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老いの未来図:介護・医療の現場で 認知症理由に退院か(その2止) /千葉

 ◇「どの病院も起こりうる」人手不足で態勢とれず

 負傷や疾患の治療で入院した高齢者が、認知症を理由に病院から出されてしまうようなケースについて、行政や専門機関は具体的に把握しておらず、統計もない。だが、認知症に詳しい県内の医療関係者は「どんな病院でも起こりうるし、実際に起きているだろう」と語り、こうした事例が医療現場で日常的に起きている可能性を指摘する。

 県内の総合病院に勤務し、認知症に詳しいベテラン医師は「本当はあってはならないことだ」と断った上で、「認知症の患者は治療の趣旨を理解しなかったり、暴れたりして手が掛かる。認知症への理解不足から対応し切れず、やむを得ず入院や治療を断るケースも実際にあるだろう」と証言する。

 こうしたケースが起きる背景について、医師は「認知症に対処できる医師や精神科医を置き、支援する態勢がとれればいいが、医療現場はどこも採算ギリギリで、普段から人手が足りない状態。専門的な医師やスタッフを置く余裕のある病院は少ない」と語る。さらに、「一般病床と療養病床の連携や役割分担ができていないことも一因」と指摘する。速やかな治療を要する急性期患者を受け入れる一般病床に対し、療養病床は、症状は安定しているが長期療養が必要な主に高齢患者を受け入れる。症状に応じた両者の使い分けは現状では不十分だという。

 また、県内でデイサービス施設を経営する看護師の女性も、「同じようなケースは多数ある」と前出の医師の証言を裏付ける。

 女性によると、多くの病院では専門知識を持ったスタッフや看護師が足りず、認知症の高齢者を常に見守る態勢は整っていない。認知症で勝手にチューブを外すなど治療が困難な場合には全身麻酔などを施すこともあるが、この処置は高齢者にはリスクが高いという。しかし、女性は「退院させた病院の判断は責められない」とも語る。「退院後、医師の往診や訪問看護など在宅医療が充実していれば家族の負担も減らせるのではないか。患者自身も、慣れない病院より自宅でケアされたほうがいいはずだ」と語り、在宅医療サービスの遅れを指摘する。【黒川晋史】

毎日新聞 2011年1月27日 地方版

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