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産経新聞:談話無断改変で謝罪 「人体の不思議展」記事で

 「人体の不思議展」の人体標本展示が死体解剖保存法に抵触する恐れがあることを指摘した産経新聞の記事で、同社の記者が2カ月も前に取材した内容と過去の論文を組み合わせるなどして識者談話を書き、本人に断りなく掲載していたことが27日、関係者への取材で分かった。掲載された識者は末永恵子・福島県立医大講師で、記事の一部は発言したことのない内容だとしている。産経新聞社は26日、本人からの抗議を受けて謝罪した。

 同展は遺体を特殊加工した標本などを展示したもので、02年から全国を巡回。これまで約650万人が入場し、京都市でも23日まで開かれた。

 産経新聞は19日朝刊で、厚生労働省が「人体の不思議展」の人体標本は「遺体」に当たるとの見解を示し、京都府警が違法性の有無を捜査する方針を固めた--との記事を掲載した。談話は「人の死には尊厳があり、遺体を安易に利用することはできない。開催自体が死者への冒涜(ぼうとく)ではないか」との内容で社会面に掲載された。

 末永講師は「『人体の不思議展』に疑問をもつ会」に所属しており、メンバーらのメーリングリストに22日、「(2カ月前の取材後は)直接取材を受けていない」と書き込んで問題が浮上。記事にある「標本はすべて中国人ということだが、もしこれが日本人だったらどう思うか」という発言はしたことがないと主張し、「創作された文章で、中国人に対して差別的な印象もあり、多くの人から真意を問う連絡を受けている」と困惑している。

 産経新聞大阪本社総合企画室によると、京都総局の記者が昨年11月、同展について末永講師に取材し、メモを大阪本社社会部へ送付。執筆に当たった記者は内容が不足していると感じ、末永講師の論文などで加味した。しかし、両記者が互いに本人へ連絡していると思い込み、確認や掲載の通告を怠ったという。

 執筆した社会部の記者と上司は26日、電話で謝罪し、末永講師はこれを受け入れた。同総合企画室は「確認を怠ったミスはあったが、非常識な取材はしていない」とし、講師が発言していないとする内容が盛り込まれた経緯は「取材過程については答えかねる」としている。

毎日新聞 2011年1月28日 2時32分(最終更新 1月28日 2時43分)

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