きょうの社説 2011年1月28日

◎ブリ産地偽装 信頼回復へ防止策を早急に
 福井県産のブリを氷見産、石川県産と偽って販売したとして、富山県警が不正競争防止 法違反容疑で仲卸業者の関係先を家宅捜索し、産地偽装問題は刑事事件に発展した。

 仲卸業者は「これまでも他産地のブリを氷見産にした」と常習性を認めており、警察も 悪質な事例と判断したのだろう。刑事責任は司法の手に委ねるとしても、全国ブランドの割にはブランド維持の仕組みが整っていない実態が明らかになった以上、信頼回復の一歩は出荷基準を明確にし、再発防止策を早急に打ち出すことである。

 氷見ブリについては、七尾沖の定置網で捕れたブリが相当量を占め、石川県側も氷見ブ ランドに頼ってきた側面がある。どこまでが氷見産かという範囲のあいまいさが不正を誘発したとすれば、寒ブリの出荷地である両県の関係者が認識を共有し、不正が起きにくい仕組みを構築する必要がある。昨年12月、築地市場からの指摘で疑惑が発覚したが、同様の事例が他にもなかったのか、流通段階も含めて実態把握を進めてほしい。

 富山県によると、この仲卸業者は敦賀市の市場で競りにかけられたブリ900本以上を 別の業者から買い付け、氷見産、石川県産と偽って県外に出荷した。業者は「回遊魚だから、どこで捕れようと品質に差はない」と説明しているが、こんな理屈が通れば、鮮魚を地域ブランド化する意味がなくなってしまう。

 氷見ブリは高級魚の代名詞として全国的に定着している。高値で取り引きされれば、営 利目的で産地を偽わることは十分に想定される。出荷時の箱は業者側が自由に用意しているが、あまりにも無防備と言わざるを得ない。

 氷見漁協などは対策として地域団体商標を登録することや、タグやシールの取り付けな どを検討する。手間やコストがかかるなど課題は多いが、ブランドを守る必要経費と考え、できるところから早急に始めてほしい。

 考えようによっては、足元を見つめ直し、ブランド力に磨きをかける好機でもある。品 質管理の努力をさらに重ね、消費者の信頼が得られる確かな情報を積極的に発信してもらいたい。

◎住宅の省エネ補助 家庭の「環境投資」のテコ
 住宅の省エネ化を支援する石川県の「エコリビング支援事業補助金」の申請が相次ぎ、 年度末の期限を待たずに打ち切られそうな勢いという。富山県でも今年度モデル事業として試みられた「家庭用省エネ設備普及促進補助金」が、昨年夏の受け付け開始後、瞬く間に締め切られるという人気ぶりである。こうした家庭における省エネのための投資は、内需拡大の面からも歓迎すべきことであり、地域の「環境プラス経済対策」として新年度も継続することが望まれる。

 家庭部門のCO2排出量は2007年度で1億8千万トンに上り、全体の14%を占め る。基準年の1990年度より41%増えており、家庭の省エネが温暖化対策の柱に据えられている。県はその施策の一つとして、「いしかわ家庭版環境ISO」という独自の認定制度を04年度に設け、家庭の省エネを促している。同制度の登録家庭数は昨年、2千件を超えた。

 県のエコリビング補助金制度は、この家庭版環境ISOに登録した人が住宅の新築、ま たは改修に合わせて断熱施工や太陽光発電システム、エコキュート・エコジョーズといった高効率給湯器、節水型トイレなどの省エネ方法を三つ以上採用した場合、最大25万円を支給するものだ。今年度の補助金予算は約3700万円だが、昨年末時点の申請件数は167件を数え、金額にして予算の約8割に達しているという。

 家庭で行われる省エネは、節約術のイメージでとらえられがちである。無駄や浪費を控 えることはむろん大事なことではあるが、節約というよりも、暮らしを快適にする「賢い生活術」というふうに心得て取り組むのが良いのではなかろうか。そのために必要な消費をむやみに惜しまないという家庭が増えれば、景気にもよい影響を及ぼす。県のエコリビング補助金制度は、そうした家庭の「環境投資」のテコになる。

 財政による需要喚起策はいつまでも続けることはできないが、省エネへの賢い投資に前 向きな環境ISO登録家庭を増やす努力はたゆまず続ける必要がある。