ入る。
また、『イースⅡ』のOPムービーの機種別比較画像も、山本編集長の思い出深い記事として紹介された。
「ユーゲー」No.20で1度やったものの、全機種やれなかったことが心残りだったという山本編集長。「ゲームサイド」Vol.20で「イース特集」をやることになったので、全機種のOPムービー比較ができ、見事リベンジを果たしたのであった。
撮影は1日がかりだったので苦労したことや、OVA版からアドルが介抱されるシーンが登場し、以降の移植版はこの場面が見られるようになったという豆知識も語られた。
好きなゲームならば多少の苦労もいとわないのが山本編集長である。
続いてデザイナーの高橋みどりさんが紹介する、お気に入りの記事。
原田さんが書いた記事が大好きという高橋さんがここで紹介したのは、『バーンアウト3 テイクダウン』(「ユーゲー」No.18)。
文章力の高さはもちろん、記事の随所に見える小ネタが大好きだったとのこと。
▲在りし日の原田勝彦氏を、語る二人
ほかには「ラマソフト特集」(「ゲームサイド」Vol.11)も紹介。ラマソフトは偶蹄目の動物をゲームに登場させることが多いことから、コラムとして偶蹄目の動物を紹介したい、ということで複数の動物園に出向いて写真を撮りまくったという。
山本編集長に「あんなに頑張ってたくさん撮ったけど、紙面での写真の大きさは1センチ四方にも満たなかったんだけどね」と言われて会場からは笑いが起きた。大丈夫、その気合と頑張りはしっかり伝わったのだから!
▲デザイナーの高橋さんが、動物の写真を撮りまくって並べたという、「ラマソフト特集」
高橋さんが「実はこういうのを見つけました」といってモニターに映し出した1枚の画像に、会場から軽いどよめきが起こった。というのも、山本編集長が「ユーズド・ゲームズ」の読者コーナーに投稿した記事が紹介されたからである。
モニターに映し出されたのは1つだけだったが、ペンネームでの投稿も含めて複数回採用されたとのこと。「恥ずかしいので探さないでください」としきりに言う編集長だったが、帰宅後「ユーズド・ゲームズ」などの読者コーナーを読み返す観客もいたことだろう。
最後は観客からの質問コーナー。多くの観客が一番知りたがっていたはずの「ゲームサイド編集部の今後」について、質問がよせられると……
高橋みどり:
「何が一番楽しいって、ゲームが好きな人が好きなんですよね。そういう人の想いをもっと伝えたいし、ゲームが楽しいことを伝えたいです」
山本編集長:
「何らかの形でゲームサイドブランドの復活を考えていますので、よろしくお願いします!」
と、熱い宣言が飛び出し、会場にはひときわ大きな拍手が長く鳴り響いた。その様子は、このイベントと「ゲームサイド」が終わるのを惜しむかのようでもあった。
こうして、ナツゲーミュージアム様とゲームサイド編集部のコラボレーション企画「ゲームサイド編集部トークショウ」は幕を閉じた。
このイベントを企画され、会場を提供してくださったナツゲーミュージアム様、そして当日は雨模様だった中イベントに参加してくださった方々、見に行きたいが行けなかった方々に多大なる感謝の念を示しつつ、このレポを締めることにしたい。
みなさん、本当にありがとうございました!
Text= 下畑典明、伊藤直樹、編集部
協力= ナツゲーミュージアム

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レポートありがとうございました。
会場の雰囲気が伝わってくるようでした。
矢張り行ってみたかったな〜。
初めてご尊顔を排した方々が多く、感動です。
「ゲームサイドブランドの復活」に大いなる未来を夢見ています。
貴誌が休刊となってしまったことは、大変なショックでした。
貴誌から多くの良作・あるいは奇作を知ることができて、感謝しております。
編集・ライターの皆様、新たなゲームサイドを立ち上げてくださることを大いに期待しております!