戦時中から多くの在日コリアンが土地所有権のないまま暮らす、京都府宇治市のウトロ地区の問題で、宇治市などは25日、土地所有者の不動産会社「西日本殖産」(大阪市)が示した住民らへの土地売り渡しに伴う納税案に同意する方針を示した。これで07年11月に韓国政府が拠出を決めた支援金による土地売買の障害がなくなり、実現することになった。市は譲渡され次第、住環境整備のための調査に着手する方針。【北村弘一】
ウトロ地区の土地問題では、住民らで作る財団が昨年5月、2750平方メートルを日韓両国の支援者の寄付約1億3000万円で購入。韓国政府の支援金30億ウォンは最近の為替相場変動で大きく目減りし、受け皿となった財団は当初予定の半分の3800平方メートルを1億8000万円で買収する交渉を進めてきた。
売買の障害は、この土地にかかった多額の抵当権で、固定資産税が滞納されている宇治市などが土地を差し押さえていた。西日本殖産は昨年7月、土地の売却代金の配分案を宇治市や他の債権者に示したが、同市への配分は税額3000万円(延滞分除く)を大きく下回っていたため、市が拒否。今月になって3000万円を同社が納める新たな案を示したため、同市が受け入れた。
土地の売却が済み次第、宇治市は周辺地域に比べて劣悪な住環境を改善する整備に向けた基礎調査に入る方針。住民らで作るウトロ町内会は「戦中戦後と苦労してきた高齢者も多く、急いで街づくりが進められることを希望する」とコメントを出した。西日本殖産は「問題解決のために、最終的な決断をした」と話している。
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■ことば
京都府宇治市伊勢田町の一部。面積は約2万1000平方メートル。1940年ごろ、国策事業の軍事飛行場建設に携わった朝鮮人労働者やその家族らが居住し、形成された。89年に約80世帯約380人が住んでいたが、高齢化が進み、現在では約60世帯、約200人に減少。生活保護世帯は約2割で、上水道普及は約4割にとどまっている。
毎日新聞 2011年1月25日 大阪夕刊