きょうのコラム「時鐘」 2011年1月28日

 安いから売れる、売れるから安くなる。卵が先か鶏が先かの難問のとおり、卵が物価の優等生と呼ばれる背景には消費と生産の好循環がある

生卵一個を3人兄弟で奪い合って食べた戦後世代のせいか、駅弁を開いても卵焼きは最後に残してゆっくり味わう癖がいまだに抜けない。いくら安くても卵には食の神様が宿っているように見える、と言っても今の子どもには分かるまいが

鳥インフルエンザの広がりで鶏卵相場の異変が心配され始めた。当初は出荷が減り品薄から値が上がる。そのうちに風評被害が広がると消費量も減り値も下がる図式が予測される。鶏卵相場の誇る好循環が一転、悪循環に変わるのが怖い

食料自給率の低さが問題になっているが、鶏卵の国内自給率は96%と突出して高い。1人当たりの年間消費は昭和30年代中ごろ120個前後だったのが、最近は330個(農水省調べ)と飛躍的に伸びた。ここでも優等生である

タマゴ大好き世代から鳥インフルの拡大を見ると、食の足元にひびが入るような不気味さがあるが、風評被害などに負けず断固として食べ続ける覚悟である。